その影響でブルアカ・リンバス共に最新ストーリー(デカグラ3章、地獄編9章下)を未だに履修できていません。絶対重要な情報出てくるってこんなの...
本編との矛盾があり次第修正します。
砂漠に走る黒線沿いへ、再び舞い戻った白銀の厄災。
その瞳は不可解な金色に染まり、冷静に人間達を見つめている。
『過去の記録にない、特異中の特異現象です。最大限の警戒を。』
砂の霧が轟音を立てて舞い、人間達の肌を鞭打つ。
表皮の下にじわりと熱が籠る感触。堪えかねた汗腺から、冷や汗が流れては暴風に飛ばされてゆく。
荒々しい沈黙を破ったのは、ビナーであった。
今や輪郭と眼光のみが残ったシルエットより、無数の
『暗号形式を変えてきましたか。ですが、同じ攻め口では──ッ!?』
焦ることなくクラッキングに取り掛かったヒマリ、そして肉眼で
「ウソでしょ...そんなのアリ...?」
(ミサイルが際限なく発射されている...私の処理速度を上回られた!?)
既にビナーの背より放たれた誘導ミサイルの数、悠に百を超す。
そして...ビナーは未だ射出を続けている。
既にヒマリは対処の真っ只中だが、その額には冷たい汗が溜まる。彼女の病弱さからくる疲労ではなかった。
この数を着弾までに捌ききることは、降り注ぐ雨粒を小刀で全て弾き飛ばすことと同義。
雨の流れは容易く読めたヒマリだが...手先が付随して動くかどうかは別問題。
『全ては撃ち返せません!各員、攻撃に備えてください!』
それでも、“全知”は焦燥程度で止まらない。
最良が叶わぬのなら、最善を尽くすまで。ヒマリはすかさず呼びかける。
『“安全地帯がない...ミサイルを誘導するしか。
ホシノ、前方を動いて相手の狙いを逸らせる?残りの子達はビナーの動向を観察して!”』
「あのミサイル...吐息ほどの神秘はねぇな。
俺は前方で処理する。エイミにシロコ、援護射撃は頼んだ。」
指揮を取る者達の言葉に各員がうなづいた頃には、既に2つの影が砂塵をかき分けて走り抜けていた。
「俺も迎え討とう。
左右で分担するのが良さそうか?」
「心強いね。それじゃ、左は任せたよ?」
向きを翻した弾頭の雨が二者へと迫る。
『各名辺り約30発のコントロール権を簒奪しました。相殺処理を実行します!』
その何発かは挙動を変え、隣のミサイルへ向かって特攻を始める。
砂塵の中でも明確に捉えられる、大規模な爆発が連鎖するように巻き起こる。
「でかしたヒマリ。」
マックスの左肘よりシャボン状の虹が膨らみ始め、
それはやがて彼の全身を覆うバリアとなる。
(彩鏡シールド...使うのは久々だな。)
足首のスラスターを整え、砂地を踏み切る。
虹漿が着地の衝撃に反応し、爆発的な跳躍力を生み出す。
(一点からの集中砲火は虹漿の弱点。
ならば衝突する方向をバラけさせるまで。)
激流の中で跳ねる鯉のごとく、マックスがミサイルの流れに跳躍して体当たりを仕掛ける。
爆発の衝撃は虹の膜に吸われ、収縮していく。
「数は多いけど、弾幕が甘いね。」
一方の右手。分散するミサイルの着地点を読み、そこを縫うようにホシノが回避する。
ミサイルを撃ち込まれた砂の底より響き渡る悲鳴。数多の爆風が背中より迫るが、分厚い神秘の護りを吹き飛ばすことはできない。意にも介さず、ホシノは距離を保って8の字を描き続ける。
ホシノの思考を支配していたのは、すぐ側の脅威よりも...むしろ進展しない状況であった。
(捜査部の人達が物量を減らしてくれているおかげで、何とか避けれているけど...
これだけの単調な攻撃で私達を仕留めるつもりには思えない。
それこそ初見の、不意を突いてくるような──)
地鳴りの中に感じ取った微かな違和感。
足に触れていたものが離れ、全身が自由を得る感覚。遅れて骨の髄まで響く振動。
果たして、その予感は的中してしまった。
横を向いても地平線は見えず、代わりに逆さになったマックスだけが佇んでいる。ホシノは直ちに状況を理解した。
(空中へ跳ね飛ばされた...尾の存在を見落としていた!)
瓦礫による束縛はもうない。
今のビナーには、近接攻撃のカードが残っているのだ。
(となると、アイツの狙いは何だ?
身動きの取れない私達を集中砲火するか、それともこの隙に地上の皆を狙うか...
