夜語りの屋敷   作:死して尚、彼女は何を思うのか。

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第五夜 葬式

 

 

妹が死んだ。

公園で倒れていたらしい。事故だったそうだ。急なことで、俺も親も何がなんだかわからなかった。

 

紹介された葬儀社は、町でよく見かける小さなところだった。家からも近いし、あまり考える余裕もなく、そこにお願いした。

 

担当してくれたのは、三十代くらいの男性だった。声は静かで、話すテンポも落ち着いていて、言葉選びが丁寧だった。

 

「妹さん、うかがっていたより、ずっとお若く見えました。ご家族、さぞ驚かれたでしょう」

 

そんなふうに言われると、かえって実感が湧いた気がして、黙ってうなずいた。

 

遺体はもう安置されていて、希望すれば顔を見られると言われた。母が見たいと言い、俺も付き添った。

 

顔は静かだった。メイクが少し濃いように感じたが、母は「きれいにしてくれてありがたい」と泣いていた。

 

「少し寒い部屋ですので、長くは……。お体も、繊細な方だったようですね」

 

男はそう言った。別に違和感はなかった。ただの気遣いだと思った。

 

葬式は静かに終わった。親戚も少ないので、全体的にあっさりした式だった。

けれど担当の彼は、控室でもずっと気を配ってくれて、食事の手配や細かい段取りまでしてくれた。

 

「火葬は明日、朝のうちにご案内します。最近は湿度が高いので、なるべく早めに」

 

そう言われたとき、少しだけ「急ぐんだな」と思ったが、よくあることなのかもしれない。

 

翌朝、火葬場に着いたとき、彼はすでに到着していて、係の人と話していた。

その後ろ姿をなんとなく見ていた。背筋が伸びていて、まっすぐだった。

 

火葬炉の前では、短く頭を下げてから、彼が俺に言った。

 

「よく送れたと思います。……妹さん、火の前でも落ち着いてるように見えました」

 

俺はうなずいて、目をそらした。あの棺の中には、妹が入っているはずなのに、実感がなかった。

 

火葬が終わるまでの時間、控室で彼と少し話した。

 

「……このお仕事、長いんですか?」

 

「ええ、まあ。若い方の式も、わりと多いです。最近は……女性の方が多いですね」

 

「へぇ、そうなんですか」

 

「ええ、偶然かもしれませんけどね。皆さん、よく似てるんですよ。静かで、綺麗な方ばかりで」

 

そのときは、俺も特に深く考えなかった。

変な意味じゃなく、ただ印象に残るってことなんだろうと。

 

骨壺を受け取るとき、彼は少し笑っていた。優しい笑顔だった。

「無事、お納めできました。……落ち着かれたら、どうかご自愛くださいね」

 

その日の夜、妹の写真を見ながら、ふと気になって葬儀社のサイトを検索した。

彼の名前を見つけようと思ったのだが、スタッフ一覧に載っていなかった。

 

名刺を見た。住所や電話番号は合っている。けれど、印刷がどこか古い。紙も黄ばんでいた。

 

不思議に思ったが、もう連絡する気にはなれなかった。

式はきちんと終わったし、文句を言う理由もない。

 

……ただ、あのとき彼が言った言葉だけが、今も少しだけ引っかかっている。

 

「火の前でも、落ち着いてるように見えました」

 

なんで、そんなふうに見えたんだろうなって。

 

 




意味怖初です

呼んでくれてありがとう
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