まだまだ話数の少ない中でのご協力、感謝しております。
現在の構想的に、エンジニア部とトレーニング部、ついでにゲマトリア*1は早かれ遅かれ登場させる予定です。
《追記》
色々と描写不足だったので、次章に繋がるように締めを追加しました。
評価・誤字報告ありがとうございます。
校舎内には簡単な手続きだけですぐ入れた。どうやらハヅキがミレニアムに話を通しておいてくれたらしい。
最悪「巣」に入るくらいの手間は覚悟していたから、有難いものだ。
どれ...ここが神経工学部の部室だな。
重厚な扉をノックすると、中から一人の少女が出迎えてくれた。
ハーネスで胴にがっちり固定しながら背負った機器からは、その小柄な体躯に不釣り合いなドデカいアームが覗いている。
聞いていた通り、神経工学部では生体に外付けの機械を組み込み、手脚として利用する試みが行われているようだ。
「こんにちはー。
ハヅキ先輩から聞いています。マックスさんで間違いないですね?」
「合ってるよ。彼女はどちらに?」
「今は奥で作業中ですね、私が呼んできます!」
そう言うとその子は銃を手元に寄せ、部室へと速足で蜻蛉返りしていった。
...なぜ銃を?ここは銃声を号令にでも使っているのか?
彼女は部屋の奥へと、その銃口を向ける。
射線の先に目をやると、見覚えのある浅葱色の髪が見えた。
何やら溶接作業をしている。一厘の躊躇いもなく、周囲の様子など気にも留めず。
おい、まさかとは思うが...
ダダダダダッ!
「あ゛だっっっっ!!!?」
予感は見事に的中した。
応対した少女は銃弾の痛みを背中に与えるという荒技で、ハヅキの作業を中止させたのだった。
ここの生徒は「ヘイロー」なる防護システムを持つと聞いていたので、弾をモロに浴びたことに対する心配は無用だったが...
「...あ、お客さんね。今行く。」
むしろ何も問題なく話が進んでいるからこそ、辟易してしまう状況だ。
銃も弾丸も安価、オマケに肉体もそれに耐えられるほど丈夫...それが日常であることの恐ろしさを知る。
腕斬るのは物騒とかよく言えたな。
そっちも大概人のこと言えてないぞ...
彼女はマスクを外し、こちらに向かってくる。
ツナギに身を包んだ粗野な装いが、この間の可憐な印象とは随分と変わった一面を見せてくる。
「こんにちは〜...って、マックスさんじゃないですか!」
「久しぶり...もしや来客があるたびにこんなことさせんのか?」
「えへ...私、どうやら一度作業にかかるとスイッチが入るようでして。
こうでもしないとなんにも気づかないんですよね...」
部員の少女達は半ば呆れの混じった様子で、こちらの会話に耳を傾けている。注意を放棄したような表情を見るに、本当にしょっちゅうこんな感じで叩き起こしているらしい。
「...もういい。己の身を顧みないのはお互い様だよな...
とにかく、入賞おめでとう。貸した腕が役に立ったようで良かったよ。」
「お陰様で入賞できました。私の実力不足で満足いく結果は得られませんでしたが...」
そう言う彼女の表情には、不機嫌の感情が浮かび上がっている。
「最優秀賞取れなかったの、引きずってんのか?悔しいのは分かるが根に持ちすぎるなよ?」
「そういうことじゃないんですよ、私が不満なのは評価の理由です…
『操作の複雑性がかえって脳の体操になる』ですよ!?
肝心のコンセプトが全然評価の理由にないじゃないですか!」
...なるほど。
「まあ...完成形にしただけ立派なことだと思うぞ?
うちの工房でも没になる発明品は山ほどあったからな…」
「ありがとうございます...正当に評価を受けられるよう、私も精進しなきゃですね...。」
「話は変わるが...ほい、この前の分だ。利子は本当にないんだよな?」
「金融機関じゃないんですよ...宿泊代くらいで大袈裟ですって。
途方に暮れている人を見かけたんです。このくらいの事はしたくなるもので...」
お人好しすぎて心配になってくる。
学園がいくら腐敗したシステムのない*1場所とはいえ、善意をきっちり善意で返す人間ばかりでもないだろうに。
「あー...その姿勢は貶すもんでもないんだが、俺みたいな素性も知らねぇ奴に対して施すのは程々にしとけよ?
