戦いは嫌なので音楽をしたいと思います。   作:名無し

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ちょいと長めです。


音楽少女と階層攻略

ハルが1日メイプルの素材集めに付き合って数日後、今度は1人で地底湖で釣りをしていた。

 

「駐車場のネコはアクビをしながら~♪」

 

【歌唱Ⅹ】が発動しない程度に軽く歌いながら釣り糸を垂らしている。

何故こんな風に釣りをしているのかと言うと……

 

(塩焼き…フライ…煮つけ…炊き込みご飯…)

 

食事のためだった。

以前釣りをしたとき、【料理】スキルを所持していれば素材だけでなく食材をドロップすることを知り、試しに調理したところ鮎のような味だったので確保しに来たのだ。

 

「これくらいでいいですかね」

 

ハルがかなりの量の魚を確保し、釣り糸を引き上げたところでメッセージが来た。

 

「ええと……クロムさんですね。イズさんを誘って階層攻略するから支援役の要請ですか」

 

特に断る理由もないハルは了承の旨を伝えて洞窟を出る。

するとそこに居たのは……

 

「ふふふ……崇めたまえ〜!」

 

「ははーっ!サリー様〜!」

 

何故か初心者プレイヤーを崇めているメイプルの姿だった。

何が何だか分からないハルは背景に宇宙を背負ったようになり、茶番を見られた2人もまた凍り付いたように動きをとめる。

 

「……ハッ!」

 

真っ先に再起動したのはハルだった。

咄嗟に青いパネルを出して通報しようとし……

 

「「待って待って待って!」」

 

目の前の2人が慌ててそれを止めるのだった……

 

 


 

 

「つまり御2人はリア友?というもので先程のは単なる茶番だと」

 

「そうだよ!」

 

「えーと、メイプルがお世話になってます」

 

2人に止められて冷静さを取り戻したハルは説明を聞いて納得していた。

 

「いえいえ、この間釣りを手伝ったくらいしかできていませんし」

 

「本当にありがとうございました!」

 

メイプルが1匹釣るのに20分かけていたところ、ハルは3分に1匹ペースで釣っていた上、釣りの間も会話のあいてになったり歌を歌っていたのだ。

そんなこともありメイプルからするとハルは恩人のような立場となっている。

 

「あ、私はサリーっていいます。どうぞよろしく」

 

「これは御丁寧に……私の名前はハル。『NewWorld Online』のPV歌唱を務めています」

 

「ええ!?そうだったの!?」

 

「メイプル知らなかったんだ……この人、イベント5位の人だよ」

 

「そうなの!?」

 

「ええ、まあ。メイプルさんには及びませんが……」

 

我が道を行くプレイスタイルである故に、プレイヤー事情などに余り詳しくないメイプルはハルのことをただのフレンドだと思っていた。

ハルの他にもクロムはトッププレイヤー、イズも生産職の中ではかなり上位なのでメイプルの知り合いは軒並みトップクラスなのだが、メイプルはそれを知る由もなかった。

 

「それでは私はこれで」

 

「さようなら!」

 

「また会えたら!」

 

ドレスのまま結構な速さで町へ走っていくハルの後ろ姿を2人は見送る。

 

「メイプルはプレイスタイルだけじゃなくて知り合いも普通じゃなかったか……」

 

「ハルさんってそんなに凄いの?」

 

「『NWO』だと【歌姫】とか【死者の女王】って呼ばれてるみたいだね」

 

「なにそれカッコいい!」

 

ハルが恥ずかしいと思う二つ名も、メイプルはカッコいいと言っていた。

 

 


 

 

一方、草原を駆け抜けて町まで戻って来たハルの姿はイズの店にあった。

 

「それじゃあ準備は出来た?」

 

Tietenkin(ティエテンキン)

 

「……ごめんなさい、なんて言ったの?」

 

「ああ、すみません、つい癖で……」

 

これから行く階層攻略のための確認をし、いざ出発というところである。

そんなときに発せられたハルの言葉にイズは困惑を出していた。

 

「家族や親しい人と居てリラックスしてるときはたまにフィンランド語が出るんです。失礼しました」

 

「へー……ハルちゃんにとって私はその枠に入ったのね」

 

「……!」

 

思いもよらず気づかれてしまった事実にハルは赤面する。

ゲーム内で最も長く共に居るイズに、ハルは心を許していたのだ。

 

「ハルちゃーん?」

 

「い、行きますよ!クロムさんも待ってますし!」

 

