Fate/Scramble U World ~秘封トラベラー・メモリアル~ 作:おろさん
メリー「皆で海を泳いだの、とっても楽しかったわねぇ。
サーフィンしながらやって来た女子大生、キュアサマーのユミカさん。
彼女は突然現れた不気味な人に撃たれて、妙なジュエルを植え付けられたんだけど……抗おうとして、そしたら何でか暴走族みたいに!?え、ホントに何で……?」
暴走荒波サーフィン!深海に眠る戦の遺産 01
「とっっっかあああああああああああああああああああああああん!!!」
突如として『キュアサマー・ヒートアップ』なる見た事のない姿へと変貌を遂げ、暴走を始めたユミカ。彼女はクロステラカイザープリズマ目がけ、猛スピードで跳躍し突っ込んでいく。
「え、何!?急にどうし――あおうっ!!?」
状況を把握できず慌てるイリヤだったが猶予はなく、機体が激しく揺れる。コックピット越しに機体の手元へ目を落とすと、そこにあるはずの装置が消えていた。
「もっともっと燃えて燃えて!!燃え燃えですのおおおおおおおおおおっ!!!」
キュアサマー・ヒートアップ(ユミカ)は装置を神輿が如く担ぎ、その勢いのままどこか遠くへ跳んでいってしまった。
***
「み、美遊、今何が起きたの!?ユミカさんっぽいのが装置持っていっちゃったんだけど……」
数分後。イリヤはクロステラカイザーから降り、他の皆も変身を解いて美遊の元に駆け寄る。
コンバーサリーとヴァーレン、アイズは、先程の爆発に紛れて、レンキン世怪を回収し撤退してしまったようだった。
「私も良く分からない……どう考えても良くない変化が起こったのは確かだけど……」
しかし問いかけられた美遊も、今何が起こったのか分かってない様子だ。
「どうやら、ついに怒ってしまったようじゃの。恐れていた事が……」
「ん……?」
その時、聞き覚えのない声がした。振り返るとそこには、格好も髪型も派手っぽい、快活そうな老人が立っている。
「ユミカ……」
その隣には、(大分ハイレグ仕様のグレー系水着、その上にナイロンジャケットを着た)妙に肉感的な、赤メッシュの白髪女子大生が、気だるげな様子で寄り添っていた。
「今度は一体どちら様で……?」
「親子……とはちょっと違いそうね。お爺さんはもしかして……」
再び首を傾げるイリヤをよそに、メリーのほうはその老人が何者なのか、おおかたの察しがついた様子だ。
「ああ、ある程度説明されていたようじゃな……その通り、儂はユミカの祖父じゃ。ちなみに、隣はあの子の大学の同級生だと。」
「……『
「は、初めまして……あの、このタイミングで私達の前に現れたとなると……やっぱり何か知っているんですか?」
突如現れた二人が礼儀正しく頭を下げる中、美遊は尋ねた。それに対し、ユミカの祖父が答えだす。
「……つい先ほど一部始終を見たが、どうやら精神汚染の類の力を受けたようじゃな。あの子はそれに抗おうとするあまり、指輪能力で感情を高め過ぎて我を失い、暴走してしまったのだ。」
「現象を強める『
「あの装置、暴走したユミカさんが持っていっちゃったけれど、あれも一体何なの?」
その言葉に、蓮子も腑に落ちた様子。その横で、加蓮が続けて問いかけると、真実が口を開いた。
「あれは……次元に干渉する装置。」
「次元に……?」
「そう。特殊な電磁波を放つことで、空間に亀裂を生成する危険な代物……革命戦争の頃、誰かにすり寄ってたユミカの両親が作ったけど、結局使われず隠された物……」
「ユミカさんの両親、ホントにそんなとんでもないもの作ってたんだ……」
その説明に、イリヤ達は震え上がる。
「実際、商会全体でも問題視されてた。下手すると何起こるか分かったものじゃないし……」
「え、商会って?」
「……やっぱりとは思ったが、お前も榎小路さんも『シンドバッド商会』か。」
説明の中に聞きなれない単語が混じる。対し奏海がそう答えると、真実は頷いた。
「そういえば、そんな商業組織があるって聞いたわね……海洋関係や古代遺産に関する様々な仕事を主に、商売・交易や大学を運営する、海上で活動している船上財団……」
「中立の戦争商人としての面もあるから、革命戦争だと色んな組織に技術提供してたって噂のやつだったかしら?」
蓮子とメリーの補足に小さく頷きながら、ユミカの祖父は静かに説明を再開した。
「まあ、この子の詳しい事は後にしてくれ。まずはユミカを正気に戻さなければならん。あのままではあの子の精神が壊れてしまう……更にはあの暴走に装置も呼応し、時空間がぐちゃぐちゃになる……」
「……!」
その不穏な言葉に、美遊の表情が目に見えて強張る。
「……とにかく、早いところあのユミカさんって人を見つけ出さなきゃならないみたいだね……頼めるかな、センリツ?」
「おけなのです。」
鈴夜が声をかけると、(デニムボトムのビキニをちゃっかり着込んだ)センリツが地中から応じ、二つ返事でまた地面の中へと潜っていく。
「時空間が……」
「美遊……」
