トータスに飛ばされて数週間。オルクス大迷宮と言う場所に明日行くことになった。
オルクス大迷宮。それは神代の時代において神への反逆を企て、世界を滅ぼそうとした者たちが作り上げた『七大迷宮』の一つとされる。ハイリヒ王国の南西に存在、100階層からなると言われているこの迷宮は下に進むほど魔物が強くなるという特性から実力を測りやすい。さらに良質な魔石が手に入る事から冒険者や傭兵、新兵の訓練場として人気が高い。なのでオルクス大迷宮の近くの町、ホルアドの酒場はいつも傭兵や冒険者などで賑わっている。
俺たちはメルド団長率いる騎士団員複数名と共に、オルクス大迷宮の近くの宿場町ホルアドに到着し、王国直営の宿屋へ泊まる。そして各自指定された部屋へ入って行った。
夜、俺はハジメに用事があるからとハジメの部屋に向かった。そしたらネグリジェ姿の香織がいた。何つー格好して出歩いてるだよ。
芽森「おい」
香織「ヒャ⁉︎ってなんだ、芽森かぁ」
いやそんな驚く?まあ昔から香織は怖いの苦手だったからな。
芽森「ハジメにようか?」
香織「う、うん」
芽森「マジかぁ、俺もハジメにようがあるんだけど。いっしょに行くか?」
香織「え、いいの?じゃあついていくね」
そう言い、ハジメの部屋まで一緒に行くことにした。一人で心細かったんだろうな。
芽森「あとこれ着とけ。そんな格好じゃ寒いだろ」
そう言って香織にカーディガンを渡す。さすがにその格好でハジメの元に行かせるのは良くない。
香織「え、大丈夫だよ。私は寒くないし」
芽森「いやハジメが困惑するから着てくれ」
香織「え?なんで?」
芽森「なんでも。とにかく着ろ」
香織は困惑しながらカーディガンを受け取りネグリジェの上から羽織る。いやこっちが困惑してんだよ。なぜネグリジェ姿でハジメに会いに行くことを疑問に思わない?
そんなこんなでハジメの部屋に着いた。
芽森「んじゃ、先にそっちで話しといてくれ」
香織「芽森もいっしょじゃないの?」
芽森「ようがあるのはハジメだろ?だったら俺はいない方がいいだろ。ぶっちゃけ後でハジメから聞けばいいし。」
香織「そう……」
さて、ちょっくらトイレでも行きますかね。
芽森「んで、そこにいる檜山。あんたもハジメにようかい?」
物陰に隠れていた檜山に対して声をかける。
檜山「⁉︎き、気づいていたのか……」
芽森「まぁな。多分だけど香織のことだろ」
そこから檜山と少し話をした。
檜山は香織の事が好きで、しかしはたから見たらイケメンの天之河がいるので諦めたが、香織がハジメにわざわざ関わっているのを見て、だったらなぜ俺ではないのだと苦悩していたという。
芽森「なるほどな。それでわざわざハジメに突っかかっていたと」
檜山「あぁ、そうだ」
なんとも自分勝手な理由だ。普通ならそこで檜山のことを切り捨てるだろうな。
芽森「まあ気持ちはわかるわ。自分より頭悪い奴が家柄やらお気に入りやらどうのこうので調子乗ってたら殴りたくなる。それと似たようなもんだろ」
檜山「あ、ああ。そ、そういうもんなのか……?」
芽森「でもまあハジメはああいう状況になりたくてなっているわけじゃないからな。ちなみになんで香織がハジメのこと好きなの知ってる?」
檜山「いや、知らないけど……」
芽森「おばあちゃんが不良に絡まれていて、それをハジメが土下座して助けたからだって」
檜山「???は?」
芽森「わかる。なんでそんなもん見てハジメのこと好きになるのかわからんよな。俺も同じだ。一応聞くけど、檜山にハジメと同じことできる?」
少しの時間、檜山は考え、諦めた顔で呟く。
檜山「……いや、無理だな」
芽森「でしょうね。俺もしないし」
そう言って、檜山との会話を純粋に楽しむ。
檜山「なあ、どうしてお前は俺によくするんだ?俺はお前の親友であるはずのハジメにひどいことをした。普通だったらこんな俺と話さないだろ?」
と、檜山自らの疑問を口に出す。そっか、そういや前に檜山のことぶっ飛ばしてたっけ。
