ウルトラワールド:Scramble Engage 作:おろさん
一方その頃、√BACK-DOORSにて。
「ふう……文香さん、特訓につきあってもらってありがとうございました」
「メタ!」
「いえ、こちらこそ……改めて、色々なものが掴めた気がします」
「ゴル……!」
ありすと文香が、ちょうどポケモンバトルを終えたところだった。
互いに全力を出し切ったのだろう。二人はそれぞれのパートナーポケモンと共に、満足そうな表情で練習場を後にする。
「お疲れさん。いい勝負だったな」
観戦していた奏海たちも歩み寄り、奏海は親指を立ててみせた。
「2人とも、凄かった……」
「ポケモンバトルって、やっぱり奥が深いですね!」
白熱した戦いを目の当たりにし、小梅とアナスタシアも興奮が冷めやらない様子だった。
「……あ、Pさん。2人が来ましたよ」
菜々がふと気づいて、背後を指さす。
「たっだいまー!」
「マスター、皆さん。ただいま戻りました」
マタラ・ド・ラ・ゲートの扉から姿を現したのは二人組だった。
一人はドレスとうさ耳のような装飾を身につけた小柄な少女。もう一人は、襟と丈の長いトレンチコートを着た白髪の青年である。
「この2人は……見たところ、サーヴァントのようですわね」
ルヴィアたちがそう判断した直後、青年が一歩前に出る。
「……貴方達が、奏海さんの言っていた魔術師たちですか。初めまして。僕はアサシン『シャルル=アンリ・サンソン』です。生前は処刑人でしたが、今は346で事務の仕事に就いています」
「ボクは右に同じく『アストルフォ』! 普段ならライダーだけど、なんと今回まさかのセイバーでの召喚! よろしくー!」
二人は明るく、そして自然に名乗った。
「フランス革命時、マリー・アントワネットの処刑を担当したシャルル=アンリ・サンソン……そして、イングランド王子であり、シャルルマーニュ十二勇士の一人アストルフォ……ですか。あれ、アストルフォは王子だから男性のはずでは……」
「大方、鈴夜や茅森さんと同じ女装ですわよ」
「ああ、そういう事ですか」
桜は納得したように頷く。その様子を見て、奏海が補足。
「ああ、サンソンは小梅と契約してて、アストルフォのマスターは菜々さんだ」
「な、なんでナナの事だけさん付けなんですか!? ……ま、まあ、色々あってそんな感じです、はい……」
場が和んだところで、奏海は本題に戻った。
「……まあそんなわけなんだが、頼んでた事はどうだ?」
「一応、すぐに調べてもらっています。元々有名な子のようですし、特定は早いはずです。少ししたらこちらに向かうと――」
サンソンがそう答えかけた、その時。
「それなら、もう済んだよ」
いつの間にか背後に立っていたのは、鈴夜と漆黒の闇だった。
突然の登場に奏海以外は驚くが、当の奏海は落ち着いたまま口を開く。
「それなら話が早い。約束してたメダロットパーツはすぐ渡すから、まず資料を見せてもらえるか?」
「ぬふふ……そっちも話が早くて助かるわ。特別に、すぐ見せてあげようじゃない」
漆黒の闇はそう言うと、手際よくコンピューターを操作し始めた。
「Pさん、何を頼んだんですか?」
ありすが不思議そうに尋ねる。
「ああ、この前、またパラレルファイターに出会ってな。そいつの挙動が、どうにも気になってさ……」
「それで闇さんに頼んで、調べてもらった……という事ですか」
「そういう事さ。んで……」
文香たちが察する中、
「私の
「まあ、なかなか興味深い内容だよ。ほら、早く見せないと、闇センパイ」
「あんたが急かさなくていいのよ……!」
そんなやり取りの末、漆黒の闇は入手した資料を一同に提示した。
「あれ、この子……」
学生証、履歴書、賞状、顔写真。それらを見て、凛は見覚えがあることに気づく。
「知ってるんですか? 姉さん」
「ええ。アンタ達と美遊が割り込んできた時に、その前に蓮子たちが戦ったパラレルファイターの子よ。『アルテ・クリープ』っていう、有名な芸術家の」
「道理で守護者の事を知ってたわけだな……ん?」
さらに資料を読み進め、ある点に気づく。
「なあ……こいつが通ってるっていう『穂群原学園』って、確か……」
*****
場所は戻り、イリヤたち。チャイムが鳴り、10分休憩の後は体育の授業だ。男子が空き教室へ移動したのを確認し、着替えの準備を始めたその時。
「あ、あれっ!?」
イリヤは体操着を探してナップザックに手を伸ばすが、肝心のそれが見当たらない。
