Fate/Scramble U World ~秘封トラベラー・メモリアル~ 作:おろさん
イリヤ「謎の流星を止めた途端、私は二人になった。
『裏守護者グレイル』を名乗る黒い私に命を狙われ、何故か前より力が弱くなったり、ミユの唇が奪われたりしてピンチになって……
なんとか追い払えた……のはいいんだけど、結局正体分からないし、あの調子だとまた戻って来るよなぁ……
それはそれとして……その裏で、ツクモさんに奏海さん、蓮子とメリーたちには、新しい出会いがあったみたい。」
イリヤとイリヤ、世界が
ロンドン、時計塔。
「だから!どうしても行きたいんですよ、日本に!ここ最近はそこで妙な出来事が多発してるらしいじゃないですか!」
必死に頭を下げるこの青年……魔術師『フラット・エスカルドス』に対し、ロード・エルメロイII世は煙草を吸いながら、非常に深いため息をついていた。
「Shit……君はアレだ。一言で言うなら阿呆だ。」
「そんな、せめて二言以上で表してください!」
「馬鹿で阿呆だ。」
素っ気ない返しを取るエルメロイII世に対し、フラットは全く食い下がらない。
「お願いしますよエルメロイ教授!いえ、時計塔で最も優秀な教師、グレートビックベン☆ロンドンスター!!」
「そのくだらんあだ名で呼ぶな!!馬鹿で阿呆なうえに無神経か貴様は!!というか大体どこでその情報を知っ……いや、お前の事だから、徒夢透との会話や、遠坂凛たちからの連絡を盗み聞きしていたのだろうが……」
「そりゃ気になるじゃないですか!明らかに魔術師の範疇を超えた数々の超常現象が、この世に無数に存在するなんて!それにウォークロックとかいう、魔術製の時計頭の戦闘兵が色んな国に現れてる話なんて、一般市民でさえ知れ渡ってますよ!そんな明らかにおかしな事が起きてるのにどうしてわざわざパスポート止めてまで――」
「言・わ・ん・で・いい!!」
「ア”ーッ!」
エルメロイII世に半ばキレ気味にアイアンクローをかまされつつも、フラットは話を続ける。
「い、いやでも、それはそれとしてなんですけど、今日伝えたいことはそれだけじゃないんですよ!教授、この前に徒夢透さんと話してたじゃないですか、流星の事!!」
「……アレは既に解決したことだ。少々トラブルがあったようだが、最悪の事態は回避している。」
対し、エルメロイII世は手を放しつつ、呆れたようにそう返した。
「い、いやそっちじゃないんですよ、流星の話を聞いて、俺、綾香ちゃんや天体科の人達にも協力してもらって観測したんですって!多分なんですけど、あの時次元震で転移したのは、正確には生き物です!」
「……何?」
「前に本で読んだ事があるんですよ、『幻の星系』って言って、未知なるオーバーテクノロジーや不思議生物が沢山あるっていう伝承の!天体科の記録から引っ張ってきた流星のエネルギー波形に、その星系のっぽい文字を即興でコード化してぶつけてみたら、確率論的にピッタリ一致して――」
「はいはい、今はこの辺にして。」
と、フラットの両脇を抱えた人物……魔術師の少女『沙条綾香』が、彼をそのままずるずると引きずりはじめた。
「うえ!?綾香ちゃん!?なんでここに」
「何でも何も、天体科の資料のいくつかを勝手に使っちゃったでしょ。それで謝りに行かなきゃならないんだってば……!」
ピリピリと苛立ちをにじませ、呆れ果てた様子で、綾香はそのままフラットを連行しようとする。
「あ……あとそれとなんですど、転移したのはその生き物だけじゃないはずです!他にも色々来ると思うんですけど、他は分からないけど、多分一部は『オーラ・マシン』っていう――」
フラットがそこまで捲し立てた頃には、すでに二人は廊下の角を曲がっており、その姿は完全に視界から消えていた。
「・・・。」
何とも言えない複雑な表情で佇むエルメロイII世。しかし、その静寂を切り裂くように、新たな足音が近づいていた。
「モビルスーツの開発のきっかけともなった機動兵器……それが突如現世に出現した、オーラ・バトラー事件。60年も前の星間大戦、そして『第三次聖杯戦争』と時期が重なった、異世界に関する初の事件か……彼にしては、最後に随分と意味深な事を言うとはねぇ。」
その少女の名を、『ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ』。ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべて現れた彼女に、エルメロイII世は振り向きもしなかった。
「……また何の用だ?」
