ウルトラワールド:Scramble Engage 作:おろさん
場所は変わって、冬木の商店街。
「……こうして一緒に歩くのも、ずいぶん久しぶりね」
「そうですね。姉さんが先に冬木へ送られてから、もう一年になりますから……」
凛と桜は、偶然ばったり出会い、そのまま並んで商店街を歩いていた。
「一応、あのセンリツとかいう妙な子が来るかと思って様子を見に来たけど……今のところ、それらしい気配はないわね」
「地中を移動していたようでしたし……今回も、突然私たちの前に現れる可能性はありますけれど」
そんな会話を交わしながら歩いていると、桜がふと思い出したように口を開いた。
「そう言えば姉さん。先日倒した侵蝕世怪人、二体の件なのですが……」
「ん? ああ、あれね。倒された直後、人間だったらしい二人が転がり出てきたやつでしょ。ルヴィアが魔術協会に引き渡したって聞いたけど、それがどうかした?」
「それが……どうやら、その二人が少し妙でして」
桜は顎に手を当てながら続ける。
「何らかの愛護団体を名乗っているようなのですが、供述している内容が……聞いたこともない名前の生き物の保護活動をしていた、というもので……」
「何それ」
凛が眉をひそめる。
「要するに、妄想に閉じこもってるってこと?」
「半分は、そうだと思います。ただ……
押収した私物を調べたところ、単なる妄想とも言い切れず、異世界の住人である可能性が浮上しているそうです」
「異世界……」
凛は小さく息を吐いた。
「となると、クレイジークロックが関与している線が濃いわね。イリヤちゃんたちの前に現れた猫ミームといい……」
頭を悩ませるような話をしていた、その時だった。
「……ん?」
凛がふと、横のベンチに視線を向ける。
「姉さん? 何を――」
桜も同じ方向を見る。
そこには、一人の少女と、一匹の黒猫がいた。
ベンチに腰掛けた少女が、猫に向かって一方的に話しかけている。
「うーん……急に知らない場所に来ることになって、『ここで待ってて』なんて言われたけど……」
「この一か月、色々ありすぎて、正直もう何が何だか……」
「……」
黒猫は無言のまま、毛繕いに専念している。
「クオンさーん。さすがに無関心すぎません?」
「私たち、かなり非現実的な目に遭ってるんですよー? おーい、クオンさーん?」
泣き笑いの表情で語りかける少女。
一方、凛は彼女の服装に目を留めていた。
水色のパーカーの上に、首元には大きな勾玉のようなアクセサリー。
その上から羽織っているのは、学生服らしき緑色のブレザーと、薄茶色のスカート。
「あの子……」
凛が低く呟く。
「昨日のセンリツって子が着ていた服と、似てないかしら?」
「確かに」
桜も頷く。
「同じ学校の生徒、でしょうか。そう考えると、ここにいる理由も――」
言葉を切った、その瞬間。
「お待たせ」
「少し並んでしまいました」
少女の元へ、二人の女性が近づいてきた。
どちらも同じ制服姿だ。
一人は白髪ショートで、顔に傷跡がある。
もう一人は背の高い金髪ツインテール。
どうやらクレープを買ってきたらしく、金髪の女性は両手に持ったそれの片方を、ベンチの少女へ渡した。
少女は「待ってた」と言わんばかりに受け取り、さっそく食べ始める。
「……また二人増えたけど」
凛が小声で言う。
「どう見ても、普通じゃ――」
「普通じゃないけど、可愛いじゃん」
「――え?」
不意に、背後から声がした。
「だ、誰――」
「逆だよー」
振り向いた瞬間には誰もいない。
反対を向けば、また後ろから声。
「ちょ、ちょっと! いつまでやるのよ!」
「いいから姿を見せなさいってば!」
「はーい」
「うわっ!? 急に出てきた!?」
散々かく乱された末、ようやく凛の前に姿を現した人物。
「どもども~」
ペールオレンジの長髪、水色がかった瞳。
なぜか猫の耳と尻尾が生えており、胸元には鈴付きのオルゴールペンダント。
服装は、先ほどの少女たちと同じ女子生徒の制服だった。
「……その移動速度といい、その見た目といい」
桜は冷静に観察しながら言う。
「ただ者ではありませんね。このタイミングで現れた以上、あちらの方々と関係者と見て間違いなさそうです」
「ん? まあね」
猫耳の人物は軽く笑った。
「アタシは『佐鳥羽鈴夜』! フジヨシ情報処理高校二年! よろしくー」
「佐鳥羽……?」
凛が眉を寄せる。
「フジヨシ? 聞いたことのない学校だけど……それより今、『佐鳥羽』って――」
その瞬間。
「\ひゃああああああああああああ!!?/」
聞き覚えのある声が、上空から降ってきた。
「……この声、まさか――」
