ウルトラワールド:Scramble Engage   作:おろさん

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奏海「美城プロダクション、アイドル課プロデューサーの茅森奏海だ。妙な異変ばかり起きるこの世界で、今まで守護者への変身を躊躇ってたが……まあ、文香達の覚悟がとっくに決まってるんだし、年上がいつまでも立ち止まるわけにはいかないよな。


大切な人達と共に戦う。ようやくその決心がついたわけだが……鈴夜以外の守護者の子達も、またかなり謎の多そうなタイプばっかりだ。そう言えば俺の私服を見るや否や頭抱えてたけど、何かあったんか?


……それはそれとして、前に会った指輪の戦士……『アルテ・クリープ』。あの様子だと、何か企んでるっぽいんだよなぁ。一体何をするつもりなんだか……」





第7話:求める芸術(アルテ)、彩るインスピレーション
求める芸術(アルテ)、彩るインスピレーション 01


 

 

 

「……ようやく片が付いたか」

 

 クレイジークロック本部。

 ドクター・エビテンは、わずかに肩を落としながら帰還していた。表情こそ平静を装っているが、疲労の色は隠しきれていない。

 

 原因は単純だ。

 彼はつい先ほどまで、『提携企業の整理』を行っていた――つまり、不要と判断した企業をいくつも切り捨ててきたのである。

 

 もともと、クレイジークロックと手を組みたがる組織は多い。

 だが、その大半は過剰な野心や歪んだ利己心を抱え、人間性に致命的な欠陥を持つ連中ばかりだった。

 

 エビテンは机の上に積まれた資料の束を乱暴に放り投げ、深く息をつく。

 

「……予想通りとはいえ、我欲優先の連中ばかりだな。指輪の件にしろ、この前の346の件にしろ……情報自体は集まったが、人間性が欠けすぎている」

 

「『最大の敵は無能な味方』とはよく言ったものですねぇ」

 

 皮肉混じりの声とともに、背後から気配が現れた。

 

「こういう仕事をしていると、極端な例ばかりが目につく。なかなか悩ましい話です」

 

「……ダイヤか」

 

 振り返ると、そこには瑠璃川ダイヤが立っていた。

 彼もまた独自に根回しをしていたらしく、その表情には思うように事が運ばないことへの苛立ちが滲んでいる。

 

(こういう時に限って、意見が一致するのは何なんだろうな……)

 

 エビテンはそんなことを一瞬考えたが、すぐに思考を切り替えた。

 

「それで、そっちの守備はどうだ?そろそろ『アイツら』も前線に出す頃合いじゃないのか」

 

「んー……そこは、もう少し時間が必要ですね」

 

 ダイヤは肩をすくめる。

 

「確かに、あの狂った集団を使い続けるのも骨が折れますが……人の心情を動かすのも、デモンストレーションを成立させるのも、そう簡単な話ではありません」

 

 そして、ふっと話題を切り替える。

 

「……それで、あなたの方はどうなんです?妹さんのために作っている『アレ』。完成の目処は立ちそうですか?」

 

「……あと一息、といったところだ」

 

 エビテンは短く答えた。

 

「茅森奏海……あの男が、ようやく守護者への変身を果たしてくれたおかげでな。データ収集のペースも一気に上がった。次に守護者のデータが揃えば……ようやくだろう」

 

 その言葉を聞いて、ダイヤは小さく笑みを浮かべる。

 

「それなら、どうせです。私も少し手伝ってあげましょう」

 

「……当てはあるのか?」

 

「もちろん」

 

 ダイヤは即答し、続ける。

 

「この前のガッチャードの指輪の戦士、まだ取り逃がしたままでしょう?彼女について調べてみたら、中々面白い情報を得まして。」

 

 そう言って、彼は資料の束をエビテンに差し出した。

 

「これを参考に、プランを組んでみてください。うまくやれば……想像以上の成果が得られるはずです。

 

……それでは、私はこれで。どうやら、そろそろ『あの人達』も動き出すようなので。少々、急いだ方がよろしいかと」

 

