Fate/Scramble U World ~秘封トラベラー・メモリアル~ 作:おろさん
クレイジークロック拠点『クロックワーク・ネクサス』にて。
「戻ったぞ、兄者。」
帰還したコロモが、静かにエビテンの前に姿を現した。
「ああ、おかえりコロモ。今回成果はあったか?」
「当然。所有者も兄者のデータ通りだったな。」
エビテンの問いに、コロモは回収したクロスタルリングを二つ、『ドクターマリオ』と『ゆるキャン△』の指輪を見せる。
「よし、良い成果だ。今回もよくやったな。」
「ああ……しかし、何年かけてもまだまだ取りこぼしが多いものなのだな……」
「別にいいんじゃないかしらぁ?すぐ終わったら、それはそれで味気ない場合もあるでしょぉ……?」
そこへ、長い灰色の髪をなびかせて一人の少女が姿を現す。コンバーサリーに『紅晴結菜』と呼ばれていた少女だ。
「お前か……このタイミングでこちらの元へ来たと言うなら、収穫があったか?」
「まあ、そんなところよぉ……」
コロモの問いかけに、結菜はクロスタルリングを二つ投げる。コロモは掴み取った『光戦隊マスクマン』と『機動戦士ガンダムSEED』の指輪を見つめた。
「……む?」
その時、肌を刺すような違和感に、三人は言葉を失って同じ方角を凝視した。
「……何だ?今妙に身の毛がよだった。」
「よく分からないけど……そろそろ、私達も動くべきかしらぁ……」
首を傾げるコロモの横で、結菜は背を向けて歩き出す。
「その時になったら……見極めさせてもらうわよぉ……」
*****
『さぁそして今日の運勢最下位は……ごめんなさい、かに座のあなた!何をやってもうまく行かないかも?用事がなければなるべく家から出ないのが吉!ラッキーカラーはマゼンタ、ラッキーアイテムはメガホン――』
「むー……」
翌日の朝。アインツベルン邸にて。朝のニュースの占いを、リズと共に、歯磨きしながら見ていたが、イリヤは眉間にシワを寄せながらテレビを消した。
***
「……なんていうか、聞いてもないのにいきなり朝から『あなたは最下位です』だなんて、失礼過ぎるんだよなぁ。」
そんな事があって、ムスッとしながらイリヤは家を出て通学路を歩いていた。
『おやおやー何か不機嫌な感じですが何事なのです?』
そこに、クロスタルプロテクターからにゅっと出てきたのは、(以前センリツが開発した分身)SDセンリツだ。
「え?……あ、センリツさん……そういえばそんなの作ってたっけ……というか、凛さんが電話したのに鈴夜さんが出なかったって聞いたけど、何かあったの?こっちも昨日は結構大変だったんだよ。」
『ふぇ?……あ、ああ、いえ別にそういうわけではないのですがね、それは申し訳なかったのです……それより!何となく予想ついたのですが、要するに朝の占いが最下位だったと?』
「う、うん、そうだけど……」
『だったらボクに任せるのです!ナノマシン人間であるこのボク佐鳥羽センリツは、世界各地にできる限り散布したナノマシンをセンサーがわりにして、近未来に起きる事象をざっくり予測する事が出来るのです!!テレビの占いなど敵ではないのですハッハー!!』
「……あの、何か凄そうなのは分かったけど、それってつまりほとんど天気予報みたいなものなんじゃ」
『むむむ!!さぁさぁ来たのです来たのです!ファースト信託ゥ!!』
「無視して普通にやってるし……まずやってくれたとてありがたみ無いんだけどなぁ……」
いつの間にか予測を実行し始めたSDセンリツにため息を吐きつつも、顔を見上げ、モニターに映された占い結果を読む。
モニターには、『頭上注意』と書かれていた。
ガシャン。
「・・・ん?」
その瞬間、目の前に植木鉢が落下した。
「え!?何この植木鉢!?どこから落ちて来たの!?」
『まさか侵蝕世怪人の仕業?それとも何か別の異変?やっぱ所謂ファフロツキーズ現象?』
「や、やめてよ色んな意味で……」
突然の状況に困惑しつつも、イリヤは引き続き通学路を歩き出す。
『む?ちょいまちまた予報が出たのです。『飛出注意』』
「ういっ!!?」
しかしその矢先。横からトラックが凄まじい勢いで、イリヤの目の前で壁に突っ込んだ。
「・・・えっと」
『あらやだ無人トラック』
***
「いやなになになに!!?さっきから何が起きてるの!?呪い!?呪いじゃないよね!?」
『……あ、また来たのです。』
パニックのまま通学路を駆け抜けるイリヤだが、SDセンリツが次の予報を表示する。『猛犬注意』と書かれている。
それに応じるように、凶暴そうな犬が四匹くらいイリヤを追いかけ始めた。
「ちょ、ちょっとやっぱりおかしくない!?大体なんでさっきから注意報ばっかりなのその予報!!?」
『んなこと言われても、何でかそういう結果が出てるだけなのであって……あ、次は『歌声注意』なのです。』
「ぶぅっっとばっすでーんじゃらーすオーレジャ○アァァァッ0ー>」
