Fate/Scramble U World ~秘封トラベラー・メモリアル~ 作:おろさん
数分前、同じ市街地の中にある別の場所にて。
『かつて『宇宙で最も地球が美しく見える場所』と謳われながらも、戦火に埋もれていた月面リゾートが、ついに本来の姿を――』
「……一年前の革命戦争から、もう復興したのか。早いもんだなぁ。」
電気屋の店頭に並ぶテレビが、ニュースの特集番組を映し出している。奏海は足を止め、興味深そうにそれを見つめていた。
「月面基地ですかぁ。当時は旧連合の弾圧のせいで宇宙旅行とか叶いませんでしたから、ちょっと気になります。」
その背後から、安部菜々が興味津々といった様子で一緒に覗き込んでいる。
「当時OZが旧連合を解体して以降、宇宙進出に興味出てる人も少なくないからな。何だかんだ、そりゃ革命戦争が残した影響も大きいか。つか、この調子ならウサミン星に帰れたりするんじゃないかねぇ菜々さん?」
「うぇっ!!?あ、そそそそそそーですねープロトカルチャー直系子孫のウサミン星に帰れなくもない、ですけど、ナナはまだ地球でアイドル続けたいから続けますからええはい!!」
「……とっても頑張ってると思うよ。」
「い、いきなりどう返せばいいか分からない発言やめてくださいって」
微笑みながら見つめてくる奏海に対し、菜々は照れと困惑の入り混じった笑みを浮かべた。
「……まあ、そうは言ったが、まだまだ平和云々の問題は山積みっちゃ山積みだからな。クレイジークロックの事含め、一つ一つ出来る事をせんとだ。」
「んー、そこはそうですよね。何だかんだ私達も色々と巻き込まれていますし……」
「ところでさー」
二人が緊張感の漂う言葉を交わしているところへ、(菜々のサーヴァントの)アストルフォがひょっこりと顔を出し、問いかける。
「アイツっていつ帰って来るの?カナミさんが遠征だとかに送ってから、意外と経ってるけど。」
「それ言うなら出張な……まあ、そのうち戻って来るよ。第一そん時は電話来るし。」
「まーそうだろうけどさぁ、というか――」
とその時。
「ロボオオオォォォ!!!?」
そう遠くない場所から、凄まじい轟音と叫び声が響き渡った。
「ったく、次は何が起こったんだっつの……!」
絶妙に面倒くさそうな顔をしながらも、奏海は音がした方へと直行した。菜々とアストルフォも、慌ててその後を追いかける。
***
「あ、あのっ、そろそろ切り上げていただけると……!!」
「一体何回続ける気だ……!!」
長い青髪の控えめそうな少女と、そのパートナーのクワガタムシ型メダロット、正式名称ヘッドシザースこと『ロクショウ』。
「そうはいかないロボ!」
「アルテミス杯優勝者の片方を連れてこいって命令だから退かないロボ~!!」
怪しげな黒タイツの集団、すなわちロボロボ団に絡まれロボトルに持ち込まれている。
向かってくるメダロットに対し、少女はロクショウと見事な連携を見せる。息を合わせて放たれたチャンバラソードが、相手を鮮やかに薙ぎ払った。
勝ちはするものの、しかし度重なる連戦を余儀なくされているため、少女は少しずつ消耗している。
「ってか、なんでさっきからそんなしぶといロボ!?そっちにオーガマキシムだとかがあるにしても、かれこれ3対1の5連戦でこっちが普通に有利なハズなのに!!」
「こ、こっちも努力してますので……!」
「ぐぬぬ……こうなったら奥の手ロボ!!」
大分持ちこたえる少女とロクショウに対し、ロボロボ団の一人が痺れを切らしたように前に出る。そして、角醒器とエゴルギアを取り出した。
「あれ、それって確か……角獣……エゴルギア、でしたっけ?」
「……オイ待て、対決方法を変えるのは大分卑怯だぞお前!!」
「フッフッフ……ハンターバトルにルールを変えればこっちのものロボ。メダロットはロボット三原則でハンターに攻撃できない!そしてお前はエゴルギアを持ってないと見た!!つまりこの時点でこっちの勝利ロボ!!出来ればロボトルで勝つつもりだったがもうなりふり構ってられないロボ!!」
そのロボロボ団員は角醒器にエゴルギアを装着。
「覚醒憑依するロボ、毒角――」
