戦いは嫌なので音楽をしたいと思います。   作:名無し

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今更ですが、浩の名前の由来は東京音楽学校初代校長の伊沢修二さんと数々のゲーム音楽で知られるすぎやまこういち氏となっております。


音楽少女と原作キャラ

翌日、浩は昨日のことを思い出しながらログインの準備をしていた。

 

「運営の人、凄く丁寧だったな……」

 

必要もないのにわざわざHPへの掲載許可を取る運営に浩は感心していたのだ。

実際はコネクションを作りたいという下心があったりするのだが、久しぶりに演奏ができて機嫌がよかった浩がそれに気が付くことはない。

 

「それじゃあ今日も行こうか……」

 

そう言って浩は電脳世界へダイブし、ハルとなる。

次に目を開けると昨日の広場に出た。

 

「視線を感じますね……ちょっとやりすぎたでしょうか?」

 

ログインしてすぐプレイヤーたちから目線を感じたこともあり、ハルは少しやりすぎたかと思っているがその言葉を聞いた周囲のプレイヤーたちは心の中で否定する。

 

(((((ちょっとどころじゃない!)))))

 

なお、誰もハルを擁護することはしないようだ。

 

「取り敢えず昨日取った【並列演奏】について確認しましょう」

 

昨日と同じように噴水に腰を下ろして半透明のウィンドウでスキルを確認する。

 

 

【並列演奏】

複数の楽器を同時に演奏することができるようになる。

オート演奏も可能。

取得条件

1分以内に4つ以上の楽器を演奏する。

 

 

トランペットにサックス、フルート、クラリネット、トロンボーンと数々の楽器をかわるがわるに吹いていたことで獲得したスキルだった。

 

「オート演奏……?まあ必要無いでしょう」

 

【並列演奏】を真に使いこなすためには並列思考か無意識下での演奏が必要なのだが、ハルはどちらも可能である。

ここに一人楽団が誕生した。

 

「ならば【ステージ】の外でも使えるように楽器を手に入れなければ……」

 

そう思い、鍛冶や宝飾などができる人間を探すことにする。

 

「しかし昨日は碌に探索もしなかったので、何処に何があるか分かりませんね……」

 

ハルは周囲をキョロキョロと見まわして、近くに居た大柄の男に声をかける。

 

「すみません、少しよろしいでしょうか?」

 

「え、あ、俺?」

 

「はい……ああ、駄目でしたら別の方を頼るので大丈夫ですが……」

 

「いや、それは大丈夫だ」

 

話しかけられた男性はいきなりで驚いただけだったようで、直ぐに落ち着きを取り戻していた。

 

「それで……何の用だ?」

 

「鍛冶や装飾、宝飾ができる方に心当たりはありますでしょうか?今後も懇意にしたいので、できれば腕のいいプレイヤーの方がいいのですが……」

 

「ああ……それなら心当たりがる。にしてもなんで俺に?」

 

「その装備、他の方が身につけている量産品とは違うので噂に聞く【ユニークシリーズ】かオーダーメイド、それを身に着けられる方ならば既に上位の方かと思いまして」

 

つい昨日まで無気力に落ちていたが、元より頭の回転が速いハルの見せた推理能力に男は驚いていた。

 

「ああ、正解だ。これはオーダーメイドだよ」

 

「やはりそうでしたか……では、お願いできますか?」

 

ハルの受け答えを見て男は少し怪しむ素振りを見せる。

 

「そこまで考えられるなら、俺が騙すんじゃないかとか考えないのか?」

 

「フフッ……私は見ての通り初心者の初期装備です」

 

「そうだな」

 

ハルの言う客観的事実に男は頷く。

 

「ならば、私からものを奪うような価値はありませんので。それに……」

 

「それに?」

 

「私、人を見る目はあるので。ゲームとは比べ物にならない伏魔殿に身を置いていましたから……」

 

「お……おう……」

 

ハルの瞳が一瞬、光を失って濁ったことに男は少し引いてしまい、これ以上触れまいとする。

 

「それじゃ、俺はクロムだ。案内するからついてきてくれ」

 

「私はハル、昨日から始めた者新参者ですが、よろしくお願いします」

 

お互いに名乗り、雑談をしながらクロムの言う目的地へ歩いていく。

 

「じゃあ昨日のはやっぱりハルだったのか」

 

「はい、久々に全力だったので楽しくなってしまい……恥ずかしい限りです」

 