凛が言い切る前に、声の主が凄まじい勢いで落下。
地面に激突し、鈍い音が商店街に響く。
凛と桜は、嫌な予感を抱きつつ落下地点へ近づいた。
「……ねえ、メリー」
「今さらだけど、これ、イメージの問題じゃないよね」
「……うん」
「ここまで来ると、完全に別の原因よね。それで……ここ、商店街だし」
そこには、蓮子とメリーがいた。
衝撃で変身が解除されたのか、二人はボロボロの状態で立ち上がる。
「……えーと」
凛が呆れ混じりに言う。
「色々言いたいけど、要するに……また失敗?」
二人は、非常に複雑な表情で頷いた。
「……へぇ」
鈴夜が近づいてきて、興味深そうに呟く。
「この二人が、噂の“二人で一人”かぁ」
「ちょ、ちょっと!」
凛が焦る。
「この人、何で知って――」
「待ってください、姉さん」
桜が制する。
「佐鳥羽鈴夜さん。今の発言、まるで蓮子さんとメリーさんのことを最初から知っているように聞こえましたが?」
「あれ?」
蓮子が鈴夜を見て首を傾げる。
「何この人……猫耳と尻尾、生えてる?」
「それより!」
メリーが周囲を見回す。
「さっきの落下音で、人が集まり始めてる!」
「……っと」
鈴夜は状況を確認し、小さく肩をすくめた。
「ギャラリー増えるのは、よろしくないね」
そう言って、鞄から取り出したのは――
腕時計のような形状をした、クロスタルリング。
「えっ……」
その場の空気が、明らかに変わった。
『電波のエフェクトと丹羽真』→『藤和エリオ』
『電波塔とUFO』
その異様な光景に凛たちが呆然としている中、鈴夜はまるで慣れた手つきでクロステライザーを右手に持ち、もう一方の手で指輪をはめた。
【CROSSTAL RING!!!】
軽く手を叩くようにクラップすると、クロステライザーを空へ向ける。
【『電波女と青春男』!!!】
瞬間、上空に巨大な電波塔の幻影が出現した。
そこから発せられた不可視の電波エフェクトが、周囲一帯へと波のように広がっていく。
「……あれ? 俺、何してたんだっけ?」
「気づいたら人だかりになってたけど……何かあった?」
ついさっきまで騒ぎに集まっていた通行人たちは、まるで何事もなかったかのように首を傾げながら、その場を離れていく。
「……全員、直前の記憶を消された? これは……」
「記憶操作が可能な特殊電波だね。『電波女と青春男』の指輪の能力。いやー、ほんと便利」
鈴夜は使い終えたクロスタルリングをひらひらと掲げ、軽い調子で続ける。
「……ま、原作にそんな能力ないけど」
「そこツッコむところなの……?」
凛が呆れ半分、警戒半分で睨む。
「クロステライザーを使った時点で察してはいたけど……あなた、やっぱり――」
問いただそうとした、その時。
「何をしているのかと思いましたが……その方たちが、例の?」
声をかけてきたのは、先ほどまでベンチでクレープを食べていた三人と黒猫だった。
金髪ツインテールの女性が鈴夜を見ると、鈴夜は軽く頷く。
「あれ、この人たちは?」
「よく見ると……昨日のセンリツって子が着ていた制服と、似ていない?」
「昨日の子……?」
「センリツだよ。
白髪ショートの女性がそう補足する。
水色パーカーの少女は、どこか居心地悪そうに二人の背後に隠れていた。
「ところでマスター。どうしてそんな所に?」
「もう一か月も経ってるんだから、そろそろ慣れなよ。こうなるの、分かってたでしょ」
そう言われ、少女は渋々前へ出される。
「え、えっと……クオン――」
「……」
「クオおおおおん……」
助けを求めるように猫の名を呼ぶが、黒猫は知らん顔でそっぽを向いた。
少女は半泣きだ。
「……やっぱり、昨日のあの子と関係があるのね。
……って、待って」
凛が眉をひそめる。
「今、『マスター』って言った?」
「姉さん……!」
桜がクロステラプロテクターのレーダーを確認し、息を呑む。
「さっきは感知阻害があったみたいで気づけませんでしたけど……あの二人……!」
ただの人間ではない。
そう確信した、その瞬間。
「あっという間にとうちゃーく! ……って、あれ?」
空間が歪み、マタラ・ド・ラ・ゲートからイリヤが姿を現す。
「知らない人がいっぱい……これ、どういう状況?」
「お、また一人来た」
鈴夜は目を輝かせ、瞬時にイリヤの目の前へ。
「ふぇっ!? え、どちら様!? ネコ耳!? え、え、何!?」
「包み隠さず言えば、こういうこと」
鈴夜は右手人差し指にはめた、白い猫の仮面を思わせる指輪――
そして、自身の持つ『守護者の指輪』を示す。
「……やっぱり、あなた」
「そう、その通り!」
鈴夜は満面の笑みで、改めて名乗った。
「『守護者ビビット』の変身者!
