キヴォトスの騎士   作:じゅうじキー

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二話

私はこの世界が『ブルーアーカイブ』の世界であることに気が付いた。

中学校を卒業し、どの高校に進学しようかと考えていた時、前世の記憶的なさむしんぐが呼び起されたのです。

死因は逆走爺のプリミサイルによる事故死だったと思う。チクショウめ。

 

まあ廃人ではなかったけど、ストーリーが魅力的で、よくガチャを天井まで回していた記憶がある。 

そして、経緯はどうあれブルアカに転生したのなら、やるべきことはただひとつ。

 

 (推しを、眺めたい......!)

 

うへうへ言ってそうなオジサンモドキとか、ヒナヒナになってそうなシナとか、「パワー☆」って感じのお姫様とか。

画面越しでしか見られなかったあのコ達を、間近で見るチャンスなのである。

ここで推さねばオタクが廃るってもんよ!

……しかし、ここで問題が1つ。

 

 (私……クソザコなんだよなぁ……)

 

ヘイローこそ持っているから、銃弾や爆発で死ぬことはない。

ただ、俺tueeな転生特典なんてもらった記憶はないので、 前世と同じく身体能力はカスのまま。

射撃センスも皆無だから、今でも100発撃って1発掠れば良いほうだ。

 

銃撃戦なんてまったくもって歯が立たないから、進学する学園は慎重に選ばなければ、推し活ではなくお死活をすることにすることになってしまうだろう。

そんなわけで今、各学園のパンフレットなどをみて進路を検討しているところだ。

 

 (どの学園に行こう……?)

 

ブルアカには多くの学園が存在する。

ゲヘナ学園に行けば、風紀委員や給食部、万魔殿の子たちに会えるだろう。

トリニティ総合学園なら、正実やシスターフッド、運が良ければティーパーティーにお近づきになれるかもしれない。

ほかにも興味のある学園があるが、進学できるのは1つの学園だけである。

 

 (ここは、比較的治安のよさそうなミレニアムに進学しておこうかな……? いや、それだとダメだ。ストーリーに巻き込まれる可能性がある。)

 

この世界に来たからには色んな子達を見てみたいが、下手に関わると原作のストーリーやイベントに巻き込まれるかもしれない。

考えすぎかもしれないが、用心するに越したことはないし、

自分のせいであの尊いストーリーが改変されるなどもっての他である。

 

 (まあ、私コミュ障だからそこまで仲良くなれる子なんていないだろうけど……)

 

自分から話かけたりなんてできないし、声をだすときについ「あっ」て言っちゃうし。

悲しいかな、前世でも今世でも、私はコミュ障であった……。

 

でも、可能な限りストーリーに干渉せず、治安もよさそうで、それでいていろんな学園に違和感なく訪問する口実が作れる学園。

まさかそんな都合のいいところなんてあるわけ……。

 

(……あ、あった!!)

 

その時、ユウに電流走る――

各学園のパンフレットをめくり、隅々まで読んでいた私の目に飛び込んできたのは、ゲームではあまり見なかった学園の名前。

 

"クロノスジャーナリズムスクール"

 

「……これだ!」

 

クロノスジャーナリズムスクール。

 キヴォトス最大の情報機関を運営する学園で、報道部や探偵部、情報分析部など、実に様々な部活動があるらしい。

 そして、何よりも重要なのは、メインストーリーにほとんど絡んでこない、という事実!

 

(そうだよ! クロノスだよ! ここなら、私は安全に、そして合理的に推し活ができる!!)

