【再稿】ペルソナ3でハム子のヒーローアカデミア!   作:Cran

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奥さま奥さま、お聞きになりまして。プロローグは除いたとしても、始まってから15話も続けてまだ雄英高校に入学すらしていないヒロアカ二次小説があるらしいですわよ。

いつも誤字指摘等、とても助けていただいています。ありがとうございます!


2回目の中学生時代⑮~轟家からの招待・前編~

「ごちそうさま」

「ごちそうさまでした!」

 

 時間は18時。

 

 相澤父娘の家で3人の中学生が夕食のテーブルを囲んでいた。囲んでいたが、それが今しがた終了したところである。

 

「お粗末さまでしたー」

 

 今日の献立は、1名の希望により蕎麦と決定。それだけでは寂しいし、育ち盛りの中学生には栄養面でも不足がある。また、ただでさえくんずほぐれつの楽しい訓練*1で消耗してしまった後だ。ということで、公子が用意したのは、炭水化物にタンパク質、ビタミン、食物繊維なども幅広くとれる、天ぷら蕎麦である。

 

 用意した具は、いつでもお手軽な主婦の味方であるところの鶏の胸肉をメイン、ニンジンと玉ねぎのかき揚げをサブ、そしてその他というには存在感の大きなナスとカボチャとパプリカといった面々。それらを積み上げた大皿も大盛にした蕎麦のザルもすっかり空になり、見事にすべて余さず3人の胃袋に収まった。まだ室内には香ばしい匂いが漂っており、心なしか空気も少し油っぽさが感じられる。

 

「いけるだろうなとは思ってたけど、バッチリみんななくなったね。完食!」

「おいしかったです!」

「うまかった。……けど、悪いな。揚げるの、二度手間になんだろ」

 

 いま気がついたとばかりに謝罪してくる焦凍に公子はけらけら笑う。

 

「大丈夫大丈夫。タネは2人とも頑張ってくれたからお父さんの分もしっかり残ってるし、ひとりぶんを揚げるなんて大した手間じゃないから」

 

 はい、頑張りました! と、かき揚げ用の玉ねぎの刻み係を目を赤くしながらも立派に務め切った被身子がシュタッと手を上げる。なお、焦凍は件の玉ねぎやニンジンの皮むきなどを担当した*2。そして公子は別に焦凍に気を遣って手間ではないといったわけではない。仕込みさえ済んでしまえば、揚げ物は傍からみて感じられるほどには大変ではない。なにより大変なのは後片付けである。

 

「料理ってのも面白いもんだな……」

 

 重ねて述べるが焦凍の担当は皮むきである。もちろん、料理の一環であるし必要不可欠な大事なところではあるが。

 

「いつも所在なさげにしてたから手伝ってもらっちゃったけど、やってみると楽しいでしょ?」

「……そうだな。今度姉さんの手伝いもやってみるか」

「私は玉ねぎさんを切るのはしばらくはしたくないです……。鶏肉さん刻みたかったなあ*3

「鶏肉はちょっと注意が必要だから*4、今度、もっと時間があるときに教えてあげる」

「わーい!」

 

 次にヒミちゃんがお弁当を作ってくれる気になったときの役に立つようにも、と割と自身の中で優先度の高いタスクを改めて胸に刻み込む。

 

「焦凍も興味あるんだったら、今度作るときはもっとやってみる?」

「おう。包丁の使い方、教えてくれ」

「包丁なら私が教えられますよー」

「ヒミちゃんは戦闘訓練のナイフでもそうだけど、包丁もすぐ上手になったもんね」

「手先の器用さは自慢なの」

 

 そんな話をしつつ、各々で流し台に運んだ食器の洗い物を開始。こちらはいつものことであり、みな慣れたものだが、公子が洗ってすすぎ、焦凍が拭いて、被身子が片付ける分担である。さくさくと片付けは終わり、やがて焦凍も被身子も出立のお時間になる。

 

「じゃあ、また明日。2人とも気を付けてね」

「はーい! キミちゃん、また明日。お父さんによろしくね」

「おう、またな。晴れてりゃいいけどな」

 

 と、玄関先で見送る公子と見送られる2人。

 そこで、

 

