夜語りの屋敷   作:死して尚、彼女は何を思うのか。

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テスト終わってからの久しぶりの投稿です。!


第七夜 訪問

 

 

母がいなくなってから、父と二人で暮らしている。

「お母さんは出ていったんだ」

父はそう言った。理由を聞いても「お前にはまだ早い」としか答えてくれなかった。

 

母がいなくなったあと、父は少し変わった。

前よりも寡黙になり、よく庭に出ては土をいじっている。

何を植えているのか聞いても、「秘密だ」と笑うだけだった。

 

それとは別に、俺の家には時々“お客さん”が来るようになった。

夜にスーツを着た人や、若い兄ちゃん、女の人も一度だけ来たことがある。

けど、みんなリビングに通されて、しばらくすると出ていく。

 

俺はいつも、二階に行っていろと父に言われる。

「仕事の話だから」

「お前には関係ない」

 

そう言われると、なんとなく逆らえなくて、言われた通りにしていた。

 

ある晩、トイレに行こうとして階段を降りたら、ちょうど父と客が沈黙のまま座っているのが見えた。

テレビの音だけが部屋に流れていて、二人とも画面は見ていなかった。

 

俺は足音を立てないようにして用を足し、部屋に戻った。

その夜、父は遅くまで庭にいた。

窓の外に懐中電灯の光がちらちら揺れていたのを覚えている。

 

翌朝、庭に新しく耕されたような場所があった。

俺が指で土をつつこうとしたら、父に強い口調で止められた。

 

「触るな。そこはまだ落ち着いてないんだ」

 

俺は何も言えずにうなずいた。

 

最近、夜になると変な音が聞こえる。

コツ、コツ、とか、何かがこすれるような音。

最初はネズミかと思ったけど、壁の中や床下から聞こえるわけじゃない。

 

それも、いつも決まって夜中の2時から3時のあいだ。

玄関のあたりだったり、風呂場の前だったり、まるで誰かが歩き回ってるみたいな。

 

俺が「変な音がする」と言うと、父は少し考えてからこう言った。

 

「風だよ。古い家だからな」

 

でも、うちは二重窓で、そんな音が入ってくるような作りじゃない。

それに……風が、廊下をゆっくり歩いたりはしないだろ。

 

今日もまた、お客さんが来た。

父は相変わらず無口で、その人と二言三言かわしてから、リビングに案内していた。

 

俺は自室の窓から庭を見た。

また一部の土が掘り返されているのが見えた。

そこに植木鉢が並べられ、何本かの花が差してある。

 

けれど、不自然だった。

それぞれの鉢に名前のような紙が差し込まれていたけど、汚れていて読めなかった。

 

日が暮れる頃、父が部屋に来て言った。

 

「今夜のお客さんもすぐ帰る。あまり降りてくるなよ」

 

俺はうなずいて、部屋に鍵をかけようとした。

けれど、ドアに鍵はなかった。

 

父が以前、ドアの鍵を取り外したのだ。

「閉めこもるのはよくない」って理由だったけど、今思えばちょっと変だった。

 

深夜2時。

また廊下を歩く音がした。

でも今夜はやけに重たい足取りで、ゆっくりと俺の部屋の前まで来た。

 

止まる。

ノブがわずかに回る音がした。

息をひそめてじっとしていると、やがて遠ざかっていった。

 

朝になり、父は普段通りに振る舞っていた。

新聞を読み、コーヒーを飲み、「仕事に行ってくる」と言った。

 

そのあと、リビングに入ったら気づいた。

テーブルの上に、昨夜のお客さんが着ていたシャツが折りたたまれて置いてあった。

靴も玄関にそっと並べられている。

 

けれど、姿はどこにもなかった。

 

リビングのソファの背もたれには、メモ紙が貼ってあった。

父の字で、こう書かれていた。

 

「今夜には、花をもう一本増やす」




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