ウルトラワールド:Scramble Engage 作:おろさん
ルヴィアのリムジンに半ば強制的に乗せられたイリヤと美遊。
状況に追いつかないままではあるが、ひとまず二人は、向かいに座る凛たちの話を聞くことになった。
車内は静かで、外の喧騒が嘘のように遠い。
「……本題に入る前に、まず最初に話しておくことがあるわ」
凛が、いつになく真面目な口調で切り出す。
その様子に、イリヤと美遊も自然と姿勢を正した。
「世の中にはね――“聖女”って呼ばれる、特殊な適性を持った少女たちがいるの」
ゆっくりと言葉を選びながら、説明を続ける。
「その子たちは、“聖霊”っていう存在を認識できる力を持っている」
「そして、その聖女たちの管理や保護を行っているのが――政府公認の極秘機関、『聖霊庁』よ」
「聖霊庁……」
その単語に、イリヤは小さく反応する。
「そう言えば……蓮子とメリーが、何か言ってた気がする」
「え……極秘機関なのに……?」
美遊は思わず困惑した表情を浮かべる。
当然の疑問だ。
極秘のはずの組織が、一般人に知られているというのは不自然すぎる。
「あ、うん……」
イリヤは苦笑しながら頷く。
「とはいっても、あの二人のことだから……オカルト系のサイトとか動画を調べまくって、そこから辿り着いたっぽいんだけど」
そう言いながら、スマホを取り出す。
「たとえば、こんなの」
画面に表示された動画を再生する。
『ど、どうも……サトラレニでーす……』
流れてきたのは、どこかおどおどした声。
チャンネル名は『【サトラレニ】誰も知らない世界のバグ』。
映っているのは、陰のある雰囲気の眼鏡の少女だ。
『み、皆さんは……“聖霊”というものをご存じでしょうか……』
たどたどしくも、必死に語る。
『天使とか精霊……まあざっくり言うと、高次元から来た存在、みたいな感じで……
そ、それで……そういう聖霊は、心がキレイな女の子にしか見えないらしいんですよね……
その子たちのことを、“聖女”って呼ぶみたいで……』
少し間を置き、さらに声を潜める。
『革命戦争の頃……変な光とか、謎の城とか、空がひび割れる現象とか……色々ニュースになってたじゃないですか……』
『最終的には、全部“何事もなかった”みたいに消えたって話になってましたけど……
世間では集団幻覚ってことになってますが……わ、私の推測では……』
一呼吸おいて、
『あれって、日本の危機を“聖女”が止めたんじゃないかなーって……思うんですよね……』
動画はさらに続こうとしていたが――
イリヤはそこで再生を止めた。
「……この人、確か……陰謀論みたいな話ばっかりしてる人だよね……?」
美遊が、やや引き気味に言う。
「うん、まあ正直うさんくさいんだけどね」
イリヤも苦笑する。
「でもこの人、実はクロスタルリングのこととか、346プロのアイドルの噂とか……妙に“当たってる”ことも言ってて
だから、完全にデタラメってわけでもないかなって思ってる」
「え……じゃあ、それって……」
美遊はゆっくりと凛たちの方へ視線を向ける。
「実際に……そういうの、あるんですか?」
その問いに対して、
「……ええ」
凛は少しだけ間を置いてから、頷いた。
「まさか、ああいう形で外に漏れてるとは思わなかったけど……」
苦い顔をしつつも、
「内容自体は……大体合ってるわ」
はっきりと認める。
「ほ、本当だとしたら……どうして、その話を持ち出したんですか?」
美遊が戸惑いを隠せないまま問いかける。
すると、凛はあっさりと答えた。
「簡単な話よ。――冬木市に、その“聖女”が来ているらしいの」
一度言葉を区切り、続ける。
「それで、大師父様と
「内密に……? どうして?」
イリヤは首をかしげる。
協力するだけなら、わざわざ“内密”にする必要はないはずだ。
その疑問に答えたのは桜だった。
「それに関してなんですが……まず前提として、魔術協会と聖霊庁は、とても仲が悪いんです」
「……そうなの?」
意外そうに目を瞬かせるイリヤ。
桜は小さく頷き、丁寧に説明を続ける。
「ええ……簡単に言うと、価値観の違いですね
外宇宙から来たとされる“聖霊”は、魔術師にとって非常に魅力的な研究対象
