妹が死んだ。
公園で倒れていたらしい。事故だったそうだ。急なことで、俺も親も何がなんだかわからなかった。
紹介された葬儀社は、町でよく見かける小さなところだった。家からも近いし、あまり考える余裕もなく、そこにお願いした。
担当してくれたのは、三十代くらいの男性だった。声は静かで、話すテンポも落ち着いていて、言葉選びが丁寧だった。
「妹さん、うかがっていたより、ずっとお若く見えました。ご家族、さぞ驚かれたでしょう」
そんなふうに言われると、かえって実感が湧いた気がして、黙ってうなずいた。
遺体はもう安置されていて、希望すれば顔を見られると言われた。母が見たいと言い、俺も付き添った。
顔は静かだった。メイクが少し濃いように感じたが、母は「きれいにしてくれてありがたい」と泣いていた。
「少し寒い部屋ですので、長くは……。お体も、繊細な方だったようですね」
男はそう言った。別に違和感はなかった。ただの気遣いだと思った。
葬式は静かに終わった。親戚も少ないので、全体的にあっさりした式だった。
けれど担当の彼は、控室でもずっと気を配ってくれて、食事の手配や細かい段取りまでしてくれた。
「火葬は明日、朝のうちにご案内します。最近は湿度が高いので、なるべく早めに」
そう言われたとき、少しだけ「急ぐんだな」と思ったが、よくあることなのかもしれない。
翌朝、火葬場に着いたとき、彼はすでに到着していて、係の人と話していた。
その後ろ姿をなんとなく見ていた。背筋が伸びていて、まっすぐだった。
火葬炉の前では、短く頭を下げてから、彼が俺に言った。
「よく送れたと思います。……妹さん、火の前でも落ち着いてるように見えました」
俺はうなずいて、目をそらした。あの棺の中には、妹が入っているはずなのに、実感がなかった。
火葬が終わるまでの時間、控室で彼と少し話した。
「……このお仕事、長いんですか?」
「ええ、まあ。若い方の式も、わりと多いです。最近は……女性の方が多いですね」
「へぇ、そうなんですか」
「ええ、偶然かもしれませんけどね。皆さん、よく似てるんですよ。静かで、綺麗な方ばかりで」
そのときは、俺も特に深く考えなかった。
変な意味じゃなく、ただ印象に残るってことなんだろうと。
骨壺を受け取るとき、彼は少し笑っていた。優しい笑顔だった。
「無事、お納めできました。……落ち着かれたら、どうかご自愛くださいね」
その日の夜、妹の写真を見ながら、ふと気になって葬儀社のサイトを検索した。
彼の名前を見つけようと思ったのだが、スタッフ一覧に載っていなかった。
名刺を見た。住所や電話番号は合っている。けれど、印刷がどこか古い。紙も黄ばんでいた。
不思議に思ったが、もう連絡する気にはなれなかった。
式はきちんと終わったし、文句を言う理由もない。
……ただ、あのとき彼が言った言葉だけが、今も少しだけ引っかかっている。
「火の前でも、落ち着いてるように見えました」
なんで、そんなふうに見えたんだろうなって。
意味怖初です
呼んでくれてありがとう