Fate/Scramble U World ~秘封トラベラー・メモリアル~ 作:おろさん
「前提の話……そもそも身共は、実はかなりのお金持ちの家の出身なんですの。」
「え、まさかのお嬢様!?」
驚愕するイリヤの言葉にユミカは首を振りつつ、話し始める。
「まあ今は『元』ですの。両親のせいで全体的に大分窮屈だったんですけど……数年前、その両親が何かヤバそうな機械を作っているのを見てしまい……それでお爺様と共に家を離れて、沖縄で健やかに暮らしていましたの。ただ……」
「ただ……?」
美遊が首を傾げると、ユミカはすかさず話を続けた。
「その……父様と母様が経営してた企業が、根こそぎ潰されたんですの。それも一年前……革命戦争の最中に。」
「……!」
「父様はどうやら十年前から、アーティファクトを利用した妙なプロジェクトを秘密裏に進めていたようで……それで愛想を尽かし、且つ嫌な予感を抱いたお爺様についていく形で、数年前に身共は家から逃げ出しましたの。」
「そ、そんなこと平然と言っていいの?かなりヤバそうだとしても、家族の事をそんな……」
「……一応大丈夫ですの。さっきも言いましたが、かなり好かない家だったので、あんまり未練みたいなのはありませんの。」
イリヤ達に心配されつつ、苦々しい表情を浮かべながらも、ユミカは淡々と説明を続けた。
「お爺様がいくつか資料を持ち出してたため知ったのですが、どうやら『ロストロギア』という異世界の遺品の研究にかーなり携わっていたらしく……」
「ロストロギア……それって、確か十年近く前にあった『ジュエルシード事件』と『闇の書事件』とか、そういう類か」
奏海は聞き覚えがあるのか、小さくうなずいた。
「あ、何かネットのオカルトサイトで聞いたことがあるかも。『海鳴市』を中心に起きたっていう……」
「毎回思うけど、何かすっごい知り過ぎてないのかなそのサイト……って、奏海さんがそれ真っ先に例に挙げるってことは……」
蓮子の言葉に首を傾げつつ、イリヤは何かに気づいたように奏海へと問いかけると、彼は頷いた。
「ああ、革命戦争の頃に出会った管理局員の一部……そのベテランエースたちが、それらの事件の当事者でな。根掘り葉掘り聞き出した。そん時出会った片方が、事件当時小学三年生……しかも元々異世界だのと無縁な、ただの一般市民だった子らしい。」
「え、私より年下だったの!?……と言う事は今20歳くらい?」
「話し戻しますけど、さっきの話とこの町の海にどう言った関係が……?」
美遊が本題を切り出すと、ユミカは間髪入れずに答えた。
「親の会社を襲撃した犯人は今も分からずですが……いくつか分かった事がありますの。どうやら父上が開発したプロジェクトの成果、父上本人が海に流したようですの。しかも、革命戦争の被害も薄く、アーティファクトに関して特に疎い地域のどこかに。」
「……あー、つまりは……色んな町を巡って、徹底して探し回った結果……」
「はい、最終的に、この冬木という町にあるという確信に至りましたの。指輪はその道中で。」
腑に落ちたように言うメリーに対し、右人差し指の『トロピカル~ジュ!プリキュア』の指輪を見せつつ、彼女は一旦言葉を区切った。
「なんだか随分ととんでもない人ねぇ。自分の作ったものを奪われたくなかったとはいえ、それを海に放り込むだなんて。」
「……で、それを見つけるのにプロデューサーたちの力を頼りたいって事なんだろうけど……具体的に何をするの?」
同じく話を聞いていた奏と加蓮も、困惑の色を浮かべながら一番の疑問を口にする。
するとユミカは先程の苦い表情から一転し、目をキラキラさせ、弾んだ声でこう返した。
「ここからが本題ですの。早い話……皆様守護者が持つロボットを使い、深海に潜って機械を回収してほしいというわけですの!」
「ロボット……それって、クロステラカイザーのことですか?」
「あ、そんな名前なんですの?とにかく知ってるなら話は早いですの!」
対してそう問う美遊に対して、ユミカは頷きつつ続ける。
「『U時空考古学』曰く、かつて時空の滅亡の危機を救い、時空を作り直したという『Uの起源』……守護者の皆様は、その起源に連なる英雄の力をほぼ無条件で呼び寄せることができる!それがそのクロステラカイザーですの!」
「起源って……あれってそんなすごいものだったの!?」
「……ダイボウケンやスーパーライブロボの時みたいなもんだな。そりゃ、守護者だなんて特殊な立ち位置のやつに何もないわけがないし、単なるロボットじゃないのも分かってたが。」
驚きを隠せないイリヤと、何となく察しがついていた奏海。そんな二人の横で、今度は蓮子とメリーも重ねるように、確認をするような言葉を投げかける。
「つまり、クロステラカイザーで海底まで潜って……」
「沈んでいるであろう機械を、ざっくり回収しちゃいましょうと言う事ね。」
「その通りですの!ああでもそれ以外の事もやってもらいますが……とにかく。」
感情の起伏が激しいと言うべきか、さっきの高いテンションから変わり、ユミカはうつむいて一呼吸置いてから、口を開いた。
