Fate/Scramble U World ~秘封トラベラー・メモリアル~ 作:おろさん
コロモ「狩人アイズ……元々クロスタルリングを集める役目を課されていた私の、新たな力……
だが、守護者も短期間でかなり力を上げたか、前回の戦いは私は押され気味だった。しかも次元震の生成装置は回収失敗か……暴走したキュアサマーの指輪の戦士が、正気に戻ったのは良いとして……
いや、今そんな事はどうでもいい……それより気がかりなのは、イリヤスフィール・アインツベルンがコンバーサリーの銀の弾丸を砕いた事……あれは物理で砕けるものでは無かったハズだ。
イレギュラーが増えるのも考えものだ……あの世界では、ただでさえ指輪以外にも数多くの異変や戦いが繰り広げられているというのに……出来れば当分来ないでもらいたいが、そうもいかないのが世の中か……ハァ」
美しき黒の別人格 01
冬木市。アインツベルン邸にて。
「おおー……」
この日、蓮子とメリー宛に届いた宅配便。開けてみると、中には一枚の絵が。
以前戦った、アルテ・クリープが描いた抽象画。『遂に完成した』という内容の手紙と共に、ようやく完成したものを二人に送ってきたようだ。
神秘的な雰囲気を漂わせるその絵を見つめていると、二人の心は不思議と安らいでいた。
「何ていうのかしら、朝から縁起が良いんじゃない?晴れやかな気分になるわね。」
「確かに、ちょっとやる気出てくるかも。流石天才芸術家……ん?」
絵を見つめていると、その裏側に手紙がもう一通貼り付いているのに気づいた。慎重に剥がし取り、中身を読んでみると、そこにはこう書かれていた。
『追伸:昨夜に不思議な流れ星が見えたんだけど、ソレが随分不思議な色でね……きっと新しい出会いがあると思う。』
「流れ星……またいきなりどう言う事……?」
「……ねぇ蓮子……そういえばなんだけど、ちょっと心当たりがあるかも……」
「え?……あ、それってもしや……」
*****
「海行こうぜ!!うみー!!」
一方、穂群原学園初等部。クラスメイトの龍子の声が、教室に響く。何故か浮き輪を身に付けている彼女がイリヤ達の元へ走って来きた。
「ん?えっと、何の話?」
「ほら、夏休みの予定だよ。こいつまだ6月だってのにテンション上がっちゃってさ。」
そんな龍子の発言にイリヤが首を傾げると、すかさず雀花が横から補足した。
―――――
「あ、現実じゃ(投稿当時は)9月だろうけど、話の都合上この世界じゃまだ6月だからそこんとこよろしくな(byトラヴィス」
「……急にどしたの?(byリーゼロッテ」
―――――
「海……海に行って何をするの?ダイビング?」
美遊が首を傾げて何気なくそう聞くと、龍子は食いつくように迫った。
「んお?ダイビング?そんなんやったことあんの!?」
「ま、まあ少しだけ……(この前色々あってイリヤ達と泳いだけど、黙っておこう……込み入った頼みの一環でやった事だし……)」
「まあそこまでじゃなくても泳ぐのはその通りだぜ!あ、スク水は禁止な!各自最高にHぃ水着持参で!!うっひゃー盛り上がってきた」
「おちつけい」
「ふぉげった」
「……折角だから、次は皆と一緒に行ってみる?」
那奈亀のアッパーカットを喰らった龍子を他所に、イリヤは美遊にそっと声をかける。
「え、どう、しようかな……」
「一緒に行こうよ美遊さん!」
「そうそう、それにあんたのことだから泳ぎも速いんだろ?さっきダイビングやった事あるって言ってたし、夏近いんだし行かなきゃ損だよ!」
少し考える美遊の目の前に、美々と雀花がずいっと顔を突き合わせる。
「え、あ、じゃ、じゃあ折角だし、イリヤも行くなら……」
美遊はあわてて身を引きながらも、消え入るような声でそう答えた。
「……うん、みんなで行こうね!」
そんな彼女に対し、イリヤは笑顔でそう返した。
ミユも、なんだかんだ初めの頃と比べてずいぶん変わった。まだぎこちないが、こうしてクラスメイトとも会話が出来ているのだから。
「(あれから結構立つんだよね……私が蓮子とメリーと出会ってから、不思議な出来事も多くて、色々と危ない場面もあって――)」
そんな風に思い返すイリヤだったが、ふと、あることが引っかかった。
