ウルトラワールド:Scramble Engage 作:おろさん
「REVVOVOOOOOOO……」
その頃。逃走したレベルアップ世怪は、人のいない路地裏をうろついていた。
「おや……こんなところに侵蝕世怪人がいるとは妙なものです。またユニークな造形ですが……」
その姿を見かけ、現れたのは瑠璃川ダイヤ。興味津々に彼はレベルアップ世怪へ近寄ろうとする。
「不用意に近づくのは止めて貰おう。」
しかしそう声をかけられ、二人組に妨げられる。
「シゲツさんとヴァーレンさん……ああ、これは貴方達が生成したんですか。」
「正確にはコンバーサリー様が、だけど。このレベルアップ世怪はとても大切な実験体でね。故に下手な事をされると困るからとっととどこか行ってくれないか。」
「酷い言われようですねぇ。私一応上司ですよ?」
「私の上司はコンバーサリー様のみ。」
仮にも階級的には上らしいダイヤに対し、シゲツとヴァーレンはあからさまに不躾な態度を隠そうともしない。
「別働隊とはいえ、何とも偉そうな態度じゃないかしらぁ?」
「熱中するのは分かるっすけど……それ以外をぞんざいにするのは、ちょっとどうかと思うっすよ」
そんな二人の態度を物申すように、背後からは二つの声。そこにいるのは、長い銀色の髪をなびかせる少女と、快活にオレンジ色のポニーテールを揺らす少女。ともに同じ制服を身にまとった、二人の女学生だった。
「誰かと思えば、組織の引っ付き虫か。」
「確かに私達は傘下だけど、本部メンバーに対してそれは失礼極まりないわぁ……其方のボスは随分と部下の躾がなってないわねぇ。」
シゲツの悪態を気にせず、銀髪の少女はかなり舐め腐っている彼女らを、虚ろげな黄色い瞳でクスクスと見下ろした。
「ふざけ――」
「はいストップストップ。」
ヴァーレンは無表情ながらも怒りを露わにする。だがその目の前に一瞬で割り込み、片手を挙げてそれを制した人物が一人。シゲツらの仲間であるアゼルだ。
「アゼル……何で邪魔する」
「コンバーサリー様の指示だよ。一旦あの侵蝕世怪人は放置でいいから、帰って来いってさ。」
「そっか……」
アゼルを睨むヴァーレンだが、アゼルの返しで落ち着いた。
「いやはやすいませんねぇ本部の皆さん。とはいえレベルアップ世怪の件に関してはなるべく静観していただけると助かるんで、そんじゃ。」
その後アゼルがダイヤ達にそう言いつつ、そのまま三人でこの場を去って行った。
「いい加減慣れたとはいえ、シゲツとヴァーレンのあの態度はどうにかならないっすかね?」
「本人たちがコンバーサリーに心酔している以上、当分ああでしょうねぇ……」
オレンジ髪の少女が呆れたように零した呟きに、銀髪の少女が言葉を返した。
「全く、後付けであそこまで歪んだ人間もそういませんよ……ところで、首尾はどうですか?」
二人の後ろから、ダイヤがそう聞いてくる。
「ええ、ターゲットの所在は特定できたから、あとはココデーに任せたわぁ。」
「頼まれた例のアイテムも渡しておいたっす。」
「話が早くて助かりますね。それで……」
「REVEVEVE……」
横に視線を向けると、レベルアップ世怪が再び動き出し始めている様子。
「……結局あれは放っておくのかしらぁ?」
「十中八九ココデーさんと出くわす可能性はありますが、今は一旦それで行きましょうか。」
「まあそれが賢明っすか……」
ダイヤの発言に少女二人も頷き、路地裏から這い出て徘徊を始めたレベルアップ世怪の動向を、しばらく静観することに決めたようだった。
*****
「なるほど……確かにいくつかの地域で動画配信が行われた履歴がたんまり残っている……」
√BACK-DOORSにて。漆黒の闇はハッキングを開始し、数年前からの国内のネットカフェ全てのPC履歴を隅々まで調べ上げていた。
そこで分かったのは、Vtuber『青春くりあ』が数々のネットカフェで配信を行っていた形跡だった。
「ムフフ……随分と興味深いじゃないか……しかもこれの何が凄いかって、堂々と配信を行ってるハズなのに、誰もそれを見ていない!なんなら機材すらも!ぶっちゃけオカルトじみてるが、さっきのを踏まえるとしっくりくるな……」
