戦いは嫌なので音楽をしたいと思います。   作:名無し

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感想がとても嬉しい。そして貰った評価が微妙なラインで反応に困る。
評価4~6って所謂「普通」の範囲だと思うんですけど、下手な低評価よりむしろ失礼に感じます。


音楽少女とゲリラライブ

掲示板で呼びかけた効果もあってか、ハルの居る場所には多くの人が集まっていた。

 

(今回は【ステージ】は使用しないですし、フルートを使えば口が塞がれる……やはりアカペラですね)

 

時間になったのでハルは周囲の人を見渡し、深く息を吸う。

 

(呼吸は後遺症に左右されていない全盛のもの……ならばマイクなしでもこれくらい!)

 

閉じていた目を開けて歌いだす。

 

「残酷な天使のように―――」

 

高く美しい声が周囲に響き渡る。

 

「少年よ神話になれ―――」

 

ハルは伴奏が無い代わりに、自ら手拍子を始めてリズムを取る。

 

「蒼い風が今胸のドアを叩いても私だけをただ見つめて微笑んでるあなた」

 

マイクもないアカペラだが力強い歌声が響きわたる。

サビに入るころには観客たちも手拍子をしていた。

 

「残酷な天使のテーゼ窓辺からやがて飛び立つ」

 

サビに入り、手拍子に釣られて少しリズムが走っているが、ハルはそれすらも予測して利用していく。

 

「ほとばしる熱いパトスで思い出を裏切るなら!」

 

ないはずの伴奏が聞こえるような熱が歌声に籠り、某使徒との戦いを幻視してしまうかのようだ。

 

「この空を抱いて輝く少年よ神話になれ!」

 

一番のみの歌唱であったが、観客の心をつかむには十分だったようで拍手が起きていた。

 

(掴みは上々……ならば、次は私の気持ちを込めるとしましょう)

 

「ふぅ…」

 

ハルは一つ、息を吐くと次の曲を歌いだす。

 

「二人で写真を撮ろう懐かしいこの景色と」

 

脳裏によぎるは母に連れられて行った雄大なフィンランドの自然。

 

「あの日と同じポーズでおどけてみせて欲しい」

 

思い出すはコンサートの前に緊張をほぐすために色々やってくれた共演者たち。

 

「見上げる空の青さと気まぐれに雲は流れ」

 

見上げるは透き通るような青が広がる仮想空間。

 

「キレイなものは遠くにあるからキレイなの」

 

耳に残るは芸能界で感じた嘲笑や汚い嘘。

 

「約束したとおりあなたとここに来られて本当によかったわ」

 

聞こえてくるのは「また一緒に演奏を」と約束した仲間たち。

 

「この込み上げる気持ちが愛じゃないなら」

 

サビに近づくにつれ、ハルの声にこもる感情も強くなっていき…

 

「何が愛か分からないほど!」

 

そのフレーズをもってハルのボルテージはマックスになっていた。

 

「愛をこめて花束を大袈裟だけど受け取って理由なんて訊かないでよね」

 

これは今、聞いているであろう運営に対するメッセージ。

再び愛する音楽を手に入れたことに対する最上級の感謝。

 

(ああ、また歌える……嫉妬を受けた、絶望もさせた、無気力になった……それでも!)

 

「今だけすべて忘れて笑わないで受けとめて本当の私を――!」

 

(私は……音楽が好きだ!)

 

そのままハルは歌い続ける。

感謝と愛を、謡い紡ぐ。

 

「いつまでもそばにいて―――!」

 

『スキル【歌唱Ⅰ】を獲得しました』

 

ハルが歌い終えると拍手が巻き起こる。

ハルは呼吸を落ち着かせ、ライブの終わりを告げる。

 

「本日は以上になります」

 

観客たちはアンコールを期待していたようで、肩を落とす人も見受けられる。

 

「私は戦闘が苦手ですので、戦闘でお金を稼げません……楽器購入などにあてるため、御協力お願いします」

 

ハルがそういうと、周りにいた観客たちは用意されていた籠の中に金銭を入れていく。

観客が居なくなったところでハルは籠を回収し、店の中に入った。

 

「お疲れ様、沢山集まってたわね」

 

「お疲れさん……凄い盛り上がりだったな」

 

店の中ではイズとクロムが待っていて、ハルを迎える。

 

「ありがとうございます……終わってから気づいたんですが、営業妨害とかになりませんか?」

 

