ウルトラワールド:Scramble Engage 作:おろさん
十数分後。町外れへと向かって歩く鈴夜たちの後を、イリヤたちも続いていた。
「……要するに、貴方たち二人は、色々込み入った事情があって『人間』から『
「そこまで人の姿を保っているのも、かなり珍しいケースですが……」
凛と桜がそう呟く横で、鈴夜は肩をすくめる。
「……アタシは猫っぽい何かと混ぜられた結果、耳と尻尾が生えてる感じでさ。あ、指輪を手に入れたのもそこからだね。で、センリツは確か学名『バックベアード』だったかな?だから身体の構造そのものが変わってる」
「今でこそ利便性はありますが、相当特殊な生物と混ぜ合わされたのです」
淡々と語るセンリツの言葉が、逆に重みを帯びていた。
木々が並ぶ小道を進みながら、イリヤはツクモたちと並んで歩きながら話をしていた。
「それで召喚した時から、二人ともツクモさんの家に住み着いてるんですね」
「うん。時々勝手に私のお金で買い物してくるのは玉に瑕だけど……おかげで退屈はしないかな。」
「海賊に倫理観を求める方がおかしいよ。そもそもマスターもマスターで、貯まってるお金をもう少しパーッと使えばいいのに」
「前見たマスターの貯金ですけど、余裕で7桁超えてましたわよ?その年齢で明確な目的もないのに、ずーっとため込むのも勿体ないじゃないですか。」
「い、いや……それは……」
メアリーとアンの言い返しにツクモは言葉を濁し、視線を泳がせる。
「な、七桁……高校生ってそんなにお金稼げるんですか……?」
「なんか語弊のある言い方だなぁ……いや、中学の頃から、近所で事務員のバイトをしてて。その時給が結構良いの。でも使い道は自分の服とか、クオンの餌代とか、周辺器具とか……あと、バリバリされたソファの買い替えくらいで使う機会があんまり無くて」
謙遜気味に話すツクモに対し、腕の中のクオンは呆れたようにそっぽを向く。
「……」
その態度に、ツクモは少しだけ肩を落としながらも続けた。
「鈴夜さんとは学校の同級生で。ああいうギャルっぽい性格だから人付き合いも上手で……正直、私とは真逆の人だよ」
「えっと、あんまり聞いちゃいけないかもだけど、それって……」
イリヤが、何かを察したように声をかける。
「あー……うん。今まで家族とも友達とも、あんまり上手くいってなくてさ。だからクオンが心の支え。……でも、高校に入ってからは少しマシかな。クオンも一緒に通えるようになったし」
「え、ペット可なの?情報処理……ってよく分からないけど確かパソコンとか使うところですよね?」
「ああうん、でもフジヨシって凄く校風緩いんですよ。指定制服さえ着てれば、忍者のコスプレしてても問題ないくらい。」
「そんなに自由なのも何か羨ましいかも……」
「そ、そう?」
そう言って、ツクモは少し照れたように笑う。
「話を戻すけど……一か月前に指輪の力とかクラスカードとか、そういう非現実に巻き込まれてから生活は一変してね。まだ慣れないことも多いけど、結構楽しいよ。カラオケとかゲームセンターとか連れていってもらって……なんだかんだ、今は好きな毎日なんだよね」
その言葉に、アンとメアリーは穏やかに微笑む。
「あら、嬉しいことを言ってくれますわ」
「最初は学園生活なんて、どういう風の吹き回しかと思ったけど……マスターが楽しそうなら何よりだね。僕たちも色々体験させてもらってるし」
「……これで、どさくさに紛れてベッドに潜り込んだり、財布からカード抜き取ったりしなければねー(小声)」
「さて、何のことだか(棒)」
苦笑混じりにその光景を眺めていたクオンとイリヤたちに、前方から声が飛ぶ。
「話は弾んでるみたいだけど、そろそろ着くよ」
鈴夜の言葉通り、辿り着いた先は――木々の奥に佇む、人気のない廃墟だった。
「ここ……? こんな場所に廃墟なんて」
「正確には、意図的に隠されてたってところだろうね」
中を覗いた凛が、眉をひそめる。
「……何か作ってる? というか、機械が稼働してるけど」
ベルトコンベアで運ばれていくのは、骨組みだけの機械部品。蓮子とメリー達には心当たりがある様子。
