本格的な戦闘描写の入る今エピソードを執筆するにあたって、一番悩んだのが「語り手を誰にするか」でして...
試行錯誤の末、天の声に頼ることにしました。
従来の登場人物視点と比較すると唐突ですが、ご容赦ください。
追記:次話ともども、痒い所に描写を追加しました。
違和感がある程度緩和されたと思います。
「──ってな訳で、今回手合わせを頼まれたマックスだ。よろしく頼むぜ。」
ミレニアム郊外の廃ビル群にて...
十字の虹が顔面に走る鉄頭の男が、陽気に挨拶を始めた。
向かいには給仕服、さながら
エージェント集団、Cleaning&Clearing。
ミレニアムの誇る最高の守護者達であり...同時に最大の破壊者達でもある。
「コールサイン
マックスさん...いや、お客様って呼ぶべきかな?
ご主人様でないのは残念だけど、楽しい訓練にしよう!」
その長い髪とは対照的に、軽やかで天真爛漫な立ち振る舞いを見せる01。
「コールサイン
C&Cのスナイパーを担っている。」
毅然で沈着とした印象を崩さない02。
「コールサイン
「大っぴらに広まっちゃってるんだし、まどろっこしく名前を隠す必要もないんじゃない、アカネ?」
「アスナ先輩!?はぁ...以前の襲撃でも感じましたが、やはりこの手の名乗り方は時代遅れなのでしょうか...
兎にも角にも、今回の活動も一つのおもてなし...謹んでお相手いたします。」
服装に違わぬ気品を醸す...ようで、どこかズレた面もある03。
「...そういや、C&Cってもうちょい多かったって聞いてるんだが。今回参加しないメンバーがいるのか?」
「ネル先輩のことか?リーダーは今、諸用で参加できない。」
この場にはいないが...「約束された勝利の象徴」として知られる
彼女らこそが、屈指である“掃除”の腕前を持ってミレニアムに奉仕してきたエージェント達である。
「さて...ご挨拶も済んだことですし、本日の訓練内容について確認しましょうか。
今回マックスさんは協力者として、直接模擬戦闘に参加されますね?」
「そう伝えられてるよ。監督者なり何なり、もっと似合いそうな役回りはありそうなモンだけどな。」
形式上はマックスの工房宛ての依頼だが、実情は個人宛てのもの。
工房には、マックスと共に戦闘可能な従業員は存在するはずもない。
そのために今回の戦闘は本来、二組に分かれて行われる予定だったのだが...
「──フィールドは旧モールより半径2kmまでの範囲。2名ずつのチーム2組に分かれて...」
「アカネ、ちょっといいかい?
訓練内容って状況に合わせて変えても構わねぇな?」
「はい。何かご希望があるのでしょうか?」
「ほら、君らって元々強い連携力でやってきてるじゃないの。
部外者といきなりタッグを組めって言われるのも、ちと変じゃないか?」
「そうかな〜?私はむしろ楽しみだけど?」
退屈を埋める刺激を求めているアスナは、率直に訓練への期待を示す。
無論、マックスの意図は慣れない環境での戦闘を避けるためのものではなく、それに対する感情へ配慮したものでもない。
「やっぱり訓練とはいえ、持てるモンを全部発揮してこそ、だろ?
どうせやるんなら、君らのポテンシャルを引き出した上で戦りたいってワケ。
ま、そういうことだ。
君ら全員、まとめてかかって来い。」
「「「!?」」」
挑発ともとれる、唐突な発言。
大胆にも、この男は単身での出陣を宣言した。
「C&Cはミレニアムの最高戦力。
その集団を単独で相手取るのに十分と宣言する様なもの...あなたは
「カリンの言う通り、あなたの発言はミレニアムそのものへの侮辱ともとれます。
あなたは招かれるべくして招かれたお客様とはいえ、そのお言葉は頂けませんね?」
「気を悪くしたなら悪ィ。むしろ逆だよ、逆。
君らが強いと見込んでいるからこそ、全力を見てみたくなったんだよな。それに...」
誤解を解く時までも軽薄さが抜けないマックスだが...
「...フン。」
「「「!」」」
腕を振りかざすと同時に、修羅とも言うべき気迫を解放した。
腕の表面に走る透明な管からは、一層輝きを増した虹漿がネオンさながらに巡る。その光はまるで大気まで裂いてしまいそうなほどに鋭く、メイド達の視界へと飛ばされる。
「こんなおっさんでも、幾度も死線を乗り越えてきた。君らに遅れを取るほどヤワじゃないさ。
こちらもあるモンは全部利用して望む。互いの最善をもって勝負を充実させようじゃないの。
それともう一つ。
俺は義体だからな、ドタマ以外全身替えが利く。
四肢でも何でも思いっきり潰せ!」
相も変わらず、物理的にも金属で覆われた仮面は変化を見せない。
それでもなお、C&Cの面々に先刻の宣言を納得させるには充分な闘気が、そこには込められていた。
「既にこちらで把握済みだ。遠慮なく貫かせてもらう。」
「ははっ!やっぱりお客様、面白い!
