朝。 目が覚めた瞬間、違和感に気づいた。
──誰かいる。しかも、私のベッドの中に。
「……おい」
「おはよう、アイリ」
見れば、ユウがこちらをじっと見つめていた。裸で。 やっぱり夢じゃなかった。ユニコーン、擬人化、そして全裸。全部現実だ。
「何してんの……いや、何してないの、今……?」
問いかけると、ユウは困ったように微笑んだ。
「夜中、角がうずいて……一人じゃ我慢できなかったの」
「言い方やめな?」
角って、たぶんユニコーンにとっては心臓みたいなものだ。魔力のコア的な。 とはいえ、“疼くから人の布団に入る”という理屈が理解できたわけじゃない。
「次からはせめて、ノックしてから来て」
「寝てる時、ノックしても意味ないと思うよ?」
返答が妙に理屈っぽい。
その後、キッチンから漂ってきたのは、なんとも形容しがたい香りだった。 テーブルに並べられた朝食は──
・ほんのり光ってるスープ ・ぷるぷるしているゼリー ・そして、“媚薬”と英語でラベルが貼られたミルク
「ちょっと待って? これ全部、本当に食べ物?」
「大丈夫。魔力にいい成分ばかりだよ」
「その“いい”が何を基準にしてるのかが一番問題なんだけど」
スープは発光してるし、ゼリーはたまに震えてる。ミルクに至っては、瓶のデザインからしてアウト。 食欲はどこかへ消えた。
「……食べないと、角の調子が戻らないかも」
ユウは言いながら、自分の口でミルクを含み──こちらに顔を近づけてきた。
「待って、近い。ていうか、それは──っぷ……!?」
口移し、された。 というか、された側。
「なんで間接の概念がないの!? 普通に今の、濃厚すぎるから!」
「こっちでは、これが普通だけど?」
異世界文化、強い。
◇◇◇
しばらくして、チャイムが鳴った。
「誰だよ、こんな時に」
ドアを開けると、係長とレインがいた。
「様子を見に来たよー。……って、なんだこの匂い?」
「気にしないでください。全部、文化の違いです」
その時、リビングからユウの声が聞こえた。
「こんにちは。ユニコーンのユウです」
案の定、服は着ていなかった。 レインが無言でスマホを構えたのを見て、私はすかさず手で制した。
「待って、通報はやめて。あとでちゃんと着せるから」
「服、あった方がいいと思うよ。たぶん」
係長の言葉にうなずく。
局から支給された“魔力抑制リボン”を巻いて、ようやくユウに服を着せることができた。 ただ、装着時、やたら息が漏れていたのが少し気になる。
「……なんか、変な気持ちになった。抑制、強いのかな」
「変な気持ちになるなら、それはもうリボンじゃなくて何かのプレイだから」
ツッコミながらも、どこかで慣れてきている自分に気づいてしまう。
それが一番の危機かもしれない。
◇◇◇
夜。 再び布団のそばに立つユウの姿を見て、私はため息をついた。
「また疼いてる?」
「うん……今日は、おとなしく枕だけもらってもいい?」
少しだけ、距離を取るようになった姿勢に、こちらも肩の力が抜ける。
「枕くらいなら、どうぞ」
「ありがとう」
──ただ、その後すぐ、布団に滑り込んできたのは想定外だった。
「それは枕“だけ”じゃないだろ!!!」