フジヨシ情報処理高校2年!
そして
「やっぱり本当に守護者……!」
「……え? でも、残り二人の守護者って、どっちも男性って――」
戸惑う蓮子とメリー。
その横で、イリヤが急に目を輝かせる。
「……男の娘!!! 女装男子!!!」
「おお、正解!」
「ゑゑっ!!?」
鈴夜は意外そうな顔をしつつ、両手で大きな丸を作った。
「え、女装!? 男性は男性でも、そういう方向!?」
「確かに『男性』とは言ったけど、服装までは言ってなかったわね……」
場が混乱する中、凛は静かに少女の方を見る。
「え、ええと、何か……?」
「……あなた。
それに、一緒にいるその二人……」
鋭い視線で、言い切った。
「――『サーヴァント』よね?」
*****
「……要するに。二年くらい前に守護者になって、それから『フジヨシ情報処理高校』に通いながら……そこの生徒の闇センパイとかを頼りに、指輪やメダロット、サーヴァント絡みの事件や異変を追ってる、ってことね」
数分後。
鈴夜に案内され、一同は商店街近くの、少し値の張りそうなカフェへと移動していた。大きなボックス席に腰を落とし、凛が事情を一通り聞いた結果のまとめが、それだった。
「まあ、大枠は合ってるかな」
鈴夜は軽く頷き、続ける。
「で、その中でもサーヴァント絡みの件で、一か月前に巻き込まれ……いや、引き入れたのが、この同級生の『ツクモ』ちゃん」
そう言って、水色のパーカーを着た少女へと視線を向ける。
ツクモはやや緊張した様子で、気を紛らわせるように足元の飼い猫『クオン』へ目を向けていたが、当の猫は相変わらず素っ気ない。
「それで……あなたたち二人が、ツクモさんのサーヴァント、というわけですね」
確認するように、桜が金髪ツインテの女性と白髪ショートの女性へ問いかける。
「あの……さっきからその『サーヴァント』って、一体何なんですか? 指輪と関係が――」
蓮子がそう尋ねかけると、二人が答えるより先に、凛が少し苦い顔で口を挟んだ。
「いえ、基本的には指輪とは無関係よ。ただ……クレイジークロックが関わっていた案件も多かったし、いずれ表に出てきてもおかしくはなかったわね」
そして、簡潔に言い直す。
「要するに――あの子と一緒にいるのは、歴史上の人物や神話、時にはおとぎ話で語られる存在『英霊』……
その英霊の“側面”を元に、特殊な手順で召喚・形成された存在が、この二人みたいな『サーヴァント』なの」
「その通りですわ」
金髪ツインテの女性が優雅に一礼する。
「わたくしが『アン』」
「それで、僕が『メアリー』。僕たちは――二人で一人、さ」
自然な調子で、そう名乗った。
「アンとメアリー……ということは、『アン・ボニー』と『メアリー・リード』ね」
「有名な女海賊のコンビ……なるほど、『二人で一人』の括りというわけかしら」
同じく“二人で一人”という在り方を持つ蓮子とメリーは、興味深そうに二人を見つめている。
「詳しいんですね……。私は調べて、やっと分かったのに」
ツクモが感心したように言う。
「その手の歴史は、だいたい全部調べ切ってるからね(by蓮子」)
「まあ、外見だけだと名前を聞かないと分からないけど、十中八九(byメリー)」
「だからって言い方が雑すぎるでしょメリーさん!(by蓮子)」
「でね」
鈴夜が軽く咳払いして話を戻す。
「ツクモちゃん、いろいろあって一か月前に『クラスカード』を拾ってさ。しかも一時間も経たないうちに、この二人を召喚しちゃった
……それで、闇センパイに根回しして、二人にもフジヨシの生徒になってもらった、ってわけ」
「(クラスカード……!!)」
「『クラスカード』、ね……」