「なんでぇぇぇぇっ!!?」
続いて横から、壊滅的な音程の歌声が飛んできて、物理的に吹き飛ばされた。
しかしSDセンリツの予報は止まらない。
『あ、次は『火器注意』、『水漏注意』、『感電注意』……』
「いやちょっ、そもそもソレが分かるなら何とかしてよセンリツさん!?」
『残念ながら、分身であるSDセンリツは戦闘力皆無のサポートAI的な存在故に……』
「だ、だったら本体来てよ!?確か地面に潜んでるからすぐワープできるとかそんなのじゃなかったっけ!?」
『いま本体東京にいるんですぐは無理なのです、物理的に。』
「すっごいタイミング悪いんだけど!!?い、いや何とかできませんかね!?私(まだ猛犬から追われてるから)今の状況で変身出来るタイミング掴めないからなんとか――」
『分身のボクが戦ったとしても、リスを3時間かけでようやく捕まえられる程度なのです』
「ああもうじゃあやっぱいいですぅぅっ!!」
そんなこんなで、イリヤは通学路を右往左往しながら走り続けるのであった。
『あ、『猫ミーム注意』』
「チピチピチャパチャパドゥビドゥビダバダバ」
「何か見たことあるけどぉぉぉ!!?」
*****
十数分後、穂群原学園にて。美遊は、学園に送ってくれたリムジンを見送り、校門をくぐろうとしていた時だった。
「み……ミユ……」
「あ……イリヤ、おはよ――」
イリヤの声が聞こえて来たので、視線を横に向ける。目の前にはイリヤがいたが、ものすっごくボロボロの状態だ。
「え、イリヤ!?なにがあったの!?」
「お、おはようイリヤ……そしてグッバイ……」
美遊の姿を確認したイリヤは、その瞬間倒れ込む。美遊が駆け寄った時には、彼女はそのまま失神した。
*****
「大した怪我はないわ。せいぜい擦り傷程度……」
数時間後、保健室。美遊に見守られつつベッドに伏していたイリヤは、白髪が特徴的な、養護教諭の女性にそう告げられた。
「つまらないわね……次来るときは、もっと生きるか死ぬかくらいの怪我をして来なさい。腕がもげたとか、首が二回転したとか。」
その後の発言には困惑したが。
『随分エキセントリックな保健室の先生なのです。あれでちゃんと先生なのです?』
「一応そのはずだよ……」
「……まあ、気分が悪いようなら、しばらく横になると良いわ。」
SDセンリツとイリヤが小声で話す傍らで、養護教諭の女性はそっとカーテンを閉めてその場を離れた。
「……体は大丈夫なの?」
「うん、怪我も大したことじゃ――」
すぐに美遊が話しかけ、イリヤがそう返すと、美遊は首を横に振る。
「あ、ううん、そっちじゃなくて。昨日のこと、あれから体調に変化とかは、無い……?」
「あー、そっち……何だったんだろうねーアレ……」
先日のことだ。流星を食い止めた時に、目の前に現れたのはイリヤによく似た子だった。
褐色がかった肌に金色の瞳、動きやすさと頑丈さを両立させたような赤い服。ぱっと見で分かったその特徴的な見た目を除けば、彼女は驚くほどイリヤと瓜二つの姿だった。
「幻覚……じゃないよね……ホントになんだったのかなぁ。どんな子かも分からなかったし、呆然としてる間にダッシュで逃げちゃったし……」
「(それだけじゃない……ハクレイナイト・インヴァースのノベルは、色が抜けて力が使えなくなった……それに、あの時イリヤの元に落ちて来た、銀色のカードも無くなっていたみたいだし……)ねぇ、何か心当たりはない?」
「いやいや、無い無い……」
美遊はそう問いかけるも、心当たりのないイリヤは苦笑いしつつ首を横に振る。
「……とりあえず、まずはあの子を見つけなきゃだよね……アレ、というかよく考えたら、私と全く同じ顔のコスプレっぽい女の子が世に放たれたって事だよね!?だとしたら誰かに見られたら絶対誤解される!!こうなったらいっそ捜索願いを――」
『あ、次は『ボール注意』……』
イリヤが気迫をにじませて起き上がった、まさにその瞬間だった。まだ予報を告げていたSDセンリツの声が響くなか、ベッドの枕を目がけて、凄まじい勢いでサッカーボールが飛んできた。
そして回転が止んだ瞬間、ボールは破裂。
「・・・。」
一拍おいてから、
「怖い!!!!?」
イリヤは大声でそう言い放った。
「……何?内臓でも出た?」
「出てませんっ!!」
机で事務書類を整理していた養護教諭の女性がそう言うと、美遊はカーテンの隙間からひょっこりと顔を出して即座に否定した。
「……あっそ。」
そう呟く養護教諭の女性。なお、その右人差し指には……
*****
一方、東京のとある市街地で。
「びっくりしたなぁ……スパコンがクラッシュして早退とか初めてだよ……」
フジヨシ情報処理高校のスパコンに何かトラブルがあったようで休校となったため、ツクモはやる事が無く街をふらついていた。バイトのシフトも今日は無いので、鈴夜やあすみ達と合流しようかとも考えたが、皆いつの間にか何処かに行ったため結局暇を持て余していた。
