Fate/Scramble U World ~秘封トラベラー・メモリアル~   作:おろさん

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イリヤとイリヤ、世界が交(マジ)わる第一歩 02

 

 

 冬木市を流れる川のほとり。巨大な橋が落とす暗い影の真下にて。

 

「ふぉげえええええええっ!!?」

 

 激しい爆発音と共に、不良集団が吹っ飛ばされ、纏めて失神する。

 

 その内の一人が携えていたクロステライザーが消滅。それと同時に指輪が一つ、佇む少女の手元へと吸い込まれるように飛んできた。

 

「ふーん、たまたまパクったやつが何なのか気になったから、同じようなもの持ってるやつ見つけて捻ってみたけど……へぇ。」

 

 裏守護者グレイルを名乗る黒いイリヤは、この前に美遊から掏った『電磁戦隊メガレンジャー』の指輪と、さきほど掴んだ『ゼロの使い魔』の指輪を見つめる。

 

「ていうかこれ、私も使えるかしら?試してみましょ」

 

『ガンダールヴのルーン』→『ルイズ』

『平賀才人』

 

 そう思って彼女は、自身のガントレット武器に指輪を付け替えようとしてみたが、何も起こらない。

 

「……ちぇっ。」

 

 つまらなさそうにきびすを返した黒イリヤの視界に、不意に人影が飛び込んできた。いつからそこにいたのか、目の前に誰かが立っている。

 

「復調も兼ねて、念のためこの地に出向いてみたが……流石に驚いたな。」

 

 そこにいたのはコロモ。既に狩人アイズに変身している彼女は表情を崩さぬまま、しかし明らかな動揺をその瞳に宿し、タイムブラスターの銃口をまっすぐに突きつけてくる。

 

「誰かと思えば、狩人さんじゃない。」

 

「私を知っているか……感知できる気の流れからして、イリヤスフィールと同系統の何かと見た。それに腕は良いようだな。」

 

「言っておくけど、あなた達と手を組む気はないわよ。少なくともあなたは、イリヤを殺す気が無い。如何にも悪の組織っぽいやつらのクセに……ってか、邪魔だからどこか行ってくれない?あなたも色々勝手が違うから。」

 

 すました顔でそう言ってくるグレイルだったが、

 

「何の勝手かは知らんが、丁重にお断りする。第一貴様、いくらイリヤスフィールを殺めた所で意味などな――」

 

「……うるさいっ!」

 

 アイズの言葉に歯ぎしりした彼女は、地面を蹴って突進した。

 

【SLASH STYLE!!!】

 

「……しゃらああああああっ!!」

 

「……ふっ!!」

 

 火花を散らして刃が衝突した瞬間、激しい衝撃とともに、二人が身に着けていた指輪が一つずつ宙を舞った。

 

「チッ……!!」

 

 地面を蹴り上げ、跳躍。二人は交差するように、宙を舞う指輪をそれぞれの手で掴み取った。

 

「何の目的で集めてるか知らないけど、とりあえずこれは貰っておくわね。」

 

 グレイルは、『アニマエール!』の指輪を、

 

「ただし、メガレンジャーの指輪と交換……という形でだが。」

 

 アイズは、『電磁戦隊メガレンジャー』の指輪を。

 

 二人はお互いの指輪を見せ合うようにして、言葉を交わした。

 

「……ふぅん。まあどうだっていいや。私はまずイリヤを殺せばそれでいい。」

 

「……殺して何になると?」

 

 アイズはそのままグレイルに視線を向けたが、

 

「教えるわけないでしょ」

 

 そう言い捨てつつ、あっかんべーと舌を出したグレイルは、そのまま軽やかに跳び去って行った

 

「……なるほど、面倒なものを抱えている……む」

 

 変身を解き、ため息を吐くコロモだったが、すると携帯から電話が。

 

「なんだ。兄者以外で私に連絡するやつは珍しいな、『紅晴結菜』。」

 

『あ、そうなのぉ?って、それはそれとしてぇ……その兄者ことドクター・エビテンから通達よぉ……『亀裂に変化が起きたから、念のため帰還しろ』って。』

 

