なんだか、無性に恋しくなったので筆を執っています。
こうして手紙を送るのは初めてですね。お元気ですか?
二人が横須賀へ、酒匂が舞鶴へ、そして私はブルネイへ。みんなが離れ離れになって、もうずいぶん経ちますね。私はなんとか、この最前線で生き抜いています。
近ごろ、このブルネイ鎮守府に新しい提督がやってきました。星名提督という方で、今どき艦娘擁護派の、ちょっと変わったひとです。そして、私たちにとっては、唯一無二の、太陽のようなひとです。
あの方がきてから、本当に鎮守府の空気が変わりました。
私は毎日、温かいご飯をお腹いっぱい食べています。提督はいつも、私たちのお腹が空いていないかを気にしてくれます。
いつも落ち着いていて感情の起伏が少ないひとなのですが、料理がすごく上手で、たまに振る舞ってもらえる機会をみんな楽しみにしています。
無駄な出撃に心をすり減らすこともなくなりました。ひとつひとつの作戦にちゃんと意味があります。
提督は戦場を知らないと謙遜するけれど、嘘だと思います。私たちの苦労を知ろうとしてくれる、素晴らしい方です。いつか二人にも、星名提督に会ってほしいです。
先日、私たちは星名提督のもとで、七年ぶりに南の青い海を取り戻しました。
負傷者の治療を終えた今、ブルネイの港には、たくさんの光が差し込んできたみたいに、みんなの笑顔が溢れています。
そして今日、私も提督から、新しい、すごく大事な役目をいただきました。
ひと月前の私には、想像もできなかったことです。
少しだけ、難しい任務になるかもしれません。
一緒に出撃する仲間は、艤装の扱いに慣れない子たちばかりです。私も、ひとのことは言えないけれど。
提督のことだから、きっとなにか深い考えがあるのだと思います。だから、心配しないでください。
作戦海域は、遠い場所みたいです。
もしかしたら、帰ってくる途中で迷子になってしまうかも。
でも、大丈夫。
私は、阿賀野型軽巡洋艦・二番艦、能代です。与えられた役目は、最後まで、この誇りにかけて勤め上げてみせます。
たくさんの人たちの未来のために、戦ってきます。
だから、もしも、この海のどこかで私のたましいが迷ってしまっても、どうか悲しまないでください。
かつて塞がってしまった道を、提督とブルネイの仲間たちのため、再び拓くのです。こんな名誉のもとにゆける私は、幸福です。だから、少しも寂しくなんてありません。
二人がまだ横須賀にいるのかも分からないし、この手紙がちゃんと届くのかも分かりません。これを書いているのは、私のエゴです。それでも、どうしても伝えたかった。
阿賀野姉、矢矧へ。身体を大事にしてください。艦娘の身では難しいお願いかもしれないけれど、無茶は控えてください。
そして、決して諦めないでください。希望を捨てないでください。
星名提督のもとで、この戦争は終わりを迎えます。
これは、あなたたちとのつながりのほかに私が確信している、ただひとつのことです。
いつかその日がきたら、私の代わりに、どうかブルネイの美しい海を見てあげてください。
二人は、私の誇りです。
ずっと大好きです。愛しています。