ウルトラワールド:Scramble Engage 作:おろさん
「何を――ドギャアアッ!!!!?」
上空から、何かが落下した。その凄まじい衝撃により、エーアイ世怪とウォークロックたちはまとめて弾き飛ばされる。
「っ!?……ん……?」
咄嗟に目を塞いでいたイリヤ。すぐに目を開くと、目の前にあるのはクロステライザーだった。
「く……クロステライザー……!!!」
「ということは……つまり……!!」
立ち上がる凛とメモリアは、イリヤの目前にあるクロステライザーを見て、ある事を確信する。
「これって……」
イリヤは、宙に浮かぶクロステライザーへと、恐る恐る近づく。
「……そう、だね……こうなったら……何が何でも、やってやるんだからっ!!!!」
半ばヤケクソにも見えるが、確かに覚悟を決めた瞳で。彼女はクロステライザーを掴み、空へと掲げる。
校庭の大きな木の根元に転がっていた指輪が、ひとりでに宙を舞い、彼女の元へと飛来。
そしてポケットに入ったままの、図書館で手に入れたクロステラノベルのもう片方を取り出し、装着する。
【ブレンドハーツ・エレメンタル】
【とある喫茶店で働く聖なる少女達が、ちょっと過激に愛を振り撒く】
「……
【CLAP YOUR HANDS!!!】
『守護者プリズマ』のクロスタルリングをクロステライザーへ。
音声に合わせて手拍子をし、刀身で虹の弧を描く。
その動作と同時に、イリヤの身体が光に包まれる。身に纏ったのは、ピンクを基調とした、鳥のような印象を持つ装甲。
魔法少女を思わせる装いの守護者『プリズマ』へと変身した。
【DRAW THE RAINBOW:GUARDIAN『プリズマ』!!!】
「これが……おお、すっごい……」
変身を終えたプリズマは、変わった装甲を纏う自分の手足をパタパタと動かして、不思議そうに見つめた。
「あの子も……守護者……!?」
「イリヤちゃん……!!!」
ありえない光景を前にして、言葉を失う凛。対照的に、メモリアはあふれる喜びを隠しきれずにいた。
「ば、馬鹿な……!
新たな守護者が、1日にして2人も……!ええい!!ならば、どちらも倒すまで!!」
それを他所に、想定外の事態にエーアイ世怪は明らかに動揺する。ヒダマリ世怪とウォークロックたちに指示を出し、再び攻撃を仕掛けさせた。
「……えいっ!!!」
放たれた銃弾に対し、プリズマは腕を大きく振り、クロステライザーからエネルギー状の斬撃を連続で放つ。それが銃弾を粉砕し、ウォークロックたちに命中した。
「くっ……だが、お前の動きも
「隙ありっ!!」
エーアイ世怪が分析に集中した、その一瞬の隙。メモリアが横合いから銃撃を叩き込む。
「さっきはありがとう、イリヤちゃん。おかげで助かった!」
「うん……でも、お礼を言いたいのは私も一緒だよ。とりあえず、今は!」
体勢を立て直したメモリアとプリズマは、クレイジークロックの軍団へと立ち向かう。
ウォークロックたちを次々と斬り伏せ、蹴り飛ばし、ヒダマリ世怪の絵具攻撃は、メモリアがライドシューターで撃ち落とす。
「ええい、この程度――おぶっ!!?」
高速移動で迫るエーアイ世怪も、プリズマは軽やかにかわし、反撃の斬撃を叩き込む。
「UAAAA……!!!」
「これで……トドメっ!!!」
【『メモリア』RIDER SHOOTING!!!!】
ヒダマリ世怪は、メモリアの連続銃撃を受け、明らかに限界が近い。その隙を逃さず、メモリアは再びチャージしたエネルギー弾を、ヒダマリ世怪へとぶつける。
「AAAAAAAAAAAAA!!!!」
そのまま、ヒダマリ世怪は爆散した。
「よっし、あとは――」
「ッ……馬鹿め!!!」
プリズマがエーアイ世怪を追い詰めようとした、その時。
エーアイ世怪は、不敵に笑った。
「ちょっ……今度は一体、何を――」
「AAAAAAAAAAAAA!!!!」
突如、警告音のような音声とともに、モザイク状の物体が爆散跡を覆う。
そこから禍々しい塊が隆起。なんと、ヒダマリ世怪が、巨大化して復活した。
学校の裏手へと着地し、その巨体を揺らしている。
「巨大化!?いや、何で!?」
「甘く見たな!!
