Fate/Scramble U World ~秘封トラベラー・メモリアル~   作:おろさん

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カレイドスコープ・エール 04

 

 

「い、イリヤちゃん!?危ない状況だったけど、どうやって……」

 

「さっすが……」

 

 鈴夜たちは、今の一部始終を見て、安堵と同時に、驚きが隠せていなかった。

 

「SGFCGRTDGWETGTRDRTBERTYRT=EYTTYREF&――」

 

 その間にも、アース世怪は暴走を続けている。炎を撒き散らし、剣を降らせ、周囲を破壊し尽くそうとすが、その瞬間。

 

『有田春雪と学内用アバター』→『シルバー・クロウ』

『黒雪姫&ブラック・ロータス』

 

【FINISH CHARGE『アクセル・ワールド』!!!】

 

「とっかあああああああああん!!!」

 

「DCCBVA!!!?」

 

 突如として現れたバイクが、一直線に突っ込む。轟音とともにアース世怪へ激突し、その巨体を大きく吹き飛ばした。

 

「今です、皆さん!」

 

 バイク状態のメモリアライドシューターUに乗る蓮子とメリーが叫ぶと、それに呼応するように、

 

「セット……獣縛の六枷(グレイプニル)!!」

 

 凛、ルヴィア、桜の三人が同時に魔術を発動。

 

 宝石が輝き、放たれた光は帯となってアース世怪を絡め取る。

 

「GI……!!?」

 

 吹き飛ばされたままの体を、地面へと叩きつけ、さらに結界が展開され、その動きを完全に封じ込めた。

 

「ギリギリ間に合ったわね……結構宝石使っちゃったわ……」

 

 息を整えながら、凛が呟く。

 

「お前ら、魔術師の……」

 

 突然の乱入に、モードレッドが目を見開く。

 

「ここに来る途中で、足止めされてた凛さん達と合流してたの」

 

「まあ、この指輪のお陰で間に合ったわけだけど……」

 

 その疑問に答えるように、蓮子とメリーが説明する。

 

 メリーの手にあるのは、先日に尾張長人たちと協力して手に入れた、『アクセル・ワールド』の指輪。

 

 その加速の力が、この奇襲を可能にしたのだった。

 

***

 

「イリヤ……どうして、ここに……」

 

 美遊は、目の前の光景を信じきれずにいた。

 

 あの時、強いショックを受けて、心も体も限界だったはずのイリヤが、ここにいる。

 

 しかも、自分を庇って。

 

 歪な宝石の力の負荷も、まだ残っているはずなのに。それでも、イリヤはここに立っている。

 

 ボロボロの体を無理にでも起こそうとした、その時。

 

「……馬鹿ッ……!!」

 

 イリヤが、声を震わせながら言った。

 

「前から、私に無茶しないでって言ってたくせに……自分だけこんなになるまで、無理して……一人で全部背負おうとして……!!」

 

 背を向けたまま、言葉をぶつける。

 

「壊れたら、知りたいも守りたいもなくなるって……そう言った本人が、壊れるようなことしないでよ……!!」

 

「イリヤ……」

 

 美遊は、言葉を失う。その通りだったから、視線を落とす。

 

「でも……ごめんなさい」

 

 その時。イリヤの声が、少しだけ柔らかくなる。

 

「えっ……?」

 

「私も……馬鹿だった」

 

 小さく、けれどはっきりと。

 

「覚悟もそんなに無いのに……ただ流されて、戦ってた」

 

「な、何言って……イリヤ、あなた前に言ってたじゃない。大切なものを守りたいって、何が起きてるのか知りたいって――」

 

「それは確かに、本心だよ。でも……そういうことじゃないの」

 

 まだ振り向かないイリヤは、静かに続ける。

 

「私……いつの間にか、その気持ちを盾にして……履き違えて……一番大事なところから、ずっと逃げてた。頭では分かってた。いつか、とんでもない事が起こるかもしれないって……でも、心のどこかで……これが現実じゃないって思ってた」

