ウルトラワールド:Scramble Engage   作:おろさん

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芸術少女ケミストリー 02

 

*****

 

 

 夕方。アインツベルン邸。

 

「話を聞く限り……指輪の戦士が、冬木に現れたってところかしらね」

 

 イリヤの部屋には、いつの間にか凛がいた。

 どうやら窓から入ってきたらしい。

 

 イリヤと共に、昼間の出来事を蓮子とメリーから聞いている。

 

「前に省いてた、『競う』ってことに関係してる人、だよね……」

 

 イリヤの言葉に、凛は頷く。

 

「あの時は省いたけど、クロスタルリングについて、私が知ってる範囲のことを説明するわ」

 

 そう前置きして、二週間前に省略していた内容を語り始めた。

 

「まず、前にも少し言ったけど……クロスタルリングは、本来『持ち主同士で戦うこと』を目的に作られたものなの。

 

……その理由が、『自分の願いを叶えるため』よ」

 

「え、それってどういう――」

 

 思わず声を上げる三人を、「待って」と制し、凛は続ける。

 

「詳しい仕組みまでは分からないけど……

 各地に散らばった指輪『クロスタルリング』を手にした人間は、『願いを叶えるための契約』を結ぶことになる。

 

 指輪を手にした契約者――『パラレルファイター』と呼ばれる者同士が、主にクロステライザーを使って戦い、勝者が相手の指輪を手にする。

 

……そうやって戦い続け、すべての指輪を集めた者が、自分の願いを叶えられる、という仕組みみたいね」

 

「あ、じゃあ質問。

 そんな戦いがあちこちで起きてたら、凛さんの言ってた魔術協会とかに、気付かれないんですか?」

 

 イリヤの疑問に、凛は少し困ったように笑う。

 

「……普通は、そう思うでしょう?

 でも侵蝕世怪人の存在も含めて、そう簡単にはいかないの。

 

 パラレルファイターは色々な能力を得るんだけど……その一つが、無関係な人達に対する記憶操作の魔術よ。

 一連の出来事が終わると、指輪に一切関与していない人間から、指輪に関する記憶が消えるの」

 

「記憶消去……じゃあ、侵蝕世怪人が逃げた時に……」

 

「そういうこと。

 だから基本的に、魔術協会を含めた大半の組織は、クロスタルリングやパラレルファイターの存在を認識できていない。

 

……2年前、ロンドンで侵蝕世怪人が出現した事件と、時計塔に現れた怪しい人物が文献を渡してきたのをきっかけに、私たちは『指輪の件に関わった』判定になった。

 

 そのおかげで、記憶を失わずに済んでいるのよ」

 

 時計塔でも何かあったのだと察せられる説明に、3人は揃って興味深そうな表情を浮かべる。

 

「とりあえず……その、アルテさん……だっけ?

 クレイジークロックとも戦ってくれそうだし、協力してくれたり――」

 

「……それなんだけど、気を付けた方がいいわよ」

 

 イリヤの言葉に、凛は少し苦い表情で遮った。

 

「『契約者同士が競い合う』――それ自体は、クレイジークロックが関与していなくても、今も起きていること。

 

 つまり、指輪の戦士同士はライバル同士なの。

 守護者は、指輪の力の悪用を防ぐための『抑止力』であると同時に、指輪の戦士にとっては競争相手でもある。

 

 人によっては、意地でも指輪を奪いに来る可能性があるわ」

 

「あー……そっか。

 侵蝕世怪人のことを考えると、結果的に指輪をたくさん手に入れることになるし……」

 

「それぞれ理由があって、『願い』を叶えたい人達からすれば、守護者は厄介な存在なのよ」

 

 その説明を聞きながら、蓮子は手元の『炎神戦隊ゴーオンジャー』と『ひだまりスケッチ』の指輪を見つめ、静かに納得していた。

 

