ウルトラワールド:Scramble Engage 作:おろさん
十数分後。アインツベルン邸・浴場。
湯気の立ち込める中、イリヤはどこか落ち着かない様子で肩をすくめていた。
「……あのー、どうして一緒に……」
視線だけで背後をうかがう。
そのすぐ後ろには、ぴったりと密着するようにして湯船に浸かる女性――イリヤの母、アイリスフィールの姿があった。
夫と共に海外を転々としていたはずの彼女が、予告もなくひょっこりと戻ってきたので、イリヤは少し困惑する。
「長旅で疲れちゃったもの。こうすればすぐにお風呂に入れるし、それに――」
くすっと微笑みながら、アイリはイリヤの頬を指で軽くつつく。
「可愛い愛娘とのスキンシップも出来て一石二鳥でしょ?」
のんびりとした口調。だがその距離感はやけに近い。
「そ、それにしてもママ、随分急な帰宅だね……」
イリヤは苦笑しつつも、少しだけ体を離そうとする。だが逃がさないとばかりに、アイリはさらに寄ってくる。
「んん?私が急に帰ってきたら、何かマズい事でもあるのかしら?」
「そ、そういうわけじゃないけど……」
思わず視線が泳ぐ。
――実際、この短い期間で起きた出来事は多すぎた。
クロスタルリングのことを抜きにしても、突然現れた記憶喪失の二人組。さらに、サーヴァントやらアイドルやら……普通では考えられない非日常が、一気に押し寄せている。
どう説明すればいいのか、自分でも整理がついていない。
そんなイリヤの様子を見ながら、アイリはふっと口を開いた。
「仕事が一段落したから、アルちゃんを連れて帰ってきたの。あ、切嗣はまだ海外にいるから、私はすぐ戻らなきゃいけないんだけどね」
「そうなんだ……」
短い再会。そう思うと、少しだけ寂しさが胸をよぎる。
***
一方、リビングでは。
テーブルの上には、所狭しと積み上げられた土産品の山。
しかもその内容はどこか独特で、用途の分からない物も多い。
「……えっと、これは……何だ……?」
士郎は一つ手に取りながら、困惑した表情を隠せない。
「おかわりです!」
そんな空気をまるで気にせず、元気よく声を上げるのは、黒いスーツに身を包んだ、『アル』と呼ばれる金髪の少女。
アイリと共に海外へ同行していた使用人だ。
彼女は遠慮という言葉を知らないかのように、次々と料理を平らげている。
その結果――テーブルには空になった皿が山のように積み上がっていた。
「…………」
それを見たセラは、静かに頭を抱える。
理由は単純だ。
(食費が……;;;)
***
再び、浴場。
「だから今はこうして、娘の成長を確認……じゃなくて、スキンシップを~♪」
わざとらしく言い直しながら、アイリはさらに体を寄せる。
その密着具合に、イリヤは思わず身を固くした。
――と、その時。
「ねぇ……私が留守の間、何か変わった事はある?」
変わらない笑顔。
けれど、その奥にほんのわずかな鋭さが混じる。
「え?べ、別に……」
反射的に否定するイリヤ。
だが、
「またまたー。あったでしょ?そもそも、不思議な記憶喪失の2人組がどうとかっていうのは聞いてるのよ?」
「あ、そっか……」
セラが緊急連絡で伝えていたことを思い出す。
完全に隠し通せる話ではなかった。
「……実際、あの2人はどんな感じ?」
「……うん、蓮子もメリーも、良い人だよ。皆ともけっこう親しくやってる。」
「そう。随分仲良くなったのね。」
アイリは小さく頷き、安心したように微笑む。
――だが、そのまま言葉を続けた。
「だけど……まだ他にあるんでしょ?すっごーく、変わったことが……ね?」
「……!」
イリヤは思わず振り返る。
湯気の向こうで、アイリの瞳がじっとこちらを見ていた。
逃げ場のない視線。
わずかな沈黙が落ちる。
そして、アイリは何気ない口調で言った。
「ほら、ウチの目の前にある豪邸!」
それは――ルヴィアが建てた、あの異様に目立つ屋敷のことだった。
「ちょっと見ないうちに、あんなのが建っちゃうなんてねぇ。一瞬、帰り道を間違えたのかと思ったわ」
くすくすと笑うアイリ。
イリヤも小さく頷くしかない。
「……セラから聞いたんだけど、あそこにクラスメイトが住んでいるんですってね」
「……」
その言葉に、イリヤは少しだけ視線を落とす。