そこでようやく、家に忘れてきた事を思い出した。
「あ、いたわ。イリヤちゃん!」
どうしようかと焦ったその瞬間、聞き覚えのある声がした。
扉がゆっくり開き、姿を現したのは蓮子とメリーだった。事情を説明し、事務員に案内されてここまで来たようだ。
「えっ、蓮子とメリー!? な、なんでここに……って、ああっ!!」
困惑しつつも、蓮子が持っているナップザックを見て事情を理解する。
「はいこれ、セラさんから。何とか間に合って良かったわ……」
「あ、ありがとう……」
イリヤは少し照れながら、ナップザックを受け取った。
突然現れた見知らぬ二人に、クラスはざわつき始める。
「だ、誰あのお姉さんたち!?」
「もしかして、噂で聞いてたイリヤの家の居候2人組……!」
「あ、あの2人がイリヤちゃんが言ってた……(by美々」
当然の反応だろう。
「フッ……プールが俺を呼んでるぜ……」
一方、全く空気を読まない一名もいた。
「ねえ、あの子、なんで一人だけスク水着てるの」
「いつの間に着替えたの……」
「た、龍子ちゃんは元々ああというか……」
「ギリギリだったから押しかけちゃったけど、後は早く着替えといて。それじゃあ、私たちはこれで……」
ともあれ、忘れ物を届ける目的は果たした。そう言って帰ろうとした、その時。
「せっかく来たんだから、もうちょっと楽しんだら?」
「いやいや、小学校でそんなノリ聞かな――ちょっと待って」
その声に、蓮子とメリーは振り向く。
「え、ええっ……!?」
イリヤたちの視界に映ったのは、一人の少女。赤みのある瞳に、緑を基調とした髪色。やや胸のある体型。
そして絵具やペンキで汚れた、ぶかぶかの白いアトリエコートの下に着ているのは、穂群原学園初等部の制服。
「……久しぶりだねぇ」
ニヤニヤと笑い、右人差し指にはめた指輪を見せるその少女。彼女は以前戦った指輪の戦士、『仮面ライダーガッチャード』。『アルテ・クリープ』だった。
「あ……アルテ・クリープ……なんでここに……!?」
警戒する蓮子とメリーを前に、アルテは楽しそうに続ける。
「別にちゃんづけでもいいけどさ。それにしても……まさかお姉さんたちがこの学校の子の家に居候してるとはね。ぼくも運がいい」
「……いつかまた出くわす気はしてたけど、なんでこの学校に……?」
「イリヤ、あの子って……?」
「美遊が来る直前に出会ったパラレルファイターで……」
イリヤは美遊に、小声で説明を始める。
その間にも、教室は一気に騒然となった。
「お、何だ何だ!? 因縁の対決ってやつか!?」
真っ先に声を上げたのは龍子だった。状況を面白がるように、身を乗り出してアルテとイリヤたちを交互に見る。
「っつーか、急に出てきたあの子……まさか、有名な画家の……?」
雀花らクラスメイトの何人かがは驚きを隠せず、周囲のクラスメイトと小声でざわめき合う。
「……説明する前に、えい」
そんな空気を意に介さず、アルテは軽い調子でそう言った。
そして、ポケットから月のようなキャラクターが描かれたカードを取り出す。
【ネミネムーン!】
カードから飛び出した月のキャラクターは、ふわりと宙を舞い、教室を抜けて校内へと広がっていく。
「あ、あれ……何……何か、眠く……」
最初に異変に気づいた生徒が、戸惑った声を漏らす。
「ええ!? み、みんな!?」
次の瞬間、光を浴びた生徒たちは次々と意識を失い、その場に崩れ落ちていった。
教室内で起きているのは、アルテを除けば蓮子とメリー、そしてイリヤと美遊だけだった。
「それじゃあ……部外者も眠ったし。最初の質問は、これだね」
そう言って、アルテは制服のポケットから一枚のカードを取り出した。それは、学生証だった。
「これって……この学校の学生証……!?しかも隣のクラス!?」
イリヤは思わず声を上げる。学年もクラスも、イリヤたちとほとんど変わらない。
「元から、この学園の生徒だったんだよ。仕事でいなかったり、正体を隠してただけ。だから、今になるまで誰も知らなかった……ただそれだけ」
そう言いながら、彼女は今度は別のものを取り出す。クロスタルリングだ。
『彩井高校の風見犬』→『山口如月』
『カンバスに描かれた素猫』
「ちょっ……何をするつもりなの!?」
メリーが一歩前に出て、鋭く問いかける。
「決着をつけたいだけだよ」
アルテは楽しげに笑い、指輪を見つめた。
