ウルトラワールド:Scramble Engage 作:おろさん
美遊「結局、私はイリヤと同じような飛び方は出来なかった……
イリヤ達の前に現れた女装男子……『佐鳥羽鈴夜』。彼は私達より先に守護者になった立場。そして、クラスカードに関与している……
飼い猫クオンを溺愛するツクモさんが召喚したサーヴァントは、ライダークラス『アン・ボニー&メアリー・リード』。佐鳥羽鈴夜の妹分だというセンリツさんはキャスタークラス『チャールズ・バベッジ』……
……サーヴァントにメダロット等を巻き込むこの異変、そして彼に連れられ辿り着いた場所はどういった場所か……奇妙な現象が発生し続けているけど、私は……」
レッツ、モーフィン!夢見るST@Rと導き手 01
佐鳥羽鈴夜に導かれるようにして、一同は扉の中へ足を踏み入れたイリヤ達。
「これは……おお……」
思わず声が漏れる。扉の向こうに広がっていたのは、一言で言えば西洋風の街並みだった。石造りの建物が立ち並び、道には柔らかな光が灯っている。空もとても明るい。
しかし周囲を見渡せば、宙に浮かぶのは無数の扉。用途も意図も分からない奇妙な門やアーチが、街のあちこちに点在している。
現実感があるのに、どこか夢の中のような感覚。一同はそこに足を踏み入れた。
「この……何、この空間!? 異空間だとは思ってたけど、普通に何ここ!?」
最初に我に返ったイリヤが、半ば叫ぶように言う。
それを聞いた凛が、顎に指を当てながら記憶を探るように口を開く。
「……時計塔で聞いたことがあった気がするわ。多くの世界に繋がる無数の扉が存在する、正体不明の特殊空間……確か名前は――」
「『
横から、鈴夜があっさりと答えた。
その後の彼の説明を纏めると、ここはただの異空間ではない。
早い話、以前ルヴィアに貰ったマタラ・ド・ラ・ゲートのようなもの。それぞれが別々の場所にいても、行き方さえ覚えていれば、いつでも集まれる『中継点』。言わば拠点となる空間だ。
「拠点ね……成程、都合が良いんじゃない?集合場所が決まっていれば、何かあったときにもすぐ合流できるし」
「バイトとかもあるし、全員が一度に集まれるタイミングって、実際そんなに多くないもんね」
鈴夜の説明に、蓮子とメリーも顔を見合わせて頷いた。
現実の生活を抱えたまま戦う自分たちにとって、これは確かに都合がいい。
「じゃあマスター、僕たちは先に行こうよ。どうせならパーッと買い物しよ?」
「えっ、あ、うん」
そう言って、メアリーとアンがツクモの手を引き、カラフルな通りへと駆け出していく。
「……」
クオンは特に何も言わず、同じ方向へとゆっくり歩き出した。
「っと、そんな感じだから。とりあえず近辺の施設を軽く案内するね。早速ついてきて」
手を振りながらそう言って、鈴夜は別の道を走る。随分早いペースで進む彼の背中を、一同は慌てて追いかけた。
***
一通り√BACK-DOORSを歩き回っていると、聞こえてくるのは、活気のある賑やかな声。
最初に見た時点で察してはいたが、ここは異空間というには、そんなに殺伐としていない。
むしろ、一昔前の商店街のような、どこか懐かしい雰囲気の街並みが出来上がっている。
実際、この空間にいるのは蓮子たちだけではない。
人間ではないが、同じように振る舞う存在が、露店を構えたり、観光客のように歩き回ったりしている。
サルのような姿の者、シマウマに似た者、そして鉱石の塊のような姿をした奇妙な存在。
それらが普通に会話し、商品を売買している。
「……色々ツッコミたいけど、まずそれ。
ねえ、その……何? 鉱石みたいなあんた達、何なの?」
凛の率直すぎる疑問に、鉱石の塊のような生物が胸を張る。
「ワレワレはワレワレだよ? 生まれた時からずっとこの姿!」
彼ら『ワレルヤの民』によると、自分達はイリヤ達の住む場所とは全く異なる世界、その地下世界の出身らしい。
ある日を境に、ワレルヤの民は√BACK-DOORSへの行き来が可能になった。
そして判明したのが、彼らはこの空間を『加工できる』こと。
肉体を持たず、永久的に復元する鉱石で出来たその身体。
それを利用した建築を重ね、少しずつ街を拡張。その結果今では、こうして多種多様な存在が集まる交流の場になった、というわけだ。
「……じゃあ、あの人……達?が来れるってことは、私たちもその地下世界に行けたりするの?」
「いえ、それは現状無理なのです。以前試したら、見事に弾かれました」