「……なんていう子なの?」
距離を詰め、優しく問いかけるアイリ。
「……美遊。」
「美遊ちゃん、ね。転校生なんでしょ?友達になれた?」
「うん……」
小さく頷く。
「ねぇイリヤ……その美遊ちゃんって、どんな子?」
「どんな子って……えっと……」
一度、言葉を探すように口を閉じる。
けれど。一瞬だけ考えて、ゆっくりと顔を上げた。
「美遊は――」
*****
「はぁっ……!!」
その頃。鋭く息を吐きながら、サファイアに変身した美遊は地を蹴った。狩人アイズとの距離を一気に詰める。手にするのは槍型武器――『サファイアドリルランサーU』。その切っ先が一直線にアイズを狙う。
「遅い」
だが――。
アイズは一歩も動かない。ただ静かにタイムスナイパーを構え、その銃身で槍撃を受け止めると、流れるような動作で薙ぎ払った。
「だったら……!!」
サファイアはすぐさま距離を取り直し、掌に魔力を集中させる。次の瞬間、蝶の形をした魔法弾が複数生成され、アイズへと一斉に放たれた。
「遅いと言った。」
乾いた銃声が連続する。
放たれた弾丸は、蝶の魔法弾を正確に撃ち抜き――一つ残らず空中で消し飛ばした。
「っ……!!」
歯を食いしばるサファイア。その表情には、明確な焦りが浮かんでいた。
「美遊ちゃん!!」
その時、戦場に新たな声が響く。
振り向かずとも分かる。鈴夜の声だ。彼の後ろには、奏海とモードレッドもいる。
「……守護者が2人と、あのパラレルファイターのサーヴァントか。他はともかく、あの2人組と魔術師が見当たらないな。配置したウォークロックに足止めされてるか……」
アイズは視線を外すことなく、淡々と呟く。まるで戦況を盤面のように俯瞰しているかのようだった。
「昼間の時点で見覚えがあったが……アイツ、今まで素手でパラレルファイターを倒しまくってたやつか……!!」
「早い段階で駆けつけて正解だった……!ちゃちゃっと加勢に――」
奏海と鈴夜は同時に構え、守護者へ変身しようとする。
だが――その瞬間。
「VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
空気を裂くような咆哮と共に、上空から巨大な影が急降下してきた。
――アース世怪。
それは二人のすぐ近くの地面へと叩きつけられ、轟音と共に爆発を巻き起こす。
「どわぉっ……!?」
「このタイミングでかよ……!!」
吹き飛ばされかけながら、なんとか体勢を保つ二人。
その爆炎の向こうに現れた姿を見て、モードレッドは言葉を失った。
(マスター……!)
暴走させられた、自身のマスター。
無理やり侵蝕世怪人へと変えられたというその姿に、怒りとも悲しみともつかない感情が胸を締め付ける。
「FEEEEEEEEEEFEFEEDEEFEFEFEFFEFEFE!!!」
アース世怪は三人の姿を認識すると、間髪入れずに襲いかかった。
しかも狙いは――変身前の奏海と鈴夜。
変身の隙すら与えない、苛烈な連続攻撃。
「だが問題は無い……!!」
奏海は叫び、黒い刃を構える。変身せずとも、その動きは鋭い。
振るわれる攻撃を迎え撃ち、真正面から斬り結ぶ。
鈴夜もまた、紙一重で攻撃を回避し続けていた。
「そこっ……!!」
一方その頃。
サファイアはなおもアイズへと攻め込む。死角を突くように回り込み、ランサーを突き出した――が。
「……甘い」
その一撃は、あっさりと止められた。
アイズは片手で槍を掴み、そのままサファイアごと軽々と放り投げる。
「……はああああああっ!!!」
空中で体勢を立て直し、受け身を取るサファイア。
着地と同時にランサーへと魔力を集中させる。
次の瞬間――
蝶の羽ばたきを思わせるエネルギーが、極細のレーザーとなって高速で放たれた。
「遅いと言った。」
しかし。
アイズは一発だけ発砲する。
その後、タイムスナイパーをまるで指揮棒のように振るうと――
撃ち出されたレーザーが変形。
空間を縦横無尽に走り、網のように展開される。
それは防御であり、同時に迎撃。
サファイアの放ったエネルギーは、その網に触れた瞬間――全て焼き尽くされた。
「なっ……!!?」
驚愕に目を見開くサファイア。
その視線の先で、アイズはゆっくりと三つのクロスタルリングを取り出した。
