ありふれてはいけないメモリで世界最強   作:黒鉄 玲

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50階層、そして吸血姫

あれからだいたい10日間くらい?

奈落だから時間感覚わからんけど多分それくらいは経っているはずだ。そして思った以上に魔物たちが弱かった。ハジメがどうかはともかく俺は結構余裕があった。途中にトレントもどきがおり、そいつの落とす果実がめちゃくちゃ美味くて少しの間ハジメといっしょに狩りに勤しんでトレントもどきたちを全滅させたが、まああんま関係ないだろう。

 

てな訳で、紆余曲折ありながらとりあえず50階層に辿り着いた。現在はハジメが50階層に作った拠点で一旦休んだいる。ちなみにハジメは今銃技や蹴り技、鍛錬の練習をしている。俺は何してるかって?ツールメモリで風呂作って湯船に浸かってましたが何か?

 

まあそれは置いといてこの50階層は普通の階層と違く、脇道の突き当たりにある開けた場所には高さ3mの装飾された荘厳な両開きの扉があり、その扉の脇には一対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していた。明らかに他の階層と違うので万全の準備してからそこに向かうことにし各々体を休めてたり鍛錬したりして準備している。

 

さて、体もあったまって来たことですし、風呂出て着替えてハジメのところに向かいますかね。

芽森「ハジメー、そろそろ行きたいけど準備できてる?」

ハジメ「ああ、準備万端だ」

それじゃ、向かいますかね。

 

 

芽森「ハジメ、この石像絶対開けようとしたら動くよな」

ハジメ「まあ多分な」

芽森「今のうちにこの像壊さん?」

ハジメ「いや、コイツの肉食って固有能力をゲットしておきたい。一体だけなら倒していいぞ」

芽森「……提案したの俺だけどお前も結構打算的になったな」

そう言いつつ、一つ目巨人の像をエクスプロージョンして破壊しておく。それはもう木っ端微塵に。

芽森「んじゃハジメ、錬成よろしく」

ハジメ「はいはい」

ハジメが右手を扉に触れさせ錬成を開始する。しかしその途端、

 

バチィィ!

 

ハジメ「うわっ⁉︎」

扉から赤い放電が走りハジメの手を弾き飛ばした。ハジメの手からは煙が噴き上がっている。

芽森「大丈夫か?ほれ"天恵"」

俺はハジメを回復させる。

ハジメ「サンキュー、ありがとな」

 

オォォオオオオオオ‼︎

 

突然、野太い声が聞こえる。どう考えてもあの一つ目巨人だろうな。あ、思い出した。サイクロプスだ。俺昔から名前覚えられないだよな。まあいい。あとはめんどくさいからハジメに丸投げしよう。

芽森「ハジメ頑張れー」

ハジメ「⁉︎いやお前も戦いやがれ!」

 

ドパンッ!

 

そんなこと言っておきながらちゃんと一つ目巨人の足を銃で撃ってるハジメ。

ハジメ「悪いが、さっさと死んでくれ」

膝をついたサイクロプスの額に容赦なく銃口を突き付け、引き金を引く。しかし、サイクロプスは死ななかった。サイクロプスの体が発光したと思うと、その直後、直撃した銃弾を皮膚が弾いたのだ。おそらくは固有魔法。さてと、ハジメはどう対応するのか。

ハジメ「チッ、めんどくせえ」

そう言うと、ハジメは初めて俺があげたメモリを使った。

 

ETERNAL

 

お、やっと使ったか。さて、ちゃんと使いこなせるのかな。

ハジメはメモリを使った後、もう一回硬化中のサイクロプスに銃を向け、1発撃つ。すると、撃った弾丸は硬化中のサイクロプスを貫いた。

ハジメ「……肉は後で回収するか。どうした芽森、そんなに驚いた顔をして」

芽森「いやな、そのメモリの発動条件が俺の知ってるものじゃなくてな。」

ハジメ「え?」

そう、俺は今驚いていた。元々エターナルメモリの効果は、相手の特殊能力の無効化。この世界でいう固有魔法の無効化だ。さっきのもエターナルメモリの能力でサイクロプスの硬化を解いたのだろう。だが、発動条件が違った。本当の発動条件は対象に手のひらで触る(・・・・・・・・・・)のはずだ。しかし、今のはどう見ても弾丸が対象に当たる(・・・・・・・・・)ことで発動していた。なんで?ハジメの戦い方に合うように能力が変化した?だとしたら何が原因で変化した?

