ウルトラワールド:Scramble Engage 作:おろさん
***
「(・m・)」
少し時間が経ち、昼頃。別のエリアにあるレストランで、蓮子たちは昼食を取っていた。
イリヤはというと、どこか機嫌が悪いような、ほんのりと焼きもちを焼いている表情をしている。
「……あの、イリヤちゃん?……イリヤスフィールさーん?」
その様子に、蓮子とメリーは困惑していた。
「(士郎さんが凛さんと少し仲良くしてるのを見ただけで、急にこうなるって……)」
「(なんともまあ分かりやすいブラコン……)」
「(・m・)」
顔を見合わせて苦笑する二人に目もくれず、イリヤは無表情のまま、エビフライとカレーを黙々と食べ続けていた。
「……あ、そ、そろそろアルテ・クリープの来館時間じゃなかったかしら?」
「え、あ、そうじゃん!?早く食べ終えないと!」
***
数分後。
急遽開催された、アルテ・クリープ作の美術品展示室。蓮子たちより先に昼食を終えた凛と士郎は、すでにその展示室へ辿り着いていた。
風景画、人物画、抽象的で力強い作品。アニメ調の絵柄や、ゲームに出てきそうなモンスター風のキャラクター画まで。
どれも一目で引き込まれる、圧倒的な存在感を放っている。何も知らなければ、これらが小学生ほどの少女による作品だとは誰も思わないだろう。
「こうして生で見ると……確かに、かなり迫力あるな」
士郎は、率直な感想を口にする。
「……」
「あれ?またどうしたんだ、遠坂?」
「え?……い、いえ。何でもないわ」
士郎に声をかけられ、凛は誤魔化すように答える。だが、彼女の視線は依然として作品から離れない。
見惚れているわけではない、違和感を感じているのだ。それも、言葉にしづらい種類のもの。
「……ねえ、衛宮くん。私の思い違いかもしれないけど……ここに展示されてる絵、何か変じゃない?」
「変?」
「うまく言えないけど……物足りないというか。何かが、決定的に欠けてる感じがするの」
「違和感、か……」
士郎は少し考え込み、
「そう言われると……一番高値で売れたっていう作品と比べると、熱意がこもってない……というか、魂が乗ってない感じはするかもな」
凛の感覚に、思い当たる節があるようだ。
「……あれ?ところで、肝心のアルテ・クリープが来る時間、もう過ぎてないか?」
「え?……って、嘘。もう十分以上過ぎて――っ!!?」
凛が時間を確認した、その瞬間だった。彼女が身につけていた時計を介して、異変が起こる。
「危ないっ!!!」
「え?急にな――どぅっ!!?」
咄嗟に士郎を庇い、そのまま二人まとめて吹き飛ばされる。
「……う、うっかりしてた……!!」
軽く頭を打ち、気絶した士郎の無事を確認してすぐ、吹き飛ばされる直前にいた場所へと視線を戻す。
「GAGYAGYA……!!!」
そこに現れたのは、侵蝕世怪人『ケンチク世怪』だった。
美術館の中に、異形の存在が姿を現したのだ。
「な、なんだっ!? 化け物!!?」
「だ、誰か……いやぁぁっ!!?」
突如として現れた化け物に、来客たちは悲鳴を上げて逃げ出した。
「GIGIGIGIGIGIGIHIHIHIHIHI!!!」
ケンチク世怪は、逃げ惑う人々を見て嘲るように笑い、右腕のツルハシを地面へ突き刺す。すると来客それぞれの逃走方向に、ブロックの壁が次々と生成。その壁に顔面を強打し、人々は次々と気絶していく。
「AGYAHAHAHAHAHA!!!」
さらにケンチク世怪は、気絶した人々を見下ろしながら、ブロックで巨大な時計を作り出した。
「ジリリリッ!!!」
その音を合図にするかのように、ウォークロック達が姿を現す。
「クロスタルプロテクター展開っ!!」
凛は即座にクロスタルプロテクターを起動。結界を美術館の外まで一気に展開し、美術館とほぼ同じ内部空間を生成。
同時に、士郎を含む無関係な人々は自動的に結界の外へと転送されていった。
「凛さん!!!」
そのタイミングで、イリヤ達三人が駆けつける。
「GIGIIIII……」
「って、昨日の侵蝕世怪人……もう復活したの!?」
「理由は後! 倒すことに変わりはないわ!」
ケンチク世怪を見て一瞬身構えたメリーだったが、蓮子の言葉に小さく頷く。