 それだけ告げて、ダイヤは踵を返した。

 

 彼の姿が消えた後、エビテンは資料に目を通し――思わず眉をひそめる。

 

(これ以上、事態が動けば……()()()にも影響が出る)

 

 ダイヤの言う『あの人達』が誰を指すのかは、すぐに分かった。

 だからこそ、悠長に構えている余裕はない。

 

(はっきり言って……)

 

 ――あの人。

 

 いや。

 

(……あの女のやり方は……)

 

 

―――――

 

「努力……頑張り……執念……」

 

 黒い影が、愉悦を含んだ声で囁く。

 

「どうして人間は、こうも諦めが悪いのでしょう……それも、実に様々な形で……ああ……可哀想に……」

 

「な、何なんだよお前ッ!? いきなり襲いかかってきやがって……!」

 

 夜遅く。

 尻もちをついた男は、後ずさりしながら黒い影から逃れようとしていた。

 

 一体、何が起きているというのか。

 良い感じのプラモデルを買い漁っていただけのはずが、突然銃を突きつけられ、気がつけば人通りのない路地へと追い詰められていた。

 

 混乱する男を見下ろすのは、黒い修道服のような衣装を纏った女性。

 その目は、まるで世界そのものを嘲笑うかのように冷え切っている。

 

「哀れな子羊に……我が、最初の救済を……」

 

 女は銃を構えながら、もう片方の手で指輪――クロスタルリングを取り出した。

 

 

『マオ機とクルツ機のM9 ガーンズバック』→『相良宗助』

『ARX-7 アーバレスト』

 

 

 同時にそれをまた、男の方へ向ける。

 

 銃口からは黒い光が。

 指輪からは、異質な煙が噴き出した。

 

「では……良き日々を」

 

「あ……う、うわああああああああああああっ!!?」

 

 銃声が夜に響き渡り、男は光と煙に包まれていく。

 

 そして――

 

【『繝輔Ν繝。繧ソ繝ォ繝サ繝代ル繝?け(フルメタル・パニック)』!!!】

 

 

*****

 

 ――ある日の昼下がり。

 √BACK-DOORS。

 

『……ようやく、すべての守護者が揃ったそうだな』

 

 遠坂凛は、エルメロイII世との通話に応じていた。

 ルヴィアと桜も、隣でその会話に耳を傾けている。

 

 茅森奏海との合流により、守護者が出揃ったこと。

 それをどこから知ったのか、電話口のロード・エルメロイII世は、いつも通り不機嫌そうな声だった。

 

「美城プロダクション……あそこのアイドル達が持つ妙な力も含めれば、戦力としては相当なものです。」

 

『……本来であれば、一般人を安易に巻き込むべきではない。だが、クロスタルリングを巡る一連の異変が絡んでいる以上、そうも言っていられん』

 

 続けて、彼は釘を刺す。

 

『とにかく、今は可能な限り穏便に事を運べ。この件が他の魔術師たちに広まれば……大師父の根回しにも限界が来る』

 

 その言葉に、凛たちは揃って表情を曇らせた。

 

 魔術師という存在は、総じて『神秘』に固執する。

 その価値観ゆえ、人間らしさを欠いた者も少なくない。

 

 そんな連中がクロスタルリングのような超常の力に触れれば、碌な結果にならない――それが、エルメロイII世の一貫した見解だった。

 

 過去には、侵蝕世怪人(不完全)を巡って大きな騒動も起きている。

 その経験から、ロード・エルメロイII世や大師父『キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ』は、魔術師が特定の超常要素に干渉することを厳しく制限しているのだ。

 

『こちらでも調査は続ける。お前達は引き続き、指輪の回収を頼む』

 

 一拍置いて、彼は付け加えた。

 

『……この問題、魔術協会だけで解決できるとは思えん。守護者のように、外部からの協力者を増やすことも考えておけ』

 

 そう言って、電話を切ろうとした――が、その直前。

 