いいよ!私達の全力、見せてあげる!」
「...先程の威圧的な応対、撤回いたします。我々も全身全霊でお相手せねばなりませんね...!」
各自が配置について間もなく...
窓より除く狼煙が開戦を告げた。
マックスは廃モール1階のホールより、その狼煙を見届ける。
(こっちに来ると、どうも本格的に剣を振るう機会が無いんだよな。ってな訳で...
ミレニアムの戦術兵器の力、とくと拝見致しましょうかね。)
(動く気配はない...今かな。
それじゃ、清掃開始!)
ザッ
ホール上の吹き抜けより、アスナが飛び降りながら銃口をマックスへと向ける。
肝心のターゲットは...既に腕を振りかぶり、彼女へと光剣を投げ飛ばす体勢をとっていた。
「...!」
攻撃を察知したアスナが構えたアサルトライフルを下げ、猫のように素早く身体を捻ると...
アスナの背中の横を、瞬きする間に光の束が掠めていった。
(攻撃を終えた...今!)
ダァン
遠方のビルよりその様子を察知した狙撃手...カリンが、すかさず狙撃を行う。
隙だらけとなったマックスの右脇腹を狙った、正確な一撃。
眼で追うことも叶わない弾丸は、見事に対象へと的中した。
(...よし。正確に...いや、これは!?)
「大した狙いだぜ。流石に弾けなかったな。」
「あははっ!何その技、おもしろ〜い!!」
「どこから来るか知らねぇとはいえ、無抵抗で食らう訳にもいかないんでな。
弾の回転を
マックスの服には銃弾の開けた、焼け焦げた跡が確認できる。
しかし、銃弾は義体にめり込むことなく...奇妙にも表面に突き刺さるように張り付いていた。
「ちとヘコんじまったが、このくらいなら換装はしなくて良さそうだな。」
マックスは弾頭をつまんで取り外すと、しゃがんだ姿勢でアスナへと指で弾き飛ばす。
指で弾いたとは思えない凄まじいスピードではあるものの、元の発砲速度には遠く及ばず...
「ふふっ、当たらないよ!」
銃社会で生きてきた戦闘のスペシャリストには、容易く避けられてしまう。
ダダダダダッ
乱射された弾がマックスへ降り注ぐ。
攻撃は根こそぎ“吸収”されるものの、マックスの装甲を確実に傷つけていく。
「...まずっ!」
しかし、再び何かを察知したアスナは攻撃を止め、回避の姿勢に移行する。
一見無意味に見えたマックスの攻撃だが...アスナの勘は、しっかりとその危険性を捉えていた。
パァン!
破裂音と共に、背後の壁から鋭い爆風が床へと飛びかかる。
(刺さった剣が爆発した?あの攻撃はそのために...!)
「これも避けたか、筋がいいねぇ!」
アスナの残像を爆風が横切る。
爆風で捲れ上がったタイルの残骸が、両者の間に境界線を引いていた。
「学園最高戦力ってだけあるな。腕は悪くないんだが...
弾痕と言うには浅すぎる損傷を平すように払いつつ、マックスはブレードを再展開する。
「──すまねぇ、君らを挑発する意図はないんだ。遠方からの援護を重きに置いた戦法を見るに、近接戦は君らの"リーダー"とやらが担当してるんだろ?」
「この短時間で部長の考察まで...流石はあなた、といった所でしょうかか。」
「人員の欠落ってのはデカい。少数精鋭でなくとも、一騎の脱落がドミノ倒しのように戦線の崩壊を招く危険性はバカにできねぇ。
だからこそ...戦力が足りねぇ、ってのは言い訳にしかならねぇ。
リーダーに頼りっきりなようじゃ、いつかは後悔するぞ。
この訓練は、そんな状況での立ち回りを考えるものだと心得ろ。
三人だけでこの防壁をどう突破するか...俺に見せてくれよ。」
漸く告げられた
メイド達の脳裏に同じ場面が浮かぶ。
ミレニアムの問題児達と先生による連合軍...彼の者らの襲撃にて、
...ついには成功を掴めなかった雪辱の日。
約束されぬ勝利を、自分達だけで掴めるようになる──
それは現在の三人にとって、これ以上ない理想だった。
『...一度退いて立て直しましょう。
コールサイン01、ルートαより撤退願います!』
「え〜?ようやく面白く...
...あちゃ〜、ここは退いた方がいいかな?