『踊るバトルジャパンのシルエットとバトルフィーバーロボ』→『バトルジャパン』
『BF隊のイニシャルのアクセサリー』
『神ノ木高校チアリーディング部』→『鳩谷こはね』
『チアのポンポン』
『ピックルン』→『キュアピーチ』
『リンクルン』
「……そろそろ、身の程を知ろうか」
静かな声で告げると、アイズはそれぞれの指輪をタイムスナイパーにはめ込む。
――カチン、と小気味よい音が三度響いた。
そして銃口を前へ。
引き金が引かれる。
【『
【『
【『
光が弾ける。
その中から現れたのは――
『バトルジャパン』『鳩谷こはね』『キュアピーチ』。
もちろん本物ではない。力だけを再現したレプリカだ。
次の瞬間。
三体は一斉に地を蹴り、サファイアへと襲いかかった。
*****
「美遊はね、何ていうか……静かな子。」
――場面は戻って、アインツベルン邸。
イリヤは湯船に浸かりながら、アイリに美遊のことをぽつりぽつりと語っていた。
「基本的に、必要な事しか喋らないし……喋るの、あんまり得意じゃないのかも……。あ、でもね、勉強も運動もすごいんだよ。一気にクラスで一番になっちゃったし」
「……何でもできる子なのね。」
「何でも、か……」
その言葉に、イリヤは少しだけ視線を落とす。
――何でもできる。
確かにそう見える。実際、ほとんどのことはそつなくこなしてしまう。
けれど。
出会って間もない頃、美遊が言った言葉が、ふと頭をよぎる。
『無理はしないで』
あの時の、少しだけ強い口調と、どこか気遣うような視線。
それを思い出しながら、イリヤはゆっくりと言葉を続けた。
「何でもやろうとしちゃう……って感じでもあるのかな……?」
「……どういう事?」
「……その、蓮子とメリーと出会ってから、ちょっと不思議な事が何回かあってさ。色んな人達と出会って、ちょっとだけでも仲良くなったりして……」
そこで一度、言葉を区切る。
少しだけ迷うように視線を揺らしてから――
「それで今日さ、ちょっと大事な事があったんだけど……私、何も出来なくて。それで結局、美遊が、一人でやろうとして……」
自分の手元と足元を見る。
アース世怪……暴走した尾張長人を見て、足がすくんでしまった。何も出来なかった。その感覚を思い出すように。
「最初から……そうだったのかな。今考えてみると、私の事、アテにしてるのか……よく分からなくて……」
ぽつり、と続ける。
「なんていうか……1人でいるのが当たり前、みたいな顔してて……」
「……」
アイリは何も言わず、ただ静かに聞いている。
「美遊は、凄いよ。美遊はきっと……一人だとしても、大丈夫で……」
「本当にそう思う?」
その言葉を遮るように、アイリが静かに問いかけた。
「えっ……?」
思わず顔を上げるイリヤ。
けれどアイリは、それ以上は何も言わず――
「……続きは、上がってからにしましょうか。このままだとのぼせちゃうわよ。」
そう言って、先に湯船から立ち上がる。
「……」
取り残されるように、イリヤはそのあとほんの少しだけ、湯船に浸かる。
湯気の中で、自分で言った言葉と、アイリの言葉が、頭の中に引っかかる。
(本当に……そうなのかな)
小さく息をつきながら、イリヤはもう一度だけ考え込んだ。
*****
「っ……はぁっ……!!!」
荒く息を吐きながら、サファイアは踏みとどまる。
相手は――アイズに加え、召喚されたパラレルファイターのレプリカ三体。
合計四人。
それを、たった一人で相手にしていた。
鈴夜たちはというと、暴走を続けるアース世怪に足止めされている。あの様子では、すぐにこちらへ加勢できる状況ではない。
ルヴィアたちの姿も見えない。別の場所で同じように足止めされている可能性が高い。
(……なら、やるしかない)
サファイアは歯を食いしばり、ランサーを構え直す。
――だが。
踏み込んだ瞬間、その一撃はあっさりといなされた。
バトルジャパン(レプリカ)の鋭い空手の受け。
キュアピーチ(レプリカ)の華麗なステップによる回避。
さらに――
鳩谷こはね(レプリカ)が軽やかに動き、チアリーディングのような動作を見せる。
その動きに呼応するように、他のレプリカたちの動きが一段と鋭くなる。
(強化……!?)
