キヴォトスの騎士   作:じゅうじキー

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初投稿です。
対戦よろしくお願いします。


一話

喧騒と硝煙が渦巻く、とある商業地区の中心にある銀行にて。

 

「おい、このクソッタレども! 金目のものを全部だしな!」

 

けたたましい爆発音とともに、入り口が爆破される。

もうすぐ終業間際という夜の静寂に、無秩序に銃を乱射するヘルメット団の叫びが響き渡った。

 

「ぎ、銀行強盗だ!」

「も、もうダメだぁ……」

 

巻き込まれた市民たちは悲鳴を上げ四散し、スタッフ達は銃を向けられ金をバックに詰めさせられる。

この銀行はヴァルキューレの支部からは絶妙に遠く、通報しても助けがくるまでにはもぬけの殻になるだろう。

 

市民たちが恐怖に怯え、ただ事が過ぎ去るの待つその時だった。

 

[SYSTEM INITIALIZING. SPIRITUAL BOOST, ACTIVATE(システム起動中。神秘増幅、開始。).]

 

突如、ヘルメット団の背後から、機械のような音声とともに神々しい白と金の閃光が迸る。

 

「な、なんだ!?」

 

[VALIANT. READY FOR COMBAT.(ヴァリアント。戦闘準備完了。)]

[ALIGHT UNSEEN, NOW SHINES SO BRIGHT.(見えざる光が今、かくも輝く。)]

 

ヘルメット団の一人が振り返るや否や、視界を埋め尽くす純白の装甲。漆黒の空を背景に、月光を纏ったかのような騎士が、そこに立っていた。

全身を覆う騎士然としたアーマー。その手には、白銀の輝きを放つ長剣が握られている。周囲の混乱とは対照的に、その立ち姿はあまりにも静かで、そして──。

 

「キ、キヴォトスナイトだ!」

 

市民の一人が歓喜の声を上げた。それに続くように、次々と歓声が沸き起こる。

 

「ナイトだ! ナイトが来てくれたぞ!」

「これで助かる! 俺たちは助かるんだ!」

 

ヘルメット団は一瞬ひるんだものの、すぐに銃口を騎士に向けた。

 

「くそっ、たった一人で何ができるってんだ! ぶっ放せ!」

 

乱雑な銃声が轟く。だが、その銃弾はまるで触れることを拒否するかのように、騎士が持つ剣に弾かれ、あるいはその身をかすめて虚空に消える。

 

(うっ、うわああああ! 痛い痛い! ちょっと当たってるんですけど!? これもう筋肉痛確定じゃないですかやだあああああ!)

 

白銀の騎士──"キヴォトスナイト"は、静かに、しかし流れるような動きで敵陣へと踏み込んだ。

 一閃。剣が描く軌跡は、まるで夜空に引かれた流星のよう。ヘルメット団の銃器は瞬く間に両断され、ガラクタと化す。

 

(やめて! これ以上激しい動きをさせないで! 明日まだ取材の予定があるんですけど!?)

 

ナイトは言葉を発さない。ただ、その流麗な動きと、一切の迷いなき剣さばきが、周囲を圧倒する。市民たちはその姿に目を奪われ、感嘆の声を上げる。 

 

「すごい……かっこいい……」

「被害を最小限に抑えつつ、確実に敵を制圧してる……さすがナイトだ!」

 

(違います! 違うんです!この状況早く終わらせて帰りたいんです! お腹すいたし! 早く定食屋さんのカツ丼食べたい!)

 

キヴォトスナイトは、まるでダンスを踊るかのように敵の間をすり抜け、剣の峰で次々とヘルメット団を気絶させていく。

 狙いを定めたようなピンポイントな攻撃は、相手に致命傷を与えることなく、しかし確実に無力化する。

 

「ひぃ! な、なんだこいつ! 攻撃が当たらねぇ!」

「こんなの勝てっこないよ!にげろー!」

 

ヘルメット団は恐怖に顔を歪ませ、蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。

 

(よっしゃあ! 逃げろ逃げろ! 早く消えて! 私も早くここからいなくなりたいから!)