 

 そして、ぽたり、と涙が落ちる。

 

「でも……何も悪くない人が暴れさせられて……私も死にそうになって……それでやっと分かったの。全部、現実なんだって……すごく危ないことなんだって……そしたら……急に全部が、怖くなって……だから、体が固まったみたいに……何も出来なくなって……」

 

「イリヤ……」

 

「本当に馬鹿だったの……何も出来なかった事も……それを理由に、逃げようとした事も……友達の気持ちを、ちゃんと考えなかった事も……美遊は……一人で、私の分まで頑張ろうとしてくれたのに……」

 

 ゆっくりと振り向く。涙で濡れた顔のまま、まっすぐ美遊を見る。

 

「なのに私……美遊の気持ちも、皆の気持ちも……どこかで蔑ろにしてた。だから……ごめんなさいっ……!」

 

 そして、はっきりと頭を下げる。

 

「もしかしたら遅いかもしれないけど……私は、もう一度……美遊たちと一緒に戦いたいっ……友達が一人で危ない目に遭ってるなんて……そんなの、嫌だから……!!」

 

「……!」

 

 顔を見上げ、一歩踏み出す。イリヤのその言葉に、美遊の目が揺れる。

 

「……ありがとう……」

 

 小さく、けれど確かに。

 

「……私も……イリヤと一緒に戦いたい。友達と一緒に……!」

 

「……!」

 

 その言葉に、イリヤの表情が変わる。

 

 迷いのない、まっすぐな顔に。イリヤは美遊のもとへ駆け寄り……手を差し出す。

 

「行こう、美遊……!」

 

「……うん」

 

 その手を取る美遊。

 

 よろけながらも、確かに立ち上がった。

 

「……感動の展開なところ悪いが」

 

 背後から、冷ややかな声が割り込む。

 

 振り向けばアイズと、依然として健在なレプリカ三体。

 

 どうやら、二人のやり取りが終わるのを待っていたらしい。

 

 タイムブラスターの銃口が、ゆっくりと二人へ向けられる。

 

「……悪い事は言わない。退け。片方はジュエルによる負荷、片方はダメージの蓄積による体力の限界……このまま続ければ、確実に死ぬぞ。いい加減」

 

 その言葉は脅しではない。ただ、事実を述べているだけ。

 

 だがそれでも、二人は一歩も引かない。

 

 並んで立ち、構える。

 

「断る気か?」

 

 わずかに、アイズの眉が動く。

 

「……何故だ。お前達のような者共は、どうしてそうなる。感情に任せて無理をして……己を犠牲にする」

 

「……無理でも、犠牲でもないよ」

 

 低く、苛立ちを滲ませる彼女に対し、イリヤがはっきりと言い返す。

 

 その声には、もう迷いはなかった。

 

「……なら、何だと言う?」

 

 問い返すアイズ。

 

 その視線を正面から受け止めて――

 

「……()()だよ」

 

 イリヤは、美遊の手をぎゅっと握る。

 

 そして、少しだけ不敵に。それでいて、どこか年相応の笑みを浮かべた。

 

「死ぬとか、限界とか……そういう話じゃない。私が、美遊と一緒にいたいから」

 

 一歩、踏み出す。

 

「私たちが、一緒に戦いたいって決めたから……これは、ただの私のワガママで……美遊との……約束だからっ!」

 

 イリヤは、人差し指にはめた守護者の指輪を外し、クロステライザーを構えた。

 

「……やるよ、美遊!!」

 

「……ええ、イリヤ!!」

 

 美遊もまた、同じように構える。

 

 二人の動きは、自然と揃っていた。

 

変身(エンゲージ)!!」

 

【CLAP YOUR HANDS!!!】

 

 指輪をはめ込む。軽快なリズムが響き、二人は同時に手を打ち鳴らす。

 

 その音が重なった瞬間、光が弾けた。

 