ですが、その聖霊は“聖女にしか見えない”。そして聖女は、聖霊と心を通わせることで、“アルカナ”として力を借りることができる――そういう仕組みのようですわ」
そこまで聞いて、イリヤは「ああ……」と小さく声を漏らす。
なんとなく、対立の理由が見えてきた。
「つまり魔術師からすると……」
桜は少し言いづらそうにしながらも、はっきりと言った。
「“高次元の存在に媚びを売っている”……そういう風に見えてしまうんです」
「そ、それは、確かに揉めそう……」
イリヤは苦笑混じりに呟く。
桜はさらに続ける。
「それに加えて、立場の違いもあります
魔術師はあくまで研究者ですが、聖霊庁は政府公認の機関……いわば公務員のような立ち位置です
それと、神秘に対する考え方も違っていて――」
一度言葉を整理し、
「魔術師は“神秘は秘匿し、独占するもの”と考えるのに対して……
聖霊庁は“管理し、必要に応じて扱うもの”と考えています」
「な……なるほど……」
美遊が頷く。
価値観も立場も、真逆に近い。
対立するのも無理はない話だった。
「――とりあえず……なんかドロドロしてるってことだね……」
少し情報量に押されながら、イリヤはそうまとめる。
その一言で、張りつめていた空気がわずかに緩んだ。
凛は肩をすくめながら話を引き取る。
「まあ、ざっくり言えばそういうこと
お互いに認識が薄い部分もあるんだけど……それでも致命的に価値観が合わなくて、関係はかなり険悪なのよ」
そして、少しだけ表情を緩めた。
「でもね――そんな中でも例外はあるわ
まさに現代文化に理解のある
比較的、話が通じる相手――『西欧聖霊庁ローゼンベルグ支部』の支部長とね」
「へえ……」
イリヤが感心したように声を漏らす。
「で、今回の件で合流する予定の聖女が――」
凛は視線を二人に向け、はっきりと言った。
「その支部長からの指示で、この町に来た子ってわけ。」
*****
――その頃。
穂群原学園・応接室。
講演を終えたばかりのリリーナ・ドーリアンは、ソファに腰掛け、一息ついていた。
「お疲れ様です、ドーリアン外務次官殿」
落ち着いた声でそう告げたのは、白に近い髪色と赤い瞳を持つ少女。
その隣には、同じく赤い瞳をした、小柄でゴスロリ風の服装の少女が立っている。手にはトランクを携えていた。
――いずれも、護衛。
ただし、ただの護衛ではないことは、その佇まいからも明らかだった。
「ありがとうございます、『ヴァイス』さん、『リーゼロッテ』さん」
リリーナは柔らかく微笑む。
「お二人がいてくださるおかげで、こうして落ち着いて話すことができます」
名前を呼ばれた二人――
白髪の少女『ヴァイス』と、ゴスロリの少女『リーゼロッテ・アッヒェンバッハ』。
彼女たちは、短く視線を交わす。
「……お気になさらず」
ヴァイスが静かに答える。
「私は、ラーゲルクヴィスト司令官殿の命により、日本滞在中の護衛任務を任されている身ですので」
あくまで任務としての対応。
その言葉には、どこか生真面目すぎる響きがあった。
「……流石に、堅苦しすぎじゃないの?」
隣で、リーゼロッテが肩をすくめる。
「しかし……」
反論しかけるヴァイスに対し、
「リーゼロッテさんの言う通りです」
リリーナが穏やかに割って入った。
「この数か月、何度もお世話になっていますから。もう少し肩の力を抜いていただいても構いませんよ」
「……ぜ、善処いたします」
少し戸惑いながらも、ヴァイスは小さく頷いた。
そのやり取りを見て、リーゼロッテは軽く息を吐く。
「それにしても……貴方も物好きよね、リリーナ・ドーリアン」
壁に寄りかかりながら、どこか皮肉めいた口調で言う。
「本来護衛を担当するはずだったゼニア・ヴァロフが来られなくなったから、日本聖霊庁の方から代わりを頼まれたけど……」
ちらりと自分自身を指し示し、
「私はどっちかっていうと、“平和”とは縁遠い側の人間なんだけど」
その言葉には、過去を匂わせる影があった。
だが――
「それでも、今こうして貴方はここにいる」
リリーナは、まっすぐにリーゼロッテを見る。