応援による能力上昇――そう理解した瞬間には、もう次の攻撃が迫っていた。
「……敵が複数で一人を攻める……というのは、定番の展開だったりするのだろうな」
アイズは銃撃を放ちながら、淡々と呟く。
「しかしまあ、妙な状況だな。一応、お前にも味方はいるというのに」
サファイアへと視線を向けたまま、続ける。
「足止めを喰らっている連中は……まあ、目前の相手が悪すぎる故、仕方ないが……」
ほんの僅かに首を傾げる。
「それでも――どうしてここまで孤立している?」
まるで本当に不思議がっているような声音だった。
「また好き勝手……!!!」
サファイアは叫ぶと、即座にクロスタルリングを取り出す。
『富士山とアカニンジャー』→『アカニンジャー』
『シノビマル』
「
【『ニンニンジャー』!!!】
光が弾け、サファイアはアカニンジャーへと再変身する。
「手裏剣忍法『水の術』!!」
【じゃぶじゃぶじゃー!】
忍者一番刀と五トン忍シュリケンを構え、水を噴射。
勢いよく噴き出した水流に乗り、サーフボードのように滑走しながら一気に上空へと駆け上がる。
「……はっ!!!」
上空から、大量の水流を叩きつけるように放つ。
「……だろうな」
だがアイズは、まるで予想していたかのように動じない。
キュアピーチ(レプリカ)へとレーザーを放つと、それがピーチロッドへと変化。
すぐさま手に持ち、『プリキュア・ラブサンシャイン・フレッシュ』。
巨大なハート型エネルギー弾が放たれ、水流を正面から押し返した。
「……ふっ!!」
その直後。
アイズの姿が消える。
――次の瞬間には、アカニンジャー(サファイア)の背後。
タイムスナイパーの銃身が、斬撃として振るわれる。
「っ……!!!」
だが、それは空を切った。
斬られたのは分身――変わり身の術。
本体はすでにレプリカたちの背後へ回り込んでいる。
「これで――」
「知ってた」
必殺技を放とうとした、その瞬間。
アイズはバトルジャパン(レプリカ)へ向けてレーザーを放つ。
それは五つの『コマンドバット』へと変化し――
アカニンジャー(サファイア)の周囲を高速で飛び回る。
次の瞬間、槍へと変形。
四方から一斉に突き刺さり、完全に包囲する。
「……ふっ!!!」
アイズはタイムスナイパーを指揮棒のように振るう。
するとコマンドバットが合体し、ブーメラン型の『ペンタフォース』へと変形。
それを手にした鳩谷こはね(レプリカ)が、軽やかに宙へ投げる。
――そこへ、さらにアイズのレーザー。
ペンタフォースは一つから十へと倍増する。
それらが次々とアカニンジャー(サファイア)へと直撃した。
「ああっ……!!!!」
連続する強烈な衝撃。
耐えきれず、サファイアは大きく吹き飛ばされる。
地面に叩きつけられ、再変身が解けた。
「……ニンニンジャー指輪……再度回収」
転がったクロスタルリングを、アイズは何の躊躇もなく拾い上げる。
「っ……っ……!!!」
それでも。
サファイアは、震える足で立ち上がる。
全身に走るダメージを押し殺しながら、それでも前を向く。
「……諦めないのは悪い事では無いが……」
その姿を見て。
アイズの声色が、わずかに変わる。
「……そうやって無理をしているのは、見ていてモヤモヤする」
感情の薄いはずのその声に、はっきりとした苛立ちが滲んでいた。
03へ続く。
=クロスタルリングカセット=
『バトルフィーバーJ』
イラスト:踊るバトルジャパンのシルエットとバトルフィーバーロボ→バトルジャパン
固定絵:BF隊のイニシャルのアクセサリー
所有者:コロモ
『アニマエール!』
イラスト:神ノ木高校チアリーディング部→鳩谷こはね
固定絵:チアのポンポン
指輪能力:チアリーディングによる強化
所有者:コロモ
『フレッシュプリキュア!』
イラスト:ピックルン→キュアピーチ
固定絵:リンクルン
所有者:コロモ
・指輪所有者状況
『手裏剣戦隊ニンニンジャー』
所有者:美遊→コロモ
―――――
*注釈:本作品は、自著の文章をAI(ChatGPT等)で推敲・校正して投稿しています。ストーリーや台詞はすべて作者が作成したものですが、読みやすさ向上のために文章の整理を行っています。