「……本当なら、人に知られずに進む話だったのに。

 クレイジークロックが割り込んで、指輪を無理やり奪い始めたから、私達が守護者になって……

 でも、指輪を手に入れるってことは……」

 

 イリヤもまた、『わんだふるぷりきゅあ!』と『仮面ライダーゼロワン』の指輪を見つめる。

 

――クロスタルリングを巡る戦いの末に叶えられる『願い』。

 そのクロスタルリングを奪われるということは、戦いから脱落し、願いを叶える資格を失うことを意味する。

 

 そして願いを叶えるためには、すべての指輪を集めなければならない。

 つまり、クレイジークロックが奪った指輪も、守護者が回収した指輪も、いずれは争奪の対象になる。

 

 要するに、クレイジークロックも守護者も、指輪争奪戦に関わっている点では大差ないのだ。

 

「……とりあえず、全員が協力してくれる、なんて考えは捨てておきなさい。

 アルテって子がどう出るかは分からないけど……どちらにしても、誰かがいる前で安易に指輪の力を使うべきじゃないわ」

 

 

 

***

 

 

 凛に何度も念を押されてから、約1時間後。

 夕食の時間になった頃だった。

 

「ただいまー」

 

 学校から帰ってきた士郎を、玄関でセラが出迎える。

 イリヤはリビングから顔を出し、その様子を見ていた。

 

「お帰りなさい、士郎さん。ちょうど夕飯が出来ましたよ」

 

「あ、お兄ちゃん。おかえりー!」

 

「ああ。ただいま。思ったより遅くなるかと思ったけど、ちょうどいいタイミングだったかな。……あ、そうそう。明日の課外学習のことなんだけど――」

 

 そう言いながら、士郎は鞄の中からチラシを一枚取り出して見せる。

 

「あら、これは……?」

 

「実はさ、有名な芸術家が急に来日したらしくてさ。新しく描いたっていう40枚以上の絵を、明日行く美術展で展示するらしいんだ」

 

「まあ……本当に有名な方ではありませんか。イリヤさんと同じくらいの年齢で、しかも絵の才能が桁違いだと評判の……」

 

 チラシに載っている顔写真を見て、思わず声を上げるセラ。

 その様子が気になり、イリヤもチラシを覗き込む。

 

「そんなにすごい人なの?どんな人なんだろ」

 

 写真に写っているのは、赤みがかった瞳に、緑を基調とした髪色の少女。

 小学生ほどの背丈に見えるその人物の名前は――

 

「『アルテ・クリープ』……本当に私と同い年くらい……ん?『アルテ』?」

 

 その名前を見た瞬間、イリヤは何度も顔写真と名前を交互に見比べる。

 

「イリヤ?どうかしたのか――」

 

「えっ!?い、いや、何でもない何でもない!あ、ちょっと夕飯のこと、蓮子さんとメリーさんに伝えてくる!!」

 

 士郎の問いかけを遮るようにそう言うと、イリヤは慌てた様子で二階へと駆け上がっていった。

 

「おい、チラシ後で返せよー?……急にどうしたんだ?」

 

 首をかしげる士郎。その背後で、セラが小さくため息をつく。

 

「最近のイリヤさん、何か隠しているように見えるのです。学校でも居眠りが多いと聞きますし……それに、いつの間にかあの二人にも、ため口で……」

 

「ま、まあ、その年頃になれば、色々あるんじゃないか?」

 

 呑気にそう返す士郎だったが、

 

「そういうお年頃にしてもです!最近は『すいっち』だとか『さぶすく』だとか、すっかり俗世に染まってしまって……このままでは、留守を任せてくださった奥様方に顔向けが出来ません!」

 

「え、いや、そこまで気にしなくても――」

 

「何を無責任な!!」

 

 涙ぐんだ目をハンカチで拭い、セラはきっと士郎を睨みつける。

 

「大体、義理とはいえ兄である貴方が、きちんとしていないからこんな事になるのです!!」

 