【DRAW THE RAINBOW:GUARDIAN『プリズマ』!!!】

 

 イリヤの姿を、光が包み込む。

 

 やがて現れたのは、鳥を思わせる意匠をまとった、魔法少女のような戦士。

 

 守護者『プリズマ』。

 

【COMPASSION THE SILENCE:GUARDIAN『サファイア』!!!】

 

 続いて、美遊の周囲にも光が舞う。

 

 蝶を思わせる装甲を纏った、静謐な戦士。

 

 守護者『サファイア』。

 

 二人は並び立ち、アイズを見据える。

 

「……」

 

 アイズは無言のまま、その様子を観察していた。

 

 だが、その視線は僅かに鋭くなる。何かを感じ取ったように。

 

「色々……気づかされたからかな」

 

 プリズマが、小さく呟く。

 

「今なら、なんとなく分かる……この場を切り抜ける……打開策が!」

 

 そう言って取り出したのは、小型の本『クロステラノベル』。

 

 表紙には、紅白の巫女の姿。タイトルは、『ハクレイナイト・インヴァース』。

 

「それって……」

 

 サファイアが目を向ける。ソレはあの時、突然イリヤの手元に飛んできたノベルだ。

 

「……蓮子さん!!」

 

「待ってました!」

 

 プリズマが声を上げるとすぐさま、蓮子が別のノベルを投げる。

 

 空中で受け取ったそれは『ドクターエーリン』。薬師の女性が描かれた一冊。

 

 プリズマはそれを、そのままサファイアへと手渡した。

 

「……今の私たちなら、きっとできる」

 

 迷いのない瞳で、イリヤは言う。

 

「……分かった」

 

 サファイアも、静かに頷いた。

 

 二人は同時に、クロステライザーに装着していたノベルを外し、新たなノベルへと付け替える。

 

 その瞬間。再び光が溢れた。

 

【REIMU STYLE!!!】

 

 プリズマの装甲が変化する。

 

 紅白の巫女装束を模した、神秘的な姿『レイムスタイル』へ。

 

【EIRIN STYLE!!!】

 

 同時に、サファイアの装甲も変化。

 

 赤と青を基調とした、薬師の意匠を持つ戦装束『エイリンスタイル』へ。

 

「はぁぁ……!」

 

 そしてプリズマは、全身に力を集中。内側へと意識を向けると同時に、周囲へ光のエネルギーが溢れ出した。

 

 それにより、プリズマの心……つまり精神内に食い込んでいたジュエルが……まるで根を引き剥がされるように、分解されながら浮かび上がる。

 

「ハッ!!!」

 

 迷いはない。

 

 引き抜いたそれを、即座にクロステライザーで叩き砕いた。

 

「……これで……!」

 

 直後、サファイアが手元に顕現させたのは、淡く輝く秘薬。

 

 それを解放すると、柔らかな光が広がり、二人の体を包み込む。

 

 消耗した体力、蓄積したダメージが、目に見えて回復した。

 

「何……!!?」

 

 アイズの声に、明確な動揺が混じる。

 

 予測外の行動。戦況を一気に立て直された事実に。

 

「……だが、少しホッとした」

 

 しかしぽつりと漏れたその言葉は、どこか本音のようでもあった。

 

 すぐに構えを取り直し、タイムブラスターを掲げる。

 

 銃口の前に、時計を模したエネルギー陣が展開されると、次々とウォークロックが十数体召喚される。

 

「……行け」

 

 短く命じ、レプリカ三体と共に、敵勢が一斉に襲いかかる。

 

「……ハァッ!!!」

 

 だが、迎え撃つプリズマとサファイアの動きは、先程までとは別物だった。

 

 強化された出力と速度。それだけで、クロステライザーを振るうだけでも、迫ってきたウォークロックの大半が一瞬で吹き飛ぶ。

 

「……そっちは、お願い!!」

 

 プリズマが叫ぶ。

 

***

 

「オッケー!!」

 

