貞操逆転的なウマ娘世界に転生したったwwwwww 作:アザミマーン
ところで、日間一位に入っていたようで…まじ?
期待に応えられるような話が書けているか甚だ不安になりました。
プロフィール(一部)
名前:アネモネギフト
身長:152cm
体重:48kg (増減なし)
スリーサイズ:B83 W55 H79
年齢:25歳
得意なこと:暴走ウマ娘の鎮圧
苦手なこと:恋バナ
季節は春。出会いと別れの季節である。
先日までは引退や卒業といった、ウマ娘たちの次なる道への旅立ち(と、一部のウマ娘の連行)を見送り、少しだけ静かになっていたトレセン学園。
それが今やすっかり、新たに入学してきたウマ娘たちを歓待するムードに切り替わっていた。
クラブ活動に勧誘するウマ娘たちもいれば、併走に誘って実力を見極め、自身の所属するチームに勧誘するウマ娘もいる。また、それを楽しそうに見ているだけのウマ娘もいれば、斜に構えてつまらなそうにしているウマ娘もいる。挙げ句の果てにはそんなウマ娘をとっ捕まえて強引に祭りを開催し始め、警備員に連行されるウマ娘もいる。
そんな新入生も在校生も俄かに色めき立つ4月の前半のこと。
「トレーナーちゃあああああん♡!!!!」
「ストーップ! ストップだマヤノ!! 減速!! ゆっくり! そう! いいか、落ち着け! ヒトはな、その勢いでぶつかられたら死ぬ!!」
「そうかな…そうかも…?」
「よし、よし…そのまま、そのままゆっくりこっちに来なさい…! はいそこ! そこまで!! まずはこの距離感を覚えるんだ…!!」
「え〜!? 遠いよー!! これじゃ手も届かないよ!!」
「届いたら困るんだよ!!!!!」
「でもマヤこれじゃやる気出ないよ〜」
「練習終わったら駅前の人気店のアイス買ってやるから!」
「ほんと?! やったー! トレーナーちゃん大好きー! ♡」
「抱き着こうとするなあああああ!!!」
「久しぶりに1日トレーニングに使えるな。ああでも、生徒会長としての仕事で疲れているなら少し軽めのメニューにすることもできるが…」
「いや、大丈夫だよ。増え続ける書類仕事に私としてもうんざりしていたところでね。たまにはこうして集中的にトレーニングしたいと思っていたんだ」
「そうか? まぁ確かに見た感じは大丈夫そうだが…無理そうだと思ったら止めるからね。疲れで集中できないなら、練習しても意味がない。怪我の危険もある」
「ああ、そのときはトレーナー君の判断で止めてくれたまえ。集中できないようでは…練習中に、集中…ふふ…」
「ルドルフ?」
「何でもないよ。始めようか」
「トレーナーさん、おはようございます。いい練習日和ですね」
「ああ、おはようダイヤ。今日のメニューなんだけど、この前試しに見せてもらった君の走り、まだスピードが足りないと思う。全体的に筋力を高めつつも、スピードを伸ばすようなトレーニングにしようと思うが、どうかな?」
「ええ、私もそれがいいと思います」
「じゃあ早速ウォームアップから…」
「あ、トレーナーさん。もし良ければ、今日の練習が終わったら少しお時間頂けませんか? その、トレーナーさんのことを両親に紹介したくて…♡」
「? ああ、構わないが…」
「良かったです! それでは、練習が終わったら共に向かいましょう…♡」
土日、授業のない日はウマ娘たちが丸一日トレーニングできるため、トレセン学園の運動場は大賑わいだ。特に入学式が終わったばかりのこの時期は、新入生ウマ娘とトレーナーが出会う時期でもある。
選抜レースはまだだが、別にその前にスカウトしてはいけないなんてルールはなく、気が早いトレーナーは入学前から目をつけていたウマ娘に声を掛けることもある。また、ウマ娘のほうからトレーナーに声をかけ、走りを見せて契約が成立するというケースもある。