「ああ、忘れてた」

「ん?」

「姉さんが、ウチ来ねえかって」

「おー」

「え!?」

 

 焦凍が、忘れてたとばかりに小さなサプライズを放り込んできた。

 

「えっ、ご挨拶? ご両親へのご挨拶ですか!?」

「違うと思うよ? わかんないけどヒミちゃんの想像してる方じゃないと思うよ?」

「あー、いつも世話になってるから、食事をご馳走したいんだってよ」

「別に気にしなくていいんだけど、一回も遊びに行ったことないし、お邪魔してみたいかな」

「あっ、私も行きたい! 轟パパがいるところにキミちゃんをひとりで放り込むわけにはいきません!」

「轟さんは怪獣じゃないよ」

 

 怪獣みてえなもんかもしれねえな。とは焦凍のつぶやき。

 

「土日の昼とか夜、平日の夜、どれでも好きなときでいいって。姉さんも学校があるから、調整になるだろうけど」

「私は別に思いつく用事はないから、お姉さんの都合でいいよ。決まったら連絡ちょうだい」

「私も特にないです。あっても空けます」

「クソ親父には秘密にしといてくれ。知ってたら絶対に乗り込んで来やがるからな」

「あはは……」

「目に見えているのです。トガは知ってます、燃えながら飛び込んできます」

 

 何回か強制的にジムでの訓練に参加してきた轟炎司ことエンデヴァーの、読んで字のごとくの暑苦しさは2人とも身にしみてわかっている。風林火山でいうところの火と山と風を体現しつつ林はどっかに捨てた*5挙動だ。時代が時代ならさぞ目立つ御大将っぷりで戦場を蹂躙していたことだろう。

 

「うん、それじゃあ。改めて、ばいばい」

「バイバイ!」

「焦凍はヒミコちゃんのことよろしくねー」

「ああ、またな」

 

 2人が帰ってからほどなく、入れ違うようなタイミングで消太が帰宅。

 お帰りなさいとただいまのやり取りを経て、さっさと蕎麦を茹でつつ、天ぷらも用意。公子は食事をする消太を横目に調理器具の片付けである。

 

「あー、公子」

「ん、どしたの?」

 

 天ぷら蕎麦をいただきつつ、少し遠慮した風に呼びかける消太に、公子は、はて、なにかあったかと首をかしげつつ、片付けや洗い物の手を止める。

 

「あまりこっちからつつかん方がいいかもしれないとも思っていたが、そろそろ時間も頃合いだろう。もし、なにか問題が出てきたとすりゃ、早めに対処した方が合理的なんでな」

「うん……?」

 

 なんじゃいな。

 

 先ほどとは逆方向に首をかしげる公子だが、唐突に頭に稲妻が走る。

 

 妙に気まずそうに、そして言いにくそうに、不似合いに長ったらしい前置き、その話し手は義理とはつくが、我が父親で自分は娘という状況。それに、先ほどの焦凍たちとの会話の内容が加わり、思い当たる可能性。まさか――

 

「焦凍と付き合ってたりしないしご両親へのお付き合いのご挨拶とかもないからね?」

「待てなんの話だ」

 

  

 υ´• ﻌ •`υ

 

 

 洗い物を中断して、麦茶を飲みながらのお話がひと段落。

 

「……なるほど、まあ、あちらからすりゃ、家族が一方的に世話になっているようにも思うだろうしな。当然の気遣いかもしれん。気にせずいってこい」

「はーい」

 

 公子が勝手に盛大に勘違いしたのだが、消太の話はそういうものではなかったようだ。となると。

 

「じゃあ、なんの話だったの?」

「そうだな。ったく、気が抜けただろうが。……ヒミコちゃんから聞いた。あの子はそれとわかっちゃいないだろうが、お前、なにか思い出したんだろう。『ふうか』といったか」

「あー……」

 

 それかぁ。

 

「コントだかコントンだかわからないが、あの子が作ってくれた弁当をお前が食べたときに口走っていたらしいな」

 

 そう。被身子が公子にいつもお世話になっているからとの気持ちを込めて作ってくれたお弁当*6が呼び水となって取り戻された記憶。

 指でその文字を示しながら公子は答える。

 