「さっきのレッドファルコン、指輪能力は多分透明化……機材とか何でもかんでも透明にして隠せるのかな。だからスカウトされるまで、ネットカフェで配信活動を繰り返すことが出来てたのかもね。」
闇の独り言同然の発言を聞き、鈴夜は興味深そうに頷いている。
「あの、オカルトサイトの噂が本当かもしれないっていうのは分かるんだけど、そこからどうするつもりなの?流石に会社に乗り込むわけにいかないし、奏海さんたちもそこら辺のプライバシー暴く人じゃないよね?」
「そりゃツクモちゃんが上に頼み込んでよ。346の会長さんとかにコネクションとかそんな……」
「事務員バイトにそんな特権無いよ……;;;」
「ほんじゃあそっちは何か分かる事とかあるのです?共演者のお二人さん。」
見かねたのか、センリツがちとせと千夜に質問するものの、
「うーん、ごめんね、どっちみちちょっと話したくらいだから……」
「Vtuberの場合、打ち合わせの時はリモートで話すようで……流石に画面越しで心情はすぐ見抜けませんよ。私は誰かさんではありませんから。」
「まあ、それはどーも。とにかく、細かい事は一旦あのハッカーに任せておくとして、こっからどうするかだな。改めて打ち合わせするのはまだ先だし、どっちみち俺らが指輪を奪う意味も基本無いし……」
奏海はそう言いつつ、鈴夜の方に視線を向けていた。
「ねぇ闇センパイさぁ、どうせなんだから――」
「青春くりあの所属会社にハッキングするって言うなら却下だ。」
「なんだよ……奏海さんと組んでから断ってばっかじゃん。ってかこう言うの遠慮なくやりそうなのにえこひいき?」
「まず私は便利なツールじゃないんだぞ。第一そっち方面許可得てないし、そもそもVの中の人を見るの自体私のポリシーに反する。」
「ケチ……」
「何がケチだ!そも元を辿れば、お前が茅森奏海と手を組んだせいで、よりにもよってドデカイ協賛組織がついてきたからだろうが!お陰で私は危うく『組織の犬』という概念に片足突っ込んでるんだぞ!!この私が!この天才的なウィザードなる私に何たる仕打ち(ry」
「だったら制限の中でスマートにハックしちゃってよ。天才ウィザード様が聞いて呆れる」
「今さっきVの中の人を知るつもり無いって言ったばっかりだろうが……」
闇は呆れたが、鈴夜は一歩も引く気がない。本人に自覚があるかは不明だが、随分と気が立っているのが分かる。
「ツクモ殿……もしかしなくても鈴夜殿、何か微妙に苛立ってるござるよね?さっきからほぼずっと急かしてばっかりでござる。」
「あ……やっぱり、そう思う?何か好戦的っぽくなってるというか……」
その様子に違和感を覚えたあすみは、隣のツクモにそっと視線を投げ、小声で問いかける。対するツクモも、逆に疑問を投げかけるような言い方で頷いた。
実際彼女も、鈴夜のどこか落ち着かない様子が気になって仕方がない。これの前に胡散臭い勧誘の人達を目にした瞬間から、彼は露骨に不快感を露わにしていたが、ソレと比べてもあまり褒められたものではない。
「まあ、ああいうのは十中八九いつもの悪癖でござるな……じゃなきゃあんなピリピリしてないでござる。」
「あ、悪癖って……あのー、悪癖であそこまで行くの?」
「うむ、一定条件で割と簡単に……」
そう話していると、見かねたセンリツが鈴夜に近づき、彼の肩をポンと叩いた。
「……鈴にぃ、ごねたとてどうにもならんから止めるのです。そもそもボクらは、パラレルファイターから指輪を奪わなくても良いハズなのですし……」
「分かったよ仕方がないな……」
鈴夜は不服そうだが、闇へしつこく迫るのを大人しく止めた。
「私への謝罪が無いんだが……?(by闇」
「(いつまで逃げるつもりなのですか、鈴にぃ……)およ?」
センリツが深刻そうな表情で俯いていた時、後ろからイリヤに声をかけられる。その更に後ろにトラヴィスとリーゼロッテもいる。
「えっと、お取込み中失礼するんだけど……これ」