それじゃお客様、また後でね〜!」
アカネの通信を聞くやいなや...名残惜しそうに、アスナが煙幕を張って撤退していく。
(追うべきか?いや、罠に誘導されてもおかしくねぇ。)
迂回しようにも、罠を警戒すべきことに変わりはない。
(ここでの電力消耗は避けたい。コイツに頼るとするか。)
マックスが次元鞄から取り出したのは、円形のスタンドに支えられたドラム缶型の装置。
キヴォトスの兵器に合わせて彼が発明していたものである。
シリンダーが装置の本体を持ち上げ、急速にスタンドへ打ち付けると...
けたたましい地鳴りと共に、通路のいくつかが爆発した。
爆発した通路の天井は崩壊し、分岐を狭めることとなった。
(ビンゴ。追わせながら爆破して瓦礫に埋める...あるいは退路を塞いで閉じ込める、って寸法か。
しれっと逃げ道以外にも爆弾を設置してやがった。抜け目ないな。)
(それにしても、攻撃を食らった時の違和感...。
緩衝こそできたが、あの時の虹漿は弾のエネルギーを吸収し切れなかった。
あの位の威力でキャパオーバーを起こすはずがねぇ。何か特殊なエネルギーでも込めてやがるのか...?)
撤退した先で、アスナとアカネが合流を果たす。
『先輩が撤退した。いつもならそのまま突っ込んでいったのに。』
後方支援のため別動しているカリンも、通信にて合流する。
「うん、あのまま普通に戦ってたら...なすすべ無し?そんな感じがした!」
直感に優れたアスナ。
彼女を突拍子もない行動へ走らせがちな直感も、今回ばかりは素直な撤退を強いずにはいられなかったようだ。
「ひとまず、標的の情報を整理しましょう。
アスナ先輩、何か情報は掴めましたか?」
「そうだね。なんていうか...あの剣みたいなビーム?壁に刺さったときは何ともなかったのに、弾が当たったら急に爆発した!
あと、あの人に刺さった弾も、なんか凍ってたような...」
『私の狙撃もほとんど手応えがなかった。本人は“吸収した”、と言っていたが。』
「...となると、マックスさんの装備には熱などのエネルギーを奪う何かでもあるのでしょうか?
どちらの現象も、衝撃を吸収したとすれば...合点がいきますね。」
「あとは...そうだ、通路に仕込んだ爆弾を起爆されたことかな?」
「はい。状況を確認したところ、私の設置したC4は...
ホールを中心にして、“同心円”に連鎖して向こうから起爆された模様です。」
『単にあの剣を投げただけじゃ、あんな芸当はできない。別の装備を使ったのだろう。』
(設置物への対策に、原理不明のエネルギー吸収。
迅速に対策を立てるべき場面ですが...今は情報が不足しすぎていますね。
あの防御を突破する方法、せめて彼の弱点さえ割れれば...!)
「アカネちゃん、ずっと考え込んでるけど...大丈夫?」
思い詰めていたアカネの肩を、アスナの手が包む。
「...すみません。少々思い詰めていたようです。
今回は部長がいませんから、ブレインである私がしっかりお二方へ指示を出さなければいけませんよね。」
『あの講師の言う通りなら、アカネの抱えきれない負担を補うのも私達の役目だ。
一人で抱え込まず、私達にも協力させてほしい。』
二人の側にいないからこそ信頼が伝わるように、カリンの通信は温かくインカムを伝う。
「アカネちゃんだけ苦しむのはダメ。
私だって先輩なんだよ?もっと頼ってくれてもいいんだからね!」
「ありがとうございます。
お陰様で...吹っ切れました。」
アカネの顔に、焦燥の色は残っていなかった。
あるのはただ──上品さの内に爆発的なエナジーをたたえた、不敵な笑みだけ。
「いつも通りの
「もう、会議に戻りますよ?
とにかく、接敵でさらなる情報を集める必要がありそうですね。
現在の作戦は──」
その後も作戦会議は続き、ついに再開の時が訪れる。
「準備はよろしいですか?」
『コールサイン02、スタンバイ完了。』
『01、問題ないよ!』
「それでは...C&C、家事の再開です!」
起爆性振動ソナー
マックスがキヴォトスに転移して以来、開発していた索敵装置。
ソナーに特殊な振動を使用し、周囲の状況を探ると同時に設置型爆弾も起爆するというコンセプトのもの。
工房で製造しているものではなく、マックス個人の所有するオーダーメイド品である。
後から見返してみると、アカネはもうちょっと脳筋に対処しそうですね。
展開にキャラを操らせず、キャラに展開を作らせるのって難しいですね...
二次創作をしていて初めて実感しました。
めちゃくちゃ今更になりますが、感想等お待ちしております。
都市要素が薄いですねぇ...
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他の都市民を転移させろ!
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翼の勢力をキヴォトスにも!
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L社由来のアレコレを放つのです
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市民をねじれさせればおk
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語録差し込む程度でええんちゃう?
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んなもん持ち込むなオイ。