戦いは嫌なので音楽をしたいと思います。   作:名無し

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ようやく探索……ですが町から出ません。
「とりあえず戦闘するか」で外に出たメイプルとは大違い。

誤字報告、ありがとうございます。
今後気を付けていきますが、誤字があったときはよろしくお願いします。



音楽少女と初クエスト

「こうして見るとヨーロッパの街並みに似ていますね……」

 

ハルは町を歩きながらそう呟く。

幼いころからパリやウィーン、ロンドンなどヨーロッパの街に何度も行ったことのあるハルにとっては何処か面影を感じるものがあった。

 

「そういえば、スキルを獲得していましたね……見てみますか」

 

 

【歌唱Ⅰ】

歌を歌う時に息が長く持つようになり、声の届く範囲が広がる。

取得条件

累計歌唱時間が5分を超える。

 

 

「ああ……確かにそれくらい歌ってましたね」

 

そのまま少し町を歩いていると、一際大きい建物があった。

 

「ここは……教会でしょうか」

 

扉の上に十字架のようなものが見える。

ハルがこれまで見てきた大聖堂と比べると見劣りしてしまうが、十分立派な教会だった。

 

「私はクリスチャンというわけではないですが……教会での公演も経験がありますし、少しくらい祈っていきますか」

 

フィンランドの血が入っているハルだが、ハル自身はクリスチャンというわけではなく、無宗教家や神道信者に近かった。

育ちが日本ということもあるのだろう。そんなハルだからこそ様々な宗教と関わりがあったのだ。

 

「失礼します……」

 

「ギィィィ」と音を立てて扉が開く。

中にはシスターらしき人が居た。

 

「ようこそいらっしゃいました。治癒の依頼でしょうか?」

 

「いえ、少し祈っていこうかと」

 

「そうでしたか。では、御自由にどうぞ」

 

そのとき、ハルの前に青色のプレートが出てきた。

 

 

クエスト【讃美歌の誘い】

Yes/No

 

 

「これがクエストというものですか……」

 

ハルは迷わず『Yes』を押した。

 

「祈るだけでなく聖歌も歌われるのですか?」

 

「はい。ミサではないですが、大丈夫ですか?」

 

「ええ、こちらへどうぞ」

 

シスターによって奥に案内されていく。

そうしてステンドグラスや聖像の前までやって来た。

 

「ここで聖歌を捧げてください」

 

「あ、はい。楽譜は……」

 

「曲を捧げた時間によって、神は貴女へ加護を与えるでしょう」

 

「ありがとうございます。ではなくて楽譜は……」

 

「曲を捧げた時間によって、神は貴女へ加護を与えるでしょう」

 

「あ、はい」

 

クエストのとき特有の、同じ言葉が繰り返される事例の様だ。

 

「楽譜がない……ってことはこっちで歌っていいんですかね?」

 

ハルは頭の中から聖歌を探していく。

 

「曲を捧げた時間によって……ならば、複数を歌いましょう」

 

ハルは一度目を閉じて集中状態に入り、かつて聖堂で行った公演を思い出していく。

 

「これでも『天才』と呼ばれてきましたし……格の違いを魅せてあげましょう」

 

なお、少したてば『きよしこの夜』の楽譜が出てくる仕様になっていたことは秘密である。

 

「Κύριε ἐλέησον Κύριε ἐλέησον」

 

紡がれるは憐れみの賛歌、グレゴリオ聖歌でも謡われる太古の聖歌。

ハルは数分間の厳かなる讃美歌を終え、クエスト終了かと思いウィンドウを探す。

 

「あれ……?出てこないですね。でしたら……」

 

これ幸いにとハルは次の聖歌を歌いだす。

 

「Holy, holy, holy ! Lord God Almighty」

 

ハルは高らかに声を上げ、聖なる歌を歌っていく。

 

「God in Three Persons, blessed Trinity!」

 

数分間の歌唱を終え、ハルはシスターに話しかけようと場を離れようとする。

 

『スキル【聖歌】を取得しました。これにより、【歌唱Ⅰ】が【歌唱Ⅴ】に進化しました』

 

「あ、ここから離れることが条件だったんですね」

 

ハルは早速取得したスキルを確認する。

 

 

【聖歌】

【讃美歌】の上位スキルであり、奏でるか歌っているあいだは【神に仇なす者】に継続ダメージを与える。

【系統:悪】のスキルの効果を大きく減衰させる。

取得条件

教会で聖歌/讃美歌を二曲以上歌う。

 

 

「【神に仇なす者】と【系統:悪】のスキルとは……?」

 

まだゲーム時間が少ないハルには理解ができない単語であった。

しかし、これはまだ他のプレイヤーたちも知り得ないことであるうえに、アンデットなど【神に仇なす者】に属するモンスターは不人気である。

そのためハルは現時点で最もアンデットなどに有利を取れるプレイヤーとなっていた。

 

「素晴らしい聖歌をありがとうございます」

 

「いえいえ……こちらこそ、貴重な体験を」

 

シスターと挨拶をして教会を出る。

ハルは再び町を歩き始めた。

 

「次は何に出会えるでしょうか」




曲を探すのがとても楽しい。

今回の曲は
『Kyrie eleison』
『Nicaea』
の二曲でした。

『Kyrie eleison』は近年、Fateやブルーアーカイブで有名になっているキリエ・エレイソンの元ネタとなる曲です。
グレゴリオ聖歌に属する讃美歌で、聖歌のなかでも特に古いものですね。
作中では原文であるギリシャ語で登場しました。

続いて『Nicaea』は『Holy, Holy, Holy, Lord God Almighty』の別名で、和訳すると『聖なる、聖なる、聖なるかな』となっていて、作中では英語で登場しました。
こちらは19世紀に作られた曲で、イザヤ書とヨハネの黙示録が元になっています。

曲のリクエストはマシュマロで常時募集中となっています。
リクエストのなかではピアノ曲が少し多いけどピアノ……いつ出せるかなぁ……持ち運ぶような楽器じゃないだけにいつ出るかが不明です。

次回 「楽器入手」
時間が飛んで発注した楽器が届きます。

評価とかしてくれてもいいんですよ?(強欲)

ハルは相棒を手に入れる?

  • 七層まで待て
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