芽森「人という存在に、完璧な奴なんていないんだよ。必ず善の部分と悪の部分がある。お前の場合、悪い部分が表に出てるだけで。だから俺はあまり決めつけはしない。たとえその人にどんなレッテルが貼られてもな。あと、深く接してみてから気づくもんもあんだよ。俺は確信している。お前はそんな悪い奴じゃない。良くも悪くも人間らしいだけで。」
少しの間、沈黙があたりを包む。
檜山「……お前って、すげぇな。俺はハジメのことはまだ好きにはなれないけど、あんたのことは嫌いじゃなくなった。今までごめん。相談に乗ってくれてありがとな」
そう言って檜山は頭を下げる。
芽森「おう。相談事があったらまた言いな」
そう言ってこの場から立ち去る。そしてハジメの部屋に向かう途中、誰にも聞こえない声でつぶやいた。
芽森「俺はそんなすごいヤツじゃあない」
ハジメの部屋に着いたとき、ちょうど入れ替わりのタイミングで香織が出て来た。
芽森「香織、話はできたかい?」
香織「うん。できた」
芽森「ならよかった」
そう言い俺はハジメの部屋に入った。
南雲「香織の次は芽森君か」
芽森「急に押し掛けて来て悪いな」
南雲「いや、大丈夫。で、なんのよう?」
芽森「そうそう、渡したい物があるんだよ」
そう言って俺はあるメモリをハジメに渡す。
南雲「これは、もしかしてガイアメモリ?これをなんで僕に?」
芽森「明日は迷宮に潜る。その時のもしものための切り札だ。ほんとに重要な盤面だけで使えよ」
南雲「わかったよ」
こうして長い長い夜が終わった。
そうして次の日。今俺たちはオルクス大迷宮の中にいる。
途中にムキムキネズミと褐色ゴリラが沸いて出て来たが、エクスプロージョンメモリで爆破した。驚くほどの雑魚でびっくりした。
さて散策散策〜♩
ん?なんか壁が光ってんな。なんだろ。ツールメモリでツルハシ作ってと。えい
ガンッ
壁を砕くと青白く光る鉱石が出て来た。なんだこれ。
芽森「メルドさーん、これなんですか?」
メルド「お、それはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
へぇ、確かにこれは綺麗だな。持ち帰ってツールメモリで加工するか。
香織「素敵……」
香織が、グランツ鉱石を見て一言呟いた。
檜山「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言った檜山は崩れかけている壁をどんどん壊していく。
ああ、うん。香織が呟いたあたりから察してたけどやっぱこうなるのか。
メルド「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」
そんな中檜山はメルドさんのいうことを聞かずに壁を掘りまくっていて
、元凶の香織は多分昨日のハジメのことを思い出して悶えてる。それを雫が面倒を見てくれている。改めて考えるとすげぇ状況だなこれ。
芽森「おい檜山ー、その辺にしとけー」
檜山「後少し、これだけ取らせてくれ!」
その宝石に触った瞬間、部屋が光に包まれた。だぁから言わんかっちゃない。今のうちになんのメモリ使うか考えたとこ。
転移した場所は巨大な橋の中間あたりだった。
ざっと長さ100mくらい?天井まで20m前後ってところか。横幅は10m。橋の下は、まあ落ちたらお陀仏なのは確かか。
メルド「お前達、すぐ立ち上がってあの階段の場所まで行け。急げ!」
メルドさんの指示に即座に反応できず、おたおたしながらも言われた指示に従う。でもこの手の仕掛けって絶対転移以外にも罠あるよね。そう考えているとやはりというべきか、赤黒い魔方陣が橋の両端に出現し、そこから大量の魔物と、一匹の魔物が出てくる。大量に出てきた方はトラウムソルジャーという剣を持ったスケルトン、一匹で出てきた方は体長10m級の四足で頭部に兜のようなもんを取り付けた魔物だった。一番近い生物でトリケラトプスかな?瞳は赤黒い光を放って、鋭い爪と牙を撃ち鳴らしながら、頭部の兜に生えている角からは炎が出てるけど。
メルド「まさか……ベヒモス……なのか……」
なるほど。メルドさんが怖気付くほど強いのか。こりゃ腕がなるな。