そんなわけで今日の運動場は、新しくスカウトしたウマ娘に距離感を教えるトレーナー、既に確かな信頼関係を築けているベテラン、新人であるが故に初っ端から距離感を間違えてしまうトレーナーなど様々だ。
さて、あの子は要警戒だね。トレーナーさんの方にも一応あとで声をかけるとして、ウマ娘の子の情報を記録。チェックを入れてデータベースに送信、と。
今日のお仕事は校内の見回りと、ウマ娘の警戒リストの作成です。2ヶ月に1回くらいはこうしてトレ警隊員が練習場を見回り、かかっている、もしくは怪しそうなウマ娘を見つけてリストに記録している。
この仕事、普段はヒトのトレ警隊員がやってくれている。まぁトレ警隊員は私以外は全員ヒトだから当たり前と言えば当たり前なんだけど、私には暴走したウマ娘の確保という最重要任務があるので、こういう戦闘以外の雑務は引き受けてくれることもある。ありがたいね。その調子でどんどん私の仕事を減らしていきたい。
ただ、今回は年度はじめということもあり、リスト作成に必要な人数が多いので私も駆り出されている。あとは顔見せという意味もある。新人トレーナーさんたちは私たちトレ警のことをよく知らないだろうし。最初にみんなで顔見せだけはしているんだけどね。
一応、トレーナーさんからすぐ分かるように、トレ警隊員は警備員の制服に加えて体のどこかに野菜を模したアクセサリーを付けている。発信機付き。私のはネギ。
勿論この情報は普通のウマ娘には伝えられておらず、トレーナーのみが知っている。これによりトレーナーさんはトレ警の顔を覚えることができ、いざというときに迷わず助けを求めることができる。
ただ、新人トレーナーさんが来ていきなりそんな小さいことを覚えていられるかと言うと…うん。トレーナーさんたちの盾だよ、命綱だよーと説明はしているのだが…ウマ娘の私が説明してるのが説得力を無くしてるんだろうか。でも私が隊長だしな…
そもそもトレ警という部隊が設立されたのが3年前。まだトレーナー育成コースで使われる教科書にも載っていないだろうし、新人トレーナーさんたちが私たちを知らないのも当たり前ではあるんだよね。
このトレセン学園ではようやく浸透してきたけど、出来たばかりの頃はトレーナーさんたち皆から胡乱な目で見られたものだよ…そういう目で見られてたのは主に私だけだけど。まぁ確かに、ウマ娘の本能が強く、積極的にトレーナーを求めてくる(意味深)世界で、そのウマ娘が自分たちを守るって言われてもそりゃ疑わしい目になるよね。
そんな中、連れ去られるトレーナーさんを取り戻し、暴れるウマ娘を押さえ込み、緊急時には寝てても起こされ…そうやって少しずつ信頼関係を築いてきた。
「ネギさん、お疲れ様です! いつもありがとうございます!」
「はい、お疲れ様ですぅ。練習頑張ってくださいねぇ」
「は、はい!」
「ネギさん、お疲れ様です。良ければ併走していきませんか?」
「ごめんなさい、今はお仕事中なので〜」
「そうですか…」
「ネギさん! 今度また飲みいきましょう!」
「それは喜んで〜!」
今ではこんな感じで、声をかけてくれるトレーナーさんが結構いる。もう私もここで働いて今年で5年目だし、顔見知りのトレーナーさんも増えてきた。別に見返りを求めて助けているわけじゃないけど、名前を覚えてくれたり、感謝の言葉を貰ったりするとやっぱり嬉しいよね。こうしてみると、地道に頑張ってきた甲斐はあったと思う。こんな成り損ないのウマ娘だけど、役目はあるんだって。
「…トレーナーさん?」
「い、いや、何でもないよ?」
でも担当ウマ娘の前で警備員といえど他のウマ娘に声をかけたら、流石に引きずられていっても擁護できないかなぁ。よそ見してないで、ちゃんと愛バのことを見てあげてほしい。まぁもしそのまま暴走しそうだったら助けてあげるから…
「ここはこれでよし、と。じゃあ次は…」
「ネギちゃん、おっはよー!」
「ん? あら、おはようございますぅ、トウカイテイオーさん」