「え、俺!?いや、何で急にそんな話に……」

 

「そもそも、貴方は私の家事まで全部やってしまうではありませんか!そんな事をされては、私の立場が完全になくなってしまいま――」

 

 セラは勢いそのままに士郎へ詰め寄り、半ば泣きながら延々と小言を続けていく。

 

「……セラ、ご飯、冷めちゃうけど大丈夫?」

 

 そんな二人のやり取りを、リビングからひょっこり顔を出して眺めながら、リズはそう呟いた。

 

*****

 

――場所も分からぬ、奇妙な空間。

 辺り一面には、様々な技術で組み立てられたと思しき装置や残骸が無秩序に並んでいる。

 

「BURURURURURURURRRRRR!!!」

 

 ドクター・エビテンは、ケンチク世怪の再構築を行っていた。

 一度完全に分解し、クロスタルリングを抽出。

 それをワイルドライザーに装着し、再度組み上げるという手法である。

 

「まったく……作製して早々、深手を負わされるとはな。だが、まあいい。以前から目を付けていた指輪の契約者が冬木に来ただけでも収穫だ」

 

 低く呟きながら、エビテンは作業を続ける。

 

「コロモがまだ戻っていない以上、当面は調整したケンチク世怪(コイツ)を主力に使うとするか……」

 

「『アルテ・クリープ』。フランス人。小学生にして突出した絵の才能を持つ天才芸術家であり、指輪の戦士『仮面ライダーガッチャード』」

 

 その説明を口にしながら、1人の人物がエビテンの元へ歩み寄ってくる。

 

「風景画、人物画を問わず名作揃い。私も彼女の絵は大好きですよ。……で、能力的にも厄介そうですが、侵蝕世怪人とは相性が悪そうですね。その辺りの対策は?」

 

「対策済みだ。気になるなら、実際に見た方が早い」

 

 エビテンはちらりと視線を向ける。

 

「……で、珍しく出てきたと思えば、何の用だ。『瑠璃川ダイヤ』」

 

 白いニット帽にパーカー、青いデニム。

 長い金髪と紫の瞳を持つ青年――瑠璃川ダイヤは、不敵な笑みを浮かべる。

 

「何の用も何も。私も一応、クレイジークロックの一員ですから。顔を出すくらい、悪くはないでしょう?」

 

「裏で何をやっているか分からん奴が、このタイミングで現れて冷やかし、というわけでもあるまい」

 

「簡潔に言いますよ。ドクター・ベノディアが引き入れた21号――目処が立ったので『ナメック星』に向かいました」

 

「……ナメック星、か。十中八九、あの願望機だな」

 

「普通に『ドラゴンボール』って言ってもいいんじゃないですか?どうして貴方、そういう物を一括りに『願望機』って呼ぶんです?」

 

「気にすることでもない。願いが叶えば、それは願望機でしかない」

 

「……そんなものですかねぇ」

 

 ダイヤは肩をすくめる。

 

「それより、お前自身の件はどうだ。あの件は済んだのか?」

 

「ああ、問題なく。資料もあります」

 

 そう言って差し出された研究資料に、エビテンは目を通す。

 

「……何を考えているか分からん割に、仕事は早いな」

 

「技術だけは豊富ですから、この組織。……まあ、自分でやっておいて何ですが、大分荒い方法で、ですけどね」

 

 そう小声で呟き、ダイヤはその場を後にする。

 

「瑠璃川ダイヤ……」

 

 エビテンは資料を読み返しながら、何かを思案するように黙り込む。

 

「……さて、お前は行け」

 

「GGIAAA!!!」

 

 命令を受けたケンチク世怪は、生成されたワープホールへと吸い込まれていった。

 

「私も私で、次の準備を進めるとするか」

 

 そう呟き、エビテンもまた、その場を後にした。

 

 

*****

 

 

――翌日の土曜日。

冬木市で開催されている美術展会場にて。

 