「ぼくにも願いがある。だからそのために――不思議な色をした君たちを倒す。二人で一人の君ら……蓮子とメリー。それに、イリヤと美遊だとか。細かい事は置いておいて……少しくらいカオスになっても、文句ないでしょ?」
アルテはクロステライザーを構え――
【『GA 芸術科』!!!】
指輪をはめ、トリガーを引いた瞬間。
校舎全体が、何かカラフルな物体に包み込まれた。
*****
「な、何事……って……!?」
最初に声を上げたのは蓮子だった。目を開いた瞬間、視界に飛び込んできたのは、学園の教室ではない。
巨大な絵画、彫刻、抽象的なオブジェの数々。
それらが無秩序に並び、まるでコンクリートの森のように空間を埋め尽くしている。美術品で構成された、異様な世界。
気づけば、四人はそこにいた。
「……転送、された?」
メリーが周囲を見回し、小さく息を呑む。
そして、その空間の中心。何事もなかったかのように立っているのが、アルテだった。
「へぇ……こういう感じになるんだ」
本人も少し意外そうに、アルテは周囲を見渡している。
「……決着をつけるってことよね?」
蓮子は一歩前に出て、険しい表情で問いかけた。
「んまあ、そうだね。」
アルテは軽く肩を揺らし、気楽な口調で続ける。
「こういうのは、ちゃちゃっと済ませるべきじゃん?あんまり先延ばしにすると、横取りされるもんだし」
そう言いながら、右人差し指にはめていた『仮面ライダーガッチャード』のクロスタルリングを外した。
『ケミー(レスラーG、スケボース、ライデンジ)』→『ガッチャード』
『ホッパー1とスチームライナー』
「
【CROSSTAL RING!!!】
クロステライザーに指輪をはめ込み、リズムに合わせてクラップ。
【ガッチャーンコ!】【スチームホッパー!】
【『ガッチャード』!!!】
光と装甲が重なり合い、アルテの姿は瞬く間に変化する。
こうして、パラレルファイター『仮面ライダーガッチャード』に変身した。
「……じゃあ勝負しようよ。お姉さん達さぁ」
仮面越しでも分かるほど、楽しげな笑みを浮かべて。
「え、ええと……じゃ、じゃあ――」
イリヤが戸惑いながらも変身しようとした、その時。
「待って」
蓮子とメリーが、同時に前へ出てイリヤと美遊を制した。
「今の言い方……本命は私達ってことでしょ?」
「……それなら、私達で決着をつける」
蓮子は右人差し指にはめた守護者の指輪を外す。
次の瞬間、蓮子とメリーの姿が重なり合い、ひとつに溶けた。
「
【CLAP YOUR HANDS!!!】
【UNCOVER THE SECRETS:GUARDIAN『メモリア』!!!】
クロステライザーに指輪をはめ、クラップ。
こうして守護者『メモリア』が姿を現す。
「フフ……その言葉を待ってた♪」
ガッチャード(アルテ)は、ガッチャートルネードを構え、間髪入れずに突進した。
「なら……!!」
メモリアはクロステライザーを振るい、その一撃を正面から受け止める。
剣と剣が激突し、甲高い金属音が空間に響いた。
「っ……!!」
反動で、互いに距離を取る。
「
ガッチャード(アルテ)は、背後にそびえる絵画に目を向け、カードを二枚取り出す。
【ワープテラ!】
【ブリザンモス!】
プテラノドンとマンモスの絵がカードへと吸い込まれ、投げ放たれた瞬間。ワープホールが展開し、メモリアを囲むように配置される。次いで、巨大な氷塊が次々と射出された。
「なら……!!」
【『メモリアライドシューターU』!!!】
ノベルを押し込み、バイク型の銃を顕現。放たれた二発のタイヤ型エネルギー弾が回転しながら氷塊を粉砕する。
「じゃあ次は……!!」
【『GA 芸術科』!!!】
空間を作っている指輪の力が、空間そのものを再構築する。ガッチャード(アルテ)の背後に無数の鉛筆が現れ、扉を描く。
開いた瞬間、デフォルメされた素猫の大群が溢れ出し、メモリアへと殺到した。
「(か、可愛い……!?いやそれより、数が多すぎる……!)」
『チェッカーフラッグ』→『ゴーオンレッド』
『炎神スピードル』
メモリアは即座にクロスタルリングを取り出す。
「
【CROSSTAL RING!!!】
【『ゴーオンジャー』!!!】
ゴーオンレッドへと再変身し、素猫の群れを高速でかわしていく。
「ロードサーベル!!」
跳躍し、大剣を振り下ろす。
【エクスガッチャリバー!】
「……ふっ!!!」
しかsガッチャード(アルテ)も剣を装備し、その一撃を受け止めた。