一方、イリヤは俯いたままの美遊をじっと見つめていた。そしてその横顔から、彼女が何かを覚悟しつつあることを確信していた。かつての自分と同じように。
「で・す・のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
「ゑ」
だがその瞬間、凄まじい速度で突進してくる影が。それは、さっき跳んでいったはずのキュアサマー・ヒートアップ(ユミカ)だった。
「猛烈!!爆裂!!爆滅!!大・炎・上ですのおおおおおおおおおおっ!!!」
「え、ちょっと待って嘘でしょ!?戻って来るの早い!!」
「そ、それより今がチャンス!はやく何とか――」
あまりの光景にメリーたちは呆然とするが、蓮子の声を合図に変身しようと構える。
「ですのですのですのおおおおおおおおおおっ!!!」
「・・・あっ駄目だシンプルに怖いぃぃぃ!!!」
しかし、そんな覚悟も一瞬で消し飛ぶ。すんごい勢いで猛追してくるキュアサマー・ヒートアップ(ユミカ)の、暴走したハイテンション。それに割と本気で恐怖を感じ、イリヤ、蓮子、メリーは一目散に背を向けて全力疾走を開始した。
「え、あっ、ちょっ(by美遊」
***
「ドリル・ラム・バンカアアアアアアアアアアアッ!!」
街中を全力で逃げ回る四人。そんな決死の鬼ごっこの背後から、キュアサマー・ヒートアップ(ユミカ)の狂気の追撃が迫る。走る勢いそのままに右ストレートを地面へ叩きつけ、爆音とともに路面を粉砕・抉りながら、彼女は猛スピードで距離を詰めてくる。
「遅刻厳禁!交通安全!焼肉定食ですのおおおおおおおおおおっ!!!」
「いやちょっ、アレもう何が何なの!?これじゃあ侵蝕世怪人と一緒じゃん!?(byイリヤ」
「ですのですのですのおおおおおおおおおおっ!!!酢豚とピザにパイナップルは賛否両論ですのですのですのおおおおおおおおおおっ!!!」
「だ め だ う る さ い(by蓮子」
***
「ったく、色々ヤバいことになってはいるが、まずアイツら水着のまんまなの忘れてないか?」
「まあ、追いかけて来た私達も私達で水着のままなんだけど。」
「今は着替える余裕ないし、仕方がないけれど……流石にちょっと恥ずかしいわね」
「言わないでください……;;」
一方、なるべく姿を見られないよう、建物の上から後を追っている奏海、加蓮、奏、そして美遊の四人。
「記憶処理とかは鈴夜の持ってる指輪で何とかなるから任せるとして……」
背後を振り返ると、奏海達の視線の先には、いつの間にかユミカの祖父と真実が静かに佇んでいる。
「こうなったのも、きっと儂のせいじゃ……あのボンクラ息子に会社を追いやられた儂は、アイツが進めていたプロジェクトを止める術を、持てなかった……だから、同じように恐怖を抱いたユミカと共に逃げた……」
「……それは多分、違うと思います。」
今の状況にひどく思い詰めた様子のユミカの祖父に向かって、美遊はそう切り出した。
「貴方とも完全に初対面ですけど……ユミカさんの話からして何となく分かります。貴方はただ、ユミカさんを守りたかっただけ。」
「いやしかし……」
「装置を何とかしたかったのもそもそもユミカさんの意思だし、暴走も貴方のせいじゃない……だからそんな風に自分を責めないでください。」
「……」
そう諭すような言葉に、彼は俯きながらも静かに安堵の息を吐いた。
「とにかく、また海辺に戻んないとだな。まあ三人が上手い事誘導するだろうが……とりあえず……」
その様子を確認した奏海は、ケータイに電話を掛け始めていた。
「あの時何となく連絡先交換してもらったが、こう言う形で頼る事になるなんてな。」
「(次元の亀裂……そんなものを、作り出させるわけにはいかない……そのためにも、まずはユミカさんを……!)」
呟く彼の横で、美遊は覚悟を決めようとしていた。
*****
その頃。海辺から大分離れた場所で。
「フフフフ……フフッフフフフフ……!!!」
コンバーサリーの口から、低く、ねっとりとした笑い声が漏れる。その不敵な笑みは、見る者の背筋を凍らせるほどに不気味だった。
「嗚呼……腹立たしくはあるが……だが、アレは悪くない……アレにもう一つ!!ジュエルを埋め込めば……アッハハッハハッハハハッハハハ!!!」
「(気持ち悪い……)」
そのすぐ横で、コロモは彼女を心底気味悪そうに見やりながら、黙々とレンキン世怪のメンテナンスを続けていた。
ちなみにヴァーレンは、さっきの戦いなどですっかり疲労困憊してしまったらしく、既に帰還させたらしい。
「……コンバーサリー、流石に分かっているだろうが、我々の目的はあの装置と指輪だ。」
「……フン、心配は不要です……装置については、アゼルに任せていますので。」
「ああそうか……まあ細かい事は後だ。守護者共がまた海辺に戻る。お前の目的も、その時勝手にすればいい。だが、度を越せば反逆行為なのは憶えておけ。」
そう会話しながら、レンキン世怪を引っ張りながら、コロモは海辺の方角へ歩いていった。
「そう馬鹿にするのも今の内でしょうに……」
対するコンバーサリーは、舌打ちしながらそう呟いていた。