ウルトラワールド:Scramble Engage   作:おろさん

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救世主リブートとゴーオン・メモリー 02

 

 

 

 一方その頃。

 

 セラの言葉に従い、イリヤは蓮子とメリーを連れて近くの図書館を訪れていた。

 

 机の上には、新聞や専門書といった難解そうな資料が、次から次へと積み上げられていく。

 

「ごめんなさい……たった一日で、結構迷惑かけちゃって……」

 

 申し訳なさそうに言うメリーに、イリヤは首を振る。

 

「いえ、大丈夫ですよ。いろんなことに興味を持つ気持ち、分かりますから」

 

 その後。記憶喪失の影響なのか、それとも元々の性格なのか。蓮子とメリーは、調べものにかなり没頭していた。

 

 日曜日ということもあり、それなりに人がいる図書館で、二人は最近のニュースから十年以上前の記事、ついでにPCでオカルトサイト等を漁りながら、手当たり次第に目を通していく。

 

「冬木市って、昔ガス事故が異常に多かったのね……でも、数年前から急に減ってる」

 

「『346プロ』……有名な芸能事務所? え、2年で190人もアイドルを輩出!?」

 

「これ、イリヤちゃんが言ってたメダロットの大会……主催者が警察に連行? 何か隠してる感じがするわね……」

 

「『聖霊』が見える聖女に……それを保護する聖霊庁……」

 

「モビルスーツ……ガンダムを中心に繰り広げられた……『革命戦争』……」

 

 そのほかにも、カルト教団の壊滅事件、過激な愛護団体による暴動など、物騒で不自然な情報が目についた。

 

「知らないことばっかりね……怪しい話も多いし」

 

 不穏な内容含めた記事に目を通す蓮子の口元には、隠しきれない笑みが浮かんでいた。メリーの表情もどこか弾んでいる。

 

「やっぱり、楽しそうですね」

 

 そんな声を弾ませながら、イリヤが戻ってきた。返却したライトノベルの続巻を抱えている。

 

「まあね。不思議な出来事って、嫌いじゃないし」

 

「知らない世界だからこそ、興味が湧くのよね」

 

 ふと、メリーはイリヤの手元に視線を向けた。

 

「それ……ライトノベル?」

 

「はい。最近観てるアニメの原作で、異世界ものなんです。魔法少女が主人公で――」

 

 イリヤは簡単に内容を説明する。

 

「へぇ……そんな作品があるのね。私も読んでみようかな」

 

「あ、それならもっかい取ってきます!」

 

 そう言って、イリヤは棚の方へ戻っていった。

 

***

 

「ええと……あった……あれ?」

 

 戻って早々本を手に取ったイリヤは、棚の奥に見慣れないものを見つける。

 

「こんな本、あったっけ……?」

 

 小さな本が二冊。一冊は広大な世界を歩く二人の戦士。もう一冊は、喫茶店で働く少女の表紙。

 

 タイトルはそれぞれ、『ワンダークロスワールド』と『ブレンドハーツ・エレメンタル』と書かれている。

 

「不思議な感じ……でも、とりあえず一緒に――」

 

「ヴヴヴ……」

 

 背後に気配。

 

「……え?」

 

 振り向いた瞬間、そこにいた。

 

 車のような、人型の怪物。

 

「ヴヴヴ……-()……y()……見ツケタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「いやあああああああああああああ!!?」

 

 侵蝕世怪人(ワールドロイド)『エンジン世怪(ワイルド)』。

 

 黒い排気ガスと炎が噴き出し、図書館が一瞬で混乱に包まれた。

 

「イリヤちゃん!?」

 

 悲鳴を聞いたメリーと蓮子が振り向く。

 

 次の瞬間、怪物が猛スピードで突っ込んできた。間一髪で避ける二人を素通りし、ソレは障害物を粉砕しながら走り、黒いガスを撒き散らす。

 

 奇妙なガスを吸い込んだ人々は次々と糸が切れたように崩れ落ち、怪物の身体へと煙のように吸い込まれていった。

 

「ヴヴヴ……」

 

 怪物の視線が、蓮子とメリーに向いた。

 

「……えっと、これ、かなりヤバくない?」

 

「ねぇ、あれもどこかで見たことがある気が……」

 

「えっ!?」

 

8()……v@()……0()……見ィツケタアアアアアアアアアア!!」

 

 後ろに後ずさる二人に視線を向け、怪物が突進してくる。

 

「急に私たち狙ってない!?」

 

「逃げるわよ、蓮子!」

 