どうしようもない輩から善意に漬け込まれでもしたら、本当に助けるべきものも助けられなくなるぞ?」
「私だって自分のこういう所は好きじゃないですよ。
それでも生まれ持った以上、自分の人間性を蔑ろにしたくはないんです。
第一、マックスさんは善意に漬け込む人じゃないですか。
自分は助けられるべきでないみたいな言い方ですけど、そんな訳ないですよ!」
約束通り少ないお金でもきっちり返して貰いましたし、と彼女は付け加える。そうして、用意してあったであろう左腕を返してくれた。
俺は仮の腕を丁寧に外し、付け替える。
指先まで馴染んだ感覚が、肩の先から急激に甦る。
「これこれ、安心感が違うな。
しっかり管理してくれたみたいだな。感謝するよ。」
「やっぱり大事なものじゃないですか...私に預けるなら他にあったのでは?」
「まあまあ...結果的に入賞できたんだし良いだろ?
今後はここまでの事はしないさ。」
現にあの日以来、腕ごと手放す真似はしていない。
そう、腕
「本当ですか?腕じゃなければいいとか考えてたりしませんよね?」
前思撤回...もとい前言撤回。
本当に機構がイカレた時以外、自分のパーツを売り飛ばすのはよそう…
「マックスさんならやりかねませんので...本当に頼みますよ?それよりも生活の方はどうですか?」
「廃棄物処理なんかでそれなりに稼げてるな。仕事場も確保できたし、本業として店を開く日も近そうだ。」
「もうそこまでの準備を?流石と言うべきか...
開店した後は、私も放課後に立ち寄らせていただきますね。」
「そいつは光栄な事だ。
...さて、これで本来すべき事は済ませた訳だが...折角外部の身で立ち入らせてもらったんだ。あっさり帰るのも申し訳なくなってくるな。」
「それなら...私達の部室、見ていかれますか?
職人の方に見ていただく、私達としても貴重な機会ですし。」
改めて部室内を見回してみると、試作と思わしきマシンがズラリと並べてある。
これらを観察せずして帰るのは...損と言わざるを得ない。
「そうさせてもらうよ。ミレニアムの技術力がどんなもんか、拝見といこうか。」
承諾の意を伝えて部屋に踏み込むと、部員達が待ち望んでいたかのように案内を始めてくれた。
「衝撃吸収の機構はよく出来てるが、問題点が一つあるな。着地時の姿勢を矯正し切れてない。
衝撃は機械部分だけでどうこうするんじゃない。脚部全体から地面へ流すもんだ。」
「自重に耐えるため、ここはあえて軸を作らず固定したのか…やるじゃないの。人体と機械、双方の耐荷重性をよく理解しているな。」
細かい改善点こそあれ...
曲がりなりにも工房フィクサーとしてやってきた俺から見ても、身体拡張部の発明品は高いポテンシャルを持っている。それこそ都市でも注目を置けるほどに。
この技術を喉から手が出るほど欲しがる連中も多そうなものだが、これらの発明品には…やはり未完成と言わざるを得ない部分がある。
その理由は──
「潜在能力に対して、コントロールの方法が複雑すぎる。
扱える人間がいない訳だ。」
「そこなんですよね...。脳波の個人差を補正するプログラムが未完成なこともあって、ギアに適性のある人は
致命的な操作性の悪さ。
感覚的に動かそうとしてもブレが大きく、物を掴むにも大抵の人は一苦労。そのまま持ち上げることのできたテスターは、現状1割にも満たない。
緻密なコントロールが求められるせいで、使用者に憚るハードルがあまりにも高い。酷な話だが、ミレニアムプライズでの不本意な評価にも納得がいってしまう。
当然のことだが、道具は使い手がある程度潜在能力を引き出してこそ文明の利器足りうる。
その道具の扱いに長けた達人がいる限り、存在価値がない訳ではない。だが、道具が汎用性を捨てた瞬間...その道具を使わない大半の人間にとっては塵芥と化す。
そこらの工房が玄人向けのクセが強い武器を販売したところで、安物の汎用品に劣る売り上げしか得られない理由の一つだ。
「俺には皮膚がねぇから、コイツらの適性を試す資格すら持ってない訳だが...
それでもこれだけは言っておくぞ。これが実用化される頃には君らはとっくに卒業してるだろうな。」
「うぅ...本職の方から言われると痛いものがありますね。」
「全く新しい発明を生み出すんだ、始めは大体こんなもんだ。
開発の間に世代の交代は幾度となく起こるだろうが…
君らの代は0から1を生み出す、唯一無二の偉業を成し遂げている。そこは誇っとけよ。」
「勿体ないお言葉です。あ、質問いいですか──」
違う畑からの指導に不安を覚えたが、それでも部室を活気づけられたようだ。アドバイスを送った次の瞬間には、発明品の改良に取り掛かる準備をする子もいた。
「そういえばマックスさん、ご自身のお店を持たれるんでしたよね?
それなら...ミレニアムとの業務提携を図ってみられてはいかがでしょうか?」
「宣伝か?生憎買収される気はないぞ?」
「あくまでも対等な契約関係ですよ。
我が校では度々、提携企業をお呼びして講演会を開いています。
学校全体の行事だけでなく、部活でも特別講師としてお招きがかかることもあるんです。
実際、今日はマックスさんから的確な指導を頂きましたし...