「……あれ、メダロットのティンペットじゃない?」
「ティンペット?……ああ、メダルを入れて動かすメダロットの身体だっけ?」
様子を見ていると、そこに足音が。
***
そこに現れたのは、棒人間のような姿の人物と、全身黒タイツの男二人。
「……ふむ。質は悪くない」
「頼まれてたものも集めたロボ」
アタッシュケースの中には、六枚のカード。
***
「……クラスカード!?」
「ロボロボ団だよ。クレイジークロックと手を組み始めたみたい」
「技術提供と引き換えに、カード回収……ですか」
状況を理解したツクモが、不安そうに問いかける。
「……で、どうするんですか?」
「そりゃ強行突破。みんな、少し離れて」
鈴夜の右手に力が集まり、エネルギーがカギ爪の形を取る。
「え、ちょっと待って、それって――」
「そしてーかーがーやーく、ウ・ル・ト・ラ・ソウル!!」
振り抜かれた右手から放たれた斬撃が、廃墟の壁と奥をまとめて抉り取った。
「どわあああっ!? 何事ロボ!!?」
突如として放たれた斬撃に、ロボロボ団の二人は完全にパニックに陥る。
棒人間の男も、何が起きたのかを確認しようと、反射的に斬撃の飛んできた方向へ視線を向ける。
「まさか……!」
その瞬間、ロボロボ団の片方が抱えていたアタッシュケースと、棒人間の男が手にしていたクラスカードが、目にも留まらぬ速さで掻き消える。
「よっし、全部回収! それじゃセンリツ!」
「おうなのです!」
一瞬のうちにクラスカード六枚を奪取した鈴夜は、それらを即座にアタッシュケースへと戻し、センリツへと投げ渡す。
「ゲゲーッ!!?なんでここがバレたロボ!?というか、あいつら何者だロボ!?」
ロボロボ団が叫ぶ中、棒人間の男、ことドクター・エビテンは、冷静に事態を受け止めていた。
「……やむを得ないか」
彼は右手のような形状をした赤い武器、『ワイルドライザー』と、ひとつのクロスタルリングを取り出す。
『セルメダルとコアメダル』→『オーズ』
『タカ・トラ・バッタのコアメダルとタカカンドロイド』
【
【『
ワイルドライザーに『仮面ライダーオーズ』の指輪を装填すると、その力で
「KISYAAAAAAAAAA!!!!」
タカ、トラ、バッタの特徴を無理やり融合させたような異形『メダル
「いくら野暮用とは言え、これほど早く嗅ぎつけられるとはな。」
低く呟いたエビテンは、即座に空間を歪め、どこかへとワープして撤退。
「IIIIIIIIII!!!!」
「ジジジ……!!!」
取り残されたメダル世怪は、即座に行動を始める。
メダル状のエネルギーを放ち、製造途中だったティンペットへと装着。すると自動的にパーツが組み上がり、『ブルースドッグ』『ドラゴンビートル』『ラビウォンバット』といったメダロットたちが次々と起動した。
「えっ、ドクター・エビテン!? ちょっと待つロボ、置いていくなロボ――あべっ!!?」
さらに追い打ちをかけるように、ロボロボ団が所持していたスマホ端末の時計を媒介として、ウォークロックたちが出現。
そのうち二体が、逃げ出そうとしたロボロボ団の二人を殴り飛ばし、あっさりと気絶させた。
「とんとん拍子で逃げられたけど……今の人、侵蝕世怪人を作り出してたよね!? ワイルドライザー持ってたし!」
「幹部格みたいね……でも今は、目の前の敵を片付けるのが先よ!」
エビテンの行動から、彼がクレイジークロック関係者だと即座に察した一同。
とはいえ、迫り来るウォークロックや侵蝕世怪人への対処が最優先。イリヤとメリーは、それぞれ右手人差し指にはめていた指輪を外す。
「
【CLAP YOUR HANDS!!!】
蓮子とメリーが融合し、クロステライザーにイリヤたちが指輪を装填。
【UNCOVER THE SECRETS:GUARDIAN『メモリア』!!!】
【DRAW THE RAINBOW:GUARDIAN『プリズマ』!!!】
軽快なクラップと共に、守護者の姿へと変身。顕現した固有武器を手に、即座に戦闘へと入る。
「姉さん、私たちも!」
「ええ。フォローくらいはやらないとね!」