『……ところで、さっきから妙に騒がしいようだが。何が起きている?』

 

 呆れたような声だった。

 きっと今頃、額に手を当ててため息をついているのだろう。

 

 凛たちは顔を見合わせる。

 深刻な事態ではない。だが、どう説明すればいいのか迷った末――

 

「えーっと……」

 

 代表して、凛が口を開いた。

 

「……『ポケモンバトル』……らしいです」

 

『……は?』

 

 

 

***

 

「今です、メタグロスさん!――『コメットパンチ』!」

 

「メタァッ!!」

 

 ありすの号令と同時に、鋼の巨体が前に踏み込む。

 鈍く光る拳が唸りを上げ、一直線に叩き込まれた。

 

「ゴルーグさん、避けてください……!」

 

「ゴルウゥゥゥゥグ!!!」

 

 文香の声に応え、ゴルーグは重厚な体躯に似合わぬ機敏さで跳躍。

 拳は空を切り、地面を砕く衝撃音だけが練習場に響いた。

 

 ――√BACK-DOORSに併設された練習場。

 そこに立つのは、橘ありすと鷺沢文香の二人だった。

 

 ありすの前にいるのは、四本の脚を持つ金属の生物――てつあしポケモン『メタグロス』。

 一方、文香の隣には、古びた巨像のような姿をしたゴーレムポケモン『ゴルーグ』が陣取っている。

 

 トレーナーが不思議な球体――モンスターボールからポケモンを繰り出し、指示を与えて戦わせる競技。

 それが『ポケモンバトル』だ。

 

 現在は、ありすと文香がそれぞれのパートナーを指揮し、真剣勝負を繰り広げていた。

 

「上から……『シャドーパンチ』です!」

 

 ゴルーグの腕が闇を纏い、上空から振り下ろされる。

 だが、メタグロスはすかさず体勢を立て直し――

 

「『しねんのずつき』!!」

 

 念動力を帯びた頭突きが、迫る拳と激突する。

 衝撃がぶつかり合い、両者は弾かれるように後退した。

 

 息つく暇もなく、次の一手が放たれる。

 互角の攻防が、途切れることなく続いていく。

 

「でしたら……『ドレインパンチ』!!!」

 

「ゴオォォォォ!!」

 

 ゴルーグの拳が、吸い込むような力を帯びて突き出される。

 

「『ストーンエッジ』で、防いでください!!」

 

「メタァァ!!」

 

 鋭利な岩が瞬時に地面から突き出し、壁となって攻撃を受け止めた。

 岩が砕け散り、粉塵が舞う中――二体のポケモンは、なおも闘志を失っていない。

 

 練習場には、鋼と石がぶつかり合う重厚な音が、絶え間なく響き渡っていた。

 

 

 

「どうだ? なかなか面白いだろ?」

 

「ギルル」

 

 練習場を囲うフェンスのそばで、茅森奏海は胸を張った。隣には彼のポケモン――剣と盾の姿をした『ギルガルド』が浮かび、低く鳴き声を上げている。

 一同は現在進行形で行われているポケモンバトルを観戦しており、奏海は得意げな表情のまま、凛たち三人に声をかけた。

 

「……まあ、まったく興味がない、とは言い切れませんわね」

 

 最初に答えたのはルヴィアだった。小さくため息をつきつつも、その視線はしっかりとバトルに向けられている。

 

 異世界に存在する生物――『ポケモン』。

 なぜアイドルたちがそんな存在を従えているのか、謎は尽きない。だが、実際に目の前で見せつけられると、その頼もしさは否定しようがなかった。

 

 奏海とギルガルドの息の合った連携を見れば、なおさらだ。

 

「それにしても……美城プロダクションというのは、本当に不思議な場所なのですね」

 

 桜は感心したように呟きながら、バトルの行方を追っている。

 

「変身ヒロインのような力を持つ方がいたり、サーヴァントと契約したり、果ては異世界の生き物まで仲間にしてしまうなんて……。ポケモンバトルというのも、想像以上に奥が深そうです」