しかし今考えてもわからない。とりあえず扉のくぼみに、さっきサイクロプスから取り出した魔石ををはめてみる。すると扉から赤黒い魔力光が迸り、数秒すると光は収まった。

恐る恐る扉に触れてみる。扉は音も立てず、静かに開く。

 

芽森「ハジメ、突入の準備はいいか?」

ハジメ「ああ、まかせろ」

俺らは部屋の中へ消えていった。

 

 

部屋の中は真っ暗だった。しかし固有魔法の夜目の効果で徐々に視界が明るくなる。そして完全に視界が明るくなり、部屋の全容がやはりと言うべきか、いつもの大迷宮と異なることを理解した。中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。こういうデザイン見るとあのクソジジイを思い出すからやだな。ぶっ壊そうかな。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。その立方体をハジメは注視していた。俺も確認してみると立方体から何かが生えていた。遠目だが見えにくいが、あれは生物だな。少なくとも彫刻の類いではない。するとその何かは声をかけてきた。

 

???「……だれ?」

 

掠れた弱々しい少女の声だった。ハジメはビクリッと部屋の中央を凝視する。俺もハジメに釣られて同じように凝視する。光が差し込み、立方体から生えている何かの正体が判明する。

 

ハジメ「人、なのか?」

 

それは、少女だった。上半身から下と両手を立方体に埋めたまま顔だけが出ていた。なんかの罪人か?まあありえない話じゃないが、だとしたらいつからここにいた?結構前から?でも少女だし結構最近の話になるな。だが城で聞いている感じだと誘拐とかの話もなかった。なんか特殊な種族か?一人で考察しているとハジメが動き出した。そして何事もなかったように告げる。

 

ハジメ「すみません。間違えました」

 

あたり一体が凍りつく。幸い(?)この場にいるのは俺とハジメ、あと少女だけなので被害は少なく済んだ。おいちょっと待て。なに何事もなかったように出て行こうとしてんだ。

???「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」

芽森「ちょっと待て。ほら、こんな掠れた声で頑張ったんだから少し止まれ」

ハジメ「だってこんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているような奴を解放するわけないだろう? 絶対ヤバイって。見たところ封印以外何もないみたいだし……脱出には役立ちそうもない。という訳で……」

芽森「待て。正論すぎて言い返すことは出来んけど一旦待て」

???「ちがう! ケホッ……私、悪くない! ……待って! 私……裏切られただけ!」

ハジメの手が止まる。ああ、よかった。かろうじて人の心は壊れてなかった。

ハジメ「それがどうした?お前がなんかやらかしたからこうなってるんじゃないのか?」

芽森「ハジメ君、君はいつから人の心を無くしたのかな?あとそこの少女、その話kwsk」

無理やりにでもハジメを連れ戻し、少女の話を聞く。話によるとこの子は吸血鬼の先祖返りで、それはもう大変に強く、その力で国を納めていたとのこと。この年で?普通にすげえなおい。んで、叔父が反逆し、そしてその吸血鬼の力は強すぎるが故にここに封印されたとのこと。どおでもいいけど人の不幸話って面白いよね(カス)。心の中でそう思っていると最初にここから逃げようとしていたハジメが興味深そうに質問をする。

ハジメ「お前、どっかの国の王族だったのか?」

???「……(コクコク)」

ハジメ「殺さないってなんだ?」

???「…… 勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

ハジメ「……そ、そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」

???「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

なるほどな。想像以上にチートだな。

???「……たすけて……」

女の子が助けてもらいたそうにハジメを見ている。助けますか?

 はい    いいえ

ハジメの選択はいかに⁉︎

 

 

>はい    いいえ

 

 

???「あっ」

ハジメはなにも言わず、錬成を始めた。ハジメの赤黒い魔力がまるで放電するように迸る。ほんとに人の心あったんだ。もうないかと思ってた。しかし、ハジメの錬成でも難しいのか、苦虫を噛み潰したような顔をする。よくみると立方体に魔力を弾かれているように見える。しかし、効いてはいるのか少しずつ少しずつ侵食するようにハジメの魔力が立方体に迫っている。

ハジメ「ぐっ、抵抗力が強い!……だが、今の俺なら!」

ハジメはさらに魔力をつぎ込む。結構注ぎ込んでいるが、これでやっと魔力が立方体に浸透し始める。しかしまだまだハジメは終わらない。ここからさらに魔力を上乗せしていく。少女を封じている石が徐々に震え出す。

 

ハジメ「まだまだぁ!」

 