「どのような理由であれ、世界のために動いている」
一拍置き、
「『緋目の人形遣い』――かつてはOZの依頼すら引き受けていた始末屋……
ですが今の貴方は、その頃とは違って見えます」
穏やかに、しかし確信を込めて言う。
「きっと、貴方にも……善き出会いがあったのでしょう」
「……」
リーゼロッテは、一瞬だけ言葉を失い――
ふい、と視線を逸らした。
「……そう思うなら、勝手にそう思ってればいいけど」
ぶっきらぼうに返すが、その声音はどこか柔らかい。
それ以上は触れず、リリーナは話題を切り替える。
「……ですが、どうやら時間はあまり残されていないようです」
窓の外へ視線を向けながら言う。
「気がつけば、日本を巡って随分と経ちました」
「では……もう、日本を発たれるのですか?」
ヴァイスが問いかける。
「はい」
リリーナは静かに頷いた。
「地球圏統一国家は短期間で『新国際連合』へと移行しましたが……各国の関係は、まだ安定しているとは言えません。だからこそ――」
その瞳に、強い意志が宿る。
「私に出来ることがある限り、立ち止まるわけにはいかないのです」
「……そう」
リーゼロッテが小さく呟く。
そして、ふと思い出したように口を開いた。
「ところで、その様子を見るに……誰かに会いたかったようにも見えるけど?」
少し意地悪そうな笑みを浮かべる。
「確か、『ヒイロ・ユイ』……最近は日本にいるって話だったわよね?」
「り、リーゼロッテ殿……!」
ヴァイスが慌てて制止しかけるが、
そのまま話は続いてしまう。
「え、ええと……」
ヴァイスは気まずそうに咳払いしつつ、補足する。
「新国際連合の平和維持組織として『プリベンター』が結成されましたが……
例の機動兵器パイロットの方々は、協力はしても正式な所属はしないとのことで……」
言葉を選びながら説明する。
それを受けて、リリーナは――
「気にしないでください」
穏やかに微笑んだ。
「彼には会えませんでしたが……それでも、私は嬉しく思います」
「え……」
予想外の返答に、ヴァイスは目を瞬かせる。
「ヒイロも、世界のために行動している」
静かに、しかし確信を込めて言う。
「きっとそれは……私と同じ道でしょう。それが嬉しくて……」
その言葉には、確かな信頼と想いが込められていた。
「……そ、そうなのですか……?」
理解が追いつかず、戸惑うヴァイス。
リーゼロッテは、そんな二人を見て肩をすくめる。
「……ずいぶんと不思議な感情してるわね、リリーナ・ドーリアン」
「あの……お言葉ですが、おそらくこの場合……」
ヴァイスがぽつりと口を挟む。
「その感情は、リーゼロッテ殿が愛乃はぁと殿に向けるものと、少し似ているかと……」
「……」
一瞬の沈黙。
「……まあ、いいわ」
それ以上は何も言わず、リーゼロッテは背を向ける。
「悪いけど、私はそろそろ行く」
トランクを軽く持ち上げながら、
「頼まれごとがあってね。ここでお別れってことで」
そう言い残し、応接室を後にした。
扉が閉まる音が、静かに響く。
「……彼女も、何か任務が?」
リリーナが問う。
「はい」
ヴァイスは頷く。
「ラーゲルクヴィスト司令官殿の依頼で、協力者と共にある調査を行う予定です。
恐らく、この後その人物と接触するものかと」
淡々とした報告。
だがその内心では――
「(……話によれば、その協力者の男はかなり異様な殺し屋……
しかも、とある『願望器』に関与した過去があるという……)」
わずかに眉をひそめる。
「(ヒイロ・ユイらの動向にしてもそうだが……今回、再び日本で何かが起こるというのなら……それほどまでに危険だというのか……)」
廊下の奥へ消えていくリーゼロッテの背を見送りながら――
ヴァイスは、静かに気を引き締めるのだった。
*****
どことも知れぬ、薄暗く不気味な場所。
古びた教会を思わせるその空間には、冷たい静寂が満ちていた。色褪せたステンドグラスから差し込む光すら、どこか不吉な色を帯びている。
「……申し訳ございません、コンバーサリー様。まさか、あそこまで強引に解除されるとは……」
シゲツ・リヴァースとヴァーレン・ランヴァースは、床に跪き、目の前の人物へ頭を垂れる。