 

「だろ?……つっても、素直に喜べるのかは微妙なんだが」

 

 奏海はうなずき、苦笑い気味の表情を浮かべた。

 

「ポケモンとのコミュニケーションの一つにして、金字塔とも言える文化だ。面白くないわけがないさ」

 

「……その『コミュニケーション』の一環として、ギルガルドを本当の武器みたいに振り回すのも含まれているの?」

 

 凛がぼそりと呟く。

 

 

「いやいやいや!?それやってるのPさんだけですからね!?」

 

 その瞬間、横から勢いよくツッコミが飛んできた。

 振り向くと、そこには小柄な体格の少女(?)――346プロダクション所属アイドル、安部菜々の姿があった。どうやら彼女も、間近でポケモンバトルを観戦していたらしい。

 

「……私も、時々セグレイブと一緒にやったことありますよ?」

 

「アーニャちゃんのは、振り回すのとは全然違う……よ?」

 

 さらにその隣には、日露ハーフの白髪少女『アナスタシアと』、片目を前髪で隠した霊感のある少女『白坂小梅』の姿もあった。

 二人とも346プロダクション所属のアイドルであり、他の面々と同様にポケモンバトルを観戦している。

 

 そんな他愛ないやり取りを交わしながら、しばらくバトルを眺めていたが――ふと、奏海が思い出したように口を開いた。

 

「そういや、あのイリヤと美遊って子はどうしたんだ? 色々と気になる感じだったから、ちょっと話をしてみたかったんだが……」

 

「プロデューサー、これ以上スカウトを繰り返すと、会長に怒られるって、この前言ってませんでしたか?」

 

 アナスタシアが、やんわりと釘を刺す。

 

「それも『殺される』っていう比喩表現で……」

 

 すかさず、安部菜々が補足するように言った。

 

「違う違う、そっちじゃない!」

 

 奏海は慌てて首を振る。

 

「……じゃなくて、なんて言うか……変なオーラを感じるっていうか、こう……引っかかる感じがあったんだよ」

 

「あ……それ、ちょっとわかるかも」

 

 小さく頷きながら、小梅が控えめに同意する。

 

 奏海は一度咳払いをし、改めて言葉を選ぶように続けた。

 イリヤと美遊のことが、どうにも気にかかっているらしい。

 

「オーラ?……正直、よく分からないけど」

 

 凛は肩をすくめる。

 

「あの子たちは一応、普通の子でしょ?守護者だからって、佐鳥羽鈴夜や貴方みたいに誰もが特別ってわけじゃないじゃない」

 

 凛の言葉に、その場はいったん落ち着いた空気を取り戻す。

 ……だが、ルヴィアと桜は、奏海の言葉を聞いて、どこか引っかかるものを覚えていた。

 

(そういえば……美遊と最初に出会った時は……)

 

*****

 

 

 その頃、アインツベルン邸。

 

 この日は土曜授業のため、イリヤは家にいなかった。

 静まり返った屋敷のリビングで、セラは一人、掃除に取りかかっていた――が。

 

「あら、大変!」

 

 あるものを見つけた途端、その手が止まり、思わず声を漏らしたのだ。

 

「あれ、セラさん?どうかしたんですか?」

 

 その声を聞きつけ、リビングに顔を出したのは蓮子だった。

 少し遅れて、メリーもその後ろから姿を現す。

 

 セラは手に持っていたもの――ナップザックを掲げながら、落ち着いた口調で説明した。

 

「どうやらイリヤさん、今日の体育で使う体操着を忘れてしまったみたいなんです」

 

「あら、それは本当に大変じゃないですか。今から届けて、間に合いますか?」

 

 メリーがそう言うと、セラは困ったように眉を寄せた。

 

「正直、少し厳しいかと……。それに私、そろそろタイムセールに合わせて食材の買い出しにも行かないといけなくて……」

 

 そう言ってため息をついた、その時。

 

「あ、じゃあ私たちが届けましょうか?」

 