迫りくる頭痛をこらえるようにこめかみに手を当て、彼は億劫そうに言葉を投げかける。
「いや、今回は偶々居合わせただけだよ。」
対し、ライネスは首を横に振りながら、言葉を紡ぐ。
「かつて大聖杯が強奪され、聖杯戦争のシステムが瓦解……更にはクラスカードなどという、理を無視した英霊召喚触媒が出現してからというもの……流石に理解の範疇を超えるような現象が後を絶たないからな。たまには気分転換でもしないとやってられないさ。兄上もそうであろう?」
「……それに限っては、否定はしない。」
「
「……誰かが徒夢透に頼み込んで、情報を此方に提供しているのは間違いないだろうな。」
「だとしたら、気になるだろう?随分とこの世界の情勢に詳しい何者かが、どういうわけか私達に重大な機密を提供しているというのも。」
かなり清々しい笑みを浮かべるライネスに対し、エルメロイII世はまた盛大に頭を抱えた。
「そんな重要な話を廊下でするな……」
忌々しげに吐き捨てると、彼はそのまま足早に立ち去っていった。
「……まあいいさ、勝手に調べさせてもらうとしよう。特に10年前に関しては、兄上にとっても苦いところはあるだろうからな。」
ライネスは、やれやれと肩をすくめながらも、その唇に愉しげな笑みを浮かべてこう続けた。
「あの
*****
同時刻。アインツベルン邸の向かい、美遊の住むエーデルフェルト邸にて。
「……そんで、ホントに弱体化しちゃったん?」
「うん……;」
鈴夜から気のない口調で、探るような視線を向けられる。問われたイリヤは複雑な表情のまま、がっくりとテーブルに突っ伏していた。
「中々……美遊も、紅茶の淹れ方が分かって来たようですわね。」
「ありがとうございます……」
その向かいの席で、(メイド服の)美遊が淹れた紅茶を飲むルヴィア。
「ってか何でボクらルヴィアさんの家に集められたのです?√BACK-DOORSじゃだめなのです?」
「どっかでコイツの屋敷に行っておかないと、大体の奴等がいつも異空間で雑談してるみたいになるからだろ。」
「何言ってんの……」
何でか普通に冬木の住宅街に集められたことに疑問を抱くセンリツ、生々しい発言をするトラヴィスの横で、何故か苛立ちながら呆れるリーゼロッテ。
「魔術師の事はそんな知らんが、容量と出力がだだ下がりっていうのは初耳だな。」
「というか美遊ちゃんも大丈夫だった?コメントしづらい被害受けてたけど……」
「あの黒い子、かなり強いのは間違いないんだけど……というかどさくさに指輪奪われたりしてない?」
イリヤの今の状態に多少興味を抱く奏海、その隣で蓮子とメリーは美遊の心配をしている。
「一応大丈夫です……指輪は別に……あれっ」
美遊はそう返しつつ、持っているクロスタルリングを確認する……が、一つ足りない。メガレンジャー指輪がいつの間にか、失くなっているのだ。
「うそでしょ、ホントにどさくさに掏られてる……」
「アンタ達話を聞けェェっ!!!?」
すると。ホワイトボードが置かれたテーブルの向かい側。教卓のような台を何度もバンバンと叩きながら、凛が声を荒らげた。
「あ・の・ね・え!!悠長に言ってられないのよ!流星の事はともかく、グレイルとか名乗ってるらしいあの黒いイリヤの事は(色々トラブル起きそうな気がしてならないので)時計塔に報告してないんだから!だから対策会議しなきゃならないの!あと今回ルヴィアのとこに集めたのは、アイツが守護者の力を使ってるなら√BACK-DOORSに普通に来るかもしれないからそこの考慮よ!!」
「チッ(by鈴夜」
「何で舌打ちしたのよ!?せめてなんか言いなさいオイ!!」
「あの、薄々分かってたけど、鈴夜さんやっぱ魔術師嫌いなんじゃ――」
「……最初と比べたら態度改めてる方なのです」
ツクモのひそやかな問いに、センリツは深く頷いて応えた。
「あと、その前に一つ言いたかったけど……何か知らない奴いるのホントに誰?それも計三名って……」
凛が指さした席に座っていたのは、めぐみとロクショウ。そして、そのめぐみの膝の上には、謎のピンク色の球体生物がちょこんと収まっていた。
「は、はじめまして、海堂めぐみです。こっちはパートナーのロクショウさん。」
「……宜しくお願いする。」
「海堂めぐみって、確かアルテミス杯っていう大会の優勝者の?」
と、イリヤ。
「ああ。何でかクレイジークロックに狙われてたっぽいから、仕方がないんで巻き込んだ。」
対し、奏海はそう答えた。
「それで、そちらの……丸っこいのが……」
「昨日の流星……として降って来た子っぽい。」
「何言ってるのかよく分からないので詳細全然分からないんですけど、発した言葉から多分『カービィ』って名前かと。」