 背を向けて駆け出した瞬間、怪物の体は幻のように揺らぎ、まるで最初から目の前にいたかのように回り込んできた。

 

「えっ!?」

 

「ヴァルアアア!!」

 

 攻撃が振り下ろされる、その瞬間。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 横から飛び込んだ蹴りが、怪物を吹き飛ばした。

 

「まさかと思って来てみたけど……本当に、こんな所で出くわすなんてね。それで、大丈夫だったかしら?」

 

 赤を基調とした服装に、黒髪のツインテールの少女『遠坂凛』が、二人に声をかけた。

 

「は、はい……どうも……」

 

「ヴヴヴ……ヴァルアアア!!」

 

「――ッ!」

 

 戸惑い気味に返事をした直後。体勢を立て直したエンジン世怪が咆哮する。

 

 そうすると、図書館内の壁掛け時計を介し、戦闘兵のような怪人が十数体ほど出現した。

 

「時計の……え、なにあれ」

 

「なんか……これもこれでどこかで見たことあるような……?」

 

「とりあえず下がってなさい!」

 

 その瞬間、時計のようなヘルメットの人型兵士『ウォークロック』たちが、一斉に凛へ襲いかかる。

 

「ジキキキキキキキキキキキキキ!!」

 

「……てやぁっ!!」

 

 凛はすかさず宝石を投げ、炸裂する魔力で敵を容赦なく吹き飛ばしていった。

 

「い、一体何がどうなってるのこれ……」

 

 安全そうな位置まで移動した二人のもとへ、息を切らしたイリヤが駆け寄ってきた。

 

「はぁ……はぁ……れ、蓮子さん、メリーさん……大丈夫ですか……?」

 

「イリヤちゃん! こっちは平気だけど……そっちは?さっきはすごい悲鳴だったけど……」

 

「す、すぐ逃げられたから大丈夫……あれ?」

 

 イリヤが視線を向けた先では、凛が怪物たちと戦っていた。

 

「あ、あれ……凛さん!?」

 

「え、知り合いなの?」

 

「うん……お兄ちゃんの同級生なんだけど……」

 

「ふんっ!!」

 

 凛はウォークロックをどうにか片付けたものの、肝心のエンジン世怪には苦戦していた。

 

 攻撃がまったく通らない。拳も蹴りも、宝石を使った魔術さえも、すり抜けるように空を切る。

 

「話には聞いてたけど……本当に幽体化して攻撃を透かすなんて……!」

 

「ヴァルアアア!!」

 

 エンジン世怪は排気ガスを撒き散らし、さらにどこからともなく取り出した剣で斬りかかってくる。

 

「っ……せいっ!!」

 

 何度も反撃を試みるが、そのたびに空振りに終わってしまう。

 

「ヴヴヴヴヴヴ……」

 

 やがて業を煮やしたのか、エンジン世怪は完全に幽体化。凛の身体をすり抜けて直進した。

 

「ちょ、どこ行くのよ!?――って!?」

 

 その進行方向には、蓮子とメリー、そしてイリヤの姿があった。

 

「うそ……!」

 

「危ないっ!!」

 

 イリヤが咄嗟に飛びつき、三人は敵の突進を紙一重で回避した。

 

「ぎ、ギリギリ……大丈夫?」

 

「あ、ありがとう……」

 

 立ち上がった三人の周囲には、暴れ回ったせいで完全に荒れ果てた図書館が広がっていた。

 

「ゴオオオオ……」

 

 エンジン世怪は、間髪入れずに再び迫ってくる。

 

「ど、どうしよう……」

 

 状況を把握しきれないまま、イリヤは立ち尽くす。

 

 逃げ切るのは不可能。それは、足の速さに自信のある彼女にも分かっていた。

 

「……イリヤちゃん。ここは、私たちに任せて逃げて」

 

 その時。蓮子が覚悟を決めた表情でメリーを見る。震える膝を必死に抑えながら、メリーも頷いた。

 

「えっ!? 急にそんな――」

 

「年上なのに、さっきから助けられてばっかりだから。それに、あなたに何かあったら、家族が悲しむでしょ」

 

「それに……どうやら、あいつの狙いは私たちみたいだし。意識をこっちに集中させた方がいい」

 

「で、でも……」

 

「大丈夫。これくらい……私たちなら、なんとかなる気がするから!」

 

「ヴァルアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 咆哮と共に、剣を振り上げて突進してくるエンジン世怪。

 

「っ!!」

 

 二人は左右に跳び、攻撃をかわす。

 

「ヴヴヴ……!!!」

 

 狙いは、間違いなく自分たちだった。

 

