チに咲く花 【ブルーアーカイブ×仮面ライダークウガ】   作:鳥鍋

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覚醒(前)

ミレニアムサイエンススクール ミレニアムタワー

02:13PM

 

眩しい。目を閉じても感じる光源の眩しさ、気怠さと共に彼女は目を覚ます。完全に開いてない目では全てを見れないが、明るさと色合いから先程の遺跡では無さそうだ。上体を起こし眠たげな目をこすって周りを見れば、色の少ない別の世界だった。

 

「……?」

 

白を主体とした部屋、見慣れない機械。自分が着ている物は入院服に似た脱ぎ着しやすい物。自身の知識から近い物をたぐり寄せるなら病院、怪我や病気のリントがそれを治す場所だろうか。生きてる間にそんな場所に関わった事は無かったと振り返ると、何かの起動音がした。

 

『目覚めたようね』

 

突然声がした方向に視線を向けると、空中に浮かんでいる機械から光が放たれ人間の形を取った。輪郭は淡いが黒を中心とした衣装に長い黒髪、頭上にはやはり嫌悪感を感じる輪、女性のリントだろうか。

 

「あなたは誰?医者?」

『いいえ、生徒会長よ。医学を専門としている訳では無いわ』

「せいと、かいちょう……?」

 

聞き慣れない肩書に首を傾げる。彼女が何故ここまで設備が整った部屋に自分を連れてきたのかさっぱり見当が付かない。

 

「ここはどこ?東京?長野?」

『とうきょう……聞いたことがないわ』

「知らないの?」

 

それに相手と言葉は通じるのに、子供でも知っているだろうリントの多い場所「東京」を知らない。見た事の無い機械による技術や不快な頭上の輪を見て、相手は自分の知るリントでは無いのかと彼女は疑念を抱く。

 

『それよりも自己紹介をしましょう。私は調月リオ、ミレニアムサイエンススクールの生徒会長よ』

「……ユリズ」

 

自己紹介をした調月リオに対して簡潔で不愛想に名前を告げた。それを気にする事無くリオは質問に移る。

 

『単刀直入に聞くわ。あなたはあの遺跡で何をしていたのかしら』

「……」

 

沈黙、ホログラムのリオを見たままユリズは何も答えない。その反応は予想していたのかリオは次の質問、いや追及をする。

 

『あなたが眠っている間に、身体検査をさせてもらったわ。基本的な構造は普通の人間と変わらない、けれど腹部の異物を中心に神経組織が異常な程張り巡らされている……あなたは何者なの?』

「……何者か、私は私。ゴ・ユリズ・デだ」

 

キヴォトスらしく無い名前を名乗り、一般の生徒とは異なる身体構造をしている彼女にリオは不可解さを覚える。それと同時に遺跡とその文明に大きく関わる存在だと想定するが、その為の判断材料が足りない。

 

『詳しく話を聞かせてちょうだい。あなた自身の事も、あの遺跡の事も』

「私も、分からない事がある。調べないとこれから私はどうなるのか、だから調べて欲しい」

『……いいわ、情報交換としましょう』

 

2人はお互いに納得して語り合う事にした。

 

『まずは……何かしら?学区内で不審人物が暴れている?保安部で鎮圧をしなさい。……銃が効かない?糸?』

 

突然何かしらの通信が入ったのか、それを開いたリオは報告された状況に多少の困惑を覚える。

 

『映像は……これは、何者なの?』

「私も見れる?」

『必要ないわ。こちらで片付ける問題だから』

 

プツリとリオを映していたドローンの光は途切れ、どこかへ飛び去って行った。

 

02:43PM

 

「うわあああっ!逃げろぉ!」

「こっちに来るな!痛っ!」

 

ミレニアム自治区、ビルとビルの間には大きな蜘蛛の巣が張られている。それだけでも驚異だが、それを作り出したのはただの蜘蛛ではない。糸を掴んでぶら下がっている異形の生き物だ。くすんだ体色、どこぞの文化を感じさせる腰のベルトや装飾品。何よりも首の上が人間の形をしておらず、黒い複数の目玉と虫の脚を模した突起物はハエトリグモを頭の形に丸めたようだった。

 

「……」

 

異形は辺りを見回しながら手頃な相手を見つけ、飛びかかり殴る、それを繰り返す。

 

