「う…うぷっ。気持ち悪いです……」
「言わんこっちゃない…だから別の方法で行こうって提案したのに」
その列車には乗り物酔いになっているのか非常にグロッキーな銀髪ポニーテールの少女と茶色い喋る猫という異色のコンビが乗っていた。
「僕の翼で飛んでいけばもっと楽できたと思うけどな〜」
「うう……飛んでいくと休憩を挟むから……列車のほうが早く着きます。早く行かないと犠牲者が増える可能性が……うぷっ」
そう、この2人は依頼のために列車に乗っていた。
その依頼とは誘拐事件が多発しているためなんとかして欲しいというものであった。
「まぁ正直めんどくさいから別にいいんだけどさ」
少女と猫が喋っていると突然前の席に金髪を後ろに束ねたガラの悪そうな男がドカッと座った。
「喋る猫とは珍しいじゃねぇか。魔法か?」
「ナンパならよそでやったほうがいいよ〜」
突然男が話しかけてきたため猫は適当にあしらおうとする。
「しねーし、誰をナンパすんだよ……そのグロッキー女か?」
「いや僕」
「誰がするかボケ!!!」
あまりに予想外の発言に男はブチギレてツッコミを入れるもすぐに落ち着いて話を続ける。
「お前ら大道芸人かなんかか?」
「違うよ。僕らは魔導士!この先にあるグリムストーンで依頼をこなしにきたんだ〜」
「グリムストーンか……奇遇だな俺もそこにいく予定だ」
グリムストーン―歴史ある石の町であり、観光客も来ていたが最近では治安が悪くなり人足も減ってきている。
「なんの依頼だか知らねえけどよ、まぁせいぜい頑張れや」
男はふんぞりかえりながらそう言うと徐に立ち上がる。
「その女そろそろ起こしたほうがいいぜ。もう着くからな」
「え?本当だ!早く起きないと乗り過ごしちゃうよ!」
どうやら限界が来る前に寝てしまった少女を猫は必死に起こそうとするが中々起きず結局乗り過ごす羽目になってしまった。
*
「まさかこんなに早く依頼を受けてくれる方がいたとは……本当にありがとうございます」
少女と猫は無事グリムストーンに着き、早速依頼主である町長さんの家へと赴いていた。
「いえいえ、まだ依頼も達成していませんから。感謝の気持ちはその後まで取っておいてください」
少女は列車の中でのグッタリとした様子と打って変わって礼儀正しい態度で応える。
「おお!これは頼もしい。では依頼について話していきましょうか」
「はい!お願いします!」
町長はそう言うと家の中へと案内する。
「申し遅れましたが私グリムストーンで町長をやっているメイソンと申します」
「よろしくお願いします。私は魔導士ギルド『
「レイニーだよ〜」
レイニーという猫はイゾルテの背中にしがみつきながら気だるそうに答える。
「ふふっご丁寧にありがとうございます。てば早速依頼なのですが、依頼書に書いてある通りこの町で多発している誘拐事件をなんとかして欲しいのです」
メイソンは悲痛そうな顔でそう言うと懐から髪飾りのようなものを取り出す。
「これはつい最近行方不明になった女性の物です。人気のないところで発見された物ですが何か手掛かりになりますでしょうか?」
イゾルテは髪飾りを手に取るとその匂いを嗅ぎ始める。
「すんすん……なるほど大体分かりましたよ!」
「え⁉︎それだけで?」
メイソンは匂いだけでわかったと言い出すイゾルテに驚く。
「イゾルテの嗅覚はすごいんだよ!まぁわかってるのは方向だけみたいだけど」
「さあ、善は急げということで失礼します!」
イゾルテはそう言うと大急ぎで犯人を探しに行った。
*
イゾルテはメイソンの家から出ると匂いをたどり石造りの素朴な一軒家の前に来ていた。
「どうやら匂いの元はここみたいですね……中には複数人の人間がいるみたいです」
「やっぱり単独犯じゃなかったか……じゃあ僕が偵察しに――」
「頼も――っ!!」
「話聞きなよ!!!」
イゾルテはレイニーの言葉を聞かず扉を蹴破る。家の中には複数人の人間が酒を飲んでいた。
「なんだ!道場破りか!?」
「いや、ここ道場じゃないだろ……」
「まさか、夜な夜な町の人間誘拐してんのがバ――」
「「言うなよ!!!」」
どうやらここの奴らも馬鹿らしい。
「ははっ、運がいいねイゾルテこれで暴れられるよ!」
「大義名分ができたのならば好都合!誘拐された方々を解放していただきます!」
そう言うとイゾルテは腰に携えた剣を鞘から抜くが……その剣には本来あるはずの剣身がなかった
「ギャハハっ!なんだその剣。なまくらどころか剣身もないじゃんか!」
「聖剣アロンダイトは真の持ち主が使うことで力を発揮する!はぁっ!」
イゾルテが剣を持つ手に力を入れると手から冷気が漏れ出し徐々に剣身のない剣が氷の剣に変化する。
「げっ!?魔導士かよ!」
イゾルテの魔法に驚くも各々が武器を構えたり魔法を発動しようとするが
「遅いっ!氷竜の竜巻!!」
イゾルテが回転斬りを放つと同時に竜巻が発生し、敵が四方八方へと吹き飛ばされる。
「う、動けない!」
「体が壁に張り付いてやがる!」
男達は竜巻から発生される冷気により壁や床に拘束されてしまっていた。
「とりあえずここにいる連中は片付いたみたいだね〜」
「匂いからして被害者の方々は地下にいるみたいです。地下への道を探しましょう」