「更に……!!」
【カリュードスストラッシュ!】
カードと斧の絵を融合させ、エクスガッチャリバーにセット。
放たれた一撃が、ゴーオンレッド(メモリア)を大きく吹き飛ばす。
【カマンティス!】
【サーベライガー!】
【アッパレブシドー!】
【ヨアケルベロスストラッシュ!】
「……せいっ!」
追撃の斬撃が次々と放たれ、メモリアに直撃。空間が激しく爆ぜた。
「さて……おっ」
身構えていたガッチャード(アルテ)が、上空を見上げる。
そこには、ライドシューターUをバイク形態に変形させ、突撃してくるメモリアの姿。
「いいね、それ……!!!」
【メカニッカニ!】
即座にカードを展開。現れた巨大なカニバサミが、バイクを掴み突進を止める。
「フフ……お姉さんたち、やっぱり面白いね……!!」
「そっちこそっ!!!」
ガッチャード(アルテ)はガッチャージガンを、メモリアはライドシューターを構え、同時に発砲。
銃弾同士が空中で撃ち落とされ、相殺されていく。
「そうだよ……その感覚!!見たことのない色の中でも、きらきら輝いて、なのに、この世のものとは思えない不思議なカラーリング……!!!」
歓喜に満ちた声で、アルテは叫ぶ。
「もっと見せてよ……!そのきらめき……輝くインスピレーションを、編み出してみせてよ……!!!」
「……どうして、そこまで……?」
その様子を見守るイリヤ達は、戸惑いを隠せなかった。仮面越しでも分かる。アルテは今、心から楽しそうだった。
前の時、彼女自身が語っていた。有名な芸術家になってからの退屈。そして、指輪によって得た刺激。
だがそうだとしてもだ。なぜ、ここまでインスピレーションを求めるのかなぜ、そこまで蓮子とメリーに執着するのか。
アルテ・クリープの願いは何なのか。この時のイリヤには、まだ分からなかった。
「……っ、何か来る……!!!」
「……えっ!?」
美遊が、はっと顔を上げる。
「FAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
直後、空間に亀裂が走った。そこから現れたのは、無機質な兵隊の姿をした侵蝕世怪人『ソルジャー世怪』。
「ジキキキ!!!」
さらに、時計の絵を経由して、ウォークロックの軍勢も姿を現す。
「わ、
「分かってる……!!」
【DRAW THE RAINBOW:GUARDIAN『プリズマ』!!!】
【COMPASSION THE SILENCE:GUARDIAN『サファイア』!!!】
イリヤと美遊も、それぞれ守護者へと変身。メモリアとガッチャード(アルテ)の戦いを邪魔させまいと、ウォークロック達へと向かっていった。
*****
一方その頃。穂群原学園の正門付近。
「ちょっ……どうなってるの、コレ……」
最初に言葉を失ったのは凛だった。
学園に到着した凛たちの目の前には、妙な光景が広がっている。巨大な球場のドームにも似た、半透明の球体だ。
神秘的な色合いをした絵具のようなエネルギーが、校舎や校庭どころか学園全体を包み込んでいた。
「この感じ……ああ、指輪の力か……」
それを観察する鈴夜がそう呟く。
「ということは……アルテ・クリープとやらの仕業、という可能性が高いですわね?」
「そういうこと……になりますよね」
ルヴィアの言葉に桜も同意しつつ、困ったように結界を見上げる。
「でも、どうやって中に……」
「いや、よく見てみろ。」
そう言い出したのは、奏海だ。
彼が指さした方向には、蜘蛛の巣状の『ひび割れ』が走っていた。
「ひび割れ……?」
「何かが、無理矢理あの中に入り込んだ痕跡ね……」
「あれ壊せばいいってわけだけど、何かアテがあるの?」
「まあな。ちょっとやってみたいことがあるんだ。」
鈴夜がそう尋ねると、奏海はニヤリと笑い、クロスタルリングを一つ取り出す。
『コンドルとナス』→『ポポ』
『氷山』
【CROSSTAL RING!!!】
「こじ開けさせてもらう……!!!」
クロステライザーに指輪をはめ込み、力強くクラップ。
【FINISH CHARGE『アイスクライマー』!!!】
すると、アイスクライマーの『ポポ』の幻影が顕現する。
幻影は巨大な木づちを振り上げ、地面へと叩きつけた。
=クロスタルリングカセット=
『アイスクライマー』
イラスト:コンドルとナス→ポポ
固定絵:氷山
指輪能力:氷塊(氷山)の生成
所有者:奏海