狩人アイズを、美遊と共に退けた時だ。
「(……そういえば……あの時私は、手に入れた覚えのないノベルを使って、また違う姿に変身してたけど……考えてみると、いつから私は、使い方を知っていたんだろう……)」
*****
「水着って、この前着たやつで大丈夫かな?」
「大丈夫じゃない?水着って確か1,2年くらいは使いまわせるらしいし……」
放課後の帰り道。小声で会話しながら、美遊とイリヤはクラスメイト達と歩く。
「お?何か良さそうなのもってんのか?だったら話は早い!スク水より、なんかこう、紐とか糸とかそんな凄いの着ないと海に失礼ってもんだ!(by龍子」
「そりゃすごい水着だなー(棒)(by雀花」
「私はちゃんと布のやつがいいかな……(by美々」
「けどまあ確かに、遊びに行くのにスク水はなー(by那奈亀」
「……やっぱり新しいの買った方が良い?」
「い、いや、そんなことはないよ――っ?」
友達と楽しげに言葉を交わしながら、イリヤがふと美遊の方へと視線を向けた、その時。突然、上空から何かがひらひらと舞い降り、彼女の顔に落ちてきた。
「ん……急に何――」
顔に張り付いたそれを手に取り、見つめてみる。それは銀色の、一枚のカード。表面には、影をまとう暗殺者のような人物が描かれている。
「イリヤ、これって……」
「もしかしてクラスカード……にしては、何か色が違うような――」
カードを見て、美遊とイリヤが首を傾げたその瞬間。二人の目の前に、突如リムジンが一台急停止。
「えっ、何か急にデジャヴな感じがあああう」
以前にも同じような流れがあった。そう思った瞬間、案の定か二人は車内へ引きずり込まれる。そしてリムジンは、そのまま走り去っていった。
「・・・誘拐だああああああっ!!?(by龍子」
「お、お巡りさああああん!!?(by美々」
「い、いや待て待て落ち着けってこの流れ前にもあっただろ(by雀花」
「あの車、美遊ん家のだよ。この前の講演会の時といい何か忙しいのか……?(by那奈亀」
***
「・・・それで、やっぱり仕事ですか?」
「まあ、そう言う事。」
リムジンに連行されたイリヤ達は、車内に腰かけていた凛とルヴィアから事の顛末を聞く。
―――――
数時間前、昼休み頃の穂群原学園高等部にて。
「流星……?」
『そうだ。今から約4時間後に、冬木の山間地域に落下してくるとの情報が入った。』
凛とルヴィアは、ロード・エルメロイII世から連絡を受けていた。
『茅森奏海から聞いたのだが……以前、次元震の生成装置を冬木の海底が発見され、後に時空管理局によって処分されたそうだな。恐らく、ソレが一瞬起動した影響の可能性がある。』
「(イリヤ達が言ってたアレね……)そ、それでその流星に何か問題でも?」
『……徒夢透の受け売りになるが、その流星は強力な光の力が籠っているそうだ。例え極小でも、そんなものがそのまま地面に衝突すれば、地脈が乱れ、深刻な被害をもたらすことになる……早い話、衝突する目前の流星に、高圧縮魔力をぶつけて相殺しろ。』
「そ、相殺って!!?ちょ、ちょっと待ってください!そんなのどう考えても地脈の正常化の同レベル、数十人規模で編成する大儀式になるんじゃないですか!!?」
『本来はそうだろうが、そこで守護者の出番という事だ。クロスタルリングの力は、我々の魔術とは勝手が異なる力。最低でも二人の守護者の力を、流星にぶち込めばいい。そうすれば、仮に流星が落下しても地脈が乱れる事はない。できるな?』
―――――
「というわけなのよ。流星の予測落下地点で、桜と合流すれば、準備万端ってわけなんだけど。」
「なるほど……あれ、それは良いんですけど、私達だけで大丈夫なんですか?」
凛の説明に、ふと美遊が疑問を投げかけたが、
「まあ正直人数は増やしたいって思ってたけど……宇佐見さんとハーンさんは十中八九バイトで繋がらないし、茅森さんも普通に仕事なのか連絡つかなかったし、佐鳥羽鈴夜に至っては何故か連絡来ないし!」
「それで結局、すぐに連れていけるのが貴方達しかいなかったという事ですわ……まあ、何人かは何かあればすぐ駆けつけてくれるとは思いますけれども……」
凛とルヴィアは若干何とも言えない感情でそう返した。