「あー……」

 

身長180cmで体格のいいクロムと身長173cmでスタイルのいいハルが並んで歩くと目立つようで、二人は通行人の視線を集めていた。

 

「ついたぞ、ここだ」

 

しばらく歩き、1軒の店についた。

中に入るとカウンターの向こうで水色の髪をした女性が先程まで作業をしていたようで、こちらに話しかけてきた。

 

「あら、いらっしゃいクロム。可愛い子なんて連れて……装備のメンテには早いでしょう?」

 

「ああ、コイツに腕のいい生産職が居ないか聞かれてな」

 

「それでここに来た、と」

 

クロムと女性は仲がいいようで、気安い様子で話している。

 

「お初にお目にかかります、私は名前はハル。昨日から始めた初心者です」

 

「礼儀正しい子ね……こんな怪しい人に付いて行っちゃ駄目よ?」

 

「俺は怪しくねーよ!?」

 

「私、人を見る目はあるので大丈夫ですよ」

 

「あら、よかったじゃないクロム」

 

「ああ……」

 

軽口を叩けるくらいには二人の仲は良好なようで、パッと見た感じでもハルは2人のことが気に入った。

 

「まあお話はこれくらいにして、私はイズ。見ての通り生産職で、その中でも鍛冶を専門にしてるわ。他にも調合とか色々と出来るけどね」

 

「私の装備はこのように【楽器】カテゴリでして、このフルート以外の楽器の注文をしたくて来ました」

 

「楽器……なんで楽器を選んだの?」

 

「私は現実(リアル)で交通事故に遭ったときから音楽を諦めました」

 

「あら」

 

「なっ」

 

予想していたよりも重い理由が飛び出してきて、イズとクロムは驚愕の声をあげる。

それと同時に、一つの説としてあったネット上の憶測が事実ではないかということに気が付いてしまう。

 

「私は、この世界で再び自由な体を手に入れました……ならば、音楽を追い求めるのは自然なことでしょう?」

 

「そう……分かったわ。けれど、お金は足りるの?」

 

「あー……楽器なんて相場が分からないからな」

 

「おいくらでしょうか?」

 

イズに金銭面の問題を言われてクロムがぼやき、ハルが具体的な値段を聞く。

 

「そうね……大体、150万ゴールドかしら」

 

「全くたりませんね」

 

「だろうな!」

 

イズの提示した金額にハルが即答し、クロムがそれにツッコんだ。

 

「とはいえ、稼ぐアテくらいはあります」

 

「あら?見たところ戦闘ができるようには見えないのだけど」

 

「ええ……大き目の籠をお借りできますか?」

 

「それくらいはいいけど……」

 

「おいハル、何をするつもりだ?」

 

イズから籠を受け取り、店先に出ようとしたハルがクロムに呼び止められて振り返る。

 

「戦闘は嫌ですが……音楽は大好きですので」

 

ハルは店先に出て、ウィンドウを開き掲示板のページを見る。

 

(昨日のお陰で私の名前はこのゲームに知れ渡っている……それを利用しましょう)

 

ハルは一つのスレッドを立て、すぐにウィンドウを閉じる。

 

「んんっ……アカペラですが、なんとかなるでしょう」

 

 

 

 

 

【NWO】ライブやります

 

1 ハル

15分後にスタートします。

来たい人は来てください。

籠が置いてあるので投げ銭、投げ物はそこにお願いします。

https:itijouhou

 

2 名無しの弓使い

は?本物?

 

3 名無しの大剣使い

分からん……だが行ってみる価値はあるぞ

 

4 名無しの斧使い

俺、その近くでハルのこと見たわ

 

5 名無しの魔法使い

ちょっと行ってくるわ

 





登場したのはクロムとイズでしたね。
この二人は他のキャラと違って絡ませやすくて助かります。
他候補にはミィやドレッド、フレデリカ、ベルベット辺りを考えましたがダイスを振った結果こうなりました。
恐らく楓の木路線に入るでしょう……魔境にまた一人新たなるメンバーが……

ハルは最初期勢ですが、一週間近く放っておいていたので他のプレイヤーはそこそこ進んでいます。
メイプル参入は……作品内時間だと2、3ヶ月くらい先になりますね。

次回 「お金稼ぎのアカペラゲリラライブ」ですが、ストックは尽きたので更新は未定です。

ハルは相棒を手に入れる?

  • 七層まで待て
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