「皆様だと初対面でこんなこと言うのも何か変ですが……お願いします。この先に未来の為に、身共の願いを叶えてくださいまし!」
ぺこりと頭を下げ、頼み込む。それを見た一同は顔を見合わせた上で、頷いた。
「……分かりました。私達で良ければ、是非力になります!」
「ホントですの!?本ッッ当に感謝しますの!!……と、い・う・わ・け・で!!」
顔を上げ、パッと明るい表情になったユミカは、なぜか目を輝かせて一同を見回した。
「・・・え?」
*****
数十分後。
「で、色々やってほしい事があるって言われたけど……」
再び砂浜に立つイリヤたち。しかし身に着けているのは、ビキニやフリルスカートなど、それぞれの個性と魅力に合わせた色鮮やかな水着。そんな彼女たちの姿が、波打ち際に映えていた。
「海に潜るにしても、何で水着を着るのかしら?まあ、意図があるのでしょうけど……」
「でも、何気に冬木に来てから、始めて水着を着たかも。近くのお店で良いのがすぐ見つかって良かったわ。」
「おお、皆様すっごく似合ってますの~!」
急に水着を着る事になったものの、乗り気なメリーと蓮子。一方のユミカは、一同の水着姿にかなり感心している様子だ。
「水着……着るのも初めてだけど、こっちだとこんな感じなんだ……それで……」
その横で、美遊は後ろを振り向く。同じように水着を着る、奏海と加蓮と奏の三人。
加蓮はペールミントグリーンのフリル付きセパレートビキニ、奏は無地ネイビーのビスチェ風ビキニと、それぞれ抜群に似合う水着を着こなしている。そんな二人に対し、奏海は(薄々予想はしていたものの)ゴスロリ調のトップスにデニムを合わせた、やや女装趣向の強い水着を着ていた。
「うおお……結果的にアイドルの水着姿を生で……それにしても、二着目なんて用意してたんですね。」
一度は見逃したはずの、アイドルの二着目の水着姿を思いがけず目にできたことで、イリヤ達は感極まっている。
「ええ、プロデューサーが色々考えて用意してくれてたの。」
それを受けて、奏は落ち着いたトーンで、且つ嬉し気にそう返した。
「え、奏海さんが選んだって……あ、あの、スリーサイズとかは多分プロフィール資料があるとは思いますけど、だとしても水着って、普通そんなピッタリなものを他人が決めて良いものなんですか」
「別に良いだろ、実際可愛んだから。加蓮の儚さと前向きな姿勢からくる魅惑、そして奏のミステリアスな大人な魅力、そしてそれぞれのプロポーション、肉体美……それら引き出すために頑張って選んだんだ、分かるだろ間違いなく美しいだろうが。」
困惑する美遊に対し、奏海は冷静さを保ちながらも、随分と熱意を込めて力説している。
普通、本人以外がサイズも好みもぴったりの水着をいつの間にか用意している……などというのは、冷静に考えれば絶妙に気味が悪いが……
「あ、あはは、相変わらず余念が無いよねプロデューサー……///」
「こ、こういう時に、思いっきり嬉しい事言ってくれるんだから……///」
しかし、当の本人たちは常日頃それほど自分を見ていてくれたことが嬉しいのか、彼の熱烈なベタ褒めに照れが勝っているのか、これっぽっちも嫌悪していなかった。というか、いつものクールさも余裕も盛大に吹き飛んで照れ倒していた。
何だか盲目気味な気はしたが、本人たちが嬉しそうなので(それにそもそも、奏海本人の感性がズレているだけかもしれないので)美遊はもうツッコむのを止めた。
「それで、水着を着て何をさせるつもりなんですか?ユミカさん……」
そしてすぐユミカに視線を向けて、問いかけた。
「それはまずざっくり言いますと……機械が沈んでいる座標を特定してほしいんですの。」
「特定……」
「巨神クロステラカイザーを使って機械を回収してほしいのはそうですが、だからって海底を隅々まで探すのは流石に困難……そこで、まずは身共の指輪を使うというわけですの!」
そう言って、ユミカは再び『トロピカル~ジュ!プリキュア』の指輪を見せる。
「この指輪の能力は、現象を強める『
「ああ、最初のサーフィンとかもそれだったのね……となるとその能力で、波や潮の流れを操作したり、海底の泥や砂もどこかに追いやりながら探す……って事?」
「その通りですの!そうすることで、機械から発しているであろうシグナルを表面化させるというわけですの。」
そう質問する蓮子に対し、頷いた彼女はそのまま話を続ける。
「いきなりビルより大きなクロステラカイザーを先に突入させると、うっかり機械を踏み潰して大変な事になりかねないので……なので、身共や皆様全員で先に海深くまで潜り、さっき言った方法で見つけ出すのが今回の作戦ですの。あ、ちなみに能力で空気や海中の物質を操作できるので、酸素の問題も心配しなくて大丈夫ですの。」
「そこはつまり、空化現象や水素結合を操作するって事ね……かなり応用効くわねその能力……」
腑に落ちたメリーに対し、ユミカは褒められたような気分になったようにまた頷いた。
「というわけなので……皆様、よろしくお願いいたしますの!」