「こっちよ!!」

 

 瓦礫と崩れた本で埋め尽くされた図書館内。二人は距離を取り、二手に分かれて陽動を始める。

 

「ヴヴヴヴ……!!ゴオオオオ……オン!!」

 

 一瞬迷うような動きを見せたエンジン世怪。しかしその身体が三つの車両のような形状に分離し、 それぞれが綺麗なカーブを描いて回り込んできた。

 

「え……」

 

「う、嘘でしょ……」

 

 あまりの無茶苦茶さに、三人は言葉を失う。

 

「ゴーゴーゴー!!!」

 

 分離したまま、エンジン世怪は同時にエネルギー弾を放つ。直撃は免れたものの、二人は吹き飛ばされてしまった。

 

「ヴァルアアアアーッハハハハハ!!」

 

 再び合体し、休む間もなく迫るエンジン世怪。

 

「あんな害悪の塊みたいなの……どうすれば……」

 

「でも……このまま、訳も分からずに……!」

 

 互いの手を掴み、立ち上がるメリーと蓮子。怪物は意に介さず、ただゆっくりと二人の間合いを詰めてくる。

 

 まさに、その時だった。

 

「ヴァル――ガァッ!!!?」

 

 右斜め上。その方向から突然、何かが飛来した。

 

 手のようでもあり、剣のようでもある武器。それはエンジン世怪を弾き飛ばしてすぐ、一直線に二人の元へ飛び込んだ。

 

「え……ま、また何……でも何か……」

 

「これも……見覚えがあるような、ないような……あら?」

 

 次の瞬間、その武器が光を放つ。同時に、メリーのポケットの中からも、淡い光が漏れ始めた。

 

「……!」

 

 ずっとポケットに入れていた、不思議な指輪を取り出す。

 

「これ……手に取れってこと……よね?」

 

「もしかしなくても、絶対そうだね。

 この状況を打破するなら……やるしかないでしょ!」

 

 蓮子が武器に手を伸ばした、その刹那。

 

『新たなる守護者よ……今、ひとつに……!!!』

 

「わっ!?」

 

 どこからともなく謎の声が響き渡り、武器と指輪の光がさらに強まった。

 

「ヴッ!?」

 

「ひゃっ!?……あれ?」

 

 エンジン世怪とイリヤは、あまりの眩しさに、思わずギュッと目を閉じた。

 

 その瞬間、イリヤが持っていた、小さな二冊の本のうちの一冊『ワンダークロスワールド』が、光の中心へとフワっと吸い寄せられていく。

 

 そして。光の中から伸びた手が、その本を掴み取った。

 

「い、今のって……え? えええっ!?」

 

 イリヤが恐る恐る目を開くと、そこには一人の少女が立っていた。

 

 右目は蓮子の色、左目はメリーの色。長めのツートンカラーの髪に、神官を思わせる服装。

 

 『二人』であり、『一人』の少女。

 

 少女は、手にした武器の手甲のようなスロットに、小型の本を装填させる。

 

【ワンダークロスワールド】

【神秘を追いかける二人の探求者が、繋がる世界を旅していく】

 

「変身《エンゲージ》!!!」

 

 続いて、右手の人差し指にはめていた指輪を、中指にあたるくぼみへとはめ込む。

 

【CLAP YOUR HANDS!!!】

 

 8bit音、ギター、ピアノが混ざり合った軽快な音楽。それに合わせて手を叩く。

 

 本が開き、光が身体を包み込む。

 

 鳥と猫を混ぜたような意匠の仮面。中華風の装甲をまとったその姿。

 

【UNCOVER THE SECRETS:GUARDIAN『メモリア』!!!】

 

 少女は、守護者《メモリア》へと変身した。

 

「……」

 

 メモリアは無言のまま、右手で持った手の武器を、エンジン世怪へ向ける。

 

「ヴヴヴ……!!!?」

 

「だ、大丈夫――って……!!?」

 

 エンジン世怪の後を追っていた凛が、ようやく合流する。その視界に映ったのは、既に戦場に立つメモリアの姿だった。

 

「あれは……新たな守護者……!?

