こんなん見たいと思ったので書いた。




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 という訳で、良ければどうぞ。


ティルネ旧市街→ティルネ中央駅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南側諸国・ティルネ市

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

 

 初夏のティルネは薄青い朝霧の街だ。

 石造りの旧市街も霧に濡れる。

 

 

「はあっ、はぁ……」

 

 

 かつて丘上の城塞の周りに築かれたティルネ旧市街は交通の便が悪い。

 凸凹した石段が多く自動車が使い物にならず、ティルネ城塞城門跡から大通りを通って丘下まで伸びる特別製の路面電車(トラム)だけでは間に合っていない。

 住人は新市街や川街に流出するばかりだ。

 だからこそ今の旧市街には人嫌いや人付き合いが苦手な者──、──そして人とは時間感覚が違う者が引き寄せられるのだが。

 

 

「ふー……」

 

 

 陽も登らない朝っぱらから歩き回ってようやっと目的のアパルトマンに辿り着く。

 建物名が間違っていない事を確認し、屋内へ。

 目当て住人が居る部屋番号を付けた古めかしいドアを叩く。

 

 

 

 

「──フリーレンさん‼︎居られますか!」

 

 

 

 

 ……反応は無い。

 繰り返す。

 

 

「フリーレンさん!居られますか!」

 

 

 ドンドンドン。

 繰り返す。

 

 

「フリーレンさん!居られますか!」

 

 

 ……足音がする。

 

 

「なんだよぉ……、うるさいなぁ……」

 

 

 銀髪に尖った耳、ワンピースの寝巻き一丁の住人がドアを開いて現れた。

 彼女こそ現代行政の敵──、

 

 

「フリーレンさん、一時滞在税の支払いが済んでいません」

 

「……、……え……?」

 

 

 ──エルフだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あれって7月が期限じゃなかったっけ……」

 

「いいえ、ティルネでは6月が期限です」

 

 

 件のエルフがエルフである事を念頭に置いても差し押さえギリギリであった為散らかった部屋で待たされる事になる。

 

 

「はぁ……、最近の人間は特にせっかちでかっちりだ……」

 

「一ヶ月違いなのは合わせて下さっていましたが……」

 

「分かってるよ、きみ達(長命種課)には苦労掛けるね」

 

 

 あちこちごそごそ探ってようやく件のエルフはお目当ての物を見つけ出した。

 

 

「はい、よろしく頼むよ」

 

「確かに」

 

 

 そうして差し出された紙幣と書類を確認し……。

 

 

「……ん?『転出届』?」

 

 

 ……見逃せないものが紛れていた事に気付く。

 

 

「ついでに頼むよ、元々次の支払いで引き払おうと思ってたからね」

 

「いや……、そんな突然提出されても」

 

「頼んだよ」

 

「いや、フリーレンさん?フリーレンさぁん⁉︎」

 

 

 指一本使わずに無慈悲に部屋の外へと押し出され、締め出されてしまう。

 エルフが現代行政の敵たる理由の一つ、『気まぐれ』の発動であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南側諸国・ティルネ中央駅

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだね、ここも」

 

 

 ティルネ城塞を囲う旧市街から川街東岸で川を渡り、川街西岸を通って新市街に入ればティルネ中央駅はすぐそこだ。

 各地へと鉄道路線で繋がり人で溢れる此処からは、大陸を縦断する国際高速鉄道にも乗れる。

 

 

「まずは切符を買わなきゃだね。……まだ切符だよね?」

 

 

 予約などしていないエルフは乗車券を買わねばならない。

 しかし主要利用者たる人間との時間感覚のズレ故に、前回利用とは全く違う搭乗システムを用いているのではないかと一抹の不安を抱いた。

 

 

「……」

 

 

 しかし何かの気配を感じたかのように、案内板が立ち各種の売店で賑わい人の大河が騒つく平和な構内で立ち止まる。

 

 

「そこの人物、止まれ‼︎」

 

 

 すぐに人波をかき分けて黒っぽい装備の者達が現れる。

 

 

「鉄道警察隊だ!魔法使いだな?免許を提示しろ!」

 

 

 ヘルメットに防弾ベスト、そして自動小銃を携えた鉄道警察達はまるで犯罪者に接するかのようにエルフを囲んでいた。

 

 

「……分かったよ、どこにしまったかな……」

 

 

 エルフはそれに大人しく従い、手持ちのトランクを漁る。

 

 

「こちらです、隊長」

 

「第一級規模とは……、……フ、フリーレン様⁈」

 

「おや」

 

 

 そうこうしていると鉄道警察の増援が現れ……、……その内の『隊長』と呼ばれた者が驚きの声を上げた。

 

 

「ブランか、久しぶりだね」

 

「はい!お久しぶりです、フリーレン様!」

 