「そもそも、ここに行ける条件も正直まだよく分かってないし……まあ、クロスタルリングを集めていけば、少しずつ分かってくるんじゃない?アタシやセンリツがここに来られるようになったのも、それがきっかけだったし」
センリツと鈴夜の説明を聞きながら、蓮子とメリーは自然と俯いた。
クロスタルリング。クロステラノベル。そして、ほとんどを失ってしまった自分たちの記憶。
あまりにも多くの要素が絡み合うこの世界で、自分たちは何者で、なぜここにいるのか。
考え込む二人の横で、イリヤが首を傾げて鈴夜に問いかけた。
「ねえ……そもそもなんだけど。クロスタルリングって全部で何個あるの?アニメとかゲームが元ネタっぽいのが混じってるけど、種類多すぎない?」
「えー……分からないけど、少なくとも100個は超えてるんじゃない?」
「ひゃ、100個以上かぁ……」
イリヤは自分の持つ指輪を見下ろしながら、ふうと息を吐く。
現在の所持数は、蓮子&メリーとイリヤがそれぞれ4つ。美遊が6つ。鈴夜も4つで、合計18個。
全部集めるとしたら、まだまだ道のりは長い。
さらに言えば、まだイリヤたちが面識のない、もう一人の守護者。その人物も、指輪を集めているはずだ。
しかし凛の話では、その守護者本人は素性を明かすことを避けており、魔術師で詳しい情報を知っているのは、時計塔所属の講師と生徒の一部だけだという。
「(どんな人なんだろ……最後の一人って)」
胸に右手を当て、目を閉じて考えるイリヤ。
「(……でも、近いうちに守護者が五人揃う。そんな気がする……)」
「……」
美遊は無表情のまま、そんなイリヤの横顔を静かに見つめていた。
*****
数時間後、夜。
「フヒヒャ……」
首都・東京、某所。とある施設の地下駐車場。
不気味な笑い声と、セミを踏み潰すような重い足音が響いていた。
音の正体は、赤いカブトムシを思わせる人型の存在。
「キヒ……フヒャヒャ……」
「歪な色が見えると思ったら……新しい侵蝕世怪人?」
「キィィ……!!!?」
ゼクター世怪の前に立ちはだかったのは、仮面ライダーガッチャード。
芸術家少女『アルテ・クリープ』が変身する、パラレルファイターだ。
そのガッチャード(アルテ)を睨みつけるゼクター世怪は、よく見れば落ち着きなく足を揺らしている。邪魔されたことが相当気に入らないらしい。
「そんな態度の怪人、初めて見たんだけど……ちょっと引くなぁ。でもまあいいや。先手必勝だよ」
呆れつつも、放置するわけにはいかない。
ガッチャード(アルテ)は即座にガッチャージガンを構え引き金を引くと、カード状のエネルギー弾が放たれた。
「キイイイィィ……!!!」
次の瞬間。ゼクター世怪の姿が、視界から忽然と消えた。
「消えた……? いや、違う」
ガッチャード(アルテ)は冷静に、わずかに体を仰け反らせる。
直後、『ビュン』という風切り音。別方向から、ゼクター世怪が突進してきていた。
だが、すでに体勢をずらしていたことで、その攻撃は空を切る。
「ギ?ギイイイイイイ!!」
避けられるとは思っていなかったのか、ゼクター世怪は明らかに動揺する。
それでもすぐに姿を消す、もとい超高速で周囲を走り回り始めた。
「あー、やっぱそのタイプか。でもさ……言っとくけど、ぼくにその戦法は通用しないよ」
死角からの高速攻撃。しかしガッチャード(アルテ)は、わずかに体を傾けるだけで、それらを次々と回避していく。
「ギギイイイイイイ!!サッキカラ、軽々トォォォ!!」
完全に翻弄され、ゼクター世怪は苛立ちを隠さない。
スポーツカーにも追いつける速度。それでも、ほとんど動かずに避けられるのが、相手にとっては何より屈辱だった。
そもそもの話、アルテ・クリープという人間は、生まれつき他者とは異なる特殊な『色』が見える。
それは人や物体、さらにはエネルギーの流れにまで宿るもので、彼女にとっては世界そのものの『輪郭』を形作る。そしてそれは動きに反応し、物体が動けば一瞬残像として色が滲むのだ。
つまりガッチャード(アルテ)は、ゼクター世怪が動いた痕跡を色として捉え、そこから次の動きを先読みしていたのだ。
「……ふっ!」
十数回に及ぶ回避の末。ガッチャード(アルテ)は、弓剣型の武器『ガッチャートルネード』を装備した。
再び高速で迫ってくるゼクター世怪。
その進路を読み切り、すれ違いざまに腹部へと一閃を叩き込む。
