そして審査員である神(比喩かもしれないしそうじゃないかもしれない)に持ち込むのだが……
終末の時はきた。
ラッパやらなにやらがあれこれした末、人々は死に絶え、そして。
「違うなぁ……」
あまねく死体は蘇り、傷は治り、火も砕けた瓦礫も消え、人々は椅子に座っていた。
彼らの前に、ひとつの影が、座っている。
愕然、茫然、唖然とするひとびとを気にする様子もなく、それはまた話し出した。
それは、椅子に座っていない影にかたりかけていた。
立ったまま、影のほうをみつめるそれは、瞳に移ったとたんに何者なのか誰もがわかった。
悪魔、またの名をペンネーム「ここに名前を入れる」であった。
「痛いとか、苦しい~って感じてるだけじゃあ、それだけでしかないなら、別に面白くも楽しくもない。
よく勘違いしてる輩がいる、そういう……大人と子供の違いみたいなの。
ほんとうに嫌だけど、あげたくないけど、それでもあげるっていうのが尊い大人への一歩であってさぁ。
べつに譲りたくないってこともない、特別じゃないあまりものをあげたところで、なんでもないでしょ。
宗教の歴史を習うと大抵でてくる……苦行すれば偉いってわけじゃないみたいな、そういう、勘違いしてる」
悪魔はそれに反論するように、あれこれ話し出した。
受難はもちろん幸福もこだわって演出したと。
様々な場面状況を用意して、バリエーションにも凝ったと。
自慢げなその語り草に様々な人々が悶え、怨嗟の声をあげる。
しかし、それを遮るようにして、影はいった。
「単に痛いとか、苦しいとか、悶えて……それは感覚でしかないんだよ。サディズムとかで気持ちよくなっても、それは条件反射でしかないし……
動物のよろこびだ、それは。
人間のくるしみっていうのは、受け入れたくないと心底思っていることを受け入れているという、もつれて絡んだなにかに、それでも向き合うありかたじゃないかなあ……
どうしようもないことに対して、絶対にそれでもおれは~とかいってるようじゃあ、そういう動物でしかないでしょ?
そこらへんが出てる作品を重点的に履修してるから頼んだのにさ、一辺倒に通させるようじゃあ、困るよ。」
それを聞いた無数の背姿が反応した。
影が、そして影の正面にいる者がいったい何者なのかを悟ったためである。
が、影は気にする様子もない。
そのまま語り続ける。
「取捨選択できる選択肢なら、それはもうなにかに任せればいいことなんだ。
どちらも選び難いって思い悩む間、あるいは過程、コンフリクトってやつも、まあ前座とか前菜でしかない。
重要なのは選択だ。
フォークに絡みついたスパゲッティの塊を口に含んで、噛んで、飲み込んで。
それがカタルシス……開放に伴う諸々の浄化を生む。
過程も選択も結果も一要素でしかないのに、ひとつを尊ぶなんてナンセンスだ。
僕が君を突っ込むにあたってお題目に据えたのは、確かに曇らせってジャンルだ。このジャンルはひどい目にあうひとがどうしても出てくる。
でもね、ひどい目にあいました救われましたって結果があるだけなら海の満ち引きと同じじゃないか。
かくあれかしってテンプレートそのまま法則のままにやるなら君らを用意する必要がない。
苦しんだ設定を用意して幸せに暮らしましたとさ、って〆ればそれで終わりだ。
……ところで、ここまで長々と語った理由はもうわかるよね。」
悪魔は身もだえした。
「こういうわけで、落選です。これを糧にした次回作を期待してますね。
じゃあ、最後の審判があるから、部屋立て直しますね……
あ、待機室同じ部屋にしてた」