「?」
ルヴィアが『カービィ』という名のピンク球体に視線を向けると、蓮子とメリーが紹介した。
そのカービィは頭を傾げながら、大量のお菓子を頬張っている。そんな横でロクショウは、めぐみに食べかすがかからないようにと目を光らせ見張っていた。
「……そいつ、『幻の星系』の関係者か。」
「幻の星系?それって、一体……」
「未知の古代遺産と、光に包まれている星々が浮かんでいるという、伝承のことですね。」
「そういえば、アナスタシアさんが昔、本で読んだ事あるって言ってましたね。この子がその住民だとすると世紀の大発見ですよね……まあ今回の場合隠しますが。」
ふと奏海が発した単語に美遊は首を傾げたが、すかさず文香とありすが説明してくれた。
「(幻の星系……何かずっと前から聞き覚えがあったようなそうでもないような……)」
「……はぁ、まあそこが分かった事で、改めて作戦会議よ。」
奏海が考え事をし出した時。凛がパン、と小気味よく手を叩いて本題に入った。
「問題の黒イリヤ、自称『裏守護者グレイル』。どうやらヤツの目的はイリヤの命……でも当のイリヤはというと、何故か弱体化してると。」
「うん……」
凛の言葉に、またしゅんとするイリヤ。
身体的な異常は一切ないにもかかわらず、魔力容量と出力だけが削がれている。黒イリヤの出現が何か関係があるのかもしれないが……
「(やっぱり、イリヤには何かがある……本人も知らない何かが……)」
「……となると、何か弱体化を補うための新要素が必要かどうかだ。」
その時、奏海がそう言い出した。
「新要素?……あ、もしかしてエゴルギアですか。」
その意図を察した菜々が、横から口を挟んだ。
「エゴルギア……前に一回使った事あったけど、奏海さんみたいに何か凄そうな力をバーンってやるってこと?でも確かソレって、専用のメガホンみたいなの必要じゃなかった?」
イリヤが心配そうに首を傾げたが、奏海は表情を変えず続ける。
「いや、割と手軽で買えるぞ?買うならエゴルギアは安くて500円くらい、角醒器も5000円くらい……一般的な小学生ならお小遣い貯めて買える。」
「……まずどこで買えるのかと思うけど、なんでニチアサの玩具と同じくらいの値段で買えるの???」
「知らん。ああでも、店は流石に限られてるぞ。前に久次良真実って子がいたろ?その子が所属してる『シンドバッド商会』に関係するとこに行けば買える……けどまあ、今回は念のため買ったスペアと、前手に入れたのいくつかあげるから、それ使え。」
といって彼は、角醒器と、五つほどのエゴルギアをテーブルに置いた
「Pさん、角醒器が無くてもエゴルギアを使えるのに、どうしてスペアを?」
「気まぐれ」
首を傾げたありすにそう返しつつ、奏海はエゴルギアの紹介を始めた。
「まずキリンっぽいやつが『潜角』。前にイリヤに使ってもらったやつだ。コイツの力で、地中に潜る力を角醒できる。次にこのコブラっぽいのが『槍角』。槍の力を角醒させ、やり方によっては剣術にも使える。」
「うおお……そう聞くと何かいけそう……それで、他はどんなの?」
「ああ、次はこれだな、カンガルーみたいな外見の『闘角』。格闘技に特化したインファイトな力を角醒できる。」
「・・・ん?」
「続いて『毒角』。アンコウみたいなコイツは凄まじい神経毒を敵に浴びせる。」
「ん??」
「で最後に『威角』。強烈なプレッシャーを放って、やり方によっては相手を催眠だか操り人形だかの如く操る事も出来る」
「あ、あのすみません、内三つはともかくもうちょっと正々堂々っぽいの無いんですか」
「太古の生物にそんなんあるかよ。いいから全部もってけ」
「いや別にそんな事はなくない!?……って言っても仕方がないから受け取るけど……」
そんな話が続く中、
「……あの、本題戻って良い?」
凛がひとつ咳払いをしてそう問いかける
「あ、どうぞ;」
イリヤが返した後に、本題を再開した。
「とりあえず、方針を決めましょう。イリヤが命を狙われている以上、優先するべきは……裏守護者グレイルこと黒イリヤの捕獲!相手はかなり厄介な能力を持ち合わせてるけど、作戦を練れば後は数で何とかなるのよ!」
「……一つ良いか、お前達は普段こんな雑なのか?(byロクショウ」
「まー雑ではあるね。ぶっちゃけ成り行きが多い。(by鈴夜」
「うおい!!!……と、とにかく!情報が少ないけど、ヤツの目的が分かってる以上はおびき寄せるのも容易なのよ!そのためにはイリヤにも手伝ってもらう!そして絶対に捕まえる!いいわね!?」
「え?う、うん……」
凛の言葉を聞いて、イリヤはもう一度首を傾げた。