クロスタルプロテクターで結界を展開しつつ、凛と桜も魔術で援護に回る。
「じゃ、アタシもやらないとね」
次々と襲いかかるメダロットや、銃撃を放つウォークロックをかわしながら、反撃を叩き込一同。その後ろで鈴夜はクロステライザーを右手に装備し、クロステラノベルをセットする。
【アーティストハイスクール】
【限りある時の中で、芸術家としての歴史を刻む学生たちの青春】
「
【CLAP YOUR HANDS!!!】
【WONDERFUL THE ARCHIVE:GUARDIAN『ビビット』!!!】
ノリの良い動きでクラップを決めた彼は、白い猫を思わせる装甲を纏い、守護者『ビビット』へと変身した。
「ジジジジジ!!!」
不意打ちを仕掛けようとしたウォークロックたち。しかし――
「おっっっそいなぁ」
次の瞬間、攻撃方向には誰もおらず、ビビットは既に背後に回っていた。
【『ビビットキャストマシンガンU』!!!】
顕現したマシンガンが火を噴き、敵を一掃する。
「……ようやく掴み取った青春。壊されてたまるもんかってのよ」
吐き捨てるように呟き、さらに高速移動。
爪で引き裂くような斬撃を、ウォークロックの群れへと放つ。
「鈴夜さん……」
その言葉を聞き、ツクモはふと考え込む。『ようやく掴み取った青春』。佐鳥羽鈴夜は、今の学校生活をそう呼んでいた。
妹分のセンリツ。
「……詳しいことは分からないけど……巻き込まれた以上、忘れる気にはなれないし、協力するって決めたのは私だし……やってやるんだから!」
覚悟を決めたツクモは、右手に刻まれた『令呪』を見つめる。その肩を、アンとメアリーが軽く叩いた。
「それでは、こちらからもお願いしますね。マスター」
「頼むよ、マスター。僕たちからしてもイレギュラーだらけなんだから」
「ぷ、プレッシャーかけないでよ……!と、とにかく……お願い、アンさん、メアリーさん!!」
「「任せて!」」
その言葉に呼応するように、アンとメアリーの服(霊衣)が、海賊を想起させる姿へと変わる。
アンはマスケット銃を、メアリーはカトラスを構え、戦場へ飛び出した。
「ジキキキッ!!!」
銃撃を軽々とかわし、アンが発砲。
続けてメアリーが投げたカトラスが壁に跳ね返り、敵を次々と貫く。
「ギギッ!!!」
「貫けっ!!!」
跳ね返ったカトラスをキャッチしたメアリーは、アンの銃口に足をかける。
アンの発砲の反動を利用し、一気に突進。ウォークロックを粉砕した。
「お、おお……さすが海賊、ド派手……って――」
「ジキキキキ!!!」
感心する間もなく、ウォークロックがツクモへと迫る。
「……にゃっ!!!」
その瞬間、ツクモの腕からクオンが飛び出した。
「ギッ!!?」
銃撃を紙一重でかわし、鋭い猫パンチが命中し、ウォークロックは吹っ飛んだ。
「お、おお……こんな場面でもクオンのフェイタルスタンプが役に立つとは……」
自ら名付けた妙な技名を呟きつつ、ツクモは素直に感心していた。
***
「おおー! 実にスクランブルで絵になるのです~」
一方その頃、センリツはクラスカードが収められたアタッシュケースを守りながら戦っていた。
彼女はティンペットを生成していた機械へと潜り込み、内部から装置を破壊し機能停止させている。一同の戦いの様子を、カメラで撮影しながら。
「……何で戦いながら写真撮ってるのかは置いとくとして、本当に妙な体してるわよね……」
凛は、先ほどセンリツ本人から聞かされた説明を思い返す。
彼女の身体は『細胞のすべてがナノマシンへ変換されている』状態で、形状変化や地中への潜行、さらには異空間を生成して体内へ物を収納することすら可能だという。
あまりに常識外れな構造に、凛は軽く困惑していた。
「ってなわけで! ボクも頼れるサーヴァントにお願いしちゃうのです!さっそく来てください、バベッジさん!!」
センリツがそう叫んだ瞬間。彼女の真下から、黒い影のようなものが地面に広がっていく。蒸気と鋼鉄で構成された巨大な機械の身体が、地中からせり上がるように出現した。