ここの運動場は大体見終えたので次の場所へ移動しようと思ったのだが、後ろから肩を叩かれる。振り向いた先には、長い髪を後ろで一つ結びにし、美しい碧眼を細めて笑顔を作る中等部のウマ娘、トウカイテイオーちゃんが立っていた。うん、ショートパンツから伸びる足が眩しいね。
いつも自信満々の元気っ子で、その才能はあのシンボリルドルフ会長が認めるほどのものらしい。入学したのは去年なんだけど、体が本格化してなくてまだトレーナーは付いてなかった記憶がある。
ウマ娘は本格化が始まらないとレースに出られないので、その兆候が見られるまではトレーナーさんが付かないのだ。
「どうかしましたか?」
「それがさー、聞いてよ! この天才のボクにもついにトレーナーがついたのさ!」
「お〜、ということは、ついに本格化が始まったんですね〜。それはおめでとうございますぅ。ずっとトレーナーさんが欲しいって言われてましたもんね」
「うん、そうなんだけどさ…」
なるほど、それを自慢したくて声をかけてきたんだな? 微笑ましい限りです。でもお願いだから暴走しないでね。それすると色々と微笑ましくなくなっちゃうからね。
しかし、テイオーちゃんは私の祝福の言葉を聞いても、尻尾が垂れてどこか不安げな様子だ。あれ? 去年の入学の時から『ボクも会長のトレーナーみたいなトレーナーが欲しい』ってずっと言ってたのに。
「そういえば、そのトレーナーさんはどこに?」
「…実はさ、そのことについて相談があるんだ」
「ま、まさかもうトレーナーさんを襲って…?!」
「違うよ! いくら待ちくたびれたって言っても出会ったばかりのトレーナーにそんなことしないもん! ボクとの相性はその、悪くなさそうだけど!!」
「良かったですぅ…では何のご相談が?」
本当に良かった、過去最速の被害者が出てるかと思った…。件のトレーナーさんの姿が見えないから既にヤられてしまったのかと…勘違いしてごめんね。
トレーナーさんからの通報や防犯ブザー、最後の手段として指先一つで押せるSOSがあるとはいえ、ウマ娘側が不意打ちでトレーナーさん側に襲い掛かったらそれらを使う間もなく気絶させられてしまう可能性もある。
さてテイオーちゃんの相談である。(まだ)事件は起きていなくて、それなのに警備員の私に相談事? 何だろう、他のウマ娘に取られないようにそのトレーナーさん周辺の警備を強くして欲しいとかかな。流石に1人を贔屓することは出来ないんだけれど…
「う、その…あのさ、笑わないで聞いてね? 絶対だよ?!」
「ええ、もちろん」
「…距離感が」
「え?」
「トレーナーとの距離感が! 分からないの!! ボク、トレーナー付くの初めてだし!」
「なるほどぉ」
まぁウマ娘はよっぽどのことがない限りは最初のトレーナーとずっと走り続けるので、トレーナーがつくのが初めてなのは皆そうだと思うが…距離感ねぇ。
なんか思春期の男子中学生が女子との距離感掴めないみたいな。でもウマ娘の場合はトレーナーから警戒されてるし余計か。でも、そんなこと考えずに突撃するウマ娘も多いし、テイオーちゃんは十分に理性的だ。なんとか力になってあげたい。
とはいえ私も一般的なウマ娘とはかけ離れてるしなぁ。有用なアドバイスができるとは思えないんだけど…そもそも何で私なんだろうか。お付き合いした経験も無いし、トレーナーさんとの接点はあるけどそれはボディーガードと護衛対象みたいな感じだよ。
「というか、何故私に?」
「会長にはこんなこと相談できないし、同じウマ娘で大人の人ってネギちゃんしか思いつかなかったから…」
「ははぁ、なるほどぉ」
確かに憧れの会長さんに「トレーナーへのアタックの仕方を教えてください!」とは言えないわな。私の記憶ではその会長さんも数年前はめっちゃもどかしそうな顔しながらトレーナーさんとの距離詰めたがってた記憶あるけど。
「あとネギちゃんモテるし。トレーナーの捕まえ方もよく知ってるかなって」
「ふぇ?!」
誤解だよ?!