侵蝕世怪人は、日々様々な研究を施されているのだ!!」
「余裕ぶってるけど、あなたの相手は私!!」
驚愕する一同と違ってエーアイ世怪は高笑いするが、プリズマが間合いを詰めて交戦。
「これは……どうしたものかなぁ。下手に暴れると厄介よね……」
「それなら、これ使ってみて!!!」
どうしたものかと悩むメモリアだが、そこで凛が何かをこちらに投げ渡す。それは、巨人が描かれた、『出陣!クロステラカイザー伝説』というタイトルのクロステラノベルだった。
「クロステラノベル!?これって……?」
「細かいことは私も知らないけど!こういう時に便利なんだと!とにかく、付け替えて!!」
「あ、はい!!」
促されるまま、クロステラノベルを付け替える。
【出陣!クロステラカイザー伝説】
【新たな力を手にした伝説の巨人が、彼を呼ぶ者の声に応える】
*****
巨大ロボットや人型の残骸が墓場のように山積みになった空間。
その超常に鎮座していた『巨大な手』。
石のように固まっていたそれが、突如としてパッと殻を破るように解放。大空へと勢いよく舞い上がっていく。
「……ついに、始まったのか。」
紫の長い髪を持つ女性は、その光景を静かに見届けた。
*****
「……それで、何が――ひゃっ!!?」
上空に何かが出現し、メモリアの変身が解除される。
【アウェイキング!!】
クロステライザーに似た形状の、右手を象った存在。それがUFOのように光を放ち、メモリアを包み込んで吸い上げる。
それは変形し、巨大化したメモリアライドシューターと『ワンダークロスワールド』のクロステラノベルと合体する。
右腕に銃、背中に車輪。
ノベルは分離し、アーマーとして胸部・腕部・装甲へと組み込まれる。
そして最後に、守護者メモリアの指輪が頭部として装着され――
巨大な人型存在が完成した。
【『クロステラカイザーメモリア』!!!】
その巨人『クロステラカイザー』が、咆哮する。
*****
「……!!!」
その叫びを、遠く離れた三人が同時に感じ取った。共鳴するように、それぞれの『守護者の指輪』が震えている。
「そっか……今のが、ああ、そう言う事。ようやくそろったわけかな。波乱の予感がするけど、ワクワクするよ。でしょ?」
冬木市から遠く離れた学校の校舎。猫耳の女学生(?)が、窓の外を見ながら呟く。
「いつかはこうなるとは思っていたが……あいつらだけは……出来れば巻き込みたくないが……」
東京の芸能事務所の一室。ソファに座る成人男性は、指輪を見つめながら、何かを飲み込むように小さく息を吐いた。
「この町に……他にもいる。私と同じ、『使命』を持った守護者が……」
冬木市のどこかを歩く少女は、無表情のままそう呟いた。
*****
「今度はまさかの巨大ロボット!!?」
「一か八かだったけど、ああいうのとは……」
突如として現れた巨大な存在を前に、プリズマは思わず声を荒げ、凛はその光景を見て小さく息を吐いた。
一方、クロステラカイザーの内部。眩い光に包まれ、メモリアは操縦席へと転送されていた。
「伝説の、巨人……っていうか、融合まだ解けてないわね。このまま操作するって事かぁ。」
状況を把握しきれないまま、呑気とも取れる独り言を漏らした、その直後。
「AAAAAAAAAAAAA!!!!」
「っと……!早速来るなら、やってやろうじゃない!!」
操縦席に映る映像から、ヒダマリ世怪が間合いを詰めて来た事に気づく。押し引き式のレバーを掴み、直感的に動かした。
巨腕が振るわれ、ヒダマリ世怪の絵筆を真正面から受け止める。
続いて右腕に備えられた銃口から一斉に砲撃。放たれた弾丸は全弾が命中し、そのまま攻撃の手を緩めず、連続で叩き込んだ。
「AAS!! GAAA!!! GIAIAAAAA!!!!」
肉弾戦の応酬の末、ヒダマリ世怪は再び絵具を周囲にばら撒く。
「またそれ!?なら、やぁっ!!」
次の瞬間、背部の車輪が高速回転し、莫大なエネルギーを溜め込む。噴き出した高熱の炎が、飛散した絵具を蒸発させ、そのままヒダマリ世怪を焼き払った。
***
「せぇいっ!!!」
一方、地上ではプリズマがエーアイ世怪に斬撃を浴びせ続けている。
「ぐぐっ……だ、だが! お前の動きも、すでに
「そんなわけないでしょっ!!」
【『プリズマアックスセイバーU』!!!】
距離を取ったエーアイ世怪に対し、プリズマはクロステラノベルを押し込み、武器を顕現。
「二刀流で……せぇいっ!!」
ガード部分が大きく張り出した、長大な剣。クロステライザーを併用し、罰の字を描くように二本の斬撃を飛ばす。
「ガッ……! な、ならば数で押し切るまで!!」
エーアイ世怪の周囲に、十数体のウォークロックが出現し、プリズマへと殺到する。
「うわっ、そっちで数攻め!?……あ、そうだ。凛さん!!」
まだウォークロック達と交戦していた凛へ、プリズマが声を投げる。
「え、今度は何よ!?」
「凛さんが持ってる指輪!『わんだふるぷりきゅあ!』のやつ、私に貸して!!」
「えっ、これ? 急にどうしてよ!?」
「いいから!見れば分かりますから!!」
「……分かったわ。ほら、受け取って!!」
突然の言葉に凛は戸惑いながらも、クロスタルリングを取り出し投げ渡した。
「よし……新しいアイテムを使うのは、変身ヒーローとヒロインの王道!!