最悪なのは後者...このまま地中に潜られたら阻止のしようがない!)
ミサイルの群れは依然としてこちらを追っている。
宙で無防備な今全てを喰らえば、ホシノといえども意識が保つかも分からない。
だが、これすらも本命の攻撃でないとするならば...真に危険なのは後衛の方だ。
助けに向かえないもどかしさを抱えたまま、背中に折りたたんでいた盾を掴もうとする。
──そこへ、彼女にとって第三の衝撃が襲いかかる。
「ホシノ!」
左から割って入ったのは、他ならぬ胡散臭い男の声だった。
「歯ァ食いしばって掴まれ!」
早口で短い大音声だったが、その末尾は強風に遮られた。
砂から覗くマックスのシルエットは、目を凝らさなければ今にもぼやけてしまいそうだが...右腕をこちらへ向けた様相であることは、想像に難くなかった。
彼の右腕はこちらを向き、今にも錨でこちらを貫かんという様相だ。
(何をして...まさか、騒ぎに紛れて私達を襲撃するつもり?)
緊縛した状況から来る焦り。見知らぬ大人への不信感。
ホシノは一瞬、それが意図的に自分を害するものだという結論に駆け込もうとした。
それが早とちりだと気づいたのは...
虹の煙と共に射出された鎖の先端が、砂嵐のベールを抜けて目前まで迫ってきた時だった。
(あれは...もこもこのクッション?)
鎖に取りつけられていたのは...先端に極彩色の何かが塗り込まれた、細長く白いクッション。
纏う雰囲気だけでなく、物理的な形状にも殺意はなかった。
そして、その軌道は左へと曲がっている。
向かう先は、地上の仲間達。
(ダメだな、私も。先生が信頼を置いている時点で、疑う必要もなかったか。
それにしたってやり方が紛らわしいなぁ...でも、これで皆を助けに──)
納得しかけて、ホシノは察した。
マックスが自分ごと着地先に向かうことは、ミサイルを引き連れたまま後方へ退くことと同義。
ミサイルに対処するためには...彼はここへ留まらなければならないということ。
(味方一人退避させるために、随分な無茶するなぁ。
でもそれだけの自信があるなら、任せて大丈夫だよね?)
ホシノは盾に伸ばしていた手を引き、クッションを掴む。
ゴワゴワで温かみもないが、確かな希望を包んだ感触。
ホシノを引き連れた鎖は、そのまま後衛の方向へ延々と伸びていく。
「強引な方法で悪ィな。
さて...脳髄漏れくらいは覚悟すっかな。」
虚空に残された男は静かに身を堅め、
ドドドドド──
身を任せるように炎に巻かれた。
一方の地上。
『“ホシノ!マックス!”』
「先輩!」「顧問!」
遠方の轟音に、誰もが思わず声を上げる。
そして...よそ見によって敵の動向を一瞬、見逃してしまう。
『反応の増殖が止まった...?これは...ビナーが潜砂して後衛へ接近中です!』
ビナーは既にミサイルの発射口を格納し、地中を進んで迫り来る。
砂飛沫が巻き上がった地点から、無数の竜巻が巻き起こる。
「そう来たか。それならアレで地中に攻撃を当てれば...!」
シロコはすかさずドローンを呼び出し、虹漿ミサイルを正面の地形へ打ち込もうとする。
ドローンが前方へ飛んでいく最中、地表に異変が現れた。
バババババ
「...え?」
それは一切の予兆なく、機関銃さながらに乱れ撃たれる巨大な光線の数々。
ホシノも辛うじてでしか受け止めることのできなかった攻撃が、湯水のように砂の中から無数に溢れ出る。
ドローンは一機残らず焼き払われ、炭も灰も残らず消し飛んだ。
砂の溶けた穴から、おもむろにビナーが頭を出す。
その眼は既に、次の一発を放たんとしていた。
一本一本が容易に鋼を溶かす破壊光線。それを千も万も撃ち込まれ、誰が命を保っていられようか。
『“皆!”』
──万事は休した
...そう結論づけるには、まだ早い。
正面上空より、細長い何かが砂地を穿って生徒達の目前に着地する。
着弾点の砂は凍りつき、発射物が貼り付くように静止したかと思えば...
ホシノが鎖を滑り降り、正面へ盾を構える。
「お待たせ、皆!」
この場で無数の光線を受け止めうる、唯一の存在が帰還した。
遂に放たれた光線を、数多の修羅場を潜り抜けた盾が受け止める。
光線は弾かれ、横へと分散して流されていく。
その小さな背中は、正面の光線以上に大きく見える。
(“今のところは、皆もなんとか持ちこたえられている。
これ以上戦闘を続けるのは危険だけど、どうやってこの猛攻を抜けて退避すれば...”)