 あっさりと、蓮子が言った。

 

「え……?い、いいんですか?それはありがたいですけど……」

 

「大丈夫ですよ。今日はバイトも休みですし、それに――」

 

 蓮子はそう言って、財布から一枚のカードを取り出した。

 そこに写っていたのは、自分の顔写真と『二輪免許』の文字。

 

「……運転免許?いつの間に取られたんですか」

 

「バイトのない日に教習所に通ってて。この前、取ったばかりなんです。バイクなら、時間的にも間に合うと思いますよ」

 

 自信ありげにそう言う蓮子に、セラは一瞬考え込み――やがて小さく頷いた。

 

***

 

「それじゃあ行くよ、メリー!準備はいい?」

 

「ええ、もちろんよ。それでは――行ってきます!」

 

 こうして、セラの了承を得た二人は、穂群原学園へ向かうことになった。

 

 蓮子とメリーが跨ったのは、少々――いや、かなり風変わりなバイク。

 メモリアライドシューターUのバイクモードである。

 

 エンジン音を響かせながら、二人乗りのバイクは勢いよく走り出していった。

 

「……それにしても、最近はあんな形のバイクもあるのですね……」

 

 門の前で手を振りながら、セラはぽつりと呟く。

 

 もちろん彼女は、守護者やメモリアライドシューターの事など知る由もない。

 ただ少し変わった最新型のバイク――そう認識しているだけだった。

 

 

*****

 

 

「フーンフンフフーン♪」

 

「結構早いわねぇ」

 

 住宅街を抜け、少しずつ人通りが減ってきた辺り。

 蓮子は上機嫌な様子でバイクを走らせていた。

 後ろに座るメリーも身体を揺らしながら、割とノリノリだ。

 

 そんな浮ついた気分のまま、二人は自然と最近の出来事を思い返していた。

 

 ここまでの間に、正体不明のクロステラノベルを二つも入手している。

 そして、それらに触れたことで――『宇佐見蓮子』と『マエリベリー・ハーン』としての記憶が、ほんの少しずつ戻り始めていた。

 

 とはいえ、最初に蘇った記憶ほど鮮明なものではない。

 分かったのは、自分たちが設立した『秘封倶楽部』が、どこかオカルトめいたサークル活動をしていた、ということくらいだった。

 

 他に思い出せたのは、せいぜい味噌ラーメンを作ったことがある、とか。

 車とバイクの免許を取っていた、という程度のものだ。

 

 しかし、それらが全く役に立たないかと言えば、そうでもない。

 実際、今こうしてバイクを運転できているのも、その記憶が混じっているからだ。

 

 ――それでも。

 

 クロステラノベルが一体何なのか、という核心部分は、未だに分かっていない。

 

『はたてフォトグラフィック』

『スーパーツクモガミシスターズ』

 

 どちらも『ヨイヤミイータールーミア』と同様、まるでゲームのタイトルのような名前をしている。

 

 そもそも、この“ノベル”という存在自体が何なのか。

 クロステライザーのことも含めて調べてみたが、確かな情報は一切見つからなかった。

 

 凛たちも詳しいことは知らず、鈴夜や奏海たちでさえ、

『昔、制作中止になったゲーム機とソフトがあったらしい』

という噂を聞いたことがある程度だった。

 

 気になることは多い。

 だが、無理に今すぐ答えを探さなくてもいいだろう。

 

 どうせ動いていれば、いずれ何かが分かる。

 そう考えながら、蓮子はバイクを走らせ続けていた。

 

「ヴヴ……アアアア……ヴヴヴヴ……」

 

 どこかで、不気味なうめき声と、人影の気配を感じた気がした。

 しかし、その時の二人には、それをはっきりと聞き取る余裕はなかった。

 

 

*****

 

 

 一方その頃、穂群原学園では美術の授業が行われていた。

 イリヤたちは、人物画を描く課題に取り組んでいる最中である。

 

 担任の藤村大河が、教室内を巡回していた。

 

「ん? す、雀花ちゃん? なーにを描いてるのかなぁ……?」

 

「自由に描いていいってことでしたので、性別の壁を解体して、耽美系美少年の同性愛を描いてみました!