 

 バイザーを上げた彼女の髪は白。

 ……そしてヘルメットに隠れた耳は()()()()()()()()()()()()()()()()尖っている事をエルフは知っている。

 

 

「ティルネに来て長いの?」

 

「はい!五年程、ティルネに勤めております!」

 

「それだけ居たなら会いに行けば良かったね」

 

「いえ‼︎こちらこそフリーレン様に気付く事ができず……」

 

 

 エルフにとっては貴重な『旧知の仲』故の雑談を交わしながらも、手は魔法使い免許を探している。

 

 

「……あったあった、これでいいかな?」

 

「はい!……完了しました、問題ありません‼︎」

 

「それは良かった。……あ、列車に乗るのに必要なのってまだ切符?」

 

「鉄道会社発行のデバイスでも搭乗できますが……、切符でも大丈夫ですよ」

 

「うん、分かったよ」

 

 

 やがてエルフは目当てのカードを探し出し、専用の器具でスキャンされるとすぐにトランクにしまい直して先に行かんと立ち上がる。

 

 

 

 

「──()()()()デバイスが有ると忘れずに私から注意を離さなかった。それに何かサインも出してたよね?怠けてはいないみたいだね、ブラン」

 

「……‼︎」

 

 

 ──そうして、かつての恩人との再会に喜びながらも、情に流されず仕事を遂行していたかつての教え子を褒めた。

 

 

「それじゃあ、またね」

 

「──良い旅を、フリーレン様!」

 

 

 見送りの言葉を背に、エルフは立ち去って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……最近の学校は歴史の勉強をしないのか」

 

「た、隊長?」

 

 

 やがてバイザーを下ろしながら隊長は呆れた声を出す。

 

 

「お前達全員に言ってるんだ、あの人がその気ならひとたまりも無いぞ?明確な理由が無ければもう少し穏便に接しろ」

 

「しかし、魔法使いですし……」

 

「ひとたまりも無いのはお前達じゃない、()()()()()()()

 

「は……?」

 

 

 ()()()()()()()()、無知故に余りに傍若な振る舞いをした部下を隊長は咎める。

 

 

「それは、あのエルフが『特等級』だと言うような……!」

 

()()()()()()()()。……あの人はフリーレン。勇者と魔王の戦いの証明者、『魂の眠る地(オレオール)』に辿り着きし者、『大発生』の駆逐者」

 

 

 過ぎ去りし背中を追いながら隊長は口ずさむ。

 

 

「──魔族絶滅を成し遂げた“葬送のフリーレン”だ」

 

 

 遥かなる旅を行く、その名前を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──勇者ヒンメルの死から726年後。

 彼女は新たな旅へと発つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 パリ的な街のアパルトマン暮らしのフリーレンとか。
 現代的技術を身につけた人達との絡みとか。
 ……『アパート』じゃなくて『アパルトマン』ね。


ティルネ市
……南側諸国の大都市の一つ。
  大きく丘に築かれた旧市街、大河を挟む川街、平野に広がる新市街の三つに分けられる。

エルフ
……もはや絶滅寸前の人間種。
  際立った長命である為、年金や福祉や不動産の所有権などで行政の悩みの種。
  県か郡単位では必ず長命種課が設けられ、今日も無聊を囲ってる。

デバイス
……技術の進歩で現れた魔導具の進化系。
  己の身と補助の杖で行うより遥かに簡易かつ精密に魔法を発動させられる。
  しかし簡易的なやり方に慣れ過ぎた現在、魔法使いの平均的な技量は百年前と比べてすら大幅に低下する一方だという。

大戦
……70年前に起こった諸国全てを二分しての大戦争。
  数多の死と傷を作った。

ハーフエルフ
……現代ではもっぱら大戦期の異種交配実験で兵士として生み出されたエルフと人間の交配種を指す。
  大戦で猛威を振るったが、生き残りの大半は普通の人間よりも早くバタバタと死んだ。

ブラン
……大戦の生き残りの一人。
  86歳。
  大戦では他のハーフエルフより能力が低かった為後方に左遷され、そこで大戦に加わった多くの国を滅ぼした魔獣の『大発生』に遭い、諸事情で近隣に身を隠していたフリーレンに助けられた。
  体機能の不具合や急速な老化で多くのハーフエルフが滅びて行く中、不具合も老化も起こさずに力を増し続け、『最も完成度の高いハーフエルフ』とも呼ばれる。
  現代では南側諸国でも三指に入る個人として機動力の求められるティルネ中央駅駐屯の鉄道警察制圧部隊隊長を務めている。
  フリーレンを強く慕っている。

フリーレン
……歴史の生き証人たるエルフの一人。
  また、旅に発った。
  デバイスの扱いには疎い。


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