「キ……貴様アアアアア!!!」
ダメージを負ったゼクター世怪。完全に逆上した様子で叫び、立ち上がると右腕を変形させる。
斧のような形状へと変わったそれは、明らかに殺意を込めたもの。しかしやっていることは結局同じで、ただ高速で突っ込んでくるだけだ。
「えー……学習能力、なさすぎない……?」
呆れたように呟きながらも、ガッチャード(アルテ)は油断しない。
相手の巨大化した右腕の斬撃を、ガッチャートルネードでいなしつつ、最小限の動きで回避していく。
「ヒヒヒ!!!思イ知レエエエエエエエエエエ!!!」
意味不明な雄叫びと共に、ゼクター世怪は再び一直線に突撃してきた。
【It's morphin' time!】
その瞬間だった。
ゼクター世怪の腹部に、突如として衝撃が走る。
「ギッ!?……ッア――ギャッ!!?」
理由も分からぬまま、ゼクター世怪は前のめりに転倒。
困惑しながらもすぐに立ち上がるが、数秒もしないうちに再び何かにぶつかったかのように倒れ込む。
「(……へぇ)」
一方ガッチャード(アルテ)は、何が起きたのかをすぐに察知。その視界に別の色が映り込んでいることに気づいていた。
「ギギ……ナニガ……ッ!!?」
ゼクター世怪もようやく、自分の背後に何かがいることに気づいた。
【『ゴーバスターズ』!!!】
チーターを思わせるマスクを装着した、赤い戦隊ヒーロー。特命戦隊ゴーバスターズの『レッドバスター』だった。
「オマエカ――」
怒号と共に、ゼクター世怪は斧状の右腕を振り下ろす。
だが、当たる寸前、レッドバスターの姿は視界から消える、もとい超加速による回避を行う。
レッドバスターはゼクター世怪の周囲を円を描くように駆け回り、すれ違う度に、肘打ちを何度も叩き込む。
その動き、その残像。
ガッチャード(アルテ)は、思わず目を奪われていた。
こんな場所で変身ヒーローが現れる以上、指輪の力であるのは間違いない。
だが、レッドバスターが装着しているベルトは、
指輪の戦士特有の『ツメガバックル』ではない。おそらくゴーバスターズ本来の装備だ。
つまり、あれはパラレルファイターではない。では何者なのか。『傀儡』ではない、しかし本物の可能性も低い。
彼女から見えるあのレッドバスターの色は、明るく、鮮やかで、力強い赤色だった。
【Transport!】
思考の最中、レッドバスターはトランスポッドを使用し、『ソウガンブレード』を装備。
そのままゼクター世怪へ斬りかかる。
「ギイイイイイイイイ!!」
苛立ちを隠そうともせず、歯ぎしりを鳴らすゼクター世怪。体勢を立て直し、自身も高速移動で対抗。
互いに限界まで速度を上げて激突。ガキン、ガキン、と金属音が地下駐車場に響き渡る。
「ん……ああ、そろそろ五月蠅いな」
拮抗し始めた戦い。だが、ゼクター世怪のヒステリックな叫び声が、徐々にガッチャード(アルテ)の癪に障ってきた。
『キュアデコルとキラキラル』→『キュアホイップ』
『スイーツとスイーツパクト』
【CROSSTAL RING!!!】
レッドバスターの正体を考えるのをやめ、彼女はツメガバックルからクロスタルリングを一つ取り出す。
右手のクロステライザーにはめ込み、軽く手拍子。
続けて、生クリームを泡立てるように、空中に円を描いていく。
「キラキラキラルン・キラキラル……はっ!!」
【FINISH CHARGE『キラキラ☆プリキュアアラモード』!!!】
剣先から、クリーム状のエネルギーが放たれる。横切ろうとしたゼクター世怪に、見事に直撃した。
「ギイイッ!!!?」
ふわふわの生クリームが絡みつき、その動きを拘束。振り払おうと暴れるほど、さらに粘りついていく。
「それじゃ、倒して指輪も回収――ん?」
トドメを刺そうと近づいた、その瞬間。
「ギ……ア……エ……?」
ゼクター世怪の身体が、斜めに真っ二つに切断された。
背後から、抜刀の一閃。気づいた時には遅く、ゼクター世怪は断末魔を上げる暇もなく爆散した。
「うお……」
爆煙が晴れた後、変身を解除したアルテは、その方向を見る。
そこに立っていたのは、スーツを着崩した一人の男。大きなラウンド眼鏡。赤橙色の右メカクレ髪。妙に中性的な顔立ちと体型。
そして右手人差し指には、オオカミのような仮面の指輪。
ゼクター世怪へ変貌していたと思しき小太りの中年が、横に倒れている。
男はそれを一瞥すると、足元に落ちた『仮面ライダーカブト』の指輪を拾い上げた。