鈴夜の言葉に、凛と桜の表情がわずかに引き締まる。美遊もまた、警戒するように視線を落とした。
「あれ? どうしたんですか? その『クラスカード』って……?」
イリヤが不思議そうに尋ねる。
「細かく説明すると長くなるから、要点だけ言うわ」
凛がそう前置きし、
「『クラスカード』は、何十年も前から世界中に発生し始めた、非常に特殊な魔術で形成された『媒体』。一定の条件が揃えば、持ち主はサーヴァントを召喚できるの」
「……短時間で自動的に召喚されたとなると、彼女はかなり稀なケースですね」
桜はそう補足しながら、クロスタルプロテクターに保存されていた写真を表示する。そこには、異なる絵柄と文字を持つカードがいくつも写っていた。
「サーヴァントには『クラス』が七種類あります。『セイバー』『アーチャー』『ランサー』、
そして『ライダー』『キャスター』『アサシン』『バーサーカー』」
「クラスカードにも同じく七種類の絵柄があり、所持するクラスカードの
その説明に、イリヤたちは感心したように頷く。
「……なお、ここにいる『アン・ボニー&メアリー・リード』は、『ライダー』です」
「なるほど……って、ん?」
その時。
「どもなのです」
聞き覚えのある声に振り向くと、昨日現れた佐鳥羽センリツが、いつの間にかイリヤの隣に座っていた。
「って、あんた昨日の!? いつからそこにいたのよ!?」
凛が声を上げると、
「ずっとツクモさんの真下に潜んでたのです」
「えっ(byツクモ)」
あっさりと言い切られた。
「真下!?……ああ、そうか。地中に潜れるんだっけ……」
蓮子が納得したように呟き、センリツは得意げに頷く。
「そうなのです。驚かせようと思って、皆さんがレストランに入った辺りからずっと――あ、ちなみに仲睦まじいお姿はバッチリ――あべっ!!」
写真を見せようとした瞬間、鈴夜が高速で奪取し、そのまま脳天チョップ。
「はい没収。ほんと、そういうのを抜きにすれば、色んな意味で良い子なんだけどさ……」
ため息をつきつつ、写真を何重にも折ってチャック付きの袋へ放り込む。
「あ、あの……ちょっといいですか?」
イリヤが恐る恐る声をかける。
「ん? ああ、センリツは俺の妹分で――」
「いえ、そうじゃなくて……。センリツさんの背中の黒い手とか、鈴夜さんの猫の耳と尻尾とか、さっきの高速移動とか……
二人とも自分で『
その問いに、鈴夜は一瞬きょとんとし、それから軽く笑った。
「あー、そこ? 確かにちゃんとは話してなかったね」
そう言って立ち上がり、
「センリツ。戻ってきたってことは、『あの件』の調べはついてる?」
「もちろんです。時間にも余裕を持って、しっかり集めてきたのです」
センリツは頷き、スマホから鈴夜の端末へデータを送信する。
「あの件……?」
「オッケー。じゃあ、食べ終わったら説明するよ」
鈴夜はそう言って微笑む。
「ちょうど、追ってる連中の取引現場に向かうところだからさ」
何の話かは分からない。
だが一同は顔を見合わせ、結局またこの流れに乗ることになるのだった。
=クロスタルリングカセット=
『電波女と青春男』
イラスト:電波のエフェクトと丹羽真→藤和エリオ
固定絵:電波塔とUFO
指輪能力:記憶操作や妨害、探知などの特殊電波
所有者:鈴夜
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*注釈:本作品は、自著の文章をAI(ChatGPT等)で推敲・校正して投稿しています。ストーリーや台詞はすべて作者が作成したものですが、読みやすさ向上のために文章の整理を行っています。