【UNCOVER THE SECRETS:GUARDIAN『メモリア』!!!】

 

【WONDERFUL THE ARCHIVE:GUARDIAN『ビビット』!!!】

 

【ESCORT THE DREAM:GUARDIAN『ガイア』!!!】

 

 蓮子、メリー、鈴夜、奏海がそれぞれ守護者へ変身。

 

 さらに凛たちも加わり、分断された敵勢へと同時に飛び込んだ。

 

「待たせた分、全力で請け負う……!!」

 

 メモリアはバトルジャパン(レプリカ)と対峙。

 

 相手の空手と舞を組み合わせた独特の格闘に対し、メモリアライドシューターUのタイヤ型エネルギーをヨーヨーのように操り、間合いを崩す。

 

「……せいっ!!」

 

 相手がコマンドバットを槍状に変形させ、防御へ移った時に一気に踏み込み、クロステライザーで斬撃。

 

 直撃すると、バトルジャパン(レプリカ)は、そのまま崩れ落ちるように消滅した。

 

「やーっとまともに動けるよ……!」

 

 ビビットは、キュアピーチ(レプリカ)と交戦。

 

 相手の軽快なステップに対し、高速移動で追従しながら、爪状のエネルギーで連続斬撃を叩き込む。

 

「天……誅っ!!」

 

 ペースを奪い、ビビットキャストマシンガンUを顕現。

 

 銃身で強引に叩き落とし、そのまま撃破した。

 

「……今回は、あいつらのエスコートだな」

 

 ガイアは、鳩谷こはね(レプリカ)と、その支援を受けたウォークロック群を迎え撃つ。

 

 応援によって強化された敵の動き。

 

「ジギャッ……!!?」

 

 だが、対するガイアは超加速。縦横無尽に放たれる赤黒い斬撃により、一瞬で数体を切り伏せる。

 

「ギルガルド!!『ジャイロボール』!!」

 

「ギルルッ!!」

 

 モンスターボールから解き放たれたギルガルドが回転しながら突撃。

 

 残ったウォークロックを一掃。その勢いのまま、鳩谷こはね(レプリカ)を吹き飛ばした。

 

***

 

「……行くよ!!」

 

「……うん!」

 

 プリズマとサファイアは同時に踏み込む。

 

「そう来なければ……心置きなく戦えんか」

 

 アイズもまた、迎え撃つように前へ出た。

 

 三者の斬撃がぶつかり合い、金属音が連続して響く。

 

「これを……こう!!」

 

 プリズマは、装着しているノベルを押し込む。

 

【『夢想封印』!!!】

 

 色とりどりの巨大な光弾が展開されると、アイズへと追尾する。

 

「追尾弾か……!」

 

 アイズが対応を始めた、その瞬間。

 

「狙い撃つ……!!」

 

 横合いから、サファイアの矢が放たれる。

 

「っ……!!」

 

 回避と迎撃を強いられる中で、光弾と矢の連携を捌ききれず、数発が直撃した。

 

「よし……当たった……!!……っ!!」

 

 手応えを感じた、その時。

 

「AAAAAAAAAAAAAAAARUNAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

 拘束されていたアース世怪が、無理やり拘束を引きちぎってこちらへ飛び込んでくる。

 

「来た……!!」

 

「……イリヤ」

 

 身構えるプリズマに、背中合わせに立つサファイアが、低く呼びかける。

 

「……私に、いい考えがある」

 

 短く、的確に作戦を伝える。

 

「これなら……尾張長人さんも……!!」

 

「分かった!ぶっつけ本番……やってみる!」

 

 それを聞き、プリズマは迷わず頷いた。

 

***

 

「あいつ等も全力って事か……」

 

 モードレッドは、ウォークロックを斬り伏せながら呟く。

 

 視線の先では、戦況が大きく動き始めている。

 

「……こっちも、体張らなきゃな……!!」

 

 そして剣を構え、力を込めた。

 

 

 

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