「あー……うん……なるほど……;;;」
若干同情しつつも、イリヤは手に持ったままの銀色のカードを、ポケットの中に入れた。
*****
数十分後。
「……さてと、ここまで何の問題なく辿り着けたわね。」
歩いた後、一同は山奥に到着。桜と合流してすぐ、イリヤと美遊は流星の予測落下地点に立つ。
「それにしても、本当にここに流星……というか、隕石が降って来るの?」
「……隕石って確か、よっぽど小さいやつは、市街地に落下しない限りは報道されないって聞くし……そう思うのは分かる。」
「……とにかくちゃっちゃと終わらせて帰るわよ。もしもの時は流星に突っ込んじゃっても問題ないハズだから。」
そう凛がそう言った瞬間、
「流星接近まで……あと20秒です!」
桜がふと空を見上げ、そう口にした。
その瞬間。目の前で、ひときわ眩しい流星が、確かにこちらへと迫っていた。
「見えた……あれが流星……行くよ、美遊!!」
「うん……
【DRAW THE RAINBOW:GUARDIAN『プリズマ』!!!】
【COMPASSION THE SILENCE:GUARDIAN『サファイア』!!!】
イリヤと美遊はその姿を確認して、それぞれ守護者の姿へ変身。地面を蹴って飛来し、クロステライザーを構え流星へと突撃する。
【『プリズマ』CROSS FINISH!!!】
【『サファイア』CROSS FINISH!!!】
不思議な音を響かせながら接近する流星。二人はクロステライザーを振るい、それを受け止めた。
「何か、勢いが……!」
だが、流星の勢いは苛烈を極めており、ジリジリと押し込まれていく。
「このままじゃっ――っ!!」
その時。イリヤの中で、何か少しだけ変化が起きる。
「イリヤ……!?」
【STYLE CHANGE!!!】
【REIMU STYLE!!!】
美遊がイリヤに視線を向ける前に、イリヤは『ハクレイナイト・インヴァース』のノベルをクロステライザーに付け替える。
「……はっ!!」
そして巫女のような姿の『レイムスタイル』へと姿を変えると、結界を展開した。
「(この感じ……前も、あった気がする。これで2回目か3回目……なのかな。)」
その状況の中で、イリヤ本人の意識ではそんな思考を巡らせていた。
「(今なら、何となく分かるかもしれない……どうしようもない危機に面した時に、スイッチみたいに切り替わる感じ……だから今私、どうすればいいかわかっ――)っ!!?」
だが次の瞬間、イリヤの視界に激しいノイズが走り、急速に霞んでいく。
前の時とは違う。何かが、違っている。
そしてそれに呼応するように、拾ったばかりの銀色のカードが、イリヤのポケットの中から光っていた。
「イリヤっ!!」
「あ……」
イリヤの視界で美遊が叫ぶと同時に、展開していた結界が粉砕、爆発。流星は凄まじい速度で、凛たちのいる地上へと猛烈な勢いで衝突した。
「っ……!!?い、一体何が起こったの!?……って、二人は!?それに、流星は!?」
「地脈の乱れは、確認出来ません……目的は達成しているみたいですがっ……」
「流星自体は粉々に砕けたと考えてよさそうですが……とにかく二人とも、無事ですの!?」
砂煙が舞う中、凛たち三人がイリヤと美遊に呼びかける。
「は、はい、大丈夫です……」
煙が次第に晴れると、先に美遊がこちらの前に現れ、息を切らせながらもそう伝える。
「じゃあ、イリヤは……!」
「うー……こ、ここだよ……」
完全に煙が消えた時、凛の言葉に応じるように、イリヤがそう答える。
「良かったイリ――」
胸をなでおろした美遊は、そのままイリヤの元へと足を向けた。
「……ッ!!?」
しかし、すぐに足を止め、その場に凍りついた。
「えっ、ちょ、ハァ!?何ソレ……!!?」
「これは、どういう……」
「ことですの……!!?」
凛も桜もルヴィアも、同じように硬直する。
「なんか頭痛い……打ったかな……ん?みんなどうし――」
そんな四人に対し首を傾げつつも、イリヤは視界を開く。
「え……?」
そして、困惑した。
なにせ、目の間にいるのは……
「・・・え?」
「い、あえ、いや……いやー……そうは……ならないでしょ……」
その日を境に……
イリヤは、二人になってしまった。