「……途中から変な色が見えてたとは思ってたけど……それは流石に無いんじゃないの?」
不機嫌そうに睨みつけるアルテに、男は呆れたように返す。
「夜中に子供が一人で駐車場を歩いてる方が問題だろうに。」
そう睨み合う二人。その時、中年が目を覚まし、男の姿を見るなり、悲鳴を上げて逃げ去っていった。
「……何だったの、あのおっさん」
「ストーカーだよ。前に警察に突き出したやつ。」
話を切り上げ、アルテは男を再度見る。その傍には、さっきまでいたレッドバスターが立っていたが、それは透けるように消えていった。
「さっきの斬撃は別の能力として……今のは、君の指輪の力?」
「……だったら何だ。それより、有名な芸術家少女が指輪持ちって方が驚きだがな」
「ああ、そう。まあいいや。今は戦う気ないし……君は迷ってるみたいだし。じゃあね、凄腕プロデューサーさん。君も君で、あのお姉さんたちみたく不思議な色をしてるし……またいつか。」
それ以上踏み込まず、そう言い残したアルテは歩き出す。そのままその場を去っていった。
「……」
『迷っている』。
その言葉に、男は大きく息を吐く。
自覚はあった。この特別な『守護者の指輪』の力を、本格的に使う覚悟がまだ、定まっていないことに。
変身せずとも戦える。だが、いずれは今持つ力を頻繁に使うべきだというのも分かる。
それでも。
苛烈になっていく戦いに、大切な人たちと並んで立つ覚悟。それが彼には、まだ足りていなかった。
*****
数日後。冬木市、アニメショップ・マルチバース。
「おかいあげ、ありがとうございましたー」
気だるげで、どこか投げやりにも聞こえる
「んー……たまに食べるカップ麺って……どうしてこうも美味しいのかしら……
身体の芯から温まるわ……」
「お湯を入れて、待って三分。それだけで美味しいラーメンが完成するんだもんねぇ……
本当、よく考えられてるよ」
そんな平和な空気を、やや低めの声が切り裂いた。
「急激に呑気になるね、お前ら」
「あ、店長」
ゆっくりと近づいてきたのは、O.R.店長。やけに上機嫌そうな表情で、二人の向かいに腰を下ろす。
ちょうどカップ麺を食べ終えたタイミングだったこともあり、蓮子とメリーは、その珍しい表情に首を傾げた。
「……店長、なんだか随分ご機嫌ですね。何かあったんですか?」
「フッフッフ……よくぞ聞いてくれた。二人が来てくれてから、売り上げがじわじわ上がってきていてね。色々あったが、それでもキビキビ働いてくれているし……それで、たまには何だが。」
そう言いながら、紙切れを数枚。チケットらしきものをテーブルに並べた。
何だろうと覗き込んだ二人は、すぐに目を見開く。
「これ……アイドルイベントのチケット?」
「『346プロ』。あのシンデレラアイドル達のミニライブチケットだ。知り合いから貰ったんだが、どうにも予定が合わなくてね」
「おお、ありがとうございます!……あれ?」
喜びながら数えてみると、チケットは一枚や二枚ではない。
ざっと見て、五枚ほどある。
不思議そうにする二人に、O.R.は肩をすくめた。
「バイト仲間や常連も誘ったらどうだ、って言われてな」
「なるほど……!」
納得した蓮子とメリーは、ありがたくチケットを受け取る。二人とも、隠しきれないほど嬉しそうだった。
「まあ、当日は楽しんでくるといい。良き
そう言って微笑んだO.R.の表情が、妙に意味深だった。この時の二人は、それに気づいていなかった。
=登場人物・用語補足=
『ワレルヤの民』
出典:ドンキーコング バナンザ
地下世界に住んでいるという、鉱石の体を持つ謎生物。
砕けても瞬時に再生する。全身を粉々にされても平然と復活している。適当な瓦礫を投げつけるとくっついて、体の一部にするまである。
=クロスタルリングカセット=
『特命戦隊ゴーバスターズ』
イラスト:桜田ヒロム→レッドバスター
固定絵:モーフィンブレス
指輪能力:超加速
所有者:???
『キラキラ☆プリキュアアラモード』
イラスト:キュアデコルとキラキラル→キュアホイップ
固定絵:スイーツとスイーツパクト
所有者:アルテ・クリープ
『仮面ライダーカブト』
イラスト:カブト(マスクドフォーム)→カブト(ライダーフォーム)
固定絵:カブトゼクター
獲得者:???
=
『ゼクター
使用指輪:仮面ライダーカブト
憑り付いた人物:悪質なストーカー男
侵蝕スキル:ハイスピードなビートルスキル