 

報道部に入れば、取材という名目で他学園に潜入できる。これはデカい。

ゲヘナの風紀委員会、トリニティの正義実現委員会、ミレニアムのヴェリタスやエンジニア部……。様々な学園に潜入し、遠くから推しを眺め、その尊さを文字通り肌で感じることができるのだ。

 

もちろん、コミュ障の私には、直接話しかけるなんて高等テクニックは使えない。だが、それでいい。壁のシミになりきって、観察するだけでも尊いはずだ。

それに、万が一、事件に巻き込まれたとしても、クロノススクールは治安維持の役割を担っている学園ではない。あくまで「情報収集」が主なので、戦闘能力はそれほど高くないはずだ。

つまり、私のようなクソザコでも、比較的溶け込みやすい環境だろう。

 

(完璧な選択肢じゃないか! よし、クロノススクールに決めた!)

 

こうして、私はクロノススクールへの進学を決め、入学後すぐに報道部へ入部した。

しかし、現実は甘くなかった。

 

――――――――――――――――――――

 

報道部での日々は、想像以上に激務だった。

「白井! 今すぐアビドスで発生したヘルメット団の襲撃事件を取材してこい!」

「白井、次はミレニアムのエンジニア部が開発した最新兵器のテスト現場だ! スクープを狙え!」

「白井! ゲヘナ学園でまた何か事件が起こってるぞ! 特ダネ掴んでこい!」

「白井! パン買ってこい!」

 

毎日がこんな調子だ。

 

「 アッ、ハイ……すぐ行きます……」

 

私は先輩の指示に返事をし、言われるがままにキヴォトスのあちこちを駆け回っていた。

当初の「推しを遠くから眺める」という目的は、いつの間にか「事件に巻き込まれないよう全力で逃げ回る」にすり替わっていた。

そして、激務に加え、私のとてつもなく不運な体質が、さらに私を追い詰めていく。

 

「はぁ……はぁ……」

 

その日、私は取材でミレニアムのとある地区の廃墟ビルにいた。最近、ここで不審なドローンが目撃されているという情報があり、その裏を取るためだ。

 

(こんなところにドローンがいるなんて……もし襲われたらどうしようかなぁ……)

 

廃墟の奥へと足を踏み入れると、ひときわ異様な雰囲気を放つ場所があった。埃をかぶった台座の上で、不自然に輝く金属片。

 

「ん……? これ、なんだろう?」

 

私は好奇心に抗えず、それを拾い上げた。

それは、まるで漆黒の宝石を削りだしたかのような、洗練されたデザインの剣の柄みたいな装置だった。

よく見ると、小さな文字で『VALIANT CALIBUR(ヴァリアントカリバー)』と刻印されている。

 

(うわ、なんかすごい。これ、なにかのオーパーツかな? どこかに届けた方がいいかな?)

 

私はそう思いながら、その柄を軽く握ってみた。その瞬間だった。

手のひらに乗せた剣の柄から、微かな振動が伝わってきた。漆黒の宝石が埋め込まれた部分が、一瞬、淡い光を放つ。

そして、私の脳内に直接響くかのような、無機質な機械音声が聞こえてきた。

 

[BIO-SIGNATURE DETECTED. ANALYZING……(生体反応を検出。解析中……)]

「え、何? ば、バイオシグネチャー?」

 

突如の事態に、私の頭は真っ白になった。手の中の柄が、さらに強く脈動する。手のひらに吸い付くような感覚に、私は柄を手放すことさえできない。

 

[UNIQUE IDENTIFIER CONFIRMED (固有識別子を確認。)]

[USER: SHIRAI YU. (ユーザー:シライ・ユウ。)]

[AUTHENTICATION COMPLETE.(認証完了。) ]

 

「な、なにがコンプリート!? 勝手に私の名前とか出すのやめて!? 個人情報漏洩ですよこれ!?」

 

混乱する私の訴えを無視し、機械音声は容赦なく続く。まるで、私の存在を完全に把握しているかのように。

 

[MASTER REGISTRATION INITIATED. DATA INTEGRATION IN PROGRESS.(マスター登録を開始。データ統合中。)]

「マスター登録!? 何の! ?やめて! 私、別にマスターになりたいとか思ってないから!」

 

柄から放たれる光は、私の全身を包み込むように強さを増していく。

 

[CAUTION: HIGH-LEVEL THREAT APPROACHING.(警告:高レベルの脅威が接近中。)]

「えっ? な、なに? 脅威って?」

 

突然のことに、私はパニックになった。

何か、とんでもないものを拾ってしまった気がする。早く手放さないと……!

