死んじゃいけないゲームなんてクソすぎるぜ 作:RAKU0221
今回は5000文字行きました。もう1話か2話くらいこの話引っ張るかなと思います。
この世界での生活はとてつもなく目まぐるしいもので、もう3か月以上が経過した。すでに10層を突破し、20層も目前というところだ。原作を読んでいてもペースメチャ早いなと思っていたが、実際に間近で見ると攻略組というのはとてつもないと思わされる。血盟騎士団も最近でてきてメキメキと頭角を現しているし、原作では1ミリも出てこなかった隠れた強者みたいなやつも何人かいた。
あんな凄い奴らとこの鋼鉄の城の最前線を駆けているなんて、3か月たった今でも信じられん。というか、思ったよりこの3か月でネームドと交流を持った。これもフロントランナーである故か、なんにせよ原作介入する上ではとても都合がいい。
だが、この状況は非常に面倒だ。
「グレイはん、ALSに入ってくれへんか?幹部からのスタートや、悪い話やあらへんやろ」
「いやグレイさん、DKBに来てくれ。こちらも幹部の地位を約束しよう、他にもできる限り要望に応えるつもりだ」
夕方、飲み屋が1番繁盛する時間、この店もすこぶる繁盛しているがこの席の周りだけ人が少ない。
それもそのはずだ、なんせこの席にはアインクラッド最大規模の2大ギルドのギルドマスターと、その2人に口説かれるフロントランナーが居るのだから。
ちなみに、俺、キバオウ、リンドと、もう1人席に座る男がいる。
「だから、ずっと断ってるだろ。俺は組織に属するつもりはない、属するとしたら、俺がギルドを立ち上げる時だって……………アンタからもなんか言ってくれよ、ディアベル」
「言ってはいるんだけどね……………それに俺も、君がこのままソロとして動くより、何処かの組織で重要なポジションを得た方が攻略がより安定して進むというのには同感なんだよ」
「俺に味方はいないのか」
2大ギルド『相談役』ディアベル。
1層攻略後、償いとして攻略組を降りる決断をしたディアベルに俺は待ったをかけた。ディアベルという男は優秀だ、β上がり故に練り上げられた剣の腕、皆を統率するカリスマ性、それを持つ男をこんな所で手放すのは惜しいと俺は思った。
攻略組を引っ張っていくつもりが無いのなら、攻略に対する姿勢が全くもって合わないキバオウとリンドの相談役として、影から攻略組を支えて欲しいと願い出たのだ。俺が仲介役となり話し合いを重ね、無事ディアベルは今のポジションに収まった。
原作ではディアベル死亡後、決裂したキバオウとリンドは互いのやり方で組織を拡大した、だがどちらの組織もお世辞にもいい組織とは思えなかった。
だがディアベルが生き残ったのならば、その歪みを発生させないようにすることも可能なのでは無いかと思ったのだ。大きな原作介入ではあるが、本筋にはあまり影響はないはずだ。
(その目論見自体はすこぶる上手くいったが…………)
フロントランナーとして前線を駆ける実力と、2大ギルドとディアベルの今の在り方を作り上げた事で、俺の名前はかなり広まっている。俺が思っていたよりも、この原作介入は規模がでかかったらしい。
だがこの2大ギルドの在り方が安定している今、攻略はとてもやりやすい。未だに攻略組に死人は出ておらず、皆の士気も高い。それは素直に喜ばしいことだろう。
「「グレイはん(さん)はうちに来るべきや(だ)!!」」
「だーからどっちにも行かねーよ!」
「あはは………」
その後、俺は自分の分の金をディアベルに渡して半ば無理やりその集まりから抜け出した。
さて、あのむさ苦しい飲み会から抜け出し何をするかと言えば、日課であるレベリングだ。
昼は穴場クエストを探したり、招集を受ければ攻略の手助けに行ったりしているため、レベリングに割ける時間は必然的に夜になる。あまり長時間は出来ないが、それでも利点はある。
というのも、俺がソードスキルをあまり使わないスタイルであることに関係している。
回避し、いなしてカウンターを狙ったり、手数とフットワークで攻めていく、いわゆるアジリティ型に当たる俺にとって、攻撃の手を休めない事が非常に重要になってくる。そのため、硬直が発生するソードスキルの使用は、大型モンスターの攻撃をパリィする時や、明確にウィークポイントを突けるタイミングに限定している。
なので俺は、高い威力を誇る攻撃をバンバン使わない分それ以外の部分を鍛える事にした。
俗に言う、プレイヤースキルとシステム外スキルである。プレイヤースキルとは、ひとえに剣術や体術の基礎能力のことだ。間合いの取り方、攻撃のレパートリー、練習すればするほど伸びるのがプレイヤースキルだ。
