Fate/Scramble U World ~秘封トラベラー・メモリアル~   作:おろさん

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美遊「パラレルファイター……守護者の私たちと違って、歴戦の英雄たちの力が籠められた指輪で変身する、そんな人達をそう呼ぶ……

Vtuberという活動を通し、本当の願いを思い出したレッドファルコン。彼女のように、私もきっと……

パトレボルシオンという、クレイジークロックの別働隊が暗躍する中で、次に私達が出会うのは……」


第14話:トロピカれ!常夏気分の元令嬢
トロピカれ!常夏気分の元令嬢 01


 

「フーンフンフフーン♪」

 

 冬木市。アインツベルン邸を離れた海沿いの小道。

 

 イリヤと美遊が軽やかな鼻歌を響かせながら並んで歩いており、少し遅れて蓮子とメリーの二人が楽しげにその背中を追っていた。

 

「んー……久々の休暇……たまには、こんなところを歩いていくのもいいものねぇ。」

 

「イリヤちゃんも美遊ちゃんも上機嫌そうで何より。連れてきた甲斐があるわね。」

 

 背伸びをしながらルンルン気分で歩く蓮子とメリーは、ふと視界が開けた海を見つめ、すっかりご機嫌な様子だった。

 

「(イリヤと一緒におでかけ……正直二人きりが良かったけど連れて来てくれたのは蓮子さんとメリーさんだし、まあこの二人なら別に問題ないよね……)」

 

 美遊は心の中でそんな風に考えてはいたが、要は蓮子とメリーのふたりを心から信頼しているようだった。

 

「……あ、そう言えばこの辺りに美味しい肉まんの店があったんだったっけ。せっかくだから買いに行こうよ。」

 

「それ良いかも――ん?」

 

 呑気に会話していた背筋に、不意にただならぬ気配が走る。視線を向けた先の砂浜では、何かを企んでいる風の侵蝕世怪人がいる。

 

「RERAIZAAAAAAAAAAAA""""……」

 

 大釜のような頭を持つ『レンキン世怪』。尻尾に巻き付けた杖で砂をブロック状に固めると、自身の頭へと次々に放り込んでいる。

 

「こ、こんなところに侵蝕世怪人……!」

 

「タイミング良いのか良くないのか……まあ、倒すに越したことは無い。」

 

 折角のルンルン気分だったというのに、イリヤと美遊は小さくため息をつく。ともあれ放置するわけにもいかないので、四人は砂浜に座り込むレンキン世怪の元へと駆け寄った。

 

「SYUTAU……RIRAZARISYU……!!」

 

 足音を捉えたレンキン世怪は振り返ると、即座に波打ち際へと駆け足で移動。すると何故か杖で頭部の釜をかき混ぜると、ごぽりと音を立てて五つほどの爆弾が生まれた。

 

「もしかして、砂から爆弾を?となるとモノづくり系……中々厄介じゃない?」

 

「こういうのは、下手に攻撃したらよくないやつね……上手い事立ち回るべき――」

 

「ヒャッッッッホォォォォォォゥ!!!!」

 

「・・・ん?」

 

 蓮子とメリーが分析を交えながら身を構えた瞬間。緊迫した空気を遮るように、あまりにも場違いな、はしゃいだ大声が響き渡る。

 

 それも、レンキン世怪のすぐ真後ろから。

 

「爽ッッッッ快ですのー!!!」

 

 迫る大波。その奔流に乗り、歓声を上げながらサーフィンをする者がいる。

 

 セーラー服のようなフリフリ衣装と、極彩色の金髪サイドテールとハイビスカスの髪飾りをなびかせる少女。

 

 プリキュアの一人、この場合パラレルファイター『キュアサマー』が、波を蹴立ててサーフボードでやって来た。

 

「E――MOPE!!!?」

 

 すぐ背後の海辺に立っていたレンキン世怪は、足元から襲いかかった大波を盛大に被った。生成した爆弾の導火線も、たちまち濡れて消えてしまう。

 

