プリンヒーロー・ヴラム   作:匿名希望

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『現実はほろ苦カラメル味』

 

「終わりだ」

 

〈セット〉

〈ヴラムシューティング〉

 

「ダメだ!」

 

 気を失って倒れたヒーロー殺し・ステインに止めの一撃を放とうとしたヴラム。

 その前に立ち塞がったのは再起した緑谷出久。

 

「敵でも命を奪うのはダメだ!」

「その目…」

 

 立ち塞がる緑谷の目を見たヴラム。自分を見るその目はどこかオールマイトに似ているなとあれと緑谷を重ね合わせた。

 

「本当にだるいな、ヒーローってのは。まあ、いい。俺が頼まれたのはそこのインゲニウムの弟のおもりだけだ」

 

 一悶着あるかと思いきや、呆気なく引いたヴラムに緑谷はキョトンとした。

 

 

 

『現実はほろ苦カラメル味』

 

 

 

 入り乱れる状況下、乱入した脳無を隠し持っていたナイフで仕留めたステインは駆け付けた炎のNo.2ヒーローを睨み付ける。

 

「エンデヴァー…!ヴラム…!こい、偽物共ぉ!」

 

 ステインは剥き出しの狂気を振り撒く。

 

「俺を殺していいのは本物のヒーロー!オールマイトだけだぁ!」

 

 狂気から発せられるとてつもない執念。

 その場に集ったヒーロー達は全員例外なくステインの狂気に気圧された。

 

 そしてその後、ステイン逮捕。

 それから後日の事…。

 

「ラキア・アマルガ。仮面ライダーヴラムだワンね」

(犬…?)

「保須署所長、面構犬嗣だワン」

(ワン…?)

 

 保須病院の廊下にて所長との話。

 

「署長とやらが俺になんの要件だ?」

「確認と今後の話だワン。ヒーロー殺しを追い詰めたのは君だと雄英の生徒達、居合わせたヒーロー達から聞いたワン。間違いないワンね?」

「ああ。間違いない」

「今回の件、雄英生徒達の戦闘行為に関しては守秘義務が要請されるワン。それとステインを捕まえたのは君だと世間には知らされる事になるワン」

「俺の事は伏せられないのか?あまり注目されるのは好きじゃない」

 

 USJの件が報道されて目立ち、視線や注目が鬱陶しいと感じる事も多くなったので、これ以上の厄介事はごめん被りたい。

 

「聞いた最後はともかく、実際に追い詰めて一時的とはいえ行動不能にまで追い込んだのは紛れもない君だワン」

「…」

「グラントリノ、マニュアル、エンデヴァーには監督不行届として罰則、ペナルティを受けてもらう事になるワン」

「ヒーローの規則か」

「その通りだワン」

「本当にだるいな。ヒーロー」

「終わりよければ全て良し、にはならないワン」

「そうか。俺にはペナルティはないのか?」

「君は雄英生の受け入れをしていた訳でもなし、塚内の要請で動いていた君にはなんの落ち度もないワン」

 

 何はともあれ、これで一件落着か。

 

「俺はもう行く。後の事はまとめて連絡してくれ」

「それと、まだもう1つあるワン」

「?」

「塚内から君に情報協力するように要請を受けたワン。"青い炎の個性を持つ敵"について」

 

 面構の言葉にラキアの目付きが変わった。

 

「2月前、この保須市で謎の焼死体が発見されたワン」

「それがなぜ青い炎だと断言できる?」

「最初の発見者が見たそうだワン。死体に燻る青い、蒼炎の炎を」

 

 面構の言葉で脳裏に過ぎるあの日。

 体の半分が焼けて帰ってきたコメル。その身体には青く燃える炎が燻っていた。

 

「犯人は?」

「不明だワン。だけどその日、黒髪で黒いコートを羽織った痩せ型の"怪しい男"が付近で目撃されてるワン。もしかしたら…」

「そいつか」

 

 コメルを殺したのは。

 

「行くのかワン?」

「ああ。情報…ありがとう。感謝する。また何かわかったら教えてくれ」

「雄英の生徒には会っていかないワン?」

「特に親しい関係者はいない」

「そうだったワンか。にも関わらず、助けたワンね」

「‥‥‥」

「違うかワン?」

「何が言いたい?」

「君は極めてグレーな存在ワン。警察官として君の行いを認めるわけには行かないワン。でも君は確かにヒーローとしての心を持ち合わせてもいるワン」

「だる。知ったような口を‥‥。今回はただインゲニウムとの腐れ縁で助けただけだ。それじゃあな」

「素直じゃないワン」

 

 ラキアは病院を後にするべく出入り口を目指して廊下を歩いていると、角を曲がったところで誰かとぶつかりそうになった。

 

「おっと、すまん」

「こ、こちらこそ!って…ええっ‼︎ヴラム⁉︎」

「お前は確か、雄英の」

「み、緑谷出久です!」

 

 バッタリと遭遇したのは、点滴スタンドで体を支える入院着の緑谷出久だった。

 

「そうか。それじゃあな」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 去ろうとするラキアを緑谷が焦ったような様子で、尚且つ必死に止める。

 

「なんだ?」

「えっと、あの!ヴラムはベルト型のアイテムを使って変身してますよね?そのサポートアイテムはどこで手に入れたんですか⁉︎どのメーカーを探しもなくて…」

「俺専用の特注だ」

「やっぱり。だからどこのサイトを探してもブツブツブツブツブツブツ…」

 