「この、どっか行け!」

 

ミレニアム生徒の一人が、持っていたアサルトライフルを異形に向けてひたすら撃ち続ける。銃声とともに弾丸が腹部にいくつも命中するが、その結果がおかしい。弾丸が埋まっている。まさかと一瞬思ったが、そこからぼろぼろと落ちるものがあった。地面に落ちたそれは、弾丸だった。それを意に介さず、異形は生徒に向かってきた。

 

「効いてない、嘘でしょ?!」

 

異形は腰が引けた生徒に向かって右腕を振りかぶって、勢いよく殴る。ただのパンチだがその身体を吹き飛ばし、遠くに倒れた彼女は意識を手放した。

 

「……」

 

異形は動かなくなった獲物に興味を失ったのか、物陰から見ていた獣人や震えたまま銃を持った生徒に顔を向ける。その一人が引き金を引くより早く、異形は口からある物を吐いた。

 

「えっ嘘動かない…うあぁぁ!」

 

サブマシンガンに絡みついたのは蜘蛛糸、それを強引に異形が引っ張り、生徒はパニックになりながら引き金を引いてしまう。振りほどこうと振り回し、異形、周囲構わず弾丸が飛び出し被害を広げる事となった。引っ張られた蜘蛛糸は縮んで残り2メートル、自分にその拳が振るわれる事に生徒は恐怖した。

 

「ターゲット確認」

 

突如、異形の頭が揺れて糸が緩んだ。サブマシンガンからなんとか振りほどき、生徒は必死に逃げ出した。

 

「こっちだよクモさん!」

 

逃げた生徒とは別の影が異形の背後から銃を撃ち、注意をそちらに向ける。その相手はアサルトライフルにクリーム色の長い髪のメイド服、エージェント集団Cleaning&Clearingの1人、一之瀬アスナであった。

 

「……!」

「よっと!」

 

異形は糸を吐き目障りな相手を捕らえようとするが、その程度で捕まるエージェントではない。サイドステップで糸を避けて、お返しに銃弾を的確に浴びせる。先程の生徒よりも正確だが、それでも結果は変わらない。

 

「……」

「やっぱり効かないかー、アカネ!よろしく!」

「はい、お任せください」

 

突如、異形の頭上から足元までが弾け飛んだ。爆煙と爆風、轟音が広がる中で眼鏡をかけ直すのはC&Cエージェントの1人、室笠アカネ。彼女の仕掛けた爆弾にかかれば並の相手は沈められるはずだ。

 

「これならあの不審者相手でも……」

「まだだよ、アカネ!」

 

爆煙の中にはまだ人影が両脚で立っていた。全身は焼け焦げているが、その焦げた色も少しずつ薄くなっている。その目はどんな感情を含んでいるかは分からないが、未だにエージェント達を見ている。

 

「部長が来るまでもう少しかかりそう?」

「少し遅れるとの事です」

『アスナ先輩、奴を狙撃ポイントまで誘い出す事はできる?』

「やってみる!おいでクモさん!」

 

通信機から聞こえた音声からアスナは再び動き、自らを囮として異形を誘い出す。

 

「ターゲット、あれは一体何者なんだろう?」

 

アスナに指示をしながら、ビルの屋上で狙撃銃を構えるメイド服の生徒は角楯カリン。狙撃手として敵を捕捉する事に努めていたが、敵の正体に首を傾げていた。ただ暴れたいだけの相手なら時々見かけるが、銃も無く自らの肉体と謎の糸を武器に暴威を振るう相手を他に知らない。

 

「それでも、任務は遂行する」

 

ザリ、と後方から何かが地面を踏み鳴らす音がした。

 

「誰だ!」

 

狙撃手として全力の警戒の元、身体の向きとライフルをそちらに向ける。その音の正体にカリンは絶句した。

 

「それを……貸せ」

 

異形だった。人型ではあるが、植物の怪人とでも形容すべき何か。ユリの花の髪飾りが付いているとしても、可愛らしさより警戒心が溢れ出る。

 

「あの化け物の仲間なのか?」

「私にとって邪魔なだけだ」

 

言葉は通じるが、それでも安心できる相手ではない。異形が一歩一歩進む度にカリンの銃を握る手が強張る。

 

「それを貸せ」

「させるか!」

 