それに比べて、システム外スキルはセンスが要求される。システム外スキルとは、ソードスキルや魔法などといったシステムが用意しているスキルではなく、システム上の仕様やモンスターの癖などを利用したテクニックのことだ。SAO原作でキリトが使用していた、武器破壊などがこれに当たる。
正直言って、武器破壊は難易度が高すぎたので早々に諦め、俺は簡単なシステム外スキルを磨き上げる方向にシフトした。その修行をするのにうってつけなのが、この夜という時間なのだ。
「聴音」と「見切り」
俺はこの二つを徹底的に鍛えている。聴音は索敵と、視界外からの攻撃の察知、見切りは視界内の攻撃を捌き、カウンターを狙う上で重要だ。
攻略組であれば二つとも、少なくとも見切りに関しては必須項目なので大して珍しいスキルでもないし、できて当たり前のものだ。だがその基礎的な技術を達人レベルまで練り上げているプレイヤーは、攻略組にも極めて少ない。
「大分慣れてきたな、音だけでも正確に距離と方向が掴めるようになってきた」
俺の四方を囲うように展開するモンスターを相手に、俺はHPを1割削らせる程度だった。相手の位置と距離さえつかめれば、フットワークでかわせるので大して苦でもない。しばらく反撃せず、練習をした後モンスターたちを切り捨てた。
それを何度か繰り返すうちに、気づけば一時間以上が経過していた。休憩がてら、そこら辺にあった石に腰を下ろした。
「この世界にも、随分慣れたもんだな..........」
死ねば終わり、いや俺の場合はクリアしても終わりなのかもしれない。その緊張感の中での攻略で、自分でも驚くほどの早さで俺は強くなり、気づけばフロントランナーのポジションを確立するまでになっていた。
死ねば終わりというクソゲーが、俺をここまで強くしたというわけだ。まったくもっておありがたい話で涙が出るね。
「でも、どこまで行っても俺はあいつらとは違う、異分子だ。」
俺はメニューを操り、一振りの剣を手元に出す。片刃で細く薄い形状は刀のものだが、刀にしてはあまりに反りがなく、刃渡りも短剣以上片手直剣未満と非常に中途半端だ。異様に広い鍔がその刀の正体を如実に語っている。
忍者刀「八重霞」
思えば、こいつを手に入れた一件から聴音と見切りのトレーニングに力を入れたんだったな。
10層を攻略中に俺が手に入れた、いや、正確には譲り受けた。本来のSAOでは手に入れることはできないはずの武器だ。
ー10層攻略時ー
10層は古き良き日本が舞台だった、モンスターも落ち武者やら狛犬やらがひしめいており、日本家屋が忠実に再現されていた。そんな層であるため、クエストも侍や刀に関するものが多かった。クラインなんかはレアものの刀を求めてあちこちのそれっぽいクエストを、風林火山の面々と受けていた。俺もいくつか手伝った、というか手伝わされた。
俺も自分であちこちに足を伸ばしつつ、アルゴに依頼をしたりしてクエストの情報を集めていた。そんなある日のことだった、アルゴから1つの情報を教えてもらった。
「やあグレ坊、今日はちょっとばかし面白い話を仕入れてきたゾ」
「そのグレ坊ってのやめろなんかグレてるみたいだろ、あと多分俺のが年上だからな?」
「1つ2つ程度の年の差を気にしてる辺りが、「坊」って感じだナ」
「表出ろチビ鼠」
「そうカリカリするなヨナ、年上ナンだロ?」
実はアルゴとは、一層の時点で出会っていた。といっても俺から探しに行った訳じゃなく、本当に偶然の出会いだった。モンスターに囲まれていたプレイヤーを助けてみたら、それがたまたまアルゴだったってだけの話だ。そこからはクエストを手伝ったり手伝ってもらったり、時には情報を買わせてもらったりと、それなりに交流がある。
原作だとミステリアスな情報屋って感じでかっこいいと思っていたのに........いや実際に、出会った最初の頃はそうだったのだが、段々打ち解けてきたのか最近は小生意気な奴へと変貌を遂げやがった。
「で?面白い話ってのは何だ?」
「この層の迷宮区とは真反対に当たる場所に、圏外村が有るのは知ってるカ?その村は刀と侍の村と呼ばれていたらしいが、その村の外れに『忍者屋敷』があるんだってサ」
「刀と侍の村なのに、忍者屋敷?どういうことだ?」
「オレっちも行ってみたよ?確かにその場所には屋敷があった。でも入れなかったんダ」
「入れない?何故?」
「入ろうとすると人型モンスターが湧くのに加えて、弓矢やクナイが飛んでくる罠が作動するんダ。モンスター自体は大して強く無いケド、数が問題だナ。オレっちは戦闘系じゃないから、サッサと逃げてきたヨ」