Σd(○∀○)」

 

「おおう……た、多様性、だね……?」

 

 そんなやり取りもありつつ、授業は進んでいく。

 中には、相変わらず癖の強い作品を描いている生徒もいた。

 

「ねぇ、イリヤちゃん……」

 

 その中で、イリヤは右隣の席に座るクラスメイト――『桂美々』に声をかけられた。

 

「あれ、美々ちゃん? 急にどうしたの……?」

 

「えっとね、みんな前から聞こうと思ってたんだけど……

 イリヤちゃんって最近、美遊ちゃんと仲良さそうじゃない?」

 

 そう言われて、

 

「え? そうかな……」

 

 と答えつつ、イリヤは後ろの席を振り返った。

 美遊も同じく人物画を描いている最中だが、相変わらず(小学生が習うものとは思えない)キュビスムを使っている。

 その様子に、大河はもう慣れたように呆れていた。

 

「うん……なんだかね、美遊ちゃん、イリヤちゃんに、少しずつ心を開いてるように見えるの」

 

「……そう言われると、そうかも……」

 

「……それと、もう一つ聞いてもいい?」

 

「な、なに……?」

 

「最近、イリヤちゃんの家に、不思議な二人のお姉さんが住んでるって話。あれって本当?」

 

「えっ!?……あー……」

 

 どこから聞いたのか。

 なぜか少しもじもじした様子で尋ねてくる美々に、イリヤは驚きつつも答えた。

 

「……うん。だいたい本当かな。

 向こうに、ちょっと複雑な事情があるっていうか……。

 でも、怪しい人たちじゃないよ。むしろ、結構いい人たち」

 

「そうなんだ……」

 

 美々は、興味深そうに頷いた。

 

 そしてイリヤは、美々の口ぶりからして、きっと後で雀花たちにも同じことを聞かれるのだろうな、と察する。

 そのまま、自然と蓮子とメリーのことを思い返していた。

 

 突然、自分の家の前に倒れていた二人。

 目覚めた時には記憶喪失で――奇妙な戦いに巻き込まれる中、少しずつ過去を取り戻していった。

 

『宇佐見蓮子』と『マエリベリー・ハーン』。

 

『秘封倶楽部』という、不思議なサークル活動をしていたらしい大学生。

 なぜ二人は自分の家の前に倒れていたのか。

 そして、二人に一体、何が起きたのか。

 

「……イリヤちゃん? どうしたの?」

 

「……えっ? あっ! なんでもない、なんでもない!」

 

 気づけば、絵を描く手が止まっていた。

 美々の声で我に返り、イリヤは苦笑する。

 

 二人のことは気になる。

 けれど、今ここで考えても答えは出ない。

 

(とりあえず、今は授業に集中しよう)

 

 そう思って、再び筆を動かした。

 

「……」

 

 一方、描き終えた美遊は、ふと窓の外を見ていた。

 

「(あれって……宇佐見さんとハーンさん……?

 なんで、ここに……)」

 

 視界に映ったのは、校門前にバイクで到着した蓮子とメリーの姿。

 どうやら二人は、ちょうど学校に着いたところのようだった。

 

 何故ここにいるのかと気になり、目で2人を追いかけていたところ、

 

 

「……まさか、こんな都合のいい事が起きるなんてね。」

 

「っ……!?」

 

 突然、イリヤたちとは全く別の声が響いた。

 反対側を振り返ってみても、そこには誰の姿もない。

 

「今のは……?」

 

 教室は、何事もなかったかのように静まり返っていた。

 

 

 

 

 








―――――

*注釈:本作品は、自著の文章をAI(ChatGPT等)で推敲・校正して投稿しています。ストーリーや台詞はすべて作者が作成したものですが、読みやすさ向上のために文章の整理を行っています。
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