「了解した……となると、ここからはお前達が請け負うのか?」

 

『そういうことよぉ……それに、そろそろ私達が表に出なきゃならない理由が遂に出来たからぁ……今からこの前に手を組んだ彼らを連れて向かうわぁ。』

 

「そうか……となると、ようやく忙しくなるな……少し楽しみかもしれん。そっちも頑張るんだな。」

 

 どことなく嬉しげなコロモは、電話を切った後、そのままこの場を後にした。

 

 その時だった。上空で、ガラスに小さく亀裂が入るような音がしたのは。

 

 

*****

 

 

 冬木市の港。その日、人影のない草木が生い茂る地で、空間が歪んだ。

 

「っ……!?」

 

 いつの間にか、その場に立ち尽くす誰か。おそらく青年が、その目を開いた。

 

「……ここは?」

 

 青年『ショウ・ザマ』。彼はいま自分の身に何が起きたのか、その記憶を確かめるように低く呟いた。

 

「俺は、太平洋でドレイク軍と戦っていて……ゴラオンとゲア・ガリングが沈んで、ルーザとリムルが死んで……そうだ、あの時オーラ・ロードが開いて……」

 

 そして、周囲の景色に視線を走らせる。

 

「マーベルやニー達はどうなったんだ!?それに、チャムもどこに――」

 

『わあっ!?』

 

「うおっ!?」

 

 振り返ったその瞬間、奇妙なものと目が合った。機械仕掛けの球体。それはこちらに気づくと、まるで人間のように驚いた仕草を見せ、滑らかな口調で言葉を紡ぎ始めた。

 

「な、何だ!?チャム……ではないなどう見ても……」

 

『セプティマとも違う反応が急に出て来たと思って来てみたけど、君は一体……?』

 

「ず、随分と流暢に喋るな……最近開発されてたっていうAIロボットってやつか?」

 

 首を傾げつつ名乗るショウに、その球体……『RoRo』はこう返した。

 

『確かにボクはその類だけど……もしかして、君も違う世界から?』

 

「広い意味で言うなら、そうかもな。けど……」

 

 見上げれば、切り取られた空の隙間を埋めるようにビル群がそびえ立っている。

 

「具体的に何処かまでは分からないが、多分ここは日本だ。」

 

『ニホン?確か大昔の古い地名じゃないか。』

 

「そうなのか?」

 

『ああうん、ボクやアキュラくんからすればね。といっても、ボクのデータと、この世界の文化や技術の構造はほとんど一致しないんだけど。それで一通り周囲を探ってみたんだけど……どうやらこの世界、宇宙開拓されてるみたいだね。』

 

「宇宙開拓……?それってもしかして……」

 

 

***

 

 

「どうやら、再び異世界に転移したのは間違いないが……」

 

 港のほとりに佇む青年……『アキュラ』は、目の前の何かを警戒するようにじっと見つめていた。

 

「モキュ……?」

 

 紅いつぶらな瞳を持つ白く小さなそれは、一切の敵意もなく座り込んでいる。

 

「この世界の原生生物……かと思ったが、そうではなさそうだな……」

 

「モキュ!モキュキュ!!」

 

 と、その白い何かは、何かを伝えようとしてるのか、それとも質問してるのか、アキュラに近づいて来る。

 

「……何かを訴えているのか?……それか、誰かとはぐれたのか……すまないが、オレもこの状況がよく分かっていない。」

 

「モキュ……」

 

「言葉は通じるようだな……情報が少ない以上、仕方がない。オレも仲間を探さないとならない。お前も誰かとはぐれているなら、ついでに付き合ってやる。」

 

「モキュキュ」

 

「(しかし……この白いのから何か妙な気配を感じる……何か、セプティマに似通ったものがあるというのか……?)」

 

 アキュラは少し考えこむも、

 

「(……考えるのは後にしておこう。幸い此処は人間社会が存在している。まずはRoRoを見つけるか、会話が成り立つ人物に接触した方が良さそうだ。)」

 

 

***

 

 

「えっと、つまりあなたは、そのバイストン・ウェルに住んでる妖精で……」

 