さらに魔力を注ぐ。だいたい上級魔法レベルの魔力。ここまで来ると、もはやそこまでする理由が気になる。なにお前この子惚れたん?それとも同情か?なんにせよよくここまで頑張れるな。

そしてとうとう周りの立方体がどろりと融解していき、ついに少女は解放された。裸の状態で。

 

ハジメ「……ハァハァ、これお前のジーンメモリでどうにかなったんじゃねえのか?」

芽森「まあまあ、結果オーライ!さすが俺たちのヒーロー」

ハジメ「そんな大層なもん背負う気にならねえよ。そんなのあの勇者に言え。ハァ、魔力もすっからかんだ」

芽森「はい"譲天"」

俺の魔力をハジメに渡す。

ハジメ「おう、サンキュー」

芽森「あ、そうそう。一旦お前はこれ着とけ」

そう言って俺は裸の少女にツールメモリで作ったコートを渡す。

???「……あ、ありがとう」

素直に受け取ってくれたようだ。その後少女はハジメの方を向く。そして震える声で小さく、しかしはっきりと少女は告げる。

???「……ハジメも、ありがとう」

その時ハジメは困ったような、嬉しそうな顔をしていました。これはルートが立ったな。おめでとう。最初はあんな罵倒してたのに。結婚式は絶対司会を担当させろよ。

芽森「ところでお前の名前なに?」

???「……もう、昔の名前はいらない。新しい名前、つけて?」

芽森「だとよ。ほらハジメ。さっさと考えろ」

ハジメ「なんで俺がつけるんだよ……。そうだな……」

なぜってそっちの方ががこの子が喜ぶからだろ。

芽森「にしても小さいのに良く頑張ったな。えらいえらい」

そう言って頭を撫でる。メモリーメモリ(・・・・・・・)を使用した後に。

???「……私多分あなたより年上……」

芽森「マジか。人は見た目によらねえもんだな。ところでハジメ、名前決まった?」

ハジメ「ああ。〝ユエ〟なんてどうだ? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが……」

芽森「ほう。月ですか。まあいいんじゃないか?俺は結構いい名前だと思うが」

ユエ「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

ハジメとユエが甘々な空気になっている間にメモリーメモリで採取したユエの記憶を閲覧しておく。うん、嘘ついてる様子はないな。騙してるみたいで嫌だけどな。ん?上から魔力?いや、この魔力は……

芽森「ハジメ、上に魔物いる。多分封印を解いた時に出てきた。ユエを守っといて」

ハジメ「え?ちょ、おい⁉︎」

そのやりとりの1秒後、上から魔物が一体降ってくる。ハジメはユエを抱えて縮地を使い、その場から飛び退く。そして俺はメモリを起動する。

 

MAGMA

 

上から降る魔物一体に向かって手を翳す。その手の中心に熱いマグマのようなものが溜まる。

芽森「バァン」

その声と同時、この部屋が一瞬、火山かと思われる熱気に包まれた。魔物はその一瞬に腹をビーム状になった熱いマグマが貫き、そのままご臨終。俺の横スレスレに落ちてきた。どうやら蠍の魔物だったようだ。

芽森「まあおおよそユエを殺す最終手段ってとこか。相手が悪かったが。」

ん?あの、ハジメさんたちなんでそんな俺から距離取るんすか?そんな人間ではない何かみたいな目でみないで。

ハジメ「……いいかユエ、アイツは絶対怒らせるなよ。下手すりゃさっきの蠍みたいに焼き殺されるぞ」

ユエ「……ん。多分全盛期の私でも勝てない」

芽森「聞こえてるぞ。後普通に人外扱いしないでもらえます?泣くよ?」

 

こうして、新たな仲間、ユエと共にまた地下へと進むのだった。




ガイアメモリの補足


エターナルメモリ
永遠の記憶
4話でハジメに渡したガイアメモリ。元は触れた相手の能力を無効化する能力だったが、ハジメの手に渡ったことで発動条件が銃弾に当たったら無効化に変化した。ちなみに奈落の底で願った何としても生き残る、そして絶対に元の世界に帰るという思いが能力を変化させた理由だったりする。

メモリーメモリ
記憶の記憶
触れた相手の記憶を視ることができる。人のトラウマも視えるので、結構メンタルにダメージが入ることも多々ある。

マグマメモリ
マグマの記憶
手のひらからマグマを溜めて放つことで熱線を放ったり、目の前にマグマの壁を出して防いだり、意外とやれることが多いメモリ。溜めれば溜めるだけ使えるマグマが増え、火力と飛距離が伸びたりする。
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