メルド「アラン!生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ!カイル、イヴァン、ベイル!全力で障壁を張れ!ヤツを食い止めるぞ!光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」
そう言い、メルドさんはベヒモスの前に立つ。
天之河「待って下さい、メルドさん!俺達もやります!あの恐竜みたいな奴が一番ヤバイでしょう!俺達も……」
芽森「いや勇者が死ぬのはダメだろ」
状況を理解していない天之河にダメ出しする。
天之河「何言ってんだよ!ここで俺がやんないと……」
芽森「お前は勇者なんだろ?この後お前は戦争を終わらせないといけない人材だ。そんな中こんなところで死んだらどうなる?誰がこの戦争を終わらせるんだよ。戦争終わらしてクラスメイト全員でここから帰るんだろ?」
天之河「でも、誰があのベヒモスを倒すんだよ……」
芽森「俺が片付けてやる。だからお前は後ろのクラスメイトの指揮をとってくれ。安心しろ。俺はそう簡単に死なない」
天之河「……ああ、わかった。絶対死ぬなよ」
芽森「さっき言ったばっかだろうが」
無駄口を叩きつつ、ベヒモスの前に立つ、ハジメといっしょに。
天之河「南雲、何してるんだ⁉︎早く戻って!」
南雲「大丈夫、任せて」
そのセリフからは、自信が見て取れるような声がしていた。
天之河は不安を覚えながらクラスメイトのためにトラウムソルジャーを倒しにいった。
芽森「メルドさーん、ここは俺らに任せてくださーい!」
メルド「お前ら、危ないから下がってろ!」
ベヒモスの攻撃を剣で受けながら、声をあげる。
メルド「コイツは65階層の魔物だ!今まで戦ってきた奴らとは格が違う!」
芽森「安心してください。対抗策はあります」
自信満々にそう言い放つ。
メルド「……必ず勝てるんだな?」
芽森「そのための対抗策ですから」
メルド「わかった。今回だけはお前に任せる。アラン、カイル、イヴァン、ベイル、後ろの援護にいくぞ!」
「「「「はい!」」」」
芽森「さてと。ハジメ、拘束お願いできるか?」
南雲「うん、もちろん」
そう言った途端に、ベヒモスがハジメ目掛けて突っ込んで来た。そこを待ってましたとばかりに、
南雲「錬成‼︎」
と大声で言い、ベヒモスの足元にある岩の破片を使ってベヒモスの足を拘束する。ベヒモスは盛大にすっころび、すっころんだところまた錬成で今度は体ごと拘束する。ベヒモスは必死になって岩を破壊するが、破壊したらすぐ錬成し、また形が戻ってしまう。
そんな中芽森はどこから出したかわからない刀を居合切りの構えのままで目を瞑っていた。さながら、それは刹那の見斬りのように。
南雲「芽森君、そろそろ魔力が切れそう!」
そう南雲が叫んだ後、芽森は刀を抜いた。目に見えない速度で。
EDGE
その起動音と同時に、ベヒモスは動かなくなった。芽森がべかを縦に真っ二つにぶった斬ったのだ。やっぱメモリの能力って偉大だな。
芽森「さ、みんなと合流しよう」
南雲「うん」
その時、戦闘により橋に入った亀裂がものすごい勢いで大きくなる。
芽森(ま、まずい。このままじゃ……!)
そして遂に橋が崩壊し始めた。
芽森「ハジメ、走るぞ!」
南雲「う、うん」
急いで走るが、亀裂の方が速い。その時に悟ってしまった。このままだとハジメは亀裂に追いつかれると。
芽森「……くそ。ごめんハジメ。後で絶対に助けに行く、絶対だ。だからそれまで死なないでくれ。こんなことお前に言うのはどうかと思うが……」
南雲「……わかった。何がなんでも生き残って見せる。だから絶対に助けに来てね」
芽森「ああ、約束する」
俺はそう言うとメモリの能力を発動させた。
ACCEL
起動音と共に加速する。今世の最大の親友を見捨てて。
芽森「必ずに迎えに行く」
ガイアメモリの補足
エッジメモリ
切っ先の記憶
あらゆるものを切断させることができる。見えないものを斬ることも可能である。
アクセルメモリ
加速の記憶
あらゆるものを加速させることができる。例えば自らの足の速さを加速させたり、相手の武器にかけて経年劣化させることもできる。