ユニコーンの角折りたい   作:Marks_Lee

9 / 9
儀式

朝の光が静かに部屋を満たていく。
アイリは夢の余韻を胸にゆっくりと目を覚ました。昨夜の淡い記憶が、額の奥にわずかな温もりとして残っている。ユウの角折りの儀式が間近に迫っていることを思うと、胸の奥がじんわりと重くなる。

 

彼女は慎重に身支度を整え、机の上に置かれた魔導端末に手を伸ばした。


画面には今夜執り行われる儀式の詳細が静かに映し出されている。儀式は決して単なる手続きではなく、ユウという存在に深く関わる重要なものだ。

 

「ユウにとって、この儀式はどんな意味を持つのだろう」


小さく呟く言葉に、自分でも答えがわからなかった。

その時、背後から柔らかな気配が近づく。振り返るとユウが静かに立っていた。


彼の瞳は揺れていた。不安と期待、迷いが混ざり合っているように見える。

 

「アイリ、今日は大丈夫かな」


声がかすかに震えていた。

 

「大丈夫よ。私たちは一緒にいるんだから」


彼女は微笑みながら手を差し出した。ユウはその手を握り、少し肩の力を抜いたように見えた。

 

午後、二人は街の静かな公園へと向かった。
夕暮れの光が柔らかく二人を包み、世界は穏やかに色づいていた。

 

「ねえ、ユウ」


アイリはそっと問いかけた。


「あなたは本当に角を折られることを望んでいるの?」

 

ユウは一瞬、黙り込んだ。静かな沈黙のなか、彼は遠くを見つめながら答えた。

 

「正直、まだわからない。角は大切だけれど、このままではいられない気もする。折られることが終わりじゃなく、何か新しい始まりになるなら……」

 

彼の言葉はまるで霧のように揺れていた。

夜。二人は儀式の場へと足を運んだ。

そこにはすでにアルフレッドの姿があった。彼は、厳かながらも芯の通った声で挨拶をした。

 

「お二人とも、よくお越しいただきました。私は儀式を執り行う者、アルフレッドです。今日この時が、無事に終わることを願っています」

 

アイリはその言葉に静かな安心を覚えた。ユウもまた、わずかに肩の力を抜いた。

 

遠くでは魔管の上司たちが焦りの色を深めていた。
儀式の進行が遅れていることに苛立ち、強制的に角を折るための使者を差し向けていた。

使者たちが儀式の場に迫る中、三人は準備を整え、静謐な緊張のなか儀式の時を待っていた。

儀式の場は薄暗く、しかし凛とした温もりが満ちている。

アイリは深く息を吸い、気持ちを落ち着かせる。

ユウの角は淡い光を放ち、彼の魂の鼓動のように揺れていた。

アルフレッドは冷静に魔導端末を操作しながら、厳かに儀式の準備を進める。

アイリはそっとユウの手を握った。


「怖いけど、私がそばにいるから」


彼女の言葉は静かに、しかし確かな力を持ってユウの心に届いた。

ユウは弱々しくもうなずき、微かながらも力強い笑みを返した。

遠くから迫る足音。使者たちが儀式の場へと急ぐ。

だが、アイリの瞳は揺らぐことなく、ユウと共に儀式の始まりを見据えていた。

 

――彼らの未来をかけた時が、ゆっくりと幕を開けようとしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。