 穂群原学園高等部の生徒たちが、課外学習の一環として集まり、展示された絵画や彫刻といった美術品をそれぞれのペースで鑑賞していた。

 

「(アルテ・クリープが来て、作品の公開が始まるのは……確か昼頃だったわよね……)」

 

「お、遠坂」

 

 同じく穂群原学園に通うため、課外学習に参加している凛は、美術品を眺めながら、アルテ・クリープの来館予定時刻を頭の中で確認していた。

 そんな凛に声をかけてきたのは士郎だった。

 

「お前も、今日来るっていうアルテって子が目当てか?」

 

「……って、士郎じゃない。まあ、そんなところかしら。有名な芸術家が突然冬木に来たって聞いたら、気になるのも普通でしょ?」

 

 少し驚きつつも、凛はそう言って話を合わせる。

 

「それにしても、ここも随分独特な作品が並び始め――え?」

 

 何気なく周囲を見回した、その時だった。

 凛は、思いもよらない光景を目にする。

 

「(・-・|」

 

「(・v・|」

 

「(・m・|」

 

 視線を感じて目を向けると、そこにはこっそりとこちらを見ている三人の姿。

 言うまでもなく、宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーン、そしてイリヤである。

 

「ん?どうしたんだ、遠坂――」

 

「え?あ、い、いやいや、何でもないわよ何でも!ほら、あっちとかも良さそうじゃない?おほほほほ」

 

「え、な、何だよ急に」

 

 一瞬、完全に固まっていた凛だったが、士郎が三人の存在に気づきそうになったため、我に返る。

 そして全力で士郎の背中を押し、別の展示エリアへと強引に移動させた。

 

「(ちょっとちょっとちょっと!?何であいつら普通にいるのよ!?それに、あの二人はバイト中のはずじゃ――……あっ)」

 

 不自然さに首をかしげかけたところで、凛は昨夜の出来事を思い出す。

 

―――

 

『……ああ、そうそう。指輪で思い出したけど、これ』

 

 イリヤの部屋。

 クロスタルリングやパラレルファイターに関する忠告を一通り終えた後、凛はもう一つ、指輪を取り出していた。

 それもまた、クロスタルリングだった。

 

『あら、またクロスタルリング?……持ってたのって、わんぷりのだけじゃなかったのね』

 

『別に、時計塔で倒した侵蝕世怪人が一体だけとは言ってないもの。

 まあ、それでも向こうで手に入れた指輪は二つだけなんだけど』

 

 一拍置き、凛は続ける。

 

『……どっちにしろ、私には使えないものだったし。これも、あげるわ』

 

 そう言って、凛は蓮子にその指輪を手渡した。

 

『これを元にした侵蝕世怪人も、倒すのは結構苦労したみたいよ。

 何しろ、『宝石から分身を作る能力』を使ってきたって話を聞いたから』

 

―――

 

「(アレだー!!)」

 

 凛は心の中で叫ぶ。

 

「(絶対あの指輪の力を使って、バイト抜け出してきたでしょこの感じだと!!

 いや、侵蝕世怪人が出た時に行動しやすくなるのは便利だけど!

 というか、明らかにアルテ・クリープ目当てじゃない!?安易に近づくなって言ったのに!!?)」

 

「と、遠坂?おーい、遠坂ー?」

 

 どうやら、凛が渡した指輪の力で、蓮子とメリーはバイトを抜け出せたらしい。

 イリヤに関しては、大方セラに「マルチバースに行ってくる」とでも言ったのだろう。

 

 完全に渡すタイミングを間違えた――そんな「やっちまった」という表情を浮かべる凛と、

 理由も分からないまま背中を押され続けている士郎であった。

 

 

 

 







―――――

*注釈:本作品は、自著の文章をAI(ChatGPT等)で推敲・校正して投稿しています。ストーリーや台詞はすべて作者が作成したものですが、読みやすさ向上のために文章の整理を行っています。

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