戦うため、守護者メモリアの指輪を右人差し指から外そうとした。
「AIAAA――IGYALTU!!!?」
その時、展示されていた絵画がガタガタと震え出した。
次の瞬間、そこから大量のホーミングレーザーが放たれ、ケンチク世怪へと集中砲火を浴びせる。
2、3発被弾したところで、ケンチク世怪は慌てて自分の周囲をブロックで覆い、防御に入った。
「えっ!? 絵の中から……え、これってゲームみたいな……」
「ゲームじゃないんだよねぇ、これが。」
イリヤが呆然としていると、コツ、コツ、と足音が近づいてくる。
やがて曲がり角から姿を現したその子。
絵具やペンキが付着した、ぶかぶかの白いアトリエコート。
赤みがかった瞳に、緑を基調とした髪。
近くで見ると小学生にしてはやや胸囲がある体型で、気だるげな雰囲気を漂わせる、小学生くらいの背丈の少女。
『アルテ・クリープ』だった。
「あ、アルテ・クリープ……!?」
「(……け、結構ある方だったの……!?)」
蓮子(とイリヤ)が思わず視線を逸らした、その瞬間。ウォークロック達が一斉にアルテへ襲いかかる。
「ジキキキッ!!!」
「おっと。」
アルテは慌てる様子もなく、カードを一枚取り出した。
指輪が光り、近くに飾られていた月の絵の
【ネミネムーン!】
カードから月を思わせるキャラクターが現れ、ウォークロック達の周囲をふわりと飛び回ると、ウォークロック達はその場で眠りに落ちた。
「ね、眠った……?」
「ぼくの指輪の力、『
凛の視線に応えるように、アルテはあっさりと説明する。その後すぐ、視線を蓮子達に向ける。
「それにしても……そこの二人のお姉さん。あのアニメショップの近くを歩いてた時、一目見て『面白そう』って思ってたけど……まさか指輪持ちだったとはね。そこのぼくと同い年っぽい娘もそうなのかな?」
「気づいてたの……?」
「うん、気づいてた。っと、その前に。」
「GI……!!」
レーザーが止んだのを確認し、ケンチク世怪がツルハシを振り上げる。
【ハピクローバー!】
アルテがカードをかざすと、ツタが伸び、ケンチク世怪の身体を拘束。転倒するケンチク世怪を無視し、アルテは蓮子達へと向き直る。
「だから、こうやって餌を巻いてみたけど……正解だったよ。駄作も時には役に立つものだねぇ。」
「餌……というか駄作って……」
「うん。此処に展示したのは全部、二年前の絵を弄っただけだよ。ぼくにとっては、正直言って駄作だったやつ。」
「道理で妙に手抜きっぽく見えたわけね……」
動揺する凛に、アルテは頷き言葉を紡ぐ。
「でもね。怪物や、君達みたいなのをおびき寄せるには、ちょうど良かった。ああそうそう、急に話変わるんだけどさ……ぼくは生まれつき、人とは違う『色』が見えんだ。心の色、ってやつかな。その『色』からインスピレーションを受けて、ぼくは絵を描き始めた。好きなように描いてたら、七年くらいで天才芸術家。ついでに頭も良かったし、両親も子煩悩だったから、特に苦労もなかった。」
少しだけ、声の調子が変わる。
「でもさ……周りに寄ってくるのは、金とかブランド目当ての大人ばっかり。そういうのが増えて、だんだん楽しくなくなった。その時だったかな……一年前半前、この指輪を拾った。そこから楽しさが戻った。」
指輪をひらひらと見せびらかしながら、次はウキウキした様子で続け、
「
好奇心と狂気を持った、その目でこちらを見つめながら。彼女はクロステライザーを構える。
「だからさ。ぼくと戦ってみない?怪物を倒すでもいいし、指輪を奪うでもいい……ぼくのインスピレーション、引き出してくれる?」
「ちょっと待って――」
勝負を仕掛けたアルテは、イリヤの制止も聞かず変身を始める。
「今は……やるしかない!!
蓮子は声を上げ、こちらも変身を開始した。
【CLAP YOUR HANDS!!!】
【UNCOVER THE SECRETS:GUARDIAN『メモリア』!!!】
【DRAW THE RAINBOW:GUARDIAN『プリズマ』!!!】
「
【CROSSTAL RING!!!】
【ガッチャーンコ! スチームホッパー!】
【『ガッチャード』!!!】