ウルトラワールド:Scramble Engage 作:おろさん
蓮子「インスピレーションを求めて、私達を狙ってきたアルテ・クリープ。戦いの末、私達は彼女を倒した。
それでも、彼女は願いを叶えた。アルテちゃん……貴方の指輪は、しっかり預かるから。
私達も、私達の記憶を取り戻すために、これからも戦う。貴方の絵も、楽しみにしてるから。
……そんな中で、突然現れた新たな侵蝕世怪人と、それを吹っ飛ばした巨大なロボット。一体どう言う事……?」
集結クロスオーバー!果て無き守護者のスピリッツ! 01
「キ・サ・マアアアアアアアアアアアアアアア!!!ダレダアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
突如として現れた侵蝕世怪人『ロータス世怪』。
さらに突如としてそれを吹き飛ばした巨大ロボ『ダイボウケン』。
邪魔をされた怒りで、ロータス世怪は全身を震わせる。音を置き去りにする速度で、ダイボウケンへと突進した。
「……はっ!!」
「ギャッ……!?」
コックピット内で操縦桿を握る『ボウケンレッド』は、一瞬で判断する。
ツルハシ状の武装をスコップ形態へと変形。跳び上がってきたロータス世怪を、まるでハエ叩きのように横薙ぎに叩き落とした。
「グウウウウッ……ヤムヲエナイッ……」
地面に激突する衝撃音が、校庭を揺らす。まさに大ダメージ。
さすがのロータス世怪も、分が悪いと悟ったのか。すぐさま音速を超える速さで、その場から離脱した。
「に、逃げた……」
あまりに急展開すぎて、蓮子たちは呆然と立ち尽くす。
「って、アレ……!!」
メリーが空を指差す。
そこにいたのは、ダイボウケンの上に立つ『ボウケンレッド』の姿だった。
「あれが……話に聞く守護者、という事か……」
ボウケンレッドは静かに変身を解く。
その姿は、がっしりとした体格の白髪の男。どこか無骨で、しかし正義と人情に満ちた雰囲気を纏っている。
男は何かを確認するような視線で、蓮子たちを一瞥。
その後再びダイボウケンに乗り込むと、そのまま静かに姿を消していった。
「……な、何だったの……?……って、それより!」
蓮子はすぐに我に返り、ぐったりと眠るイリヤへと視線を向ける。
今は、彼女の方が最優先だ。
*****
「37.2度……風邪ではないようですが、熱がありますね。」
場所はアインツベルン邸。目を覚ましたイリヤに対し、セラが体温計を確認しつつそう呟く。
あの一件の後に蓮子やメリーたちが運んでくれたらしく、イリヤは丸一日近く眠り続けていた。
「……授業中に何があったのかは分かりませんが、とにかく今はゆっくり休んでください。この様子なら、少しすれば熱も下がるはずですので。」
「はーい……」
素直に返事はするものの、イリヤの内心はやや不満だ。
「(風邪じゃないのに……)」
とはいえ早退した以上、文句も言えない。
それに明日は祝日。まだ救いがある方だと、自分を納得させる。
「はぁ……」
セラが部屋を出ていき、静寂が戻る。イリヤはすぐにベッドに横になる。
だがぐっすり眠る、というわけにはいかなかった。
「ああああ暇ああああああああ!!何にもする事が無いって、意外とすっごいキツイィ!!スマホもリビングだから見放題も見れないしいいいいいい!!」
熱はすぐに引いた。元々風邪ではなかったので、体調自体はほぼ回復している。
だからこそ暇。
安静にしていろと言われた以上、勝手にリビングへ行くわけにもいかない。
√BACK-DOORSに行く道も何故か、今は鈴夜に制限されて入れない。
蓮子とメリーはバイト中。結果、まさに完全孤立。
「はぁ……退屈って、人をダメにするんだね……ん……?」
ぼやきながら視線をさまよわせた時、勉強机の上に見慣れない箱があることに気付く。