そう言い放った瞬間だった。
「盾角、展開。」
その言葉と同時に、ロボロボ団の真上に盾形のエネルギーが展開。それがまるでタライのように容赦なく落下。ガッシャンと大きな音を立てて衝突すると、彼らは情けない悲鳴を上げながら頭を強打して気絶した。
「えっ!?」
「何かと思えば、ロボトルだったか。しっかし相手は随分くどいっつーか何というか……」
少女が困惑のなかで顔を上げると、そこに奏海の姿があった。足元に転がった毒角エゴルギアを拾いながら、彼は少女へと視線を向けた。
「散々だったなお嬢さん。その制服、見た感じ帝鳳高校か……ってなると超お金持ちか、マジかぁ……あ、失敬、私こういう者です。」
「は、はいどうも……美城プロダクションの、茅森奏海さん……あれ、美城プロダクションって……」
渡された名刺を見て、少女は少し首を傾げる。
「よ、ようやく追いつきましたよPさん、というか今さっき何か片付いた感じで――ええっ!?」
そこに菜々が駆けつけて来た。すると彼女は、奏海の隣にいる青髪の少女を見て少し驚いた。
「んあ?どしたウサミン。」
「どしたじゃないですよ!彼女は『海堂めぐみ』ですよ!ほら、何ヶ月か前にテレビでやってたロボトル大会の!!」
「え?……あ、ってことは海堂グループのご子息か!こんなとこで会うなんてな……」
「美城プロダクション……あ、有名な芸能事務所の……プロデューサーさんだったんですね!」
奏海は『めぐみ』の名に、めぐみは名刺の社名に、それぞれが腑に落ちた顔をした。
「え?あの、一体どういう事ですか?」
「この子の親父さん、
状況が飲み込めず困惑する菜々に、奏海が事情を説明した。
「えっ!?か、顔広いですね美城会長さん……あ、それで隣のヘッドシザースが……」
「はい、私のパートナーの、ロクショウさんです。」
「……先程の事、礼は言う。」
めぐみと共に、ロクショウは頷く。よく見ると両腕のパーツが従来のものと少し異なる。右腕の刀身は紅く、左腕のハンマーはパイルバンカーのようになっている。
「そのナリ、所謂リビルドってやつか。」
「はい、先程知り合いに改良してもらったんです。ガタが来た……と言うのでしょうか、何故か突然パーツの調子が悪くなってしまって……そこで幼馴染の提案もあって、良い機会だということで調整してもらいました。」
「……え、先程?ってことは、リビルドして早々にこの……伸びてる全身黒タイツの集団と渡り合ったって事なんですか!?」
「確かに以前より凄まじい速さを手に入れたが……元々、アルテミス杯以降もワタシとめぐみで、特訓を重ねていたのもある。オーガマキシムありきな部分も含んでいるがな。」
めぐみとロクショウの説明を聞いて、奏海と菜々は感心した様子。
「なんだかんだ凄いもんだなぁメダロットも。近年はパーツに使われる材料のレパートリーも変わってるから、旧式でもインフレーションに追いつける時代なんだし。」
「……そういえば、Pさんもメダロット持ってましたよね?メダチェンジも出来るタイプの。」
「え?ああ、そうだが、今アイツも出張について行ってもらってるんだよなぁ……何かそこら辺妙に噛み合わないなぁここ最近……ん?」
「貴様らっ……こっちを放置して世間話するんじゃないロボ……」
大分呑気に会話していたが、ロボロボ団の一人が起き上がろうとしている。だがその時。
「撃て」
「ジカカカッカ!!!」
その瞬間、背後から猛烈な電撃が迸る。直撃を浴びたロボロボ団員たちは、抗う間もなく再び意識を失い、その場に崩れ落ちた。
「……妙な気配を感じたが、クレイジークロックか。」
奏海達が、後ろに視線を向ける。そこにはウォークロックが六体。その中心には、女子中学校くらいの少女が一人。
「悪かったわね、協力者が出しゃばったみたいで。ったく、妙にタカをくくっておきながらこのザマって、とんだバカゲーに付き合わされた相手の身になったらどうなんだが……ほんと意味不明。ほら、さっさと回収しとけ。」
「ジカカ」
大きなリボンをつけた、インディゴブルーのシャドウグラデーションが入った黒髪と、フューシャピンクの瞳が特徴的なその少女。彼女が指示を出すと、ウォークロックたちは銃型杖ラシンバーンをロボロボ団に向けた。そのまま彼らを宙に浮かび上がらせ、こちらへと連れてくる。