『ワンダフルパクトで人の姿に変身する犬飼こむぎ』→『キュアワンダフル』
『ニコガーデン』
【CROSSTAL RING!!!】
クロステライザーへと指輪をセットし、8bitとギターの軽快な音楽に合わせ、手拍子。
【『わんだふるぷりきゅあ!』!!!】
一部の装甲と腰のバックルを残し、装いが変化。『キュアワンダフル』に再変身した。
「『キュアワンダフル』!……実際に変身すると、ちょっと恥ずかしいような、そうでもないような……」
「ジキキキッ!!!」
「わわっ!」
そうしていると、ウォークロック達が一斉に発砲。
キュアワンダフル(プリズマ)は、犬の肉球のような防御壁『プニプニバリアー』で銃弾を防ぐ。
「じゃあ次は……『フレンドリータクト』!!ヘルプ! キラリンアニマル、『キツネ』!!」
次にタクトを振るうと、呼び出された幻影が弾けるように広がる。次の瞬間、キュアワンダフル(プリズマ)の姿は巨大なタイヤへと変化していた。
「あっそびーましょーっと!!!」
猛スピードで回転・疾走し、ウォークロック達の周囲を駆け巡る。
銃弾を物ともせず、竜巻を巻き起こすほどに加速。
「ア、オ、オオ……」
【FINISH CHARGE『わんだふるぷりきゅあ!』!!!】
吹き飛ばされ、目を回したウォークロック達は、そのまま浄化され消滅していった。
「よーし!!」
プリズマの姿へ戻り、残ったエーアイ世怪へと構える。
「ぐぐぐ……だ、だがそれもラーニングすれば――」
「ラーニングラーニングってしつこい!!それどういう意味か分からないけど、それで世の中何とかならないもん!!」
「それを可能にするのが指輪の力!!これ以上は油断しない!!故に私が勝つ!!」
「だったら……これでどう!?」
プリズマはセイバーを振り上げた。エーアイ世怪は仰け反って回避するが、その瞬間。
「アックスモードっ!!!」
ガードが移動し、剣は斧へと変形。重さを活かした一撃が、体勢を戻した瞬間の脳天に直撃した。
「ばぎゃっ……!!!?」
思考がショートし、動きを止めるエーアイ世怪。
「それじゃあ……これで終わらせるっ!!!」
【『プリズマ』CROSS FINISH!!!!】
【『プリズマ』SABER BURST!!!!】
二刀流の構えを取り、力を溜め、突撃。
「ドク……ター……申し訳……ありませ……ぬ……っ……」
胴体を両断されたエーアイ世怪は、そのまま爆散。変貌者のインテリー・デデーンもろとも、完全消滅した。
一方、クロステラカイザーメモリアによる攻撃で、ヒダマリ世怪も限界まで追い込まれていた。
「それじゃあ……これで、終わり!!!」
具現化した像を掴み、トリガーを引く。
すると分離した車輪が高速回転し、罰の字を描いて敵に激突。
「『クロステラカイザー・秘封クロスショット』!!!」
その交差点を、右腕の銃撃が撃ち抜いた。
【『メモリア』RIDER SHOOTING!!!!】
「A……GSAAAAAAAAAAAA!!!!!」
ヒダマリ世怪も爆散し、完全に消滅した。
そして爆発跡から、二つの指輪が宙を舞う。
クロスタルリング『ひだまりスケッチ』はメモリアへ。『仮面ライダーゼロワン』はイリヤの手に渡った。
「……何とか、終わったみたいね」
ようやくこの場にいたすべての敵を倒し、凛は安堵の息を吐いた。
同時に、夜明けが訪れる。
***
少しして。融合が解除された蓮子とメリー、そして変身を解いたプリズマが、凛の元へと集まる。
巨大な機体は、一旦役目を終えたかのようにいつの間にか消えていった。
「一時はどうなるかと思ったけど……イリヤちゃんのお陰で、何とかなったわね」
「ありがとう。すごく……かっこよかったわよ」
「え、えへへ……それほどでも……」