「ご、誤解ですよぅ! そんな事実は一切ありません!」
顔を真っ赤にしてワタワタとトウカイテイオーの言葉を否定するネギだが、トウカイテイオーは知っている。先日も3人のトレーナーと仲良く飲みに行ったということを。ネギは仕事で途中で帰ってしまったが、二次会までしっかり行ったことを。
これはもう複数のトレーナーを手玉に取る魔性のウマ娘と言っても過言ではないだろう。
(ネギちゃんはきっと、このトレセン学園、いや日本で一番トレーナーと親しいウマ娘だ。トレーナーの心の掴み方を知るにはこの人に聞くのが一番だよ! ボク天才だから分かっちゃうんだよね)
微妙にトウカイテイオーの勘違いでもないのがタチが悪い。ネギ本人はそんなつもりはないものの、実際彼女に誑かされてしまっているトレーナーは数多くいるのだ。
そんな彼女に追込のコツ(意味深)を聞くというトウカイテイオーの一手は、傍から見れば決して間違ったものでもない。
トウカイテイオーがトレーナーと出会ったのは、ほんの数日前のことだ。
現状には関係のないことなので出逢いの詳細については割愛するが、トウカイテイオーはこの数日の間にすっかりトレーナーを気に入ってしまっていた。
トウカイテイオーのトレーナーは新人なのだがかなり優秀のようで、既にその力量が垣間見えている。トゥインクルシリーズで無敗のクラシック三冠を目指しているトウカイテイオーにとっては頼もしいことこの上ない。見た目は少し三枚目寄りだが、トウカイテイオーは少し愛嬌のあるその雰囲気も好きだった。
でも、気に入っている、殆ど好きになっているからこそ、最初で躓きたくなかった。これから一緒にトゥインクルシリーズを走っていくからこそ、
だがトレーナー初心者のトウカイテイオーにはその失敗しない距離感というものが分からなかった。トウカイテイオーのトレーナーが少し無防備なのもその難易度に拍車をかけていた。
これはOKという合図なのだろうか…とこの短い期間に何度思ったことか。
(マヤノに聞いても『ぎゅーんとぶつかりに行けばいいんだよ! それで、怒られちゃったら謝れば!』とか言うだけだし…怒らせてからじゃ遅いんだよ…。あと、ぶつかりに行ってそのまま押し倒さない自信がない)
同室のウマ娘の発言は参考にならないと判断した。だいたいあの直感型ウマ娘は、ませている発言をするくせにそう言う方面の情緒があまり育っていないのだ。
「だから教えて欲しいんだ。そのテクニックの極意を!」
「う、うーん…何かもう色々と勘違いされている気がしますが…とりあえず言えるのは、それは別にOKサインではないということですかねぇ」
「ええ?!」
トウカイテイオー、ここ数ヶ月で最大の驚きだった。
愕然とするトウカイテイオーに若干哀れみの表情を浮かべたネギは、ショックから立ち直っていないトウカイテイオーの肩を揺らして正気に戻させる。
「まぁ、私に教えられることなら教えますよぉ」
「本当?!」
「はい。とはいえ、精神的な距離感に関しては過ごしていくうちに少しずつ測るしかないと思いますよ。日々の積み重ねがモノをいいますから、それは」
「そっか…」
喜んだのも束の間、ネギは一番知りたかった心の距離については教えてくれないという。しかし聞いてみれば納得しかない。そう簡単にトレーナーを落とせるような魔法のテクニックなど存在しないというだけだ。しかし、それでは何について教えてくれるというのか。
「え、じゃあ何を教えてくれるの?」
「それはもちろん、物理的な距離感ですよ。まずは、そうですねぇ…」
ネギはおもむろにトウカイテイオーに近づくと、大して身長の変わらないトウカイテイオーの脇に両手を差し、ひょいと持ち上げた。
「ちょ、ええ?!」
「はい、ここ。ちょっと待っててくださいね」
ネギは地面に引かれた白線にトウカイテイオーを下ろすと、自身は一歩、二歩と下がり…五歩ほど下がったところで止まった。
「この距離を覚えてください」
「何の距離? 大体3m半くらい?」
「はい。これが、ウマ娘とヒトが
「遠っ?!」
あまりの遠さに驚く。これではもう隣というか、どちらかと言うと『たまたま近くにいただけ』の方が表現として正しいような気がする。そんなトウカイテイオーを見てネギは困ったように笑う。
「まぁこれはあくまで初対面の話ですけどねぇ。もう少し気心が知れれば、あと二歩くらいは近づいていいと思います」
「それでも2mは離れなきゃいけないんだ…」
「ええ。どう言い繕っても、我々ウマ娘とヒトは違う生き物です。私たちが本気を出して暴れれば、ヒトは簡単に壊れてしまうんですねぇ。だからこそ、こちらから物理的に距離をとってヒトを安心させなければならないんですぅ」
「ボクは絶対そんなことしないよ!」
「トウカイテイオーさん」