あー怖かっタと、肩をすくめてアルゴは言った。俺は正直、こいつの心臓には毛が生えていると思っているので、怖かったというのは嘘だと思う。
アルゴの話では、その屋敷の敷地内に踏み込むと人型エネミーが出現、同時に複数の罠が起動する。罠を全てかわすと人型モンスターが襲いかかってきて、その数は増え続けるという。
複数人で行けば何とかなるのでは?と思ったが、そもそも2人以上で行くとどういう訳か屋敷を見つけられないらしい。実際に忍者屋敷の話を聞いたプレイヤーが複数人で突入を試みたが、屋敷は跡形もなかったという。
およそ10層には相応しくない難易度で、アルゴの見解では、そもそもプレイヤーが入ることはできない、もしくはゲームクリア後に遊ぶ事前提のエンドコンテンツ扱いが濃厚だと言う。
「モンスターを倒しても経験値すら入らなかったから、レベリングにも使えなイ。和の世界観を演出する為のギミックじゃないカ?」
「だが、刀と侍の村という設定があるのに忍者屋敷ってのは、おかしくないか?」
「…………正直オレっちも、何かあるのは間違いないとは思ってるヨ。でも、オレっちじゃこれ以上の調査は出来なイ。情報屋としては悔しい限りダナ」
明らかに10層の迷宮区よりも高い難易度、1人で無ければ作動しない、刀と侍の村にポツンと存在する謎の忍者屋敷。何も無い、とは考えにくい。
(いや、そもそもだ)
SAOはデスゲームにする前提で作られたのだからエンドコンテンツなんて必要ないはず、それに何より原作にはそんな屋敷の描写は全く無いではないか。もし原作時空のアインクラッドにもこの屋敷が存在していたのだとすれば、間違いなく触れられているはずだ。
つまりこの屋敷は、
少しばかり驕りが過ぎる推測ではあるが、間違いなく原作には無かったこの屋敷には必ず何かある。
死んだら終わりのクソゲーで、こんなリスクを取るのは本来俺らしく無い。俺は特別な人間でも何でもない、死ぬ時は一瞬だ。だが何故か、今回ばかりはリスクを取るべきだと思った。
「………面白い話を聞かせてもらった。行ってみる事にする、忍者屋敷に」
「……本気カ!?話聞いてたカ!?いくらグレ坊でも流石に突破は不可能ダ!無理に突っ込めば確実に死ぬゾ!」
アルゴのやつは珍しく焦ったような顔をした。原作でもこいつがこんなに焦った描写は無かった………いや、たしか犬絡みのクエストかなんかで焦りまくってたか?なんにせよ珍しいものが見れた。
「何笑ってんだヨ………」
「いや?アルゴも焦る事あるんだなって思ってさ…………心配すんな、死ぬつもりなんか毛頭ない。多対一は得意分野だし、引き際を見極める目はあるつもりだ」
「心配した訳じゃnウアアァア頭撫でんナァ!」
「そんな典型的なツンデレみたいなセリフお前にゃ似合わねぇよ。まぁ任せろ、おにーさんがお前も探れなかった屋敷の中に入って情報を取ってきてやろう」
アルゴに情報料を支払い、俺のその場を後にした。
頭を撫でられたのはいつぶりだったかナ。
オレっちがヘマをしてモンスターに囲まれた所を助けてもらったところから、関係は始まった。
「よぉ、無事か?案外ミスするんだな」
その男は初めて会ったのに、まるで俺っちのことを前から知っていたかのような口ぶりだった。
「俺はグレイ、短剣使いだ。アンタは?」
「助けてくれてありがとナ。オレっちはアルゴ、情報屋ダ」
それからは、戦闘が発生する可能性がある仕事を手伝ってもらっタ。逆にグレ坊から採取系のクエストを手伝って欲しいと泣きつかれたこともあったナ。
忍者屋敷に行くとグレ坊が言った時、何故か嫌な汗をかく感覚があった。仕事仲間、いや、心の何処かじゃ俺っちはグレ坊をもう「友人」だと思っていたのかも知れないナ。
この世界での命の軽さは、もう十分理解していた。情報を売った相手が、次の日死んだなんてことも有った。
「おにーさんが、お前も探れなかった屋敷の中に入って情報を取ってきてやろう」
何が、ツンデレみたいなセリフは俺っちには似合わないダヨ。グレ坊だって、その兄貴ムーブ全然似合ってないゾ。
情報料を渡して、グレ坊は足早に去っていった。
「死ぬなよナ、グレ坊」
友人が死ぬのは、嫌だからナ。
ヒロインをマジで決めかねていたんですが、とりあえず各章毎にヒロインを出していって、正妻の座をバチバチに奪い合って貰うのがいっちゃんおもろいやろって結論に至りました。
てことで、アインクラッド編のヒロインはアルゴの姐さんにやって頂くことにしました。ドンドンぱふぱふー!!
まぁアルゴの姐さんからグレイへの気持ちはまだ「友人」なんで、こっからどう気持ちがシフトしていくかを考えなければな訳ですが………。