Fate/Scramble U World ~秘封トラベラー・メモリアル~   作:おろさん

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美しき黒の別人格 04

 

 

「空間が……ひび割れてる……」

 

 イリヤたちのいる場所から少し離れた、先日に流星が落ちた地帯にて。メリーは空を見つめ、そう呟いていた。

 

「……やっぱり、この前のユミカさんの件の影響……だよね。」

 

 蓮子の言葉に、メリーは静かに頷く。

 

 クレイジークロックとの激闘を潜り抜け、ソウクレイザーを幾度も撃墜してきた。

 

 そうして集まったノベルの数に比例するように、蓮子とメリーの記憶は徐々に、且つ着実に戻り始めていた。

 

 取り戻した記憶の一つは、メリーの目のこと。正確に言うなら、彼女の持つ『結界の境目が見える程度の能力』。それを活かし、自分たち『秘封倶楽部』が何らかの神秘……もとい幻想へと足を踏み入れる活動を行っていたこと。

 

 そして冬木に転移して間もない頃には、メリーがわずかながらも境界を操れるようになっていた。その確かな記憶が今、二人の脳裏に刻まれていた。

 

 やはり自分たちは違う世界の住人なのだという思いが、日を追うごとに確信へと変わっていく。そうした複雑な感情を抱えながらも、二人はただ黙々と調査を続けた。

 

「……あの装置自体がどういう構造なのか分からないのもそうだけど……どっちにしろ、ああいう不安定なものは、下手をすると砕けてしまいそうなのよね。」

 

「……小さくても?」

 

「小さくても。」

 

「やっぱりそうよねぇ……ってなると、とりあえず、イリヤちゃんや凛さん達が言ってた流星が何なのかを、先に調べた方が良いわね。」

 

 調査が行き詰まったのを見計らい、蓮子は一旦区切りをつけてそう提案した。メリーもそれに同意して小さく頷く。

 

「で、イリヤちゃんはこの辺りの地面に直撃したらしいけど……」

 

 クロスタルプロテクターに共有された計測データを頼りに茂みをかき分け進み、流星の落下地点と思われる場所へ辿り着いた二人は、周囲を見回し始めた。

 

「……む」

 

 やがて視界が開け、異様なものが目に飛び込んでくる。それは、青々と生い茂る草木にはおよそ不釣り合いな、鮮やかなピンク色の物体だった。

 

「これまたなんだこりゃって感じの……」

 

 恐る恐る距離を詰め、その未知の物体に指先を触れてみる。それは拍子抜けるほど、柔らかい。指を押し返してくるような、奇妙な弾力があった。

 

「……何か、ぷにぷにしてる。」

 

「ホントだなんかすごい。ちょっとクセになりそ……とりあえずどうする?引っこ抜く?」

 

「んー、気をつけながらやってみますか。」

 

 話し合いを終え、蓮子は地面にめり込んでいるピンクの物体を掴むと、ぐっと力を込めて引っ張り始めた。

 

「……ん、あれ、何か変なとこ引っ掛かってる?思ったより抜けな――」

 

 その瞬間だった。激しい爆発が巻き起こり、その勢いでピンクの物体がスポンと抜けると同時に、二人の身体は軽々と後方へ吹き飛ばされた。

 

「こ、今度は何事!?……あ、何気に抜けたけど結局なんこれ……」

 

「れ、蓮子、あれ……!」

 

 メリーの指さす方角、今の爆発に吹き飛ばされるようにして、プリズマとサファイアが後退してきた。

 

「えっ、蓮子とメリー!?こんな所で何してるの!?というかバイトは!?」

 

「い、イリヤちゃんに美遊ちゃん!?な、なんか昨日凄い流星だとか何だかって聞いて気になって……バイトは今日休みだったから丁度良いかと――」

 

【SLASH STYLE】

 

「ごちゃごちゃ何話してんのよっ!!」

 

 そうしている間にも、イリヤに似た少女が短刀を生み出し、躊躇なくこちらへ投げつけてきた。

 

「えっ、イリヤちゃんがもう一人……にしては褐色肌だけど、どなた!?」

 

「っ、下がって!!」

 