「これって……?」
箱を手に取り、開ける。中に入っていたのは、見覚えのある携帯端末のような装置……というか、『クロスタルプロテクター』だった。
「プロテクター……? どうしてここに……?」
その横には、封筒が置かれている。
開封し、手紙を読む。
『茅森奏海がエルメロイII世に頼んで、予備のクロスタルプロテクターを製造してもらったから、もしもの時に使いなさい。電話機能とかあるから、気になる人に電話でもしたら? 凛より』
「……電話機能……?」
イリヤは、改めてプロテクターを見つめる。
その言葉が、少しだけ胸に引っかかった。
「……誰に、だろ。」
ぽつりと呟きながら、イリヤはプロテクターを手に取った。
「……今頃、何してるかな――」
*****
「……たしかに、それはちょっとしんぱい。」
「ジュカ……」
その頃、アニメショップ・マルチバース。
昼休憩中の店内バックヤード。
蓮子とメリーがコンビニ弁当を広げているところへ、同じく休憩に入ったフランとジュカインがやって来た。
どこか浮かない表情の二人を見て、フランが首をかしげつつどうしたのかと問いかけたため、蓮子とメリーは、イリヤが寝込んでしまったことを簡単に説明。そして現在に至る。
話を聞き終えたジュカインが、短く唸る。
「ジュカ……」
蓮子は、箸を止めたまま思考を巡らせる。
「(……あの時、私達がアルテちゃんと戦ってた間、イリヤちゃん達の方はかなり危ない状況だった……)」
メリーも同じことを考えていた。
「(色々邪魔が入ったとはいえ……それに気づかなかったのは、まずかったかしらね……)」
二人は小さくため息をつく。
幸い、イリヤたちに命の危険はなかった。それは本当に安堵している。
しかし、自分達の知らないところで、何が起きていたのか。なぜイリヤはあそこまでぐったりしていたのか。
その部分が、どうしても引っかかる。
当事者である美遊は多くを語らない。
鈴夜も「少し気になることがある」とだけ言って、今日は電話にも出ない。
そのため、情報が足りないのだ。
「……まあ、あんまりきにしないほうがいいよ?」
思考の渦に沈みかけたところで、フランが口を開く。
そして、表情をあまり変えないまま、しかし目だけはじっと二人を睨む。
「とにかくおまえら、しっかりしろ。これいじょうきんむちゅうにそんなかおになるなら、こんどこそてんちょうにいいつけて、おきゅうりょうへらすよ?」
声色は軽い。だが内容はまったく軽くない。
「おまえらさ、さいきんびみょーにばいと、すっぽかしてるよね?あいんつべるんのほうからじじょうはきいてるし、あるていどはおおめにみるよ?でもそれはそれとして、ちょいちょいあいまにどっかいってるの、ばれてるの。」
「あっ……;」
「ハイッ……;」
二人は即座に背筋を伸ばした。
図星である。
「おまえら、このごろなにがあるのかはしらないけど。じじょうがどうであれ、ぜんかあるのに、そこまでおちこみっぱなしにされても、ね?わかれ。」
フランの言葉は、叱責というより釘刺しだった。
記憶喪失という、複雑な事情があることは知っている。それでも、仕事は仕事。
「……スミマセン;;」
「ジュカ……」
ジュカインも、やや呆れ顔で腕を組んでいる。
そうして昼休憩は終了。今日は比較的客足が少ないため、二人は店内清掃に回ることになった。
モップを動かしながら、蓮子がぽつりと呟く。
「……こういう事になりがちなのも、反省すべきよね……」
「その通りよねぇ……」
さっきのフランの視線を思い出し、苦笑いする。
実のところ、クロスタルリングだけでなく、合間合間にウォークロック達が暴れる事が何度かあり、対処する時はどうしても『偶然その場にいる』か、『途中で抜ける』かのどちらかになってしまう。