「大丈夫よ。貴女の歌が聴けたし、これから買い物してくれるんでしょう?」

 

「そういや、どれくらい貯まったんだ?」

 

「ええっと……」

 

クロムの問いにハルは籠の中を数え始める。

 

「1583万1360ゴールドです」

 

「多くないか!?」

 

「普通だと思いますが」

 

「何処がだよ!」

 

ハルはリアルにて金持ちであり、神童として子供ながらにかなり稼いでいたので金銭感覚がおかしいのである。

今回はそれに加えて楽器の値段もあり、「ゲーム(ここ)は現実よりも金銭の価値が低い」という認識なので「これくらい普通」と考えてしまっている……というわけだ。

 

「それだけあればいくつか作れるわね……何が欲しいの?」

 

「いやお前はもう少し慌てろよ」

 

金額に反応せず、商談を始めるイズにクロムがツッコミを入れる。

 

「今のハルちゃんは有名だし、結構あるとは思ってたもの……予想より多かったけれど」

 

「あー……そうか。昨日の分を考えればそこまで多くはないか」

 

「そんなに多いですか……?」

 

「「多いぞ(わね)」」

 

「そうですか……」

 

今後、金銭感覚を改めないといけないと考えているハルだったが、そこにイズが商談の続きを始める。

 

「それで、何が欲しいの?」

 

「ええと……確認なんですけど、エレキギターや電子ピアノのようなものはできないですよね?」

 

「まだ無理ね」

 

『NewWorld Online』は基本的に中近世のような世界観であるため、電気を使用するものは使えないのである。

無論、今後のアップデートで新しい階層が実装されればその限りではないため希望が無いわけではない。

 

「では……ドレッドノートのフォークギター、モダンヴァイオリン、B♭管のトランペット、テナートロンボーン……」

 

「うんうん」

 

「何がなんだか分からねぇんだが……ギターはギター、トランペットはトランペットで同じじゃないのか?」

 

「後で説明しますので」

 

「お、おう」

 

ハルは少し考えるような仕草をしたあと、スラスラと楽器名を伝えていき、イズがそれをメモしていく。

その様子に困惑するクロムだったが、ハルの眼光に気圧されてしまった。

 

「アルトサックス、テナーサックス、B♭クラリネット、アイリッシュハープ、アップライトベルのユーフォ、トリプルホルン……辺りでそうでしょうか?」

 

「ピッタリ10個ってことは全部楽器に使うの?」

 

「はい、これでも足りないですが……」

 

「どんだけ情熱注ぐんだよ」

 

「私は全てを音楽に捧げる覚悟ですが?」

 

発注を終え、イズの確認に頷いたところで話しかけて来たクロムにハルは迷いなく答える。

 

「そうか……あ、フレンド登録しておくか?」

 

「そうね、私ともお願いできる?」

 

「了解しました……よろしくお願いします」

 

ハルは2人とフレンド登録をし、フレンド欄を少し眺める。

 

「どうしたの?」

 

「いえ……友人、というのは余り多くないので少し感慨深く」

 

「なんか一々エピソードが重いな……」

 

ハルはウィンドウを閉じて二人に一礼する。

 

「では、これから町を少し歩いてくるので……これからもよろしくお願いします」

 

「ああ、よろしくな」

 

「楽器はできたらメッセージ送っておくわね」

 

そしてハルは店を出て、町へ乗り出していった。





歌詞ありきだとどうしても描写が難しくなるんで今後は歌詞部分を減らして心理描写や周囲の反応が増えるかもです。
金額については20d100を二回振って片方の一の位を切り捨てたらこうなりました。

今回の曲は
高橋洋子より『残酷な天使のテーゼ』
Superflyより『愛をこめて花束を』
でした。

残酷な天使のテーゼは新世紀エヴァンゲリオンの主題歌で、長年カラオケなどでも親しますね。作者もカラオケ行ったら大体歌います。

愛をこめて花束をはマシュマロによるリクエスト曲です。作中でも言われていましたが、再び音楽ができることへの感謝と音楽への愛が込められています。

楽曲はマシュマロで常時募集中なので気軽に投げてください。
採用するかや採用時期は不明ですが。

次回 「初クエスト」
クエストを受ける先は……音楽の歴史と切っても切り離せないあそこです。

……高評価欲しいなぁ(強欲)

ハルは相棒を手に入れる?

  • 七層まで待て
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