 蓮子とメリーが驚く横で、咄嗟にサファイアがプリズマを庇うように飛び出し、短刀を激しく薙ぎ払う。

 

「……フフッ!!」

 

 その隙を逃さず、少女は一気に間合いを詰めた。次の瞬間には、サファイアの両腕を掴んでいた。

 

「ッ――」

 

 サファイアがその手を振り払おうとした瞬間、少女はクスっと微笑った。その瞬間だった。

 

 チュッ

 

「ん”ッッ!!?(byサファイア」

 

「ん!?(byプリズマ」

 

「え?(by蓮子」

 

「へ?(byメリー」

 

 少女は、唇を重ねてきた。まるで、ストローでジュースを吸い上げるかのような強引さで、こちらの呼吸を奪った。

 

「ふぅ……ごちそうさま。」

 

「あぐ」

 

 そのまま引き離されると、サファイアの変身は強制解除され、美遊はその場にぐったりと倒れ込んだ。

 

「え、あ、ひおああああ!?いやちょっ、ミユー!!?しっかりしてミユー!!」

 

「イ……イリヤ……ごめんね……」

 

「NOOOOOOOOOOOO!!!?」

 

 そのままガクリとなった美遊の姿を見て、プリズマは震えた。

 

「っ……よくも……よくも私と同じ顔でっ、乙女の唇を……そんなことしたら余計に誤解されるでしょーっ!!」

 

「え、そっち?(by蓮子&メリー」

 

「(そういう怒り……!?)(by美遊」

 

 プリズマはそのまま勢いよくクロステライザーの斬撃を飛ばすが、

 

「へいストラーイク」

 

「意味ちがオウっ!!?」

 

 野球のボールみたいに跳ね返された。

 

「な、何か圧されてる……というかイリヤちゃん、まさか弱くなってる!?」

 

「とりあえず援護――」

 

「邪魔しないでよ、お姉さん達は勝手が違うんだから。」

 

【CREATE STYLE】

 

 少女がナックル武器のダガーを地面に突き立てると、地響きとともに硬質な装甲板が這い出し、蓮子たちの前に高く分厚い防壁を築き上げた。

 

「蓮子、メリーっ――」

 

「他人の心配してる場合っ!!?」

 

【『プリズマアックスセイバーU』!!!】

 

 再び少女の凶刃がプリズマを急襲する。それをセイバーで辛うじて受け止めるプリズマだったが、このままでは押し切られてしまう。

 

「(ふ、普段から振るってるけど、剣って間近で見るとすっごい怖い……これを何とかしないと、だけど、何度も斬撃飛ばして弾かれるし……ん?)」

 

 ふと、彼女は何か閃く。

 

「(そうだった……飛ばして駄目なら……)やぁっ!!」

 

 セイバーをアックスモードへと変形させ、渾身の力で押し込む。激しい衝撃と共に、両者は勢いよく後退した。

 

「まったく、抵抗しても苦しくなるだけ!大人しくしてれば優しく殺し――」

 

 直後、少女が浮かべていた余裕は霧散する。すでに眼前にまで、プリズマが迫っていた。

 

「え?」

 

「(飛ばして駄目なら……それだけじゃない。塊を飛ばすんじゃなくて……もっと意識して、薄く……)」

 

【『プリズマ』SABER BURST!!!!】

 

「(鋭い……刃を!!)」

 

 魔力を宿したその刃。それは、空間ごと少女を切り裂くように突き進む。

 

「やばっ――」

 

 完全に不意を突かれた少女の細い身体へ、容赦のない斬撃がまともに直撃する。次の瞬間、彼女は凄まじい衝撃とともに後方へと吹き飛んでいた。

 

「やった――って……」

 

「いったぁ……やるじゃないイリヤ。ちょっと予想外だわ」

 

 砂煙の向こうに、少女は平然と立っていた。ダメージは与えたはずだが、斬り裂かれたのは彼女の装甲だけだった。

 

「え、裸っ!?……いや、効いてはいるのかな服しか斬れてないけど」

 

「というか、これじゃあちょっと戦えないわねぇ、残念。まあいいや、今日は貴方の頑張りに免じて、見逃してあげるわ。」

 

 困惑するプリズマに、少女はそう言葉をかけた。

 