 でも、一体誰が……」

 

「ヴ……ヴァルアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 エンジン世怪は動揺しつつも、猛スピードで突進してくる。

 

「……ハッ!!」

 

 メモリアは紙一重で回避し、すれ違いざまに背後を斬り裂こうとする。

 

「ヴッ……ガッ!!?」

 

 とっさに体を幽体化させ、攻撃をかわそうとしたエンジン世怪。だがオーラを纏った一撃は容赦なく直撃した。

 

 強烈なダメージに耐えきれず、彼は慌てて幽体化を解いてしまう。

 

「せいっ! やっ! たりゃあああああっ!!」

 

 蹴り、二連斬撃、そして上空からの叩き込み。エンジン世怪は大きく吹き飛ばされた。

 

「ガッ……ゴオオオオン!!」

 

 なおも抵抗するように、身体を三つに分離する。

 

「遅いっ!!」

 

 一つを蹴り上げ、跳躍。空中で叩き落とし、残り二つへとぶつける。

 

「ガアアアッ!!!?」

 

 合体し損ねたまま地面に転がり落ちるエンジン世怪。完全に隙だらけだった。

 

「う、嘘……あんなに面倒だったのを、こんなにあっさり……」

 

「い、行けーっ!!もう何が何だかだけど、やっちゃってーっ!!」

 

 凛は驚愕し、イリヤは半ばヤケ気味に声援を送る。

 

「……じゃあ、終わらせる」

 

 立ち上がろうとするエンジン世怪の目前に、いつの間にかメモリアが立っていた。

 

【『メモリア』CROSS FINISH!!!!】

 

 エネルギーを纏った一閃。腹部を、斜め下から切り上げる。

 

「ガッ……アアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 エンジン世怪は爆散し、完全に消滅。

 

 するとその足元に、腕時計のような形状の指輪が一つ転がり落ちた。

 

 変身を解除した少女は、それを拾い上げる。『炎神戦隊ゴーオンジャー』をモチーフにした指輪だった。

 

「や……やった……!!やったやった!! すごいよ!!えーと……」

 

「色々分からないことだらけだけど……とりあえず、何とかなったわね、メリー。イリヤちゃんも無事だし……まあ、周りはひどい有様だけど」

 

「ん?あ、あれ……?蓮子さんとメリーさん……だよね? 流れ的に」

 

 駆け寄ったイリヤは、少女の異変に気づく。

 

「え? 急にどうしたの、イリヤちゃん。私とメリーだけど……ん?」

 

 当人も違和感に気づき、自分の身体に触れる。

 

「え……?なにこれ……え、ちょっと……うそでしょ、合体してる!!?なんで!!?」

 

 自分が『蓮子とメリーが融合した姿』だと理解し、完全にパニック。

 

「えっ!? なにこれ、柔らか――ちょっと、どこ触ってるの蓮子!!?いやそれよりというかこれどうやって元に戻――」

 

 ――ポンッ。

 

 小さな爆発音とともに煙が体をふんわりと包み込むと、その奇妙な融合体はスッと消え去る。

 

 煙が晴れた次の瞬間。そこには、宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンの二人がきょとんとした顔で立っている。

 

 ふと手元を見ると、蓮子の手には先ほどの剣が、メリーの人差し指には指輪が、何事もなかったかのように戻っていた。

 

「も、戻った……よかった……」

 

「お、おおう……」

 

 安堵してそのままもたれかかるメリーを、蓮子が慌てて支えた。

 

「でも……これ、一体なんなの?今メリーの指にはまってる指輪もそうだけど……」

 

 二人がそれぞれの持ち物を見つめていると――

 

「まさか……()()()()()とはね」

 

 凛が、静かに近づいてきた。

 

「あ、さっきの……ええと……」

 

「遠坂凛。『魔術師』よ」

 

 名乗った凛は、二人を見据えてこう告げた。

 

「分からないことだらけでしょうけど……私が順を追って説明するわ。よろしくね、新たな『守護者』さん?」

 

「……へ?」

 

 

 








=NEXT(台本形式注意)=

蓮子「記憶を失った私達を待っていたのは、指輪を巡る大規模な戦い……


その裏で動く者達、残り2人の守護者、そしてイリヤスフィールの覚悟……この不思議な世界で、新たな物語を紡ぐ!そしてその想いが、伝説の巨人を喚ぶ!


次回、第2話『目覚めし伝説とワンダフル・ガールズ』!レディーゴー!」


・今サブタイトルの元ネタ:炎神戦隊ゴーオンジャー

***


=クロスタルリングカセット=
『炎神戦隊ゴーオンジャー』
イラスト:チェッカーフラッグ→ゴーオンレッド
固定絵:炎神スピードル
獲得者:蓮子&メリー


侵蝕世怪人(ワールドロイド)
『エンジン世怪(ワイルド)
使用指輪:炎神戦隊ゴーオンジャー
憑り付いた人物:無し
侵蝕スキル:『爆速・幽体化・分離』の害悪の極み3点セット


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