「……にゃあ」
ツクモの横で、クオンはにゃあと鳴きながら、のんびり歩いている。
「そーだねぇ、怪我人もいなかったし、大惨事にならなかっただけまだよかったよ……それにしても、故障の原因が分からないだなんて妙だよなぁ。闇センパイのハッキングによる無断使用……とかのせいってわけでもなさそうだし……」
「止まってください。」
首を傾げながら、道を歩いていると、突然声を掛けられる。
「申し訳ありません。周囲にいる怪しい人間がいないか、または不可解な現象が発生していないかを調べろと言われておりまして。」
声がした方を向くと、目の前には少女が一人。
冷静っぽい雰囲気を持つ、ミディアム寄りのカットで青っぽい黒髪のその人物。ただその装いは、黒い配色をメインにした、ハイレグレオタード、ガーターベルト、目隠し眼帯……という大分奇抜なファッション。なんとなく修道院的なイメージがあるのは分かるが、それはそれとしてである。
「怪しいって……いや、あの、どっちかというとあなたの方がよっぽど――あれ?」
若干引いているツクモだったが、そこにふと通行人が一人通る。
だがその人は目の前の奇抜な少女を目を向けること無く通り過ぎた。そして、他の通行人も同じような反応だ。まるで少女が、それどころかツクモとクオンの姿すら誰にも見えてないように感じる。
「あらあら、マスターや私達の事までスルーされてませんか?」
「いわゆる、目くらましの魔術……とか、そんな感じかい?」
困惑するツクモとクオン。その背後に現れたのは、アンとメアリーだった。
「成程、サーヴァントと、マスターの方でしたか。失礼いたしました。」
「えっ、サーヴァントのこと、知ってるんですか!?」
少女の言葉に驚くツクモ。彼女に対し、少女はこう話す。
「こちらの詳しいことは今この場では話せませんが、少なくとも我々はあなた方の敵ではありません。ただ、先日からこの日本で多発しているという、不可解な現象を調査しています。先程、そのスパコンというものが何故か壊れた……といった感じの貴方の独り言が聞こえたため、少し足を止めさせていただきました。」
「え、ああ、はい……でも私そのことロクに知りませんよ?」
「いえ、今は学校の名前だけ教えていただければ……」
「え、ま、まあ、良いけど……『フジヨシ情報処理高校』って名前の……」
「フジヨシ……」
ツクモが告げた学校名に、少女は何か引っかかるものがあるのか、小さく俯いた。それから何かを確かめるように、こう問いかけてきた。
「つかぬことをお伺いしますが、貴方はもしかして佐鳥羽鈴夜さんのご友人で……?」
「えっ?え、まあ……あの、何かマズい事でも……」
「いえ、そういうわけではないのですが……その、ある込み入った理由で、我々は彼から避けられているのです。どちらにも本当に落ち度はないのですが、かなり難しいもので……」
少女は冷静さを保ちつつも、少し困り果てた様子で考え込んでいた。やがて名刺を取り出すと、メモ紙に何かを書きつけてツクモに手渡す。そこには二つの電話番号が記されていた。
「……一つ目の番号には私の師父の携帯電話、もう一つには、『桜木ロナ』という協力者の携帯電話に繋がります。暇を見て、両方の番号にかけたら、その上で都内の教会に来てください。」
「は、はい……あ、あの、ところで貴方の名前は……」
この場を立ち去ろうとする少女の背に、ツクモはそう疑問を投げかける。
少女は答えるべきか迷うように、そっと顎に手を当てた。だが、名前を憶えてもらった方が後々話が早くなると思い直したのだろう。少女は振り返り、こう返した。
「『メイシア・クオ』と言います。」
そして、メイシアと名乗った少女は、そのまま去って行った。
「・・・なんだったのですかね、彼女。」
「あれって、確か聖堂――」
ぽつんと佇むツクモの後ろで、アンとメアリーが首を傾げる。だが次の瞬間、クオンがまったく別の方向を振り向いた。
直後、そちらから轟音が響き渡る。
「うぇっ!!?こ、今度は何!?」
「……にゃっ!!」
「あ、待ってクオン!!」
クオンが音のした方へと飛び出すのを見て、ツクモたちは慌ててそのあとを追った。
=クロスタルリングカセット=
『光戦隊マスクマン』
イラスト:レッドマスクに変身するタケル→レッドマスク
固定絵:オーラパワーを宿す両手
所有者:コロモ
『ドクターマリオ』
イラスト:カプセル→ドクターマリオ
固定絵:ウイルス
所有者:コロモ
『ゆるキャン△』
イラスト:夜の富士山をバックにスクーターを走らせる志摩リン→志摩リン
固定絵:テントと焚火とマグカップ
指輪能力:鎮静効果
所有者:コロモ
『機動戦士ガンダムSEED』
イラスト:SEED発動→キラ・ヤマト
固定絵:フリーダムガンダム
所有者:コロモ