そう言うとイゾルテ達は匂いをもとに地下への入り口を探すと床に扉のようなものを見つける。
「見つけました!これで地下に行けるはず……」
イゾルテは扉を開け地下へと向かうとそこには誘拐された被害者達であろう人たちが檻の中に入れられていた。
「今すぐ助けます!氷竜の砕牙!!」
そう言うとイゾルテは氷の剣を上段に構え力の限りに叩きつけることで檻の柵を切り裂き中の人達を解放する。
「レイニー!解放した人達を地上に案内してあげてください!私は奥を調べます」
「分かった!イゾルテも気をつけて!」
イゾルテは解放した人達を地上へと導くレイニーを見届けると地下のさらに奥へと向かう。
(この地下かなり広いですね……魔法を使って作ったのでしょうか……)
想像以上に広い地下に少々驚きながらも地下の奥へと辿り着き奥の部屋への扉を蹴破る。
「げっ⁉︎もう来やがったのか!」
扉の奥にいたのは地上へと続く梯子を使って1人の女性をおぶりながら逃げようとする男だった。
「首元に山羊の紋章がある氷の女剣士……
おそらく誘拐犯のボスであろうその男は途中まで登っていた梯子を降りながらそうつぶやく。
「あなたのような人間に名前を覚えられても嬉しくはありません。早くその女性を離しなさい!」
イゾルテは女性を解放させるため男に向かって剣を突きつける。
「おっと、動くな!この女がどうなってもしらねぇぞ!」
誘拐犯のボスは女性を人質に取りナイフを突きつける。
(うっ……このままだと助けられない……)
突然女性を人質にされてしまいイゾルテは迷ってしまい隙を晒してしまう。
「隙ありだっ!」
誘拐犯のボスはそう言うと手に持ったナイフを投げる。そして、投げたナイフはイゾルテの足に突き刺さってしまう。
「ぐっ……」
「そのナイフには即効性の麻痺毒が塗ってある。数時間は動けないぜ」
イゾルテは体が痺れ始めたのか持っていた剣を落としそのまま倒れてしまう。
(体が痺れて……まずい……)
「見た目はいいからな……奴隷として売ればかなりの高値で売れそうだ」
誘拐犯のボスは人質にしていた女性の代わりにイゾルテを連れて行こうとするがイゾルテが入ってきた扉の向こうから足音が聞こえたため動きを止める。
(仲間が復活して戻ってきたか?いや……新手か?)
誘拐犯のボスが扉の向こうの人間に警戒していると突然鈍い音と共に扉が吹き飛ばされる。
「ちっ!無駄に広いなここ」
扉から出てきたのは先ほどイゾルテとレイニーが列車に乗ってきた時に出会った金髪の男だった。
(だ、誰?でも声は聞いたことがあるような……)
だが、イゾルテは寝ていたので知らないようだ。
「な、なんだお前!こいつの仲間か!」
「あ?仲間?」
金髪の男は怪訝な顔で辺りを見回すとイゾルテがいたことに気づいた
「お!さっきのグロッキー女じゃん!まだグロッキーだったのか……」
「ち、違っ⁉︎危ないっ!!」
金髪の男が呑気に話をしている隙に人質の女性のところに戻りナイフを投げていた。金髪の男に向かって飛んできたナイフはそのまま片手で受け止められる。
「触ったな!今度の毒は即効性の致死毒!触っただけでアウトだ!」
「うう……そんな……」
金髪の男が毒に侵されたことに落ち込むイゾルテだがその男に変化は訪れない。
「そんなバカな既に変化が起きてもいいはずなのに」
「治癒魔法で治したんだよ」
「何だとっ!?」
誘拐犯のボスは金髪の男の言葉に驚く。それもそのはず治癒魔法はロストマジックと呼ばれる魔法の一つだったからだ。
「そんな魔法の使える輩が俺に何のようだ!依頼か?」
「ああ、そういや言ってなかったな。あんたのところのチンピラが俺の財布盗んじまったからボコしたんだよ。そしたらお前達のことをゲロったんだ。アジトも近いからいっぺん全員ボコしてやろうと思ったんだよ」
「財布を盗もうとしただけでか?」
「そりゃそうだろ。それに、俺はお前らみたいな調子に乗ってるやつと下卑た連中は嫌いでな……一発殴らねぇと気が済まねぇんだよ!」
金髪の男は拳を握りしめ誘拐犯のボスに近づく。
「く、来るな!この女が――」
「俺に指図すんじゃねぇよ、格下が!!」
金髪の男は凄まじいスピードで距離を詰め紫の風を纏った拳でアッパーカットを放つ。
「天魔の破拳!!」
「ぐぁっ!!」
誘拐犯のボスはその衝撃で宙を舞いそのまま天井に叩きつけられる。
「まだまだいくぜ!」
金髪の男は地面に手にをつくと両の掌から紫の風を噴出させてロケットのように飛び上がり天井に叩きつけられた男に向かって蹴りをくらわす。
「天空破魔矢!!!」
誘拐犯のボスはそのまま蹴りをくらい天井を突き破って地上に吹き飛ばされる。
「はっ!スッキリしたぜ」
金髪の男はそう言うと立ち去ろうとする。
「ちょっと待ってください!あなた一体何者なんですか!」
麻痺が少し回復したイゾルテがそう言って金髪の男を言い止めると男は立ち止まって振り返る。
「俺か?俺はリオ・グリフィス――
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=327696&uid=404295
こちらの活動報告にてキャラの募集をしております。
ネタバレの情報もがっつりあるのでストーリーのみを楽しみたい方は活動報告は見ないほうがいいです。