戦いは嫌なので音楽をしたいと思います。 作:名無し
「真に怖いものは生きている人間」と考えているタイプですね。
あと、普通に戦闘用スキルを手に入れます。
思いついてしまったのだもの……採用したくなる……
取り押さえられたあとにワインを没収され、椅子の上で少し凹んでいたハルが口を開いた。
「そういえば、ダンジョンって色々あるんですよね?」
「ああ、そうだな」
「今見つかっているのに加えて未発見のものも含めればかなり多いわね」
ハルの言葉にクロムとイズが頷く。
「アンデッドが出てくるダンジョンってあります?」
「不人気だけどいくつかあるわね」
「アンデッドって面倒だし気持ち悪がられるからな……ってお前、まさか行くつもりか?」
「はい。そろそろ町を出ないといけないと思っているので」
「あー……じゃあパーティ組んでやろうか?」
ハルの言葉にクロムはパーティの打診をする。
【楽器】系のスキルは一般に知れ渡っている範囲では支援系のみとなっており、ハルもそうだろうと思っているようだ。
「いえ、試したいことがあるので1人で行きます」
「そうかそうか……って1人!?大丈夫なのか?」
「はい」
「いや、でもなぁ……」
1人で行くというハルにクロムは難色を示す。
ダンジョンの支援系がソロ攻略というのはありえないことなのだ。
「クロム、邪魔しちゃダメでしょう?」
「うーん……まあ、気を付けろよ?」
ようやく納得したクロムを横目に、イズはダンジョンを1つの勧める。
「この【死霊の穴】とかどう?」
「ふむ……じゃあここに行ってきます」
「気を付けるのよ」
「何かあったらすぐに撤退しろよ」
「過保護ですね……行ってきます」
こうしてハルは勧められた【死霊の穴】へ向かった。
「ここが【死霊の穴】ですか……」
パッと見では普通に見える洞窟の前にハルは立っていた。
しかし耳を澄ませばアンデッドの放つ怨嗟の声が聞こえ、心なしか腐臭が漂っている。
「では、参りましょう」
一呼吸を置き、覚悟を決めたハルは洞窟の奥へ進んでいった。
しばらく洞窟を進むと少し開けた場所を見つけた。
「……何か居ますね」
敵の気配を感じたハルは影から覗き見てモンスターを確認する。
中にはゾンビやスケルトンの他にも空中に浮かぶ幽霊の姿があった。
「前情報通りのアンデッド系モンスターたちですね……では、試してみるとしましょう」
モンスターの種類を確認したハルはアンデッドの群れの前に躍り出る。
ハルの姿を確認したモンスターたちは一斉にハルに襲い掛かった。
「スキル……【並列演奏】、【聖歌】!」
ハルの背後にオーケストラの楽器たちが現れ、ハルの歌に合わせて演奏が始まる。
「Κύριε ἐλέησον Κύριε ἐλέησον」
謳われるのは憐れみの賛歌。
しかし、キリエだけでは終わらない。
「Δόξα εν υψίστοις Θεώ」
憐れみの賛歌に続くのは栄光の賛歌。
ハルの歌う聖歌は【神に仇なす者】に属するアンデッドには効果覿面らしく、苦しそうな声をあげながら倒れていく。
「アアアァアアァア!」
「ヴォォォオォオォォオ」
(やはりアンデッドは【神に仇なす者】でしたか……このまま歌いながら行けばいいでしょう)
歌いながらダンジョンの奥へ進んでいくハルにアンデッドたちは何も抵抗できず、苦しみながら消滅していった。
「Ωσαννά εν υψίστοις……」
そうやって進んでいるうちにハルは最深部に辿り着いていた。
(扉……もう最深部ですか。ではボスに挑むとしましょう)
「ギィィィィ」と音をたててハルは重い扉を開ける。
中で待っていたのは法衣のようなものを纏った巨大なアンデッドだったが……
「ギヤァァァァァ!」
「Ο Αμνός του Θεού, ο αίρων τας αμαρτίας του κόσμου.」
最初に会敵してからずっとオーケストラと共に聖歌を歌い続けているハルの前では全くの無力であった。
このアンデッドはリッチであり、アンデッドらしく物理耐久に加えて魔法への耐性がある強力なボスとして名高いのだが、ハルの前ではその耐久や強力な魔法を活かすこともできずに消滅した。
「Δώσε μας ειρήνη……丁度聖歌も終わりましたね」
その時、聖歌の影響で体を残さずに消滅したリッチが先程まで居た場所の奥に光輝く魔法陣と大きな宝箱が現れた。
『スキル【エクソシスト】を取得しました。』
『レベルが17に上がりました』
「おや、新スキルですか」
ハルは早速獲得したスキルを確認する。
【エクソシスト】
【神に仇なす者】へ与えるダメージが増える
取得条件
【系統:聖】のスキルで【神に仇なす者】を100体以上倒す
「成程……先程の大幅レベルアップの理由はこれですか……そんなに倒しましたかね?」
ハルは最深部までずっと【聖歌】を使っていたため、このダンジョンのモンスターを全て討伐している。
そのため、200体近くのモンスターを討伐したことになっているのだ。
「では、宝箱を開けるとしましょう……」
かなりの大きさのある宝箱を開けると、そこにはドレスなどが入っていた。
「ほぅ……これは……」
ハルは白い絹のような生地に金と赤の刺繍が入ったドレス、灰色よりの白をした靴、金と銀で一対の耳飾り、金と蒼の意匠の髪飾りを手に取る。
「素晴らしいですね……」
【ユニークシリーズ】
単独でかつボスを初回戦闘で撃破しダンジョンを攻略した者に贈られる攻略者だけの為の唯一無二の装備。
一ダンジョンに一つきり。
取得した者はこの装備を譲渡出来ない。
『冥府のドレス』
【DEX+30】【MP+50】
スキル【冥府の歌】
【破壊不可】
『生者のシューズ』
【AGI+15】 【DEX+10】
スキル【死の拒絶】
【破壊不可】
『歌姫の耳飾り』
【INT+20】 【MP+30】
【破壊不可】
『ヘカテの髪飾り』
【MP+50】 【INT+50】
スキル【冥府の門】
【破壊不可】
「ぶっ壊れというやつでは?」
装備を確認したハルが思わず呟く。
それくらいこの装備の補正値が高かった。
「疲れましたし……スキルの確認や装備の相談は帰ってイズさんとしましょう」
思考を放棄したハルは魔法陣に入ってダンジョンを脱出するのだった。
【並列演奏】でハルの周囲に現れる楽器たちは実体がないので壁やプレイヤー、モンスターを貫通します。
なので洞窟で使っても問題はありません。
今回の曲は
『De Angelis』
でした。
グレゴリオ聖歌のミサ曲第8番で、和訳すると『天使ミサ』となります。
憐れみの賛歌『キリエ』、栄光の賛歌『グロリア』、感謝の賛歌『サンクトゥス』、平和の賛歌『アニュス・デイ』で構成され、以前登場した『Kyrie eleison』はこの中の『キリエ』に当たる曲です。
次回 『イベントへ向けて』
スキルの確認とか色々やりますが、テンションの維持はここまでだったので更新は未定です。
ハルは相棒を手に入れる?
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蛇
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鷹
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牛
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馬
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七層まで待て