「相も変わらず、人使いが荒いな。だが、よかろう。我が名は蒸気王。ひとたび死し、空想世界と共に在る者!」
現れたのは『チャールズ・バベッジ』。
コンピューターの父にして蒸気王と呼ばれる英霊が、蒸気機関の鎧たる宝具をその身にまとい、敵の方へと向き直る。
「我が空想、我が理想、我が夢想―『
宝具の名を告げると同時に、バベッジは敵陣へと一直線に突撃した。
「や、やっぱりあの子もサーヴァントを……っていうか、今どうやって喚び――っ!?」
困惑する凛の視界に、突如として赤い閃光が走る。
上空から放たれたレーザーに気づき、咄嗟に身を翻して回避した。
「VVVVV……」
崩れた屋根の上。
そこに姿を現したのは、機械的な外見をした侵蝕世怪人――『セツナ世怪』だった。
「うそ、いきなり新手!?……って、ええっ!!?」
プリズマが動揺する中、メダル世怪が奇妙なエネルギーを注ぎ込む。
すると、先ほど倒したはずの違法コピーのメダロットたちが、次々と再起動していった。
「復活……?無理矢理操作してるから、そんなことまで出来るってわけね……」
すぐに仕組みを見抜いたメモリアだったが、状況が厄介であることに変わりはない。
「VVVVVVV!!!!」
セツナ世怪が、再びレーザーを撃とうとした、その瞬間。
「はあああっ!!!」
斜め上方から、誰かが突撃してきた。
攻撃はかわされたものの、その人物はプリズマのすぐそばへと着地する。
「あっ、美遊!!」
「お待たせ。何とか間に合った」
それは、美遊が変身した守護者サファイアだった。
「少々、出遅れてしまいましたわね」
さらに、ルヴィアが凛たちの元へと歩み寄ってくる。
「ルヴィア!? 何でここに……」
「桜から連絡を受けましてね。黒タイツの二人組が隣町で怪しい動きをしているという話も耳にしましたので、調べていたら此処へ辿り着いた、という次第ですの。まさかクラスカード絡みとは思いませんでしたが……」
そう言うや否や、彼女は即座に戦線へと加わった。
***
『風都タワー』→『仮面ライダーW』
『ガイアメモリ(サイクロン、ジョーカー)』
「クロスタルリング……
メモリアはツメガバックルからクロスタルリングを取り出し、力強くクラップする。
【サイクロン!ジョーカー!】
【『
「二人で一人の仮面ライダー!
――お前の罪を数えろっ!!!」
『仮面ライダーW』へと再変身したメモリアは、ウォークロックたちへと拳を叩き込む。
さらに周囲に竜巻を巻き起こし、メダロットたちをまとめて吹き飛ばしていった。
「ガガガガッ……!!!」
しかし、迫り来る違法メダロットたちは再び再起動する。
「うえっ、やっぱり復活する!?」
「OOOOOOOOOO!!!!!」
続けて、メダル世怪がメダルの弾幕を放つ。
「っと、危ない!……やっぱり侵蝕世怪人を倒さない限り、終わらないわね……!!」
メモリアは弾幕をかわしながらメダル世怪へ迫ろうとするが、メダロットたちが行く手を阻む。
「だったら、アタシに任せて!」
【FINISH CHARGE『電波女と青春男』!!!】
ビビットが指輪を使用すると、特殊な電波が一斉に放たれる。
「ギ……!!?」
メダロットたちの動きが次々と停止し、メダル世怪が埋め込んでいたメダルと分離。完全に機能停止した。
「止まった……だったら、今のうちに!」
自分を守るものを失ったメダル世怪へ、メモリアが攻撃に移ろうとした瞬間――
「GI!!!AGHAAAAA!!!」
メダル世怪が虎の爪のような両腕を振り上げ、反撃に出る。
「隙だらけっ!!!」
その瞬間、メアリーがアンの発砲の反動を利用して一気に距離を詰め、カトラスで斬りつける。
「さらにっ!!」
追撃するようにアンが疾走し、マスケット銃の銃身で思いきり殴りつけた。
「GAAAAAA!!!?」
メダル世怪は壁まで吹き飛ばされる。
「よし、強襲成功!」
指示を出していたツクモが、拳を握ってガッツポーズを取っている。
「おーおー、いい感じじゃーん。じゃ、この勢いで一気に行っちゃおう!」
ビビットはニコニコとツクモを一瞬だけ振り返り、再びメダル世怪への追撃へと走り出した。