「……また新たな幹部格と見たが、誰だアンタ。明らかに知らんタイプの気の流れを感じるぞ。」
「悪ィけど、今は答える暇はないっつの。このポンコツ団……ああいや違うわロボロボ団の雑魚共を回収しなきゃならないから。」
どこかの学校の制服をなびかせながら、少女はウォークロックたちと共に鮮やかに回れ右をして、そのままその場をあとにしようとした。
「……まあどの道、近い内にアタシ達の素性は分かると思うから、敢えて名前だけは名乗っておくけど……アタシは『智珠らんか』。それだけは頭に入れておきな。」
去り際に、そう言い残しながら。
「……そういえば、ロボロボ団はクレイジークロックと手を組んだって話があったな。」
「鈴夜くんが言ってたやつですよね……その上に見知らぬ女の子……らんかちゃんでしたっけ?何だが上っぽい立場にいるなんて、初めて知りましたよ。」
「あ、あのー……」
奏海と菜々が少し真剣な面持ちで話していると、また後ろから声をかけられた。
「一体、何の話ですか?くれいじーだとか、手を組んでるとか、一体何の事なのか……」
振り返ると、めぐみが目を白黒させんばかりに激しく困惑していた。
「・・・あ、あのPさん。どうするんですかこれ」
「まあ、仕方がない。露骨に巻き込まれてた以上はちゃんとは話さないとだろ。この子達なら大丈夫だろうし」
「そんな雑な……;;」
ため息をつきつつ、二人はめぐみとロクショウに事情の説明をはじめた。
「な、何かいつの間にか片付いちゃったっぽいけど、これってどういう状況……?」
一方。さっきのロボトルの轟音を聞いて駆けつけて来たツクモたちだったが、どうやら(出るタイミングを逃して)先程までの一部始終を見ていたようだ。
「それはそれとして、あのさっきの、らんか……だか何だかって名乗ってた子……前にゲーセンで見た気がするんだよねぇ。何か友達っぽい子連れて……」
*****
場所は戻って、冬木。
「何かゴメンね、ミユまで早退する事ないのに……」
「ううん、いいの。やっぱり何か心配だから……普通教育の義務なんかより、イリヤの方が大事。」
「う、うん、ありがたいけど、ちょっと気持ちが重いかな……;」
あの後、イリヤと美遊は早退し、こうして帰路についていた。
「それにしても、あの立て続けの災難は本当になんだったのかな……プロテクターのレーダー見ても何の反応も無いし、まさか侵蝕世怪人とかそういうの関係なく本当に運が悪い……?」
「それはそれで嫌な感じが――っ!!?」
若干しょぼくれ気味なイリヤの発言に、美遊はそう返した。だがその刹那、何者かの気配が走る。
【GUN STYLE】
「避けてっ!!」
「わっ!!?」
肌を刺すような殺気を感じ、美遊は咄嗟にイリヤを突き飛ばした。直後、間一髪で二人がいた地面を、無数の銃弾が地面へと叩きつけられた。
「な、何!?どこから来たの今の!!?」
「レーダーに引っ掛からないって事は、まさか気配遮断……っ、イリヤ、電柱の上にっ――」
美遊が弾道の起点へと視線を走らせた瞬間、その人影はすでに跳躍していた。 宙に舞った何者かは、空中から間髪入れずに銃弾、更には矢を同時に放ってきた。
「ひゃっ!?いやなになになに!!?」
それをイリヤは軽やかに、間一髪で回避し続ける。しかしその矢先、目の前に狙撃者本人が舞い降りた。
「……ホント、逃げ足だけは早いんだからさぁ、イリヤ?」
その姿は、昨日突然現れた、装甲を交えた軽装の赤い戦士。イリヤにほぼそっくりな少女だ。
その右腕には、鋭いダガーナイフを握る手を模した、赤黒いガントレットを装着している。
「で、出た!?しかも喋った!!」
「人格が、ある……!!それにこの力って……」
「……ふっ!!」
「わおうっ!!?」
そうこうしていると、イリヤに似た少女は何処からかナイフを生成し投げる。イリヤは瞬時にしゃがんでソレを避けた。
「やっぱり避けた。ホント、直感と幸運なんかは無駄に高い……しかも今までのバトルでそれに磨きがかかってるって感じかしら?……となると、しょうがない。なるべく自然に、不幸な事故を装って殺っちゃうつもりだったけど……」