「混沌のお弁当」

「混沌?」

「食材と混沌が混じりあったお弁当」

「それは果たしてお弁当なのか」

「外見なら。存在感はちょっと違う」

「中身は食えるのか」

「無理をすれば」

「弁当は食うために無理が必要なものじゃないぞ」

「風花のお弁当はそうだったんだよ*7

 

 頬を掻く。

 

「えっとね、私が前にいた世界の友達で、仲間だった子」

「そうか……」

 

 仲間という言葉で消太も察する。単なる学友ではなく、その子も公子と肩を並べて戦っていたのだろう。つまり、互いに命を預ける仲だ*8

 

「すっごい可愛い真面目な子で、頭もいい子で、索敵とか相手の弱点とかの分析とか、いろんなサポートをしてくれてた子なんだけど」

「ああ」

「それと、あとはなんか会話の内容とかちょっとした場面とかくらいしか思い出せてないんだ」

「そうか」

「うん、だから、あまり大きな情報っていうわけでもないし。なんだか、お父さんにはまだいえなかったの。ごめんね」

「いや……。それだけでも思い出せたってのは大きな一歩だ。まあ、気持ちは焦るだろうし、思い出しちまった分、かえって辛くなることもあるだろ。俺は気にしちゃいない」

 

 そのとおり、前の世界の友人ひとりを少し思い出したからといって、なにかが大きく変わるということもないのだ。なぜ公子は若返りこの世界にいたのかという理由であったり、公子の個性とは異なる力の正体や力の行使の際に注意すべき事項であったり。また、もしかしたら前の世界に戻れる、あるいは勝手に戻される可能性であったりといった、さまざまな大事なことの手掛かりにはならない。

 

「ただ、念のため、校長には伝えておく。お前と同じようにそっちからこっちに来ていたり、これから来たりする可能性がまったくないというわけでもないからな」

「うん、わかった。じゃあ、ほかの仲間とかそれ以外にも思い出したら、すぐにいうね」

「無理はするな。そのときは、ある程度、気持ちが落ち着いてからでいい」

 

 もしもひとつ思い出したり、そしてそれを話そうとしたりして。そういったことが引き金となって、一気に大量の記憶が蘇るようなことがあった場合、精神的な負荷がどれほどのものになるかは想像するしかないのだ。そういったこともあって、消太は被身子からの情報を得たあとも、すぐに確認することは控えていたのである。

 

「いまはもう大丈夫か?」

「うん、平気。もっと思い出したいなって考えられるくらい」

「焦るなよ」

「うん」

 

 それで、少なくとも、どれほどの情報ネットワークを持っているのか底も知れない校長にそれだけでも伝えておけば、仮に該当する仲間が世界のどこかに突然降り立つことがあったとしても、その情報を拾い上げることはできるだろうという消太の勧めもあり、公子は風花の風貌や能力などを思い出せる限り伝え、お開きとなった。

 

 そして、ひと通りの寝る支度が終わった公子は、少しひとりぼっちな夜の気持ちになってしまったので、珍しく被身子からの電話が来るより早くに、自分から電話をかけるのだった。

 

  

 υ´• ﻌ •`υ

 

 

 そんな夜から数日後、轟家へのご訪問のときがやってくる。

 

*1
消太は放課後に生徒の自主練を監督するため珍しく遅いので個性なし。

*2
装備:ピーラー。

*3
刻みません。

*4
食中毒の要因になるカンピロバクターなどが怖い。取り扱い中にうっかり肉片や汁を周囲に飛び散らせる危険もある。もちろん、他の生肉でも注意は必要。

*5
焼き尽くした疑惑。

*6
の見た目や味。

*7
げに恐ろしきは同様のお弁当を完成させた人間が風花のほかに少なくとも1名いるという事実である。

*8
風花は基本的に拠点で待機であるが、消太には知る由もない。




本作品の焦凍は鍋の仕込みのニラ切ったあとで、怒られることはないかもしれません。

今話はご飯会と後編への準備。あと、中学生1年生のこの時点での記憶の蘇り具合の説明会でした。後編が終わりましたら、雄英高校入学までに時間が飛びます。(訂正、申し訳ありません……。雄英高校受験の間違いでした)

次は、ご対面です。
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