カリンは狙撃銃を腰だめで発砲した。通常の銃器よりも高い威力のそれが腹部に当たればただでは済まない。

 

「私が扱うのに丁度いい」

「な……!」

 

その弾丸を意に介さず受け止め異形は近づき、銃身を掴みカリンの手元を蹴り上げた。自らの相棒である対物ライフル『ホークアイ』、それを奪われたのなら取り返そうとセカンダリである拳銃を取り出すが、それに構わず異形はもう一つの異形へと銃を向ける。

 

「仲間じゃないのか?」

 

花の異形はカリンの疑問に目をくれず、ホークアイの弾倉を抜き、なぜか装飾品の飾りを引き千切った。その飾りは手の中で大きくなるとまた別の弾倉に変わり、それをホークアイに装填し直す。

 

「……アスナ先輩!新たな怪物が出現!私のライフルが取られ……!?」

『どうしたのカリン?』

 

通信機を繋げながら会話すると、さらなる驚きの光景を目撃する。

 

「ふっ!」

 

銃身が、いや銃全体の輪郭が大きく歪み始めた。どんな手品だ、それ以前に銃は無事なのか?と思考が巡るうちにそれは完成した。ホークアイは全体的に禍々しく、有機的で鋭利な外見となった。

 

「私の銃が……!」

「ギベ!」

 

丁度狙撃ポイントに異形は誘われていた。そのタイミングを見計らって、花の異形は引き金を引いた。放たれるその一条は風を切り、まっすぐに異形の頭蓋に命中する。

 

「……!」

 

それにより弾丸は貫通はしなかったが、頭が大きく揺れて体勢が崩れる。

 

「カリンちゃんさっすが!」

『私じゃない!別の怪物が銃を奪った!』

「え?」

 

新たな報告に疑問を覚えるアスナだが、敵への注意も怠らない。狙撃手の方向からさらに一発、もう一発と異形の背中に弾丸が命中、それを確認しても油断せずに自身の銃口を向ける。

 

「……」

「しぶといねー……アカネ、まだ行ける?」

「ええ、爆弾はまだいくつか」

 

異形は2人の方向に歩き出したが、足取りが少しぎこちない。一歩を進めるごとにどこからかメキメキと音がすると、後頭部から一輪の花が咲いた。

 

「……!!」

「お花だ!でも……なんかヤダ」

 

その花は一輪のユリ。白い花弁が立派に咲き誇っている。それが生えた先である異形はもう一歩を進めきれずに前方に倒れ伏す。その背には後頭部と同じユリが二輪咲いていた。

 

「ふぅ……」

 

その倒れる様を見届けた花の異形はライフルを降ろし、構えを解く。ライフルをその場に置いて、屋上からどこかへと立ち去ろうとする。

 

「ぐぅっ!」

 

突如として連射が花の異形を襲った。カリンが視線を向けると、そこには頼りになる下手人がいた。

 

「よう、うちの後輩の武器ぶんどってどういうつもりだ?」

「リーダー!」

 

小柄ながら鋭い視線、二丁のサブマシンガンを構えたC&Cエージェントのリーダーにしてコールサインダブルオー、美甘ネルがカリンの前で花の異形に銃撃した。

 

「お前達と争う気は無い、付いていけばいいのか?」

「はっ!口では何とでも言える、1回ぶちのめされてぇか?」

「……そうか」

 

下手に動けば攻撃が始まる。そうなればこの場所が何かを知るのに手間がかかる。そう判断して動かず素直に姿を元に戻す事にした。異形の肉体を血色ある肌の色に変えて、その姿は入院服になった。

 

「どこへでも連れて行け、道案内を頼む」

「な……姿を変えられるのか」

「リーダー、もしかしてさっきのも……」

 

ネルもカリンもその変わりように驚き、先程と同じ存在ならばと蜘蛛の異形がいる場所に目を向ける。

 

「アスナ!暴れてた奴は?」

『花が咲いて動かないよ!』

「そいつの見た目は変わったか?」

『倒れただけで変わってないよ?』

 

同じ存在なのかは分からないが話を聞く事に変わりは無い。警戒したままある場所に向けて連絡を取る。

 

「こちらダブルオー、目標は沈黙。入院服の変な奴がライフルをぶんどって勝手にやりやがった。連れ戻せ?わーったよ」

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