「突貫!かーらーのートロピカルなキーック、ですのー!!!」

 

「ATORIEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!????」

 

 キュアサマーがサーフボードから勢いよく飛び出し、追撃の回し蹴り。炸裂した強烈なキックを受け、レンキン世怪は遥か空の彼方へとぶっ飛んでいった。

 

「イッツア大勝利!!ですのー!!……って、あら?」

 

 決まりきったポーズでドヤ顔をキメるキュアサマーだが、その視線の先にいたイリヤたち四名は、あまりの勢いに呆然としていた。

 

「え、あの……えっとホントにどちら様?」

 

「む?むむむ?一般人……にしては変わった気配を感じますの……あれれ、というかその指輪……皆様はもしや、伝承の守護者ですの!?」

 

「守護者を知ってる……!?あなたは、一体……?」

 

 困惑する一同の右手人差し指。その人差し指にはめられた指輪に視線を向けた瞬間、キュアサマーは満面の笑みで目を輝かせた。

 

「それは勿論!U時空考古学を学んだ身共にとって、世界を救う鍵となる守護者……身共の願いのためにも、絶ッッッッ対に会いたかった存在!でも小学生の子が二人もいるのは、流石に予想外でしたの。」

 

 守護者を知っている存在。美遊の問いかけにキュアサマーは誇らしげに語りながら、クロステライザーからクロスタルリングを取り外す。

 

 変身が解けた彼女は、赤髪のポニーテールと琥珀色の瞳を露わにする。シンプルな黒ビキニに薄手のパレオとベルトを巻き、その上から白衣を羽織った服装。どこか活発さを感じさせる大学生の少女は、こう名乗った。

 

「身共は『榎小路(えのこうじ)ユミカ』!この冬木市の海に眠る謎を解明するために参りましたの!……以後お見知りおきを、ですの!」

 

 

*****

 

 

 クレイジークロックの拠点『クロックワーク・ネクサス』にて。

 

 この日、一部のエリアを中心にものっすごい地響きが続いていた。

 

「……思いっきり五月蠅い。兄者、これで何日連続だろうか?」

 

「……9日連続だな。コンバーサリーめ……救済だのなんだのとえらそうな事言っておいて、あそこまで沸点が低いとはな……」

 

「細かい事は置いておいて……分からなくもないのですがね。大事に保管していたレベルアップ世怪が、コロッと倒されてしまったのですから。」

 

 そう会話するコロモとエビテン、そしてダイヤ。最近続く地響きや銃撃戦の音には慣れたものの、それはそうとコンバーサリーの過剰な怒りようには、いい加減呆れ果てていた。

 

「おいおい、数日ぶりに戻ってみたってのにまだ鳴りやまねーのか?」

 

 その時、どこからともなく一人の少女が三人の元へと歩み寄ってきた。

 

 赤いリボンタイにプリーツスカートの学生服。その上から紺色のインナーとピンク色のパーカーを重ね着という服装。毛先が橙色に染まる黒髪を小さなループツインテールのその少女は、赤みを帯びた瞳で、震源地の教会を見つめている。

 

「あら、すみませんねぇ。コンバーサリーは中々怒りが収まらないんですよ。」

 

「……樹里サマが言うのもなんだけどよ、なんであんなのがクレイジークロックにいるんだ?」

 

「元々ドクター・ベノディアの人選ではありますし……上層部の決定にはある程度従わないとならないのは、社会の厳しいところです。」

 

 自らを『樹里』を名乗った少女を前に、出迎えたダイヤは呆れたように、親しげに苦笑を浮かべてそう言った。

 

「ところでわざわざ戻って来たのなら、何か進捗でもあったのか?」

 

「そりゃな。突っかかって来た連中をサクッとぶちのめしてやったぜ。」

 