 なんなんだこいつは…。

 

「要件はそれだけか?なら…」

「ああっ⁉︎まだあります…!まだ…!」

「はぁ…いったいなんだ」

「USJと昨日のヒーロー殺し、二回も助けて頂いてありがとうございましたっ!」

 

 緑谷は深々と頭を下げる。

 

「だる。俺はお前らを助けたわけじゃない。ただインゲニウムとの腐れ縁で弟のおもりをして、ヒーロー殺しを片付けただけだ」

「それでも、助けられました。もしもヴラムが来てくれなかったら、僕らは今ここにいないかも知れません…」

「ま、礼は受け取っとく。じゃあな」

「待って!あのっ!」

 

 再度緑谷はラキアを引き留めた。

 

「だるい、なんだ?」

「あの、えっと…聞いてもいいのか迷ったんですけど…ステインとの会話が気になって…ヴラムは敵に家族を…」

「お前には関係のない事だ。さっさと怪我治せ」

 

 今度こそラキアは病院を去る。

 密かに根城にしている廃工場の一角、古びたソファーのある部屋と呼ぶには杜撰な場所にラキアは久しぶりに帰ってきた。

 ここに帰ってくるのもかなり久しぶりだ。USJの一件から周囲の環境が激変して以降、体育祭警備、野良敵、ステインの件で遠出も多かったから。

 やっと一息、これで休めると思ってソファーに重い腰を下ろすと、ソファーの端の方でこちらをじっと観る小さな影が一つ。

 

「お前は…?」

 

 待ち構えていたのは新たなゴチゾウ。

 

〈ぷるゼリー〉

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 あれから数日後、緑谷、轟、飯田の3人の姿は雄英高一年A組の教室にある。

 クラスメイトは職場体験の話で沸き立つ。

 

「よくその程度の怪我で済んだよな」

「そうそう、ヒーロー殺し!」

 

 上鳴、瀬呂の言葉を皮切りにクラスメイト達の視線が3人に一気に集中する。ヒーロー殺し逮捕の一件に関わった3人に。

 

「命あって何よりだぜ。マジでさ」

「心配しましたわ」

「またヴラムが助けてくれたんでしょ?」

「ああ、そうだな。ヴラムに助けられた」

「流石今人気のヒーローだね!」

 

 葉隠透の言う通り、ヒーロー殺しの件が世間へと公開されると、ラキア・アマルガことプリンヒーロー・ヴラムの名は一気に世間へと轟いた。

 それはUSJの比ではなかった。あの時もヴラムの名は公表されたが、数いるヒーローの1人だとあまり話題にはならなかった。

 が、今回は違う。世間を騒がせて、多くのヒーローを葬ったあのヒーロー殺しをお縄につかせたとあれば、世間の注目度も倍増するのはヒーロー社会では当然のような事。

 葉隠の言葉に緑谷は…きっとヴラムはこの状況に「だる…」って言ってるだろうなぁ〜と1人顔を脳裏に浮かべていた。

 

「緑谷、どうかしたか?」

「えっ?あっ、うん。ヴラムの個性ってなんなんだろうなって思ってさ」

 

 考え込む緑谷に峰田が問い掛けた。

 

「ヴラムの個性?あの変身じゃないのか?あのかっけぇやつ」

「あれはサポートアイテムで…」

 

 ヴラムの個性はなんだろう?という疑問を緑谷が口にすると、2人の会話に続々とクラスの面々が参加して思わぬ波紋となった。

 

「じゃあ個性は別にあって無個性で戦ってたって事!?」

「いやそれはねーんじゃねぇか?」

 

 驚く芦戸に切島が意を唱えた。

 

「と言うと?切島」

「USJで脳無と戦ってた時、ヴラムは変身せずにすげぇパワーでやりあってたから、きっとあのパワーが個性なんだと思うぜ」

 

 切島がUSJでの見たままを語る。

 

「なあ、爆豪はどう思うよ?」

 

 粗暴で乱暴そうに見えて相手の分析が得意な爆豪に意見を求めるが、爆豪は目つきを尖らせて気に入らなそうな顔をしていた。

 

「知るかよ。あんなプリン野郎」

「知るかって…俺達、ヴラムに助けられただろ」

「ケッ…」

 

 ヴラムの名前が出る度、爆豪は面白くないと不機嫌なオーラを出していた。

 

「切島君の言う通り、あの脳無の攻撃を最も容易く掻い潜るスピードと圧倒するパワーが個性と言われれば納得はできる。でもなんと言うか…あれは個性というよりも純粋な身体能力に思えるんだ。そりゃ個性は身体能力の一種であって…ブツブツブツブツブツブツブツブツ…まさかヴラムには他に何か秘密があって…それが個性に起因するんじゃ…⁉︎でもそう考えると腑に落ちない。ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…」

 

「ブツクサうっせえぞクソデク!!!!ぶっ殺すぞ!!!!」

 

 本人が嫌がろうが、ヴラムの活躍はこの通り世間の注目を集める。

 そして、注目するのは世間、ヒーローだけではない。

 悪意ある者も邪な目をヴラムに向ける。

 

「お引き受け頂き感謝しますよ」

 

 バーカウンターに立つ雄英襲撃犯の1人、黒霧はある人物に頭を下げる。

 

「暴れられんならなんだっていい。殺せばいいんだろ?ヴラムを」

「はい。頼みますよ。血狂いマスキュラー」

 

 次なる戦いの火蓋は、悪意持つ者らによって切って落とされようとしていた。

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