巻き込まれるとはいえ、結果としてはシフト穴あけ予備軍。店側、特に実務を回しているフランからすれば思いっきり迷惑でしかない。それに彼女は指輪の事は知らないだろうから尚更。故に、ああ言われても仕方がないのだ。
「……次は、もう少し上手く立ち回らないとね。」
「うん。せめて、連絡くらいはちゃんとしないと……」
戦いと日常。どちらも手放す気はないのだから、両立する覚悟くらいは持たなくてはならない。
そうして反省の念を抱きつつ黙々と床を磨いていると、店内のドアベルが鳴った。
「あっ、いらっしゃいませー、って……」
「よぉ」
聞き覚えのある声。振り向けば、そこに立っていたのは奏海だった。
「中々随分な店で働いてんだな、お前ら。」
「か、奏海さんじゃないですか。どうしてここに?」
東京の芸能事務所のプロデューサーが、地方のアニメショップに現れる。
それだけでも違和感だが、今の彼の装いは、仕事用のスーツ姿ではない。
私服のゴスロリワンピース。相変わらずの女装スタイルである。
「(プライベート……?でも、わざわざここに?)」
二人が首を傾げていると、
「んあ?……ああ、珍しいと思ってんのか。まあ、こいつらの頼みなんでね。」
奏海は親指で背後を指した。
「先日ぶり……ですね。」
前に出たのは文香。そしてその後ろには、ありす、菜々、小梅、アナスタシアの総勢五名。
「うおおお……文香ちゃんやありすちゃんだけじゃなく……み、346のアイドルが5人……!!」
346プロのファンである蓮子とメリーの目が一瞬で輝く。
「おーまーえーらー?」
低い声。裏口から、フランが無言の圧を放っていた。
「アッ、な、なんでもないです!!」
「……このお店……意外とブラックなのでは?(byありす」
「……いや、あの感じだとこの2人に非があるやつだ。大方異変解決のためにシフトに穴あけてたなこりゃ。(by奏海」
「ええ……本当にダメそうなやつじゃないですか……;(by菜々」
地味に引いてる来客側。そんな空気を断ち切るように、蓮子とメリーが営業スマイルで問いかける。
「え、ええと、何かお探しですか?」
そう五人に聞く。纏めると、それぞれ求める本は、限定画集、アニメの分析本やスイーツ誌、宇宙人の芸能特集や話題の漫画、発禁スプラッター、宇宙テーマの特撮本と、見事にバラバラだった。
「ま、そんなわけだ。この店、意外とジャンル幅広いしな。どうせなら店員に聞いた方が早い。」
奏海の言葉に、二人は顔を見合わせる。
「分かりました!」
そして即座に売り場へ散った。
「……。」
その背中を見送りながら、奏海の表情が変わる。
「……少し様子を見てみたが、妙だな……」
低く呟く。
アイドル達も、何かを感じ取っている様子で頷く。
「正直、何処か不思議な感じがします。厳密にはこの店というより……」
文香が視線を巡らせる。
「あの人、上司さんなのかな?見覚えのある感覚……」
小梅がそっとフランの方を見る。
空気の奥に、微かに感じる違和感。その正体を探ろうとしたが、その時だった。
「ここが、守護者達の拠点って事で良いのかぁ?」
真後ろから、低く響く声。振り返るとそこには、がっしりとした体格で無骨だが、どこか真っ直ぐな気配を纏う白髪の男が佇んでいた。
「お前は……」
奏海が即座に警戒の色を見せる。
「俺は『
男は一歩前に出て、右手を上げる。その右人差し指には、『轟轟戦隊ボウケンジャー』のクロスタルリング。
店内の空気が、わずかに張り詰めた。
「……。」
一方のフランは店の裏手におり、先ほどの会話を、聞こえないふりを装いながらもつぶさに聞き取っていた。
「……そろそろ、ことがおおきくなる……のかな……」
そんな独り言を漏らしつつ、手元にある小道具らしき物品を、じっと見つめていた。