あらゆるものを溶かす巨大光線。それをスコールにも劣らない密度で発射している。
死の光はホシノ達の後方にも及び、退路は四方八方どこにも見当たらない。
(“落ち着け私...生徒達を安全に離脱させるためにできる最善を考えろ。
せめて、ビナーの注意を逸らすことさえできれば...!”)
「...聞こえるか、先生。」
通信から聞こえてきたのは、ガサガサと音の割れたマックスの声だった。
「俺自身の損傷は激しいが...電力の予備はまだまだある。
全部を注ぎ込みゃ、奴にも無視できねぇ一撃を用意することはできるだろう。」
『しかし顧問、その負傷では...!』
マックスの声と姿を認識したヒマリは、思わず彼を止めにかかる。
ビナーの後方から確認された彼は、右半身の外殻が殆ど吹き飛ばされていた。
精密箇所の部位だけが原型を保ったようで、右肩は今にも千切れそうな様子だ。
いくら義体とはいえ、この状態で負荷の大きい攻撃を放てば危険だ。
だがここで彼の行動を許可しなければ、生徒達まで命を保証できなくなる。
同じ大人として、彼も承知の上で持ちかけてくれた作戦のはずだ。
故に先生は、一思いに指揮を下す。
『“──ビナーの頸、損傷が癒えてないみたい。そこを狙って!”』
「...任せろ。」
マックスは言い切るやいなや、すぐに次元鞄を漁り出した。
紐の切れた次元鞄から、罅だらけの指先で必死にバッテリーをかき集め...腕へと直接打ち込む。
耐え切れずに腕の装甲が溶解するが、肩のアクチュエーターは無事だ。
(あのデカブツ、竜巻のバリアまで作りやがったか。あれごとブチ抜くには...)
ビナーが潜伏した頭上へ残していた、後方を護る竜巻の盾。これに阻まれる程度の火力では足りない。
原型を留めていない上半身を捻り、腕を彼方へと突き放そうとする。
(イメージしろ。今までこの目で見てきた中で...至高の一撃を。)
命の危機に、走馬灯が巡ったせいだろうか。
マックスの脳内に、記憶の断片が素早く巡り始める。
抗争の中で受けた、名も知らぬフィクサー達の致命的な攻撃。
恩人にして師であった者が放った、怪物を打ち砕いた一閃。
最終的に最も鮮明に手繰り寄せられた記憶は、光に満ちた図書館での一幕だった。
俺がクソッタレな“都市”に別れを告げた、最期の記憶。
俺だけが生き残った状況で、敵の一人が青い外套の狙撃手に姿を変えたかと思えば...
妙にワープする弾丸で、俺のドタマを貫いて“本”にした筈だったな。
その瞬間、マックス自身にも感知できない変化が起こっていた。
胸部の虹陵鋼より、赤、黄、緑、紫──
虹を構成していた、数々の色が失せる。
石には青の輝きのみが残り、そこから伸びる光剣も青一色に染まる。
それは、藍より搾り出したかのような深い青だった。
虹陵鋼より青が伸び、指先まで伝染する。
今やマックスの腕全体が、サファイアの輝きを放っていた。
マックスが光剣を放り投げると、その先には蒼い魔法陣が拡がり...剣を吸い込んで消失した。
「先輩、それ以上は...ヘイローが!」
光線を浴びる度、軋む骨に関節。
限界を迎えようとする中、ホシノはひたすら攻撃を止めていた。
(うへぇ。流石のおじさんでもしんどいかも...
でも...あの人が前線に留まったのは、ただ格好つけたいだけじゃなかった。そうだよね?)
その時...視界の隅へ、異色の円盤が眩く差す。
竜巻を背景に、青い魔法陣が不自然に浮かぶ。
異変を知覚したビナーが、思わず攻撃を止めて振り向きかけるが...もう遅い。
魔法陣の中央より、黒い焔が揺らめいた次の瞬間には──
ヴォゥンッ
ビナーを貫く青い光が、砂塵を押し除けて発されていた。
奇妙なことにビナーには、風穴一つ開けられておらず...
紙のような光の欠片にばらけて、跡形もなくその姿を消した。
ビナーがシステムを再起動したのは、戦地より遠く離れた砂漠の果てだった。
パッシブ『セフィロト共鳴 - Binah』
HPが50%未満に減少すると常にATGゲージが最大となり、EXスキルの発動クールタイムが80%短縮されます。
追憶発散 - インディゴ
マックスが土壇場で発生させた、虹陵石の潜在能力。
特定の事象を再現するようだが、現在も詳細は不明。