しかし、その願いも虚しく、機械音声はさらに続く。

 

[SYSTEM INITIALIZING. SPIRITUAL BOOST, ACTIVATE.(システム起動中。神秘増幅、開始。)]

 

光はさらに強まり、柄から白い光の刀身がレーザーのように伸びていく。それはまるで、ゲームや特撮で見たことのある、あの「ライトセイバー」のようだった。

 

「ひぃっ! な、なんで剣が……!? あっ、いやあああ!」

 

私の身体は、自分の意思とは関係なく、光に包まれていく。視界が真っ白になり、全身になにかが流れこんでくるような感覚。

 

[VALIANT. READY FOR COMBAT.(ヴァリアント。戦闘準備完了。)]

[ALIGHT UNSEEN, NOW SHINES SO BRIGHT.(見えざる光が今、かくも輝く。)]

 

光が収まった時、私は全くの別人に変貌していた。全身を覆う白と金のアーマー。手には、さっきまでただの柄だったはずの長剣。

 

(え……なにこれ……? 私、どうなっちゃったの……?)

 

混乱する私の目の前には、廃墟の壁をぶち破り、唸り声を上げて突進してくる四角いドローンが大量にいた。そのドローンは、明らかに私を標的にしている。

 

「う、うわあああ!」

 

私は叫んだ。変身したことで、身体能力が飛躍的に向上しているのがわかる。

 しかし、そんなことはどうでもよかった。目の前のドローンが怖い。そして、何よりも、こんな目立つ姿になっているのが恥ずかしい!

 

(早く! 早く元の姿に戻してええええええええええええ!)

 

その願いは、デバイスには届かなかった。

私の身体は、まるで何かに操られるかのように動き出した。剣を構え、ドローンへと向かっていく。

それが、「キヴォトスナイト」と呼ばれる、私の不本意なヒーロー活動の始まりだった。

 

――――――――――――――――――――――

 

その日から、私の日常は激変した。

 

「今日のSNS見た!? 春葉原で謎のヒーローが事件を解決したって!」

「また『キヴォトスナイト』が活躍したんだって! 今回も華麗な剣さばきだったらしいよ!」

 

周囲の喧騒をよそに、私は今日も報道部の片隅で、げっそりとした顔で机に突っ伏していた。

 

「白井さん、また体調悪いの? すっごく顔色悪そうだけど……」

 

同級生の呆れた声が聞こえる。

 

「あっ、はい……ちょっと、取材で無理しちゃって……」

 

私は掠れた声で答える。無理をした、というのは嘘ではない。ただ、その「無理」の質が、周りとは決定的に違っていただけだ。

 

(毎日毎日、勝手に変身させられて、体中が筋肉痛だし、眠いし、吐き気するし……。もうやだ、こんな生活。帰って寝たい。ていうか、私、いつになったら推し活できるの……?)

 

私の視線の先には、キヴォトスの街並みを映すモニターがある。そこに映し出されるのは、今日も賑やかな学園都市の風景。

 

(あぁ……私も、あの子たちみたいに、平和に過ごしたい……)

 

そんな私の願いは、今日も無残に踏み潰されるのだった。

 

 

 




ヴァカ「ブルアカに転生したのはええけど、こんな場所で放置されんのはつらいわ……。おっ?!ワイ好みのモブキャラがおるやんけ!マスター登録したろ」
ユウ「えっ」
ヴァカ「ファッ?!こいつ思ったよりクソザコやんけ!しゃーないから力かしたるわ」
ユウ「えっえっ」
ヴァカ「せや!この子と一緒ならヒーローごっこできるやん!ほな楽しい楽しい学園生活の始まりやで~!」
ユウ「」
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