 横からコロモが声をかけると、樹里は手の平に乗せた二つのクロスタルリング『電撃戦隊チェンジマン』と『Go!プリンセスプリキュア』の指輪を見せる。

 

「ほぉ、悪くない成果じゃないか。正直助かるな、私ばかりが出向くと流石にしんどかったし――」

 

「持ってきてくれてありがとう」

 

 感心するコロモの前に、遮るように一人の影が割り込む。ヴァーレンが、樹里が見せた指輪二つを断りもなしに持っていったのだ。

 

「え、ちょっ、オイ待て!勝手に持っていこうとすんじゃねぇ!!ってか割と手間かかったんだぞ手に入れんのに!!」

 

「どうでもいい。クロスタルリングはコンバーサリー様のご機嫌取りにはもってこいのアイテム。コンバーサリー様のご機嫌取りは何よりも優先される。異論は殺す」

 

「いや意味が分からねぇしふっざけんなお前!!?」

 

 樹里は止める、というか手を出そうとしたが、ヴァーレンは全聞く耳を持たずに勝手に歩を進め、すぐさまその場を去ってしまった。

 

「ったく、別働隊ッて立場だからって好き勝手過ぎるだろ……まあ、こうなると思って、いくつか隠しておいてよかったよ……」

 

 怒り半分、呆れ半分で、樹里は一つ大きくため息をつく。それからポケットを探り、別のクロスタルリングを三つ取り出すと、コロモの手元へと放り投げた。

 

「お前もお前で、奴等の扱いに慣れて来たな……」

 

「流石にそこまで短気なつもりはないんだが。樹里サマの事なんだと思ってるんだよ。」

 

「フレイ○ード」

 

「氷要素どこだよ……って」

 

 エビテンと樹里の会話に割り込むように、背後から別の声が響いた。振り返ると、そこにはアゼルが静かに立っていた。

 

「いやぁ、さっきはヴァーレンが失礼なことしちゃったようで失敬失敬」

 

「失敬失敬じゃねぇよ……いい加減アレコレ言うのも疲れたから今は何も言わねーけど、アンタのボスのあの極端な性格、どうにかできねぇのか?」

 

「根本的なとこはちょっと……まあだからこんなこともあろうかと、ちゃっかり独自で動きましてねぇ、丁度いい素体を見つけたからあのジュエルを入れ込んでやったの。」

 

 呆れる樹里に対して、アゼルは軽い口調で語る。

 

「性格反転で作った侵蝕世怪人は暴走がネックだからさ、だからその心配が大して無さそうな人を見つけてねぇ」

 

「いや、どうせあれだろ、ずっと就活続けてるニートを『諦め悪い』って決めつけて、無理くり反転させたとかそんなんだろ……」

 

「・・・」

 

 得意げに語るアゼルに対し樹里が冷ややかにそう言うと、アゼルは硬直した。

 

「……え、マジ?」

 

 

*****

 

 

 一方その頃。イリヤ達は、ユミカの話を引き続き聞いていた。

 

「う、海に眠る謎?この町に……?」

 

「その通りですの。えーっと、その前に前提として一つ質問したいのですがよろしいでしょうか?」

 

「質問?いいけどどんな?」

 

 蓮子が軽く返すと、ユミカは表情を変えずに問いかけた。

 

「ある筋にて、守護者の内誰かが、国際機関などの組織と協力してる……という情報を身共は手に入れましたの。皆様はご存じですの?」

 

「組織?」

 

 その質問に対し、四人は首を傾げる。(聖霊庁はともかく)シンプルにそんな大それたことをしている話を聞いたことが無かったためだ。

 

 なので全く存じ上げないため、どう返せばいいか迷った時。

 

「多分、俺の事を言ってるんだと思うぞ。」

 

 後ろから声が聞こえる。

 

「そういや、お前らに言ってなかった事が多かったな。」

 

 振り向くと、目の前には奏海が立っていた。

 

 

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