プリンヒーロー・ヴラム 作:匿名希望
九州の青空の下、剛翼の翼が空を舞う。
「そろそろ連絡がくる頃かと思ってましたよ」
スマホを片手にその男は鉄塔の上へと降り立つ。
へらへらとしながら男は通話主へ告げた。
『相変わらずね、ホークス』
「そりゃまあ、仕事ですから」
『単刀直入に言うわ。ヴラムの件よ。後日、公安委員会本部へ』
それだけ言われると電話は一方的に切られた。
空を自由に舞える『剛翼』の個性と"早すぎる男"の二つ名を持ち、ウィングヒーローと名高いプロのヒーロー、ホークス。
彼はヒーロー公安委員会に属す。
そして後日、ホークスは本部へ。
会長室にて見知った公安のトップと話す場を設けられた。
話されるのは思いもせぬ事だった。
「それで、俺にいったい何をどうしろと言うんです?」
「ラキア・アマルガ、仮面ライダーヴラムを拘束、公安委員会本部へと連行しなさい。万が一それが不可能な場合、誰にも見つからぬよう始末しなさい」
命令にホークスの顔から笑みが消える。
「確かに彼は何かある。特異な存在だとは俺も睨んではいましたが、何故そこまで?貴女は何を知っているんです?」
「詮索はやめなさい。ホークス、これは絶対に遂行なさい」
「待ってください。それで「はい。わかりました」と納得できませんよ。詳しい説明を求めます」
「命令よ。社会の為に動きなさいホークス」
「それはいったいどういう意味で‥‥‥」
「手が必要な場合はこちらから増員も送るわ。その件での情報統制、あらゆるバックアップはこちらで行います。命令は以上、行きなさい」
ホークスに拒否権はなく、何か言う前に無理やりに一方的な命令が下された。
ホークスが退出した後‥‥‥
「ラキア・アマルガ。彼に知られるわけにはいかないのよ」
会長は1人呟いた。
それからコメル・アマルガの件、だけは。
絶対に。
彼が"記憶"を取り戻す前に、消さなければ。
「全てを忘れたまま死んでもらうわ。この世界のために」
そう言った公安委員会会長はガラス越しに外の景色を見つめ、ため息を吐く。
あの日、あの事件が起こらなければ、今頃は全ての事が上手く運び、歯車も上手く回って、全てが円滑に回っていたはずだったのに。
敵連合の事に頭を悩ませる事も無く、ステインの件も簡単に片付くはずだったのだ。
あの一件さえ起こらなければ、だ。
思い出すだけでも忌々しいあのトラブルを思い返していると、扉をノックする音が響いた。
「入りなさい」
「失礼します」
入ってきたのは白衣の研究員。
彼の手にはタブレットが握られている。
「例の実験体の件ですが」
「何かあったの?」
「捕まえた"オリジナル"からのデータにより完璧に近いものに仕上がっております」
「いつでも出せるの?」
「はい。数値的には問題ないでしょう。如何しますか?」
「‥‥いえ、今はまだホークスに任せましょう。クローン達はホークスが失敗した時の保険よ」
「了解しました」
そう、作は何重にも用意しなくては。
「それと‥‥」
「はい?」
「もう脱走の危険はないわね?」
「はい。捕獲No.01.No.02共々、個性による記憶の操作洗脳、万が一に備えての警戒警備は万全です。もう脱走の危険はありません。ご安心を」
二度もあってたまるか。
あんな事が。
「もしもの場合…次はない、と研究グループのメンバーにもよく言っておきなさい」
もう失敗は許されない。
だからこそ何度でも釘を刺す。
「班一同、肝に銘じております」
「あの失態を帳消しにしたいのならば、今のプロジェクトを何が何でも完成させない」
「承知の上です。それでは」
公安委員会会長のデスク。
そこに置かれたノートパソコンの画面にはとある計画のデータが表示されている。
その計画とは‥‥‥
『project. BITTER GAVV』
「これで社会は変わるわ。いい方向にね」
公安委員会本部地下。
関係者以外立ち入り禁止のそこでは‥‥‥‥