「そうそう!ミ・フェラリオの『チャム・ファウ』!」

 

 また別の、市街地から離れた辺り。

 

 二人の少女……名を『環いろは』と『七海やちよ』。目の前に浮かんでいる妖精らしき小さな少女『チャム・ファウ』と出くわし、チャムから何か説明を受けていた。

 

「それにしても、魔女の結界に入り込んだのかと思ったら、気が付いたらやちよさんと一緒に知らない場所にいるなんて……」

 

「少なくとも、ここは神浜でも魔女の結界の中でもないようだけど……それに、私達の知ってる日本文化とも、どこか少しだけ違う気がするわ。」

 

「……よく分からないけど、二人は地上人じゃないの?」

 

 状況に困惑し、腕を組んだりするいろはとやちよに、再度チャムが話しかける。

 

「えっと、あなたが言ってる地上が地球ってことなら地上人……なのは合ってると思うんだけど……」

 

「もしかすると、ここは私達の住む地球じゃないのかもしれないのよ。とはいっても、私達も状況がよく分からないから……」

 

「はぁ……」

 

 首を傾げるチャムの横で、いろははやちよに提案し出す。

 

「とりあえず、立ち止まってても進展は無さそうですし、周囲を探ってみませんか?もしかすると、ういや鶴乃ちゃんたちもここに来てるかもしれませんし。それに、この子のいうショウって人も見つけた方が良いと思いますから……」

 

「……手掛かりがあまりにもない以上、それが良さそ――っ!?」

 

 その時。二人は、何かを感知した。二人にとって、よく知る系統のもの。指輪……もとい、ソウルジェムが不穏に揺らめいたそれ。

 

「何これ!?またオーラ・ロードが開くの……!?」

 

 上空を見上げてチャムが叫ぶ。それは、彼女も知っているものだった。

 

「私とやちよさんが巻き込まれたものと、同じ事が起こるって事……!?」

 

 

***

 

 

 そんな事が起こっている裏、というか数分前。一方その頃のイリヤ達。

 

「で、作戦開始なのは、まあ分かるんですけど……」

 

 イリヤは現在、身体を縛られ木に吊るされていた。理由は単純。黒イリヤをおびき寄せるためだ。

 

「いやちょっ、だからってなんでそんな極端なんですかね!?というか下ろしてー!?」

 

「・・・あの、本当に効果あるんでしょうか?それに待ち伏せにしてはけっこう大人数なんですけど……いくら四方に散らばってるとはいえ……」

 

 妙な状況とシンプル過ぎる作戦に困惑する美遊ではあったが、

 

「餌で釣るには、単純かつ効率的なやり方。狙いがイリヤなら、例え罠であっても無視できないものよ。」

 

「そもそも、遠慮なく攻撃してくるような相手に、回りくどい手段は後手に回る場合もありますもの。」

 

 自信と同時に警戒を抱いている凛の言葉に、桜は頼もしく微笑みながら言葉を添えた。

 

「そこはそうかもしれませんが……ん?」

 

 何とも言えない表情を浮かべていた美遊だったが、ふと視線を動かすと、メリーがじっと上を見上げていた。

 

「ひび割れが、いつの間にか大きくなってる……」

 

「メリーさん……?」

 

***

 

「……む」

 

「Pさん?何か感じ取ったんですか?もしかして黒いイリヤちゃん……?」

 

 一方同じく待ち伏せする奏海たち。彼が背後に視線を向けたため文香はそう聞くが、

 

「いや……そっちじゃねぇ……こりゃ大分良くない気配が来やがっ――」

 

 その時だった。大きな音が鳴り響いたのは。

 

 

 






=クロスタルリングカセット=
『ゼロの使い魔』
ガンダールヴのルーン→ルイズ
固定絵:平賀才人
指輪能力:エクスプロージョン
所有者:パラレルファイターの不良→???(裏守護者グレイル)

・指輪所有者状況
『電磁戦隊メガレンジャー』
所有者:美遊→???(裏守護者グレイル)→コロモ

『アニマエール!』
所有者:コロモ→???(裏守護者グレイル)


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