 

逃げ惑うヘルメット団の背中を、キヴォトスナイトは追わない。

戦闘が終わり周囲に危険がないことを確認すると、市民たちに一礼して夜の闇へと消えていった。

 

「ナイト様! ありがとう!」

「我らがヒーロー!」

 

市民たちの感謝と歓喜の声が、商業地区に響き渡る。

またひとつ、キヴォトスに伝説が刻まれた。

 

――――――――――――――――――

 

その後、人気のない裏路地で、ぐったりと座り込む者がいた。

 

「はぁ……はぁ……今日こそは何事もなく帰れると思ったのに……」

「本当に、もう勘弁してほしい……うぇ……」

 

頭がガンガンする。全身の関節が軋み、激しい倦怠感が襲ってくる。吐き気も少しだけある。

変身解除後の反動はいつだって最悪だ。 

手のひらに収まる、ただの剣の柄になったデバイスに、怨嗟の目を向ける。

 

(なんでこうなるかなぁ……。私はただ平和に、推しを遠くから眺めていたかっただけなのに……)

 

白井ユウ。高校2年生。クロノススクール報道部所属。

私は二年前にこの「ブルーアーカイブ」の世界、キヴォトスに転生した。

前世では、ひたすらに「ブルアカ」というゲームをプレイし、キャラの尊さを噛み締める毎日を送っていた。転生後もそのスタンスは変わらない。

 

転生特典? いやいや、そんなものはない。

あったのはヘイローだけで、身体能力は前世と同様に皆無である。

 

「クロノスに入って、自然にいろんな学校に行って、原作の生徒さんたちをこっそり近くで見たかっただけなのに……」

 

キヴォトスに転生して以来、ユウはひたすらトラブルを避けてきた。

身体能力はもちろん、射撃センスも皆無であるため、銃撃戦に対抗できないのだ。

 

(私は目立たないように、ひっそりと生きていきたい。隅っこで、みんなを観察して、こっそり萌え語りをするだけの存在でいたいのに……)

 

そんなささやかな願いは、いつも無残に打ち砕かれる。

2年前、とある遺跡でこの謎デバイス「ヴァリアントカリバー」を見つけてしまった。

そして、なぜか持ち主として認識されたようで、以降捨てても気が付いたら手元に戻ってくる始末だ。

 

それからというもの、ユウがトラブルに巻き込まれるたびに、デバイスが「脅威を検知」し、勝手に変身させられるようになった。

逃げようにも、デバイスが謎の力でユウの体を突き動かし、強制的に戦闘させられたのだ。

その度に、周囲には「謎の騎士」として認識され、知らぬ間に「キヴォトスナイト」なる二つ名まで頂戴していた。

 

「はぁ……なんで私ばっかりこんな目に……」

 

座り込んだまま、ぐったりと壁にもたれかかるユウ。体調不良がひどい。

これでは、明日まともにカフェの取材もできないだろう。今日の夜ご飯は、絶対カツ丼にしようと思っていたのに。

 

その時、路地の入口から声がした。

 

「あれ、白井さん。こんなところで何してるの? また体調悪い?」

 

報道部の同僚である女子生徒が、呆れたような顔で立っていた。

彼女の眉間には、いつもユウを見ると浮かぶ「こいつ、また何かやらかしたな」という諦念が刻まれている。

 

「あ、えと、その……夕飯の買い出しで、ちょっと……疲れた、というか……」

 

ユウは言葉を濁す。まさか、ついさっきまで街のヒーローとして暴れていました、なんて言えるはずがない。

言ったところで、「お前が? 冗談は顔だけにしとけ」とでも言われるのがオチだろう。

 

「買い物でそんなにフラフラになるって、どんだけ虚弱体質なのよ……。ほら、家までつれてってあげるから、早く帰ろう?」

 

そう言って、同級生はユウの腕を引っ張って立ち上がらせる。

 

「う、うん……」

 

ユウはよろよろと立ち上がり、引きずられるように路地を後にする。

 

(今日もまた、誰かのヒーローなんかになっちゃったな……。明日の朝刊には、また私の記事が載るんだろうか。やめてほしい、本当に。目立ちたくない。なのに、変身解除後の私への風当たりは強まるばかりだし……)

 

夜空には、満月が煌々と輝いている。その光は、まるでキヴォトスナイトの白い装甲を思わせるようだった。

市民たちの間では、今日もまた「キヴォトスナイト伝説」が一つ増えたと、熱く語り合われていることだろう。

 

そんなこととは露知らず、白井ユウはただひたすら、早く家に帰って布団に潜り込みたいと願っていた。

そして明日の朝、不名誉なあだ名で呼ばれないことを祈るばかりだった。

 

 

 

 




プロフィール

クロノスジャーナリズムスクール 2年生
部活 報道部
白井 ユウ

年齢 16歳
誕生日 8月10日
身長 158cm
趣味 美少女を遠くから観察すること

基本情報
 クロノススクール報道部に所属する、黒髪ショートのメカクレっ子。
常に情報収集(という名の盗撮)に奔走しており、取材という名目でキヴォトス各地のトラブル現場に居合わせることが多い。
しかし、本人はいたってコミュ障であり、トラブルへの遭遇は不本意な事故がほとんど。
身体能力も低く銃の扱いも苦手で、その地味な見た目と体調不良がちであることから、周囲からは**「歩く不健康ランド」**などの不名誉なあだ名をつけられている。
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