イリヤが差し出したクロスタルプロテクターの画面を、何人かが覗き込む。そこに映し出されたレーダーの座標には、ウォークロックたちの出現位置を示す赤い光が点滅していた。
「すぐに行こうと思ったけど、場所が東京だから鈴夜さんや茅森さんに先行ってもらおうと思って。私は、美遊や蓮子とメリーと待ち合わせしてるから……」
「ちなみにその蓮子とメリーとやらは最後に来るんだとよ。バイト穴あけ過ぎたからこれ以上は殺されるだのなんだのらしい(byトラヴィス」
「(ジェットマン指輪の事はもういいけど、それはそうと何やってんのあの人達……)(byリーゼロッテ」
「ウォークロック……良いタイミングで来るじゃん。」
「……あれ、ちょっと待ってください。」
さっきまでトゲトゲしていた鈴夜は、渡りに船とばかりに表情を緩めた。しかしその横で千夜はレーダーの反応にどうも引っかかりを覚えていた。
「お前、この座標って確か……」
彼女の言葉に、奏海は頷く。
「ああ……どうやら連中も、既に嗅ぎつけてたみたいだな……」
***
その頃。くりあが所属するグループALIVEの事務所にて。
「まったくもう、会議中に勝手に抜け出すのは止めてくださいって言っているじゃないですか。これでもう何回目でしたっけ……?」
「……31回目。」
マネージャーである『
くりあは元々、ライブマンの指輪能力『
機材ごと姿を消すことで、誰にも気づかれずに配信を重ねていた彼女だが、ネット上で『透明Vtuber』の噂が広まり始めた頃のこと。なぜか居場所を突き止めた不破が、遠く離れたネットカフェまでわざわざ押しかけてきたのだ。
姿を消して配信中だったにもかかわらずあっさりと見つけ出され、そのままグイグイ迫られてスカウトされてしまった。
そうした経緯があって、くりあと不破は少々不思議な関係なのだ。
「まあ、うちがかなり寛容だから良かったものの……それで、やっぱりそこまで叶えたいんですか?
「うん……」
不破の問いかけに、くりあは自分の右人差し指の『超獣戦隊ライブマン』の指輪を見つめる。
「まあ、こういう時はほどほど且つコツコツやっていきましょう。ほらほら暗い顔しちゃダメですよ。笑顔、いつものキラキラした笑顔ですよぅ。」
「うん……そう、だね。」
不破のどこかおどけた励ましが、くりあの張り詰めた心を緩め、その顔に自然な笑みを連れてくる。
「さあ早く戻りますよ。美城プロダクションのアイドルとのコラボも要望通り&準備バッチリに仕上げなくちゃですもん!」
そう言って不破は勢いよく廊下を歩く。くりあは、その頼もしい背中に小さくクスリと笑った。
元々稼ぐために始めた配信活動だったが、不破と出会ってからというもの随分と充実するようになった。
実際、くりあはそれが楽しいと感じている。しかしそれでも彼女は、どうしても叶えたい願いがある。だからこそ、今の生活と板挟みになっているのだ。
「それに、もうすぐ
「ほほーん?念願のなんでぃすってぇ?聞かせてもらいたいんですけど~?」
その時だった。突然、全く知らない声が聞こえる。真後ろを振り向くと、そこには上級ウォークロックが一人佇んでいた。
切り抜き配信ボクサー『ココデー・ロケット』
「時計頭……いつからそこに……!?」
突然現れた上級ウォークロックのココデーの姿を見て、くりあ達は警戒する。しかしココデーはその問いかけを無視して迫って来る。
「キッヒヒ!まさか青春くりあの中身がVの方とそっくりだなんてぇ衝撃なんですケド?プライパシーどこいったん??……問いただしたいけどォ、とりま先にオメーの指輪を頂くんですケド~?その後は切り抜き動画作ってェ、ちゃっかり印象操作ァしちゃってぇ~」
「
「私にやらせて。」
不破はくりあを逃がそうとするが、くりあ本人が前に出る。
『ライブマンの動物のエンブレム』→『レッドファルコン』
『スーパーライブロボ』
「
【CROSSTAL RING!!!】
クロステライザーに指輪を装填し、音楽に合わせクラップ。
【『ライブマン』!!!】
そしてくりあは、パラレルファイター『レッドファルコン』に変身した。