照れたように笑うイリヤ。
「でも……今日は本当に、色々ありすぎて……何て言うか……気づいちゃった、というか。それはそれとして、巨大ロボは巨大ロボで、やっぱり凄かったって言うか……」
少し早口になりながらも、笑顔で話す三人。いつの間にか二人に対するイリヤの口調は、すっかり敬語ではなくなっていた。
「それにしても。まさか、こんな身近に守護者が何人もいたなんてね。本当に、何が何だか……まあ、とりあえず一件落着、って事で。早く――」
凛は肩をすくめつつ、歩き出そうとした。しかしその時。
イリヤの身体が、ふらりと揺れた。
「……っ」
倒れそうになるイリヤを、咄嗟に蓮子が支える。イリヤは、そのまま静かに眠っていた。
「あら……ああ、そういえば……あんな時間まで起きて、あれだけ動いてたわけから……そりゃ疲れるわよね……」
「あ、あの……」
イリヤの様子を見てそう呟いた凛に対し、蓮子とメリーが、少し言いづらそうに声をかけてくる。
二人とも苦笑いを浮かべながら、身体を小刻みに震わせていた。
「……今度は何?」
「い、いや……よく考えたら……」
「わ、私たちも、その……今日一日で、相当身体を動かしすぎたみたいで……」
「筋肉痛というか……疲労というか……なんか、今になって一気に来た、って感じで……」
「( <・>ー<・>)」←*凛
「えーと……部屋に戻るの、手伝ってもらえたりします?」
「無理。というか、嫌よ。」
そんなやり取りをよそに、イリヤは穏やかな笑顔で眠っていた。
***
「あの三人が……新たな
その光景を、大きな鉄の腕を持つ、青い長髪の少女……徒夢透が見つめていた。
少なくとも、メモリアが戦闘を始めた辺りから、彼女は静かに観測していた。
凛を除いた三人に視線を向け、興味深そうに首を傾げる。
「しかし……やはり、この√はワンダーだな。来なら『有り得ない事』が、あまりにも多い……まだ、結論を出すには早い。だが、確かなのは――」
視線の先にある三人を見据え、静かに呟く。
「あの三人の状況……存在……多分
そんな彼女の横顔を、夜明けの光が淡く照らしていた。
=NEXT(台本形式注意)=
メリー「初めて(?)登場、指輪の戦士!その名は『仮面ライダーガッチャード』!
天才芸術家が変身するというそのヒーローは私達の前に現れ、勝負を申し込んで来る……?
次回、第3話『芸術少女ケミストリー』。お楽しみに。」
・今サブタイトルの元ネタ:わんだふるぷりきゅあ!
***
=登場人物・用語補足=
『遠坂凛』
出典:Fateシリーズ
冬木市に住んでいる、魔術師の少女。
本作では数年前に時計塔から派遣された身。また、どうやら中国拳法を掛け合わせた新たな魔術の開祖……と言う立場でもあるらしい。
実家に現代機器がなかったらしく、そのせいで機械オンチみたいな状態に陥りがち。
=クロスタルリングカセット=
『ひだまりスケッチ』
イラスト:明るい日差しとひだまり荘→ゆの
固定絵:スケッチブックに描かれたひだまり荘の住人
獲得者:蓮子&メリー
『仮面ライダーゼロワン』
イラスト:衛星ゼア→ゼロワン
固定絵:ライジングホッパーのライダモデル
獲得者:イリヤ
『わんだふるぷりきゅあ!』
イラスト:ワンダフルパクトで人の姿に変身する犬飼こむぎ→キュアワンダフル
固定絵:ニコガーデン
所有者:遠坂凛→イリヤ
=
『ヒダマリ
使用指輪:ひだまりスケッチ
憑り付いた人物:無し
侵蝕スキル:爆散絵具スキル
『エーアイ
使用指輪:仮面ライダーゼロワン
憑り付いた人物:上級ウォークロック『インテリー・デデーン』
(ウォークロックの名前の元ネタ:飛電インテリジェンス(仮面ライダーゼロワン)、ブロリー(ドラゴンボール))
侵蝕スキル:粗雑学習AIスキル