夏休みのある日、俺はいつもの仲間と一緒に近くの川へ遊びに行った。
太陽が容赦なく照りつけていて、肌がじりじりと焼けるのがわかった。
けど、そんな暑さも川に飛び込めばすぐに忘れられる。
水は冷たくて気持ちよく、俺たちは水しぶきをあげながら夢中で遊んでいた。
「お前、暑くないのか?」
俺はタクヤにそう聞いた。
彼はニコニコして、「大丈夫、川の水が冷たくて気持ちいいんだ」と答えた。
タクヤは何度も川の水を手ですくっては口に運んでいた。
俺はそれを見て少し驚いた。
俺自身は水を飲むのは苦手だったからだ。
「おい、大丈夫か?」と思わず声をかけそうになったけど、タクヤは気にしていないようだった。
彼は冷たい水を楽しんでいるように見えた。
みんなが岸辺でバーベキューを始める頃、タクヤは一人で川の浅瀬に歩いていった。
俺はその様子をぼんやり見ていた。
水面に映る青空と白い雲がゆっくりと流れているのが印象的だった。
そんな時、ふと川の流れの中に白い布のようなものが見えた。
「なんだ、あれは……」
思わず俺は声をあげた。
でも、みんなはバーベキューに夢中で俺の声に気づかなかった。
タクヤは布の近くでまた水をすくい、何度も口に運んでいた。
俺は胸の奥がざわつくのを感じた。
「やめろ」と言いたかったけど、言葉が出なかった。
そんな俺の気持ちをよそに、タクヤは笑って「気持ちいいよ」と言った。
夕暮れが近づき、みんなが帰る準備を始めた。
俺は何も言えず、ただその場に立っていた。
帰り道、タクヤはいつもより元気がないように見えた。
「疲れたのか?」と声をかけたが、彼は「うん」とだけ答えた。
家に着くと、タクヤは風呂場で体を洗っていた。
僕は遠くからそれを見ていたけど、彼の顔はどこかぼんやりとしていて、いつもと違うように感じた。
「今日は楽しかったな」
彼がぽつりとつぶやいたその声は、いつもより弱々しく、俺の心に引っかかった。
夜が更けると、俺たちは帰ってそれぞれの家で過ごした。
だが、その夜、タクヤの家では異変が起きていた。
彼は熱があり、呼びかけてもぼんやりとしか返事をしなかったらしい。
次の日、俺は彼の家に行った。
母親が慌てた様子で「病院に連れて行った」とだけ言った。
数日後、タクヤは入院してしまった。
俺は不安で仕方がなかった。
意識がはっきりしない彼の姿が頭から離れなかった。
ある日、俺は彼の母親と話す機会があった。
彼女は静かに言った。
「医師から川の水に有害な細菌が見つかったと聞いたの。大量に飲むと感染症を起こす危険があるらしい」
俺はその言葉を聞いて、寒気がした。
あの日、タクヤは何度も川の水を飲んでいた。
俺は飲まなかった。
それが彼の運命を変えたのかもしれないと思った。
それからしばらく、俺は川へ近づかなかった。
あの青くて澄んだ水が、こんなにも恐ろしく感じるなんて思わなかった。
今でも思い出す。
あの白い布が川に漂っていたこと。
タクヤの笑顔と、そしてその後の変わりようを。
あの夏の日の川は、もう昔の川ではなかったのかもしれない。
俺はただ、何もできなかった自分を責め続けている。
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