他の部からも、あなたは人気が出ると思いますよ。」
「こちらとしても悪くない提案だな。学園という後ろ盾を得られる上に、工業製品の需要も把握できる。」
黒い噂の多いカイザーなどに比べれば、協力する上で妙な風評を買う心配も少ないだろう。
それに、学園は翼のように従属を強いる訳ではない。あくまで依頼という形で業務が増えるだけだから、上から拘束力を押し付けられることもない。
確かに魅了的な選択肢ではある。学園の恩恵が大きいこの地において、独立性を保ったまま活動できるのは大きい。
ここはやはり──
「...。」
気管のないはずの喉に、快い返事がつっかえる。
代わりに俺の脳内へイメージを染み込ませてくるのは、クソッタレな理性。
『本当にそれでいいのか?』
俺には即決できない。
郊外を歩けば銃撃戦、頼まれずとも被害で解体工事が進む日常。
それでも、ここに生きる人々の生命は容易く途切れない。戦の気配に満ちていながら、死の気配とはあまりにも遠い場所。
そんな世界に溶け込むには、
義体を何度磨こうが、小綺麗に表面を取り繕うが...
決して拭えない血の罪悪が、俺を地の底へと縛り付ける。
「...事業を立ち上げないことには始まらないな。
皮算用より先に、確かなネームバリューを得ることに専念させてもらうよ。」
結局
「あぁ...私ったら、なんだか催促させてるみたいになっちゃいましたね。
とにかく、事業展開の上でそういった手段もあることをお伝えしておきます。覚えて頂けると幸いです!」
嫌気が刺すな。生き存えた結果、また期待を裏切らなけりゃならねぇのかよ。
ハヅキの善意が、過剰な温もりとなって俺の
この善意に応えられない俺を、大いなる存在が罰するかのように。
だが...俺に降りかかったのは、傷心を誘う苦痛だけではなかった。
不自然に口角の上がった、それでも真心を表そうとした微笑み。
俺の
あろうことか、その像に...過去の記憶が重なったのだ。
「あたしも、この工房も...いつまでも続いてる保証はないんだ。
もし他に、共にするべき人が現れた時にゃ...君らしい方法で幸福へと導かせてやりな。」
目を背けてメモリーの底へ押し込んだはずの過去の中で、唯一思い出さずにいられなかった言葉だ。
再び光り出したそれがたちまち呼び覚ました...都市で積み上げてきたもの。
この瞬間までも、俺から失われることのなかった信念。
...あぁ、そうか。
俺の存在意義は、殆ど役立たずの錆鉄ばかりになってしまったと思っていたが...
どうやら俺自身にも、誰かを照らす光は残っていたようだ。
今はまだ、真に彼女達を導けるのかは分からない。それでも、試してみる価値はあるだろう。
一度飲み込んでしまった宣言。今なら添えられる。
「...ある程度土台を整えたら、セミナーへ交渉しに向かう。
何しろ目立った目的もなかったんだ、これは乗るしかないな!」
「本当ですか!情報でお役に立てたようで何よりです!
もし契約が成立すれば、改めてしっかりした交流も行えそうですね!」
ハヅキの目が輝き始める。今度は内より漏れ出た、自然な喜びのようだ。
そう、これでいい。
青春の舞台を生きるためなら、この身が血で錆び付いた歯車であろうと...止まらずに舞台装置を動かず役目を果たしてやるさ。
それからは資本稼ぎ、協力者の用意、企業の設立──
色々あったが、それについて語るのは別の機会にしておこう。
「これで契約は完了しました。
本日は御足労、ありがとうございました。今後とも何卒、宜しくお願いいたします!」
セミナーの生徒が、効力の刻まれた契約書を机に重ねる。
これからは学園からも、工房として引き受けられる依頼が入り込んでくることだろう。
発明品を弄り始めて以来、雛鳥同然に上へついていく以外の何かを知らずにやってきた俺だが...
今や科学技術の徒として、その道を歩む後輩へ教えを説く番か。
進むべき道は決まった。
後は理想の為に、努力に財産、人脈を繋げていくだけだ。
その横で...学生達を識る事も始めていくか。
折角の交流機会だ。俺自身の収穫にも繋げさせて貰おう。
ヴァルプル前なのにヤクザムルソーに不意を突かれて狂気がFly, my wingsする未来が見えています。
ブルアカらいぶからも銃口を突きつけられている状態です。どうしろと?
どの集団を登場させるべき?(5話以降登場させます)
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セミナー
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C&C
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ヴェリタス
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エンジニア
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特異現象捜査部
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トレーニング部
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野球部
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ミレニアム外の生徒集団
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ゲマトリア
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カイザーCorp.
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シャーレ