淡々と語るネギに、トウカイテイオーはつい反論してしまう。まだ中等部のウマ娘だが、これまでの人生で力加減を間違えたことなどない。そんな自分が、トレーナー相手に暴走するなんて考えられなかった。そんな思いの滲む発言に対し、ネギはゆっくりと首を振る。
「ウマ娘の本能を、衝動を甘く見てはいけません。私はこれまで、普段自制心の高かった優秀なウマ娘たちが暴走してしまう姿を何度も見てきました。絶対なんてないんです」
「そんな…」
「だからこそ、この距離を覚えるんです。3.5mも開いていれば、ウマ娘側の感情が暴走することは少ないです。親しくなっても2m距離が開いていれば、万が一暴走したとしてもトレーナーさんがそれに反応できます。目の前では躱せない行動も、2m離れていれば防御体勢を取ることくらいはできます」
それを聞いてトウカイテイオーは落ち込んでしまう。不思議と納得できてしまうのだ。ウマ娘たちが我慢できずにトレーナーを襲ってしまうということも、トレーナーの身を守るために距離を空けてるということも。ネギの話は経験に裏打ちされた説得力があり、そしてトウカイテイオーの中のウマソウルもそれを肯定している。
トウカイテイオーはがっくりと俯く。その話を聞いて、自身の自制心を信用出来なくなったのだ。
「はぁ…それを聞いて、正直自分がトレーナーに感極まって抱きつかずにいられるかって言われたら、自信ないよ…」
「そう言えるだけトウカイテイオーさんは理性的だと思いますけどねぇ」
ため息が出る。結局、距離を空けても自分が暴走してしまったらトレーナーに怪我をさせてしまうかもしれない。そんなことがあれば、トレーナーは自分を嫌いになってしまうかもしれない。それだけは嫌だった。
「嫌われたくないなぁ」
「あら、そんなことを心配してたんですねぇ?」
「そりゃするでしょ…これから一緒に走り続ける相棒なんだよ? 何が悪いのさ」
自身の想いを軽く笑われたような気がして、トウカイテイオーはムッとする。しかし、そんなトゲを感じるトウカイテイオーの返事にも、ネギは柔らかく笑うだけだった。そしてネギは再び、経験に基づく自論を語る。
「いえいえ、悪くなんてないですよぉ。ただそれに関しては、無用の心配ですねぇ」
「どういうこと?」
「トレーナーさんたちは確かにウマ娘のことを警戒しますし、時には恐れます。でも…」
「どんなことがあっても、ウマ娘を嫌いにはならないんですよ」
トウカイテイオーは目を見開く。ネギはトウカイテイオーから視線を外し、快晴の空を眺める。
「何度も見てきました。ウマ娘がぶつかってきて怪我をしたり、抱きつかれて骨を折られたり、中には一生残る傷を負ってしまうトレーナーさんも」
「……」
「でも誰一人、ウマ娘が嫌いになる人はいませんでした。皆さん言うんですよ。一時的に怒ることはある、でもこんなことでウマ娘を嫌いになるのなら、最初からトレーナーを目指していないって」
それを聞いたトウカイテイオーは、自身のトレーナーのことを想う。この数日、ネギの言うような距離を空けたことはなかった。今思えば、少し怖がっているような反応はあった。でも、決して嫌悪感を顔に出したことはなかったなと。
「いいんですよ、多少距離感を間違えても。間違えてしまったら、あとで謝ればいいんです。大丈夫、そんなことでウマ娘を嫌いになるトレーナーさんはいませんから。傷つけて、時には傷つけられて…そうして覚えていくんです」
「ネギちゃん…」
「ふふ、なんか説教みたいになってしまいましたねぇ。つまり、とりあえずぶつかってみればいいんです。距離感なんて、そうしているうちに分かってきますよぉ」
「そっか」
ネギの微笑みに勇気をもらったような気がする。自分は怖がりすぎていたのかもしれない。
(ネギちゃんに相談に来てよかったな)
トウカイテイオーは本心からそう思った。最初望んだような回答は得られなかったが、それでもネギは大人のウマ娘で、トウカイテイオーの知らない答えをたくさん持っていた。
「ありがとう、ネギちゃん! 何か調子出てきた!」
「どういたしまして〜」
「よーし、じゃあボク、トレーナーに会いに行ってくるね!」
「いってらっしゃい〜、でも暴走はしないでくださいね〜」
「善処するのだー!!」
トウカイテイオーはいつも通りの軽やかなステップを踏みながら、自身のトレーナーを待たせているカフェへと走っていった。
後日。
「そういえば、ネギちゃんはどのくらい距離空けてるの?」
「うーん、私は空けようと努力してるのですが…トレーナーの皆さんの方から近づいてくるんですよねぇ」
「ええ…」
ネギはやっぱり魔性のウマ娘。
トウカイテイオーはそう認識せざるを得ないのだった。
プロフィール(一部・裏)
出場レース履歴:N/A
最終学歴:中央トレセン学園高等部中退