「な、何を……というか貴方結局なんなの!?薄々気づいてたけど、それ守護者の力だよね!?」

 

「え?……ああ、そうだったっけ。ってなると、一応戦士としての名前が必要ね……んー……ああ、そうだ。」

 

 指を唇に当て考え込んだ少女は、こう名乗った。

 

「……『裏(・)守護者グレイル』。うん、そうね。これがいい。」

 

 裏守護者グレイル。そう名乗ったイリヤ似の少女は、微笑みながらイリヤに視線を向け、

 

「まあ、そんなわけだから。これからも気を抜いちゃダメよ?油断してたら殺しちゃうからね……お姉ちゃん♪」

 

 そのまま、跳び去って行った。

 

「え、お姉ちゃん!?――いや、というかまずその顔と裸で街に出るなああああああああ!!!」

 

 プリズマの必死の呼びかけをガン無視したまま。

 

 

***

 

 

「……とりあえずは、何とかなった……んだよね?」

 

 少し経って、美遊がイリヤの元へ。イリヤは随分と疲れている様子だ。

 

「う、うん……でもなんか、もうすっごい疲れた……グレイルって名乗ってたけど、それだけであって何も解決してないし……」

 

「まあ、うん……」

 

 イリヤはため息をつきながら、地面に座り込む。

 

「あーあ……かに座は今日は運勢最悪だって本当だったわー……命狙われたわけだし……」

 

「え……」

 

 その言葉に、美遊は少し驚いた様子で問いかけた。

 

「イリヤ、かに座なの?」

 

「ん?うん……」

 

「……私も、かに座。」

 

「おおう……そっか、ミユも最悪だったよね……」

 

「う、ううん、そんなに悪くは……」

 

「ゑ」

 

 そう話していると、

 

「おーい!」

 

 蓮子とメリーが、二人の元へ駆けつけて来た。

 

「蓮子にメリー!?あ、ごめんほとんど忘れてた……」

 

「そういえば、さっきの壁どうしたんですか?結構面積広かったと思いますけど……」

 

「あ、それなんだけど……」

 

 先程の壁をどうやって攻略したのかと首を傾げる美遊に対し、蓮子は何かを見せる。

 

 それは、さきほど引っこ抜いたピンク色の物体。

 

「……ハァイ!」

 

 その球体には、可愛らしい顔と、手足がついている。そして、意思を持っている。

 

「・・・え、あの、何コレ」

 

「よく分からないんだけど……急に動いたと思ったら、周りの木の実とかを食べて……そしたらそのあと板のいくつかを吸い込んでくれたのよ。」

 

「あ、そうなの?いやでもそういうことじゃなくて……」

 

「まあ、うん……宇宙生物よね。」

 

「……?」

 

 その球体は、困惑するイリヤを見つめたかと思えば――

 

「あ、ど、どうもはじめ――」

 

「(大きく口を開ける)」

 

 イリヤを、強い吸引力で吸い込みだした。

 

「え、あ、ちょ」

 

「待って待って待ってストップストップストッーーーーープ!!!?」

 

 イリヤが球体に吸い込まれそうになり、美遊は必死にその手を引っ張る。一方、蓮子とメリーはどうにかして球体を止めようと、その周りで大慌てで手を尽くしていた。

 

 真上の空に生じた亀裂が広がり始めていることに、気づかないまま。

 

 

 

――次回へ続く。

 

 

 






=NEXT=

美遊「裏守護者グレイルを名乗る、イリヤにそっくりなあの子。次はその子の捕獲大作戦を実行するわけだけど……

不思議な丸い宇宙生物に続くように、突如冬木に現れる人達。暴走するポケモン、荒廃世界のサイボーグ、そして魔法少女……!!?

様々な知らない存在、更にはかつての戦争の戦士と昆虫兵器などが現れて……挙句の果てには、新たな敵まで増えていく。一体全体何が起きるっていうの……!?

第17話『イリヤとイリヤ、世界が交(マジ)わる第一歩』。この異変は、知らない世界まで巻き込んで……」


・今サブタイトルの元ネタ:光戦隊マスクマン
原作第1話サブタイトル『美しき謎の逃亡者』

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