何やらイリヤの分析をしてる少女は、そのガントレッドのスイッチを押し込む。
【SLASH STYLE】
「直接殺すわね!」
「っ、
迫り来る少女に対し、イリヤは咄嗟にクロステライザーに指輪を装填し、守護者プリズマへ変身して上空へと飛び立つ。同じく守護者サファイアに変身した美遊と共に、二人は空中での逃走を開始。
【DRAW THE RAINBOW:GUARDIAN『プリズマ』!!!】
【COMPASSION THE SILENCE:GUARDIAN『サファイア』!!!】
「ぜ、全然わけわかんない、何で命狙われてるの私!?というか今朝の全部あの子の仕業!?ってなると、まさかやっぱりクレイジークロックの刺客とかそういう感じ!!?」
「具体的なところは分からないけど、とにかく今は郊外へ退避!あれは多分プロテクターと相性が悪い!!」
そうして山岳地帯へと針路を取る。
「こーらーっ、逃げるな卑怯者ぉっ!!」
対する少女は、民家の屋根から屋根へと軽々と跳び移りながら追ってくる。
「だ、黙ってやられるわけにもいかないし……ちょっと痛い目見ても恨まないでよねっ!!」
比較的木々が並ぶ場所へ一旦着地し、プリズマはクロステライザーの斬撃を少女に向かって飛ばす。
「ふい」
だがしかし、少女はダガーを横に振るうと、いとも容易く斬撃を弾いてしまった。
「・・・あれ?」
【GUN STYLE】
「アッハハハハハ!!何やってんだか!!」
困惑するプリズマを他所に、少女は再び銃撃してくる。
「ど、どういうこと!?結構強くやったつもりだけど……とにかくもう一回!!」
銃撃を避けつつ、再び斬撃を振るうが、
「弱いっての!!」
あっさり砕かれた。
「な、何で……どういう事……!?」
『ムムムっ!!こいつはエマージェンシーなのです!!何でかイリヤちゃんの出力が、前と比べて3分の1くらい削れちゃってるのです!!超ド級の弱体化なのです!!?』
サファイアから見ても、以前より威力が弱いのが分かる。その答えを告げるように、にゅっと出て来たSDセンリツがそう告げた。
「そう、弱くなってるのよ。そりゃ当然、だって私がここにいるんだもの。」
「な……何を言ってるの……?」
「だ・か・ら……」
【CREATE STYLE】
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、少女はガントレットのスイッチを二回たたく。
「安心して、サクッと死んじゃってね!!」
すると、片腕から光が放たれたかと思えば、瞬時にロケットランチャーが形成され、こちらへ向けて容赦なく放たれた。
「し、死んじゃってとかそんな簡単に言っちゃ――のわあっ!!?」
そして地面に着弾したミサイルが、大きく爆発した。
=登場人物・用語補足=
『海堂めぐみ』
出典:メダロット ガールズミッション クワガタver.
政財界の子息が多く通う名門『帝鳳高校』の1年生の女の子。
控えめで大人しい性格をしていると同時に、周囲を惹きつける隠れたカリスマ性を持っている。
中学の頃にある人から貰ったという、クワガタムシ型メダロットの『ロクショウ』と出会ってから、メダロットに夢中になっている。
本作において、メダロットガールズミッション原作にて、幼馴染の麻生ときと共にアルテミス杯で優勝した後の時系列。何だかんだ今でもメダロッターとしての腕を上げている。
また、彼女の父親が美城プロダクションと友好関係を持っている模様。
『ロクショウRB』
出典:メダロットカードロボトルRB、メダロットS
初期に作られたクワガタムシ型メダロット『ヘッドシザース』の両腕パーツを改良したメダロット。
ロクショウは愛称。
本作においては、海堂めぐみのパートナーであるロクショウが、原因不明の不具合を機に、パーツを改良・リビルドした状態となっている。
またメダロットガールズミッションにおけるロクショウは、原作のとあるキャラと因縁があり、そこら辺の事が済んだ時系列の本作では多少割り切っている様子。