その視線の先に立っているのは、シスターを思わせる衣装に身を包んだ、妖しげな女性――コンバーサリー。
「……大変腹立たしい結果ではありますが、最初などこの程度のものです」
コンバーサリーは静かにそう告げた。
声色は穏やかだ。だが、その奥底には、隠しきれない苛立ちが滲んでいる。
どうやら数日前の、アース世怪の一件を、完全に納得しているわけではないらしい。
「……守護者メモリア。そして守護者サファイア」
その名を口にした瞬間、彼女の瞳がわずかに細められる。
「あの娘たちについては、私が直接調べます
貴方たちは、引き続き“救済”を進めなさい」
「はっ……!!」
二人は即座に頭を下げ、力強く応えた。
そんな厳かな空気の中――
「(……しょうもないなぁ)」
場違いなほど気の抜けた声が、心の中で呟かれる。
教会の一角に置かれたソファに、だらしなく寝そべっている少女が一人。
ボサボサの赤い長髪が目を引くその少女は、シゲツたちと同じく、警官服を思わせるどこかアイドルじみた衣装をまとっていた。
「他の二人に比べると、随分と冷めているな。――『アゼル・インベルソ』」
その少女のもとへ歩み寄ってきたのは、ドクター・エビテンとコロモだった。
「……ああ、ドクター・エビテン」
アゼルは寝そべったまま、ちらりと視線を向ける。
「ご自慢の人造人間ちゃんも一緒なのね」
「その言い方は、人聞きが悪い」
コロモは表情ひとつ変えず、淡々と言い返した。
「そんなことよりさ」
アゼルは気にした様子もなく、軽い調子で続ける。
「この前の件から二人とも、随分と安心してない? 特にそっちの人造人間ちゃん」
「……否定はしない」
コロモは短く答えた。
すると、エビテンが腕を組みながら口を開く。
「そもそも、あのような強引な方法で侵蝕世怪人を作ること自体、我々の本来の目的とは相反している。この反応も当然だ。」
その言葉には、わずかな不満と批判が込められていた。
「ふぅん……」
アゼルは興味があるのかないのか分からない声音で相槌を打つ。
態度は相変わらず気だるげだ。
「……それはそれとして」
今度はコロモが話題を変えた。
「お前はお前で、コンバーサリーから別件を任されていたのではなかったか?」
「……ああ、そっちはもう済んでるよ」
アゼルはあっさりと答える。
「あとはドクター・ベノディアの指示で、“執行人”さんが引き継いでる」
「……また出向くのか」
エビテンは眉をひそめた。
「彼女は現状、前線に出るには少々――」
だが、その言葉を遮るように、アゼルは肩をすくめる。
「そこは別にいいでしょ。仮にも、ドクター・ベノディアの側近なんだし。
ベノディアに命じられたことには、あの人、ちゃんと従う性分なんだよ」
どこか他人事のような、軽い口調だった。
エビテンは小さく息を吐く。
「……まあ、確かに。本領を発揮できれば、あの女は強い。
今は、あれこれ言うべきではないか……」
そう呟きながらも、その表情には警戒の色が浮かんでいた。
完全に信用しているわけではない――そんな本音が見え隠れしている。
*****
同時刻――冬木市。
高層ビルの屋上では、冷たい風が吹き抜けていた。
「……はい。準備は整いました。監視も引き続き続行します」
半分だけ割れた仮面をつけた、灰色の瞳の少女。
彼女は通話を終えると、静かに端末を下ろした。
「そういうわけだ」
振り返り、隣へ視線を向ける。
「好きにやれ、とのことだ」
「良いだろう……」
低く、不気味な声が返る。
「私も、この力を振るいたくて堪らなかったからね……」
そこに立っていたのは、全身を機械で構成された異形の男。
金属の身体が日の光を鈍く反射する。
「この世の悪を、根こそぎデストロイする……」
男はゆっくりと拳を握りしめる。
「そのために、私は新たな力を手に入れる!!」
そしてその背後には、不気味な静寂を纏った無数の機動兵器が控えていた。
―――――
*注釈:本作品は、自著の文章をAI(ChatGPT等)で推敲・校正して投稿しています。ストーリーや台詞はすべて作者が作成したものですが、読みやすさ向上のために文章の整理を行っています。