「ふふ、分かったわ」

 

そんな事件もありつつ、2人はクロムと合流して遺跡のようなダンジョンへ向かうのだった。

 

 


 

 

階層攻略のために来た石造りの遺跡のようなダンジョンを3人で進んでいた。

 

「クロムさんは頼もしいですね」

 

「そうね」

 

「おい!俺に任せきりすぎないか!?」

 

そう、これまで遺跡の中で襲ってきた猪や熊は全てクロムが対処しているのだ。

イズとハルはクロムの後ろで談笑している。

 

「私は生産職だもの」

 

「支援はずっとしてますよ?」

 

「そうだったな!戦闘員は俺だけだったわ!」

 

とはいえ、戦闘スキルをほとんど取得できない生産職のイズと、基本は支援に特化しているハルでは戦闘ができないのも事実なのだ。

そうこうしているうちにボス部屋の前に辿り着き、3人は大扉を開けた。

 

「鬼が出るか蛇が出るか……空気感では蛇ですね」

 

「大きい樹ねえ」

 

「戦うのは俺なんだからな?」

 

天井の高い広い部屋で奥行きがあり、一番奥には大樹がそびえ立っており、部屋に入って少しすると背後で扉が閉まる音がする。

 

「では始めですね」

 

「クロム、少しは手伝うから頑張りなさいよ」

 

「はいはい」

 

3人が戦闘態勢に入ると、大樹がメキメキと音を立てて変形し、巨大な鹿になってゆく。

樹木が変形して出来た角には青々とした木の葉が茂り、赤く煌めく林檎が実っている。

 

「……エイクスュルニル?」

 

「あら?ハルちゃんは何か知ってるの?」

 

「ヴァルハラに住む牡鹿の名前ですが、まあ関係ないでしょう」

 

鹿は樹木で出来た体を一度震わせると大地を踏みしめ、3人を睨みつける。

 

「そういうのは考察勢に任せようぜ……くるぞ」

 

「オッケー」

 

「【戦いの詩】、【護りの詩】、【行進の詩】、【脱力の詩】、【崩壊の詩】、【鈍足の詩】、【愚者の詩】、【癒しの詩】……オッケーです」

 

鹿の足元に緑色の魔法陣が現れ輝き出す。

第一層ボスの攻略開始だ。

 

 


 

 

「クロムさんが強くて終わりましたね」

 

「林檎を落としたのはイズだけどな」

 

「爆弾を投げつけただけよ。ハルちゃんのアンデッドはやっぱり強いわね」

 

戦いはクロムが攻撃を受けきり、イズがバリアの大本である林檎を【投擲】で落とし、ハルの質量攻撃で終わった。

これ以上は特に語ることは無い……あまりにも一方的な蹂躙に終わったのだ。

 

「まあ、二層へ行きましょうか」

 

「そうだな」

 

「魔法陣も出てきたわよ」

 

こうして3人は二層へ向かうのだった……

 

 

 

 

おまけ

 

「新しいスキルを二層のスキルショップで買いました!」

 

「早いわね……何を買ったの?」

 

「ええと……【業火の詩】と【土公の詩】と【荒海の詩】と【轟雷の詩】と……」

 

「ええ、私が悪かったわ。どんなのを買ったの?」

 

「各種属性の威力上昇と耐性付与、威力減衰、耐性弱体です」

 

「合計は?」

 

「28ですね」

 

「……」

 

ハルは『NWO』で一番稼いでいるプレイヤーであることを、イズは再認識した。




スピードは
サリー>ハル(バフ込)≧初期サリー>ハル>イズ>>>>クロム>>(超えられない壁)>メイプル
です。知ってます?クロムってAGI20しかないんですよ。これはかなり遅い方ということが分かっており、レベル1ハルと同速です。それより遅いメイプルって……
イズは完全な予想です。DEXとMPに多めに振っている感じだったのでこれくらいかと。

あとはもしメイプルVSハルが起きたらですが、千日手になります。
メイプルのスキルはハルの【聖歌】で無効化され、ハル唯一の攻撃手段もメイプルには効きません。

今回の曲は
ゆずより『夏色』
でした。

もはや説明不要、夏を彩る名曲の1つですね。

次回 『イベント開始』
新作書いてくるので更新未定ですー
ユイマイ以外にもロマン武器所持者が居たっていいだろう?

第二回イベントで武器を